次から市街の攻略入ります。
深淵の大剣の見せ場を作りたいなぁ。
今回、会話回です。
第八十話 王の刃キアラン
ー貴公…カラミットを狩ったのだろう?ー
ー素晴らしい。世が世なら大王グウィンの叙勲に見える偉業だー
ーしかし…なあ…あれも、もう二度と空を駆けぬのだなぁー
ーこの大弓も、竜なき今、私には不要な物だー
ー人の身で引ける物かは分からぬが…貴公に委ねることにしようー
ー僅かでも、貴公の誉れの助けになればな…ー
結果を報告しに訪れた俺に、己の愛弓を渡しながら彼は感慨深そうに、そう話しかけてきた。
よく言うよ。
俺が戦ったカラミットは既にかなりの重傷を負っていた、それをハイエナのように掻っ攫っただけに過ぎない。
真に叙勲を受けるべきは、正面にいる鷹の目だろう。
そんな俺の視線を受け流しながら、彼は竜と騎士の因縁話をし始めた。
彼が言うには古来より騎士の名誉とは竜と共にあった物らしい。
高揚も、名誉も、恨みも、憎しみも、それら全てが彼らと共にあったと。
それと彼からもう一つ、重要な話を聞けた。
深淵によって飲み込まれ始めたウーラシールの滅亡は逃れられない、闇の蛇に唆され、彼らは自らそれを望み、起こし、狂わせた、滅びは自業自得。
深淵を留めたくば、深淵の主マヌスを討つが良い。
いくら火を継ごうとも、いずれ闇の時代が訪れる、それは如何なる英雄にも防ぐ事は出来ない、彼は最後にそう締めくくった。
鷹の目と別れたその帰り道の事だった。
アルトリウスとの死闘を繰り広げた闘技場に誰か居るのが見えた。
小さな墓を建て、そこに花を添えて祈りを捧げている誰か。
一心に祈りを捧げている姿を見る限り、浅からぬ関係だったのは想像するに容易い。
彼を討った者として、その人物に話しかけるべきか?
しかし、話した所でどうなる? 鷹の目のように好意的に受け止められるとは限らない。
彼はアルトリウスの魂を解放してくれた、と言って俺に礼を言っていた。
だが、目の前の人物はどうだろうか?
鷹の目と同じく、友好的かもしれないが、若しかしたら一戦交える可能性だって有る、見なかった事にして立ち去るのが得策だろうか?
判断が難しいな。
そうやって悩んでいると、向こうから声を掛けてきた。
どうやら視界に映ってしまったらしい。
ー貴公……それは、その背に背負っている剣は、此処で倒れた男の剣では無いか?ー
ー私はその男の友だったー
ーだから、その魂を、しっかりと弔いたいー
ーもし良ければ、その大剣を譲って欲しいー
ーだが、それと同時に図々しいお願いがあるのだー
ーその剣で、この先の深淵の王を討って欲しいー
ー我が友、アルトリウスの仇をー
ー自己紹介を忘れていたな、私はキアランー
ー周囲の者は王の刃とも呼ぶが、好きに呼んでくれー
ー改めて頼む、アルトリウスを討った貴公の腕を見込んでの頼みだー
最後の四騎士、王の刃キアラン……か。
立ち居振る舞いや、竜狩り、深淵歩きのような神族の持つ特有の気配を漂わせている事から本人の可能性は高いだろう。
どうせ、その深淵の王を倒さなければ帰れないのだから、その頼みを受けても良いが……。
深淵歩き アルトリウスの大剣、元の姿はまさに聖剣だったのだろうが、今は見る影も無くなっている。
だが、彼の魂が篭った大剣だ、その気高い精神が受け継がれ、神聖さは何一つ変わらない。
墓標としては最適だろう。
彼女が本物ならば、確かにこの剣を渡すのは筋とも言える。
だが、偽物だった場合はどうだ? この剣には彼の力が宿っているだけでは無く、深淵の力も宿している。
それを狙った者と言う疑いがある以上、やすやすとこの剣は渡せない。
俺が考え事をしているのを見て、渋っていると判断したのか、彼女はある提案をして来た。
ー貴公には利が無い頼みなのは理解しているー
ー報酬が必要と言うならコレで手を打ってもらえないだろうか?ー
彼女が差し出したのは、彼女の装備。
黄金の残光と暗銀の残滅、王の刃の代名詞と言っても過言ではない物だった。
それほど、彼女の思いは強いのだろう。
そして、彼女が本物だと信用しよう。
無言で頷き、彼女の頼みを聞き入れる。
ーすまない……いや、この場合はありがとうだなー
ー本当に、ありがとうー
市街入りは次からになります。
市民も超強化するつもりですので悪しからず。