不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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段々主人公が人間離れしていく予感が……。


放浪者側のテコ入れ如何しようかな、このままじゃ主人公にカモられる。


不死の英雄伝 85

第八十五話 闇の魔術

 

 

結局、俺は左の道を選び、道草をしてから先に向かう事にした。

 

 

あの赤い市民、アレが何処に居るのか分からない以上、 本当はあまりウロチョロしない方が良いのだろう。

 

 

だが、死んでも亡者化が進むリスクが有ると言うだけで、それに見合う見返りが有れば十分元は取れる。

 

 

横道に逸れた道を壁伝いに歩いて行く。

 

下には階段が有り、上から覗き込むと市民が俺の事を今か今かと待ち構えていた。

 

 

真上から光波を叩き込み、彼を崖下に叩き落とし先に進む。

 

 

足場を飛び移りながら、隣の建物の中に入る。

 

 

入り口に入るなり中に居た魔術師に深淵の飛沫を浴びせ掛けられる。

 

 

着弾する前に、月明かりの大剣に魔力を込めて盾代わりにして、竜狩りの槍で眉間を貫く。

 

 

一撃で頭部を破壊された魔術師の首を斬り落とし、完全に息の根を止めた後、下に向かう階段を降りて行く。

 

 

階段の中腹に一体、下に見える宝箱の前に一体、計二体の魔術師が、それぞれの杖に闇の力を込めていた。

 

 

下に見える魔術師には竜狩りの槍を投擲、中腹にいる魔術師には光波を叩き込む。

 

 

彼らの魔術は強力無比だが、知能が亡者並みだからか発動までのタメが長い。

 

その隙を狙っての一撃、槍は突き刺さり、光波は敵を消し飛ばす。

 

 

投槍を回収し、目の前に並ぶ三つの宝箱に目を向ける。

 

以前公爵の書庫で、宝箱を不用意に開けてしまい、それがミミックだった事があった。

 

今回もそれがあるかもしれない、警戒するに越したことは無いだろう。

 

 

戦々恐々としながら、竜狩りの槍で一つ一つ宝箱を突いていく。

 

 

暫く突っついていたが、どうやらこの三つはミミックでは無いらしい。

 

 

安心して蓋を開けると、三つのうち二つが空だった。

 

肩透かしを食らってしまったが、取り敢えず最後の一つに希望を持って蓋を開ける。

 

 

中には一枚の魔術書が入っていた。

 

 

闇の玉 捻りの無い名前だが、それはれっきとしたウーラシールの魔術師が狂気の内に見出した深淵の魔術。

 

その魔術書は、最後にこう綴られていた。

 

深淵の力は闇の力、闇は重く、質量を持っているため物理的なダメージを負う。

 

人のソウルは、人間性として、より実体に近づくのだろうか?

 

 

先ず一つ、深淵を直接相手に叩き込むだけの単純な魔術だが、単純な物だからこそ使い易そうだ。

 

 

威力に関しても問題は無い、コレは深淵を攻撃に利用した物だから、その力は推して測るべし。

 

それに、相手にぶつけたからと言って、相手が深淵で強化される何てことはない。

 

深淵の研究資料も兼ねているこの魔術書によれば、深淵で強化される為には、純粋な深淵の泥そのものを受け入れる、若しくは汚染される必要があるらしい。

 

 

だから闇術をまともに浴びながらもそれに汚染される事が無かったのか……。

 

 

 

魔道書を仕舞ってから辺りを調べながら、断崖絶壁に立っていた魔術師を月明かりの大剣で斬り捨て、よくわからない木彫りの人面を手に入れて、他には何も無いことを確認し、来た道を戻って行く。

 

手に入れる物は手に入れた、辺りの散策も終えている、後は暫く先に進む事に専念出来るな。

 

 

分岐点まで戻り、目の前の細い橋の上に居る市民に視線を合わせる。

 

 

足の踏み場の無いほど狭い橋だ、彼処で戦うのは馬鹿のすることだろう。

 

しかし、月明かりの大剣の光波では、爆風で橋を落としてしまう可能性があるため駄目だ。

 

鷹の目の大弓では威力が高すぎて橋ごと吹き飛ばしてしまうかも知れない。

 

ナイフやスナイパークロスでは彼を誘い出すには力不足だ。

 

残る手段は一つ。

 

 

左手に握っていた竜狩りの槍に雷を溜め、彼に向かって射出する。

 

 

切っ先から雷の大槍が放たれ、市民の胸を真っ直ぐ射抜き、此方を悟られる前に仕留める。

 

 

細い橋を渡りきり、意味ありげに置かれている宝箱に目を向ける。

 

 

なんと言うか……、こんな物に引っかかる者が居ると思っているのだろうか?

 

 

チラチラと此方を伺うように蓋が閉じたり開いたりしている。

 

 

このミミックは馬鹿なのだろうか?

 

背中の月明かりの大剣を抜き、魔力を込めながらミミックに斬りかかる。

 

聖剣の刃は宝箱の外殻を透過し、中に籠っているミミックに直接光波を叩きこむ。

 

一撃で仕留め切りたかったが、このミミックはどうやら持ち堪えたようだな。

 

 

いつ見ても気持ち悪い、八頭身は有ろうかと言う彼の身体。

 

箱の中からベロベロと伸びた舌と腕が顔を覗かせている。

 

回し蹴りや抱きつきと言ったアクロバティックな動きをする此奴は、正直言って生理的に受け付けなかった。

 

 

相手が立ち上がった所で、結晶槍を叩き込み彼に止めを刺す。

 

 

ソウルの粒子になり、消えて行く彼の口から先ほど拾った物と同じような木彫りの人面がこぼれ落ちる。

 

 

その木彫りの人面が地面にぶつかると同時に、その衝撃で人面が震え不思議な音を発する。

 

 

ーHelloー

 

 

今のは……、挨拶、なのか?

 

 





この作品の闇術は深淵の力を丸々利用している為、とんでもないです。

闇の玉ですらソウルの槍クラスの火力が有ります。

飛沫一つ一つにもソウルの槍の威力が有ります。

追うもの一体につき、結晶槍以上の威力が有ります。


放浪者「暫く見ない内に騎士野郎が超火力厨になっていた件について」

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