不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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放浪者のテコ入れに関して、活動報告を出しましたのでご意見がありましたらそちらにどうぞ。


不死の英雄伝 86

第八十六話 市街中層

 

 

ミミックから人面を回収した後、目の前の階段の隣の建物の上に居る赤いウーラシール魔術師を鷹の目の大弓で叩き落としてから階段を下って行く。

 

 

聖剣を構えながら目の前に居る二体の市民を両断、足場も無い程狭い橋の先にいる魔術師に鷹の目の大弓で狙いを定める。

 

 

唯の矢では彼らを殺しきれない、だから矢を変える。

 

大矢の代わりに大弓に番えたのは竜狩りの槍。

 

深淵歩きの大剣により、四騎士のごとき力を得ているため、対岸の魔術師に気取られない位置から狙いを定められる。

 

コレだけでも彼を射殺す事は可能だろうが、万が一彼の闇術で迎撃されては事だ。

 

槍に魔力を込めて限界まで帯電させる。

 

照準を合わせ、神聖の力を帯びた雷を纏わせた竜狩りの槍を放つ。

 

光の軌跡を描きながら狙った場所に寸分違わず吸い込まれた竜狩りの槍は、彼を黒焦げにし、その命を刈り取った。

 

そして、先ほど叩き落とした魔術師は、恐らく死んで居ないだろうから、今のうちに月明かりの大剣に結晶のエンチャントを施し、魔力を溜める。

 

 

臨界点ギリギリまで魔力を込めながらも、それを押さえつけながら魔術師が現れるのを待つ。

 

 

奴を叩き落とした際に、僅かに吹き飛び方に違和感を感じた。

 

まるで六つ目の伝道師達の移動のような滑らかな動きで落ちていったため、それに近い魔術が使えるのだろう。

 

 

走り抜けると言った手も有ったが、赤い魔術師相手に背を向ける事になるためそれは避けたかった。

 

呼吸すら忘れ、周囲全てに神経を傾ける。

 

 

10分、20分と睨み合いをしている最中、限界以上の魔力を込められ続けている月明かりの大剣の輝きが強くなって行き、それに伴い、刀身が発する魔力も濃密且つ膨大になって行く。

 

 

崖の下に居た赤い魔術師が、その魔力を肌で感じて焦ったように顔を覗かせる。

 

 

いつ暴発するか心配だったが、彼の位置が特定出来た為、急いで刃を振るって光波を射出する。

 

 

限界以上に溜め込まれた魔力を全て吐き出した為、彼に着弾した光波は、彼を隣の建物ごと消し飛ばす。

 

 

当然、至近距離でそれを放った俺にも爆風はその牙を向く。

 

 

強烈な衝撃波は、俺を石の壁に捩じ込み、全身の骨を砕き、鎧に多大なダメージを与える。

 

懐からエスト瓶を取り出して、骨を修復した後に石の中から外に出る。

 

 

ーぺっぺっ、ふぅ……酷い目に会ったー

 

ーまったく……、もう少し遠くに居ると思ったんだけどねー

 

ー予想は大外れだー

 

 

ボヤきながらも聖剣を背負い直して竜狩りの槍を回収しに向かう。

 

 

 

橋の中腹まで来たところで奥の方から市民が現れ、竜狩りの槍に向かって走り出した。

 

 

急いで槍まで向かいたいのだが、足場が不安定な以上慎重にならざるを得ず、みすみす彼に槍を握られてしまう。

 

 

だが、予想外な事に彼の腕から先が燃え上がる。

 

まるで資格無き者には握らせまいとするように、深淵の穢れを浄化する為に、竜狩りの槍を握った彼は灰となり消滅する。

 

 

この槍は、竜狩りのオーンスタインを討った際に俺の手に渡った物、彼が生涯振るい続け、信頼した槍。

 

 

意思のような物が宿っていても不思議では無いか。

 

槍を回収し、目の前にある建物に入る。

 

 

中に入ると、早速赤い市民が直々に俺を出迎えてくれた。

 

竜狩りの槍で彼を貫きに掛かるが、左手で受け止められる。

 

右の聖剣の振り下ろしも同じく受け止められる。

 

腕が燃えるのも構わずに、力任せに刃を押し返す赤い市民。

 

 

それぞれに魔力を込めながら消し飛ばしてやろうかと思っていたが、部屋の隅にいた市民が俺たちに気付き、俺に向かって来ているため、下手な事は出来そうに無い。

 

 

なので、両手を放して背中の深淵歩きの大剣を抜いて、赤い市民を唐竹割りにする。

 

 

鍔迫り合いのように刃を押し合っていた所で急に力を抜かれてしまい、体勢を崩してしまっていた赤い市民は何が起きたか分からない内に消滅する。

 

 

そして、振り下ろした刃をそのままに、その場で一回転。

 

背後から強襲を仕掛けていた市民の胴体を両断する。

 

 

月明かりの大剣を抱えながら、その場に座り込み、小休憩を取る。

 

 

今もこのウーラシール全域を満たしている濃厚な死の気配、それに影響されているのか、普通の市民達も強化されているようだ。

 

 

亡者程度の知能しか無いと高を括っていたが、俺の放った竜狩りの槍を奪いにきたり、強襲を仕掛けてきたりと中々頭が回るようになってしまった。

 

 

間抜けのままで居て欲しかったが仕方ない。

 

現実は甘くないのは今更か……。

 

疲れが取れてきたので立ち上がり、目の前の手すりから下を見る。

 

 

一体、二体、三体…………全部で九体か。

 

内訳は市民が六体と魔術師が二体、赤い魔術師が一体。

 

 

何時ぞやの数の暴力を思い出すな……。

 

あの時は真正面から向き合う事で、もしもの時に備えるとか言って馬鹿正直に亡者兵士に向かって行った覚えがある。

 

今にして思えば、そんな理屈は通用しない。

 

囲まれない事が第一、囲まれたなら一度退いて仕切り直し、若しくは一点突破。

 

 

纏めて相手にするなど失笑ものだ。

 

昔の俺は、やはり何処か現実を見ていない所があったんだろうな。

 

 

頭の片隅でそんな事を考えながら眼下に見えるウーラシールの住人達を突破する方法を考えて行くのだった。





昔の主人公→熱血漢

今の主人公→サイボーグ

昔の放浪者→キチ○イ

今の放浪者→リア充、主人公


…………科学ノ発展ニ犠牲ハツキモノデース。

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