取り敢えず放浪者のテコ入れはニト剣ルートの方が良いのでは? と言う意見に従い、レガリアルートは又別の機会にします。(余裕があれば)
後書きにニト剣の最終的能力を載せました。
第九十六話 一騎当千
俺の両手には、深淵歩きの剣と盾がある。
どちらも朽ち果て、原型が無くなっているほどではあるが、内包されている神秘に濁りはない。
対するアルトリウスは俺と同じ、いや、それの原型を保った剣と盾を装備している。
深淵の泥で形作られた装備。
神聖さは微塵もなく、闇の力が溢れ出している。
マヌスの不意をついた闇の玉を避けながら、此方から斬り込んで行く。
相手は全てが泥で出来ている。
盾も、剣も、鎧もだ。
ならば聖剣の刃で、それらを破壊できるはず。
迎撃の為に振るわれた大剣を、全身を使って弾き返す。
予想通り、刃が触れた箇所がボロボロと崩れている、持久戦に持ち込めば勝てるはず。
神経を研ぎ澄ませ、彼の剣を弾いて行く。
剣を交えて分かったが、今の彼はアルトリウスの残骸に深淵の泥を混ぜた物。
その為か、フェイントや回し蹴りなどの小技も合間に挟んでくるためかなり手強い。
それに、マヌスによる闇の飛沫も俺に牙を剥いている。
今はまだ平気だが、その内また辺りが深淵に塗れてしまう。
マヌスを警戒し過ぎた所為で、僅かに隙が生まれてしまう。
それを見逃すほど、目の前の男は優しくは無い。
大盾による刺突、先端が尖っている独特な形のその盾は、確かにシールドバッシュを敢行すれば刺突武器としても代用可能だろう。
神族の膂力に深淵のブースト、その一撃は掠めただけで俺の身体を捻り切った。
次の気を取り直し、戦いに望む。
完全に崖が破壊されているため、霧を超えると即座に落下してしまうが、今はそんな事を気にして居られない。
このパターンは、あの闘技場と同じだろう、きっと彼は着地の瞬間を狙って来るはずだ。
彼との戦いの大前提は、着地の瞬間に転がりながら回避する事、それがこなせるようになるまで何度でも死んでやろう。
地面に着地した瞬間に前に転がるが、アルトリウスは地面に擦り付けるように大剣の刃を引きずりながら俺を切り上げる。
身動きが取れない空中で、唐竹割りにされる。
月明かりの大剣による緊急回避は間に合わず、あっさりと殺された。
更に次は着地の瞬間に光波を暴発させ、彼の一撃を回避する。
今回は上手くいき、低空からの切り上げは回避出来た。
だが、俺が光波の爆風で回避した途端、彼はその場で回転、突進の威力をそっくり回転力に変換して俺を粉砕する。
その次、今回はエンチャントを施しながら、月明かりの大剣を崖に突き立てながら降りて行き、アルトリウスの頭上から光波を叩き込む。
薄暗い深淵の底、月明かりの大剣に魔力を込めた際に漏れる光を隠す為、結界の大盾の裏に隠しながら振るった光波は、彼の目にはいきなり現れたように映るはず。
結晶の光波による視覚外からの強襲。
恐らくそれは回避されるだろうが、彼の足を止められればそれだけで十分。
しかし、今の彼は全盛期と言っても過言では無い。
彼は自身の大盾で目前まで迫った光波を防ぎ、俺に向かって兜割りを仕掛けてくる。
転がるように回避したが、彼の兜割りは神速の三連撃、この程度では回避仕切れるはずは無く、最後の一撃で叩き潰される。
チッ、あの反応速度は健在か。
軌道の変わる斬撃、突進からの回転斬り、神速の兜割りの三連撃。
深淵の力と彼の長年の戦いで培われた絶対的な”感”
それら全ては闘技場で戦った際に嫌となるほど身体に叩き込まれた。
その感覚は未だに抜けていない、故最も戦いやすい相手かと思っていたが、それは見通しが甘かったようだ。
あの闘技場での強さは氷山の一角に過ぎなかったみたいだな…………。
今の彼はあの時より遥かに強い。
肺の空気を全て吐き出しながら、気分を切り替える。
まあ良いさね、死ぬ程殺される事にも慣れている、その内突破口が見つかるだろうさ。
幾度目かのアルトリウス戦、背中の月明かりの大剣に魔力を込めながら着地、彼の突進を此方から迎撃しに行く。
着地と同時に踏み込み、月明かりの大剣の魔力を暴発させて更に加速する。
て更に加速する。
深淵歩きの大剣による突進。
ただし、これだけではまだ加速が足りない、これではまだ弾かれる。
始め踏み込んだ足と反対の足で踏み込み、三段階目の加速を掛ける。
人間の踏み込みとは言え、ソウルの力で魂の段階から身体を強化された不死の踏み込みだ、これだけ段階を踏めば一時的になら彼と同じ速度を出せる。
両者の激突は、互いの剣を弾き飛ばし、お互いが素手となる。
即座に月明かりの大剣を引き抜き、彼に斬りかかるつもりだったが、マヌスの左手が視界に映った。
巨大な炎の塊、それは大火球と呼ばれる呪術。
身近な者で例えるなら、あの放浪者が多用する物だ。
だが、その手の炎はドス黒く、深淵の力を宿しているのは一目瞭然。
アルトリウスから目を離せば、上空に弾き飛ばされた大剣を回収されてしまう、かと言ってマヌスを放置すればアレの餌食だ。
光波での迎撃なんてのは、アルトリウスにとっては絶好の隙となってしまう。
だが、その判断を下す必要は無かった。
同じく空中に弾き上げられていた俺の大剣が、銀閃を残しながらマヌスの左腕を刎ね飛ばす。
気高さが伝わってくる遠吠え。
その斬撃の軌道はアルトリウスに良く似ていた。
灰色の狼はマヌスと対峙しながら注意を引きつけてくれた。
まったく、美味しい登場だな。
だが、お陰で助かったよ、ありがとう。
改めて月明かりの大剣を構えながらアルトリウスと対峙する。
ー今度こそ、俺が終わらせてやろうー
ー安らかに眠るがいいー
墓王の大剣( 放浪者仕様 )
・盾受けだろうが刃に接触した瞬間猛毒確定、聖剣のガードで猛毒蓄積。
・上記の条件で呪い蓄積。
・上記の条件で出血値蓄積。
・上記の条件で相手の全装備の耐久値を一割削減。(装備中の物のみ)
・地面に刃を突き刺す事で上記の全てを兼ね備えた大剣乱舞を対象者に向け発動可能。
・所有者の毒、呪い、出血を無効化。
・ソウル、魔力、亡霊等の実体の無いものを斬れる
・骨の結合を操作して蛇腹剣や鎌などに出来る
・所有している武器を取り込み、その力を振るう事が可能
・所有者のHP・スタミナ・装備重量が二倍。
・所有者のスタミナ回復が二倍。
・所有者の受けるダメージが二倍。
・所有者の亡者化の加速。
対人特化の性能だね。