曇らせ魔女の復活記録   作:アスタロット

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case2 令嬢リリア

 

私はリリア・アロガンツ。

伯爵家アロガンツ家の次女だ。

 

私は十歳になるまで、ほとんど外の世界を知らなかった。

病弱で、家族からも”役立たず”と蔑まれる日々。

異母兄たちは家督争いに明け暮れていた。 

当主であるお父様は、冷たい視線を向けるだけ。

 

私はいつも一人で、窓辺で本を読むだけの毎日を送っていた。

そんな私の前に、ある日一人の女性が現れた。

 

“異国の医学教師”として雇われたカーミラ先生だった。

長い黒髪を優雅に下ろし、穏やかな微笑みを浮かべた美しいひと。

 

表向きは魔術を使わない学者。

でも実際には家の依頼により、魔力で私の病を和らげるためにやって来た人。

彼女が静かに私の側に居ついた。

 

初めの治療の日、私はベッドで震えていた。

先生の指が優しく私の手に重なり、温かさが体を巡った。

 

「痛いところは?大丈夫、ゆっくり息をして」

 

その声は柔らかく、手は温かかった。

私は初めて”誰かに大切にされている”と感じ、涙を浮かべた。

 

「先生……ありがとうございます」

 

それから毎夜のように、治療と勉強の時間が設けられた。

先生は私の病弱な体を優しく撫で、魔力を流し、時には額や頰に軽くキスをして”頑張ってるね”と褒めてくれた。

 

それから私は、先生の横顔を見るようになった。

 

美しくて、優しくて、強いひと。

先生は私の憧れだ。

憧れは、徐々に甘いものにいった。

 

ある雨の夜、発作で苦しむ私を先生が抱きしめた。

体温が私を温かく包み込む。

私は先生の胸に顔を埋め、震える声で呟いた。

 

「先生……離れないで」

 

先生は優しく髪を撫でてくれた。

 

「大丈夫。ずっとここにいるよ」

 

その夜、私たち二人はベッドで寄り添った。

先生の指が私の背中を優しくなぞり、唇が額や頰に触れる。

私の体が熱くなり、初めての甘い疼きを感じた。

 

「先生……気持ちいい……」

 

先生は小さく笑い、私の唇に軽くキスをした。

私の心は大きく揺れた。

 

先生の唇とっても温かくて、柔らかい。

 

それから私達の時間は、ますます親密になっていった。

勉強の合間に抱き合ったり、治療の名目で体を重ねたり。

私は先生の豊かな胸に顔を埋め、甘えるようになった。

先生も”リリアは可愛いね、赤ちゃんみたい”と、ゆるく受け止めていた。

しかし、私の心の奥では、いつも小さな声が囁いていた。

 

これは、おかしい。

同性にこんな気持ちを抱く。

なんて背徳だ。

でも、先生の匂い、先生の温もり、先生の声。

離れられない。

私は何とかその想いに蓋をした。

 

でも、好意を自覚した瞬間は、突然訪れた。

ある夜、私は先生の膝枕で本を読んでいた。

先生の指が髪を梳く。

その感触が気持ちよく、私はうっとりと目を細めた。

 

「先生……私、先生がいないと生きていけないかも」

 

先生は優しく笑い、唇を重ねてくれた。

 

「そんなに甘えん坊なんだ」

 

舌を絡める先生のキスは、かつてない程に情熱的だった。

その瞬間、私の中で何かがはっきりした。

 

“私は、先生を、好き”

 

恋だった。

同性への恋。

背徳感が胸を締め付ける。

 

でも、私はもう先生への依存をやめられなかった。

先生の指が肌に触れるたび、唇が近づくたび、背徳感と快楽が同時に私を蝕んでいった。

その夜、私達はより複雑に絡み合った。

先生の指が私の肌を優しく愛撫し、私は初めての快感に震えた。

 

「先生……もっと……」

 

先生は”いい子だね”と囁きながら、私を優しく導いた。

処女を奪うような激しいものではなかったが、私達の絆は確実に深まった。

 

それから私は毎晩のように、先生の部屋を訪れるようになった。

背徳感を抱きながらも、先生の温もりにすがる。

 

これは……おかしい……

そう思いながらも、先生の指が動くたびに体が熱くなり、声が漏れた。

 

「先生……私、先生のことしか考えられない……」

 

先生は優しく微笑み、私を抱きしめた。

 

「大丈夫、好きなものは好きでいいんだから」

 

家督争いが激化する中、私はときどき冷静な判断を下さざるを得なかった。

 

使用人が先生の正体を疑いかけた。

先生が魔術を使う事は、屋敷でもごく一部の人間しか知らない。

気取られれば、彼女は粛清されるから。

 

私は秘密裏にその使用人を処分させた。

 

“必要なら、手段を選ばない”

 

そんな思考が、病弱な私の心の奥に静かに根を張っていた。

そして、ある日。

すべてが崩れた。

 

異母兄の動きにより、先生は”魔女”として告発された。

 

そこで当主であるお父様は、私に最終試練を課した。

 

「リリア。騎士連中が来る前に、あの魔女をお前の手で始末せよ。当家の潔白を証明するのだ」

 

地下の隠し礼拝堂。

先生は縄で拘束され、私の前に立たされた。

 

先生は静かに私を見つめていた。

毒が塗られた短剣。

それを握った手の震えが止まらない。

父と側近数名が壁際に立って黙って見守っている。

 

「先生……」

 

声が掠れる。

先生は穏やかに微笑んだ。

 

「リリア、来てくれたの」

 

「先生……私は……」

 

「いいのよ。あなたの道を選んで。私は……あなたを、愛している」

 

その言葉が、私の心を深く抉った。

先生は静かに私を見つめ、甘く囁いた。

 

「リリア……最後に、キスして。貴女の唇で……」

 

私の体がびくりと震えた。

愛する人を殺すこと。

それでも、私は先生の顔に近づいていった。

二人の唇が、重なる。

熱い。

柔らかい。

かつてなく熱いもの。

先生は目を細め、私の唇を優しく吸うように受け入れた。

私の手が震えながら短剣を握りしめる。

先生の唇が離れず、甘く囁く。

 

「もっと……深く……」

 

私は目を閉じ、短剣を握った手を先生の胸に押し当てた。

刃先が肌に触れる。

そして、ゆっくりと挿入するように、愛する人を抱くように、短剣を押し込んだ。

 

「んむぅっ……!」

 

先生の体が、びくりと跳ねた。

でも、唇は離れなかった。

むしろ、私の唇をより深く求め、舌を絡めてくる。

血が噴き出し、私の手に温かく滴り落ちる。

それでも私達のキスは続いた。

短剣が深く沈むたび、先生の体が痙攣する。

でも、先生の目は優しく細められたまま、私を見つめていた。

 

「リリア……好き……」

 

最期の言葉を、私の唇に残して。

先生の体から力が抜けた。

私は短剣を握ったまま、唇を離せなかった。

血まみれの手が震え、温かい血が床に滴る。

先生の死体を抱きしめるように、短剣を胸に深く刺したまま、動かない先生の口内を味わっていた。

 

父は黙ってそれを見届けた。

表情一つ変えずに。

 

その夜、私は自室で完全に崩れ落ちた。

 

「先生……先生……!」

 

幻覚が現れる。

先生が優しく私を抱きしめてくる。

 

「リリア、大丈夫?」

 

次の瞬間、その抱擁は冷たいものに変わる。

 

「痛いよ……リリア……どうして私を殺したの?」

 

私は壁に頭を打ちつけ、叫んだ。

背徳の恋を自覚しながらも依存していた自分への自己嫌悪が、頭の中でグチャグチャになる。

 

純粋で病弱だった私は、その夜に死んだ。

数週間後、私は変わった。

先生の治療により、病弱で内気だった面影は消えた。

その代わりに、計算高く冷徹な意思を獲得した。

 

まず、先生の事を異母兄に密告した使用人。

それを念入りに拷問した末に処分した。

次に異母兄に屈服するフリをして、毒を盛り葬った。

政敵も容赦なく陥れた。

 

“弱者は利用される。利用できないものは捨てる”

 

そんな考えが、私の頭を支配するようになった。

 

それでも夜になると、幻の先生が現れる。

私はそれを、冷たく抱きしめる。

 

「先生……私は、もう弱くないわ。あなたを殺したこの手で、すべてを手に入れる」

 

やがて私はアロガンツ家の当主として君臨した。

異例の女性当主。

理由は単純、私を除く後継者が全て不慮の事故で死亡したからだ。

私の地位は盤石だった。

 

しかし、夜な夜な先生の幻に苛まれ続けた。

 

私は時折、先生に似た黒髪の美しい女性を屋敷に招いた。

肉体関係を持ち、甘い言葉を囁かせた。

でも終わった後は、いつも同じ虚無感に襲われた。

 

「ダメ……やっぱり先生と違う」

 

そして、その女性を静かに始末した。

 

“先生と違う”

 

その失望が、私をさらなる悪へと駆り立てた。

私は今も、先生の幻を抱きしめながら、涙を流している。

 

「先生……私を、許して……」

 

 

 

 

「んん…あぁ…今回は刺激的な最期だったなぁ…」

 

私は体を起こしながら、ぼんやりと思い出す。

アロガンツ家の屋敷での暮らし。

病弱な令嬢リリアの家庭教師として雇われたあの日から、すべてが始まった。

表向きは異国の医学教師。

実際は魔力でリリアの体を癒し、勉強を教え、夜は二人きりでエッチした。

リリアは最初、おどおどした可愛い子だった。

私が治療で抱きしめると、震えながら「先生……」と甘えてくるのがサイコーだった。

 

流れで自然にキスを重ね、指を絡め、肌を重ねるたび、あの子は背徳感に震えながらも、私に夢中になっていったなぁ。

 

「先生……私、先生がいないと生きていけないかも」

 

あの言葉を聞いたとき、胸が熱くなったね。

 

同性への恋。

貴族の令嬢が魔女に落ちるなんて、なかなか面白い体験だった。

 

屋敷での食客生活は快適だった。

豪華な食事、柔らかいベッド、そして夜な夜なリリアの甘い吐息。

 

まあ…でも、結局はこうなる運命だったんだろうね。

最後の夜、地下の礼拝堂でリリアに短剣を突き立てられたとき。

最後だと思って、とりあえずリリアにキスを要求した。

彼女は壊れた笑みを浮かべて応じてくれた。

 

唇を重ね、舌を絡め、短剣が胸に沈む感触はこの上ない苦痛だった。

血が噴き出す激痛の中でも、キスを離さなかったリリアの震える唇は妙に愛おしかった。

 

「リリア……好き……だよ……」

 

力を振り絞って、最期にそう言ってあげた。

あの子が一生引きずってくれるように。

 

 

「家庭教師も悪くなかったし、リリアとの百合も新鮮だったわ。あの子、きっと立派な悪女になるだろうね。さぁて…次こそは、もうちょっと気楽にいこうっと」

 

私は背伸びをして、歩き出した。

 

あ、今度はちゃんと服を着てから外に出るよ!

 

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