この異世界に名探偵を!   作:匿名

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名探偵コナンのクロスが読みたくて自分で供給し始めました。


プロローグ

「どけやああああああ!」

 

大滝警部たちを振り切った沼淵己一郎が、包丁を振りかざし蘭へ突進する。

 

いくら身のこなしが軽い蘭でも、あの姿勢と位置じゃ避けきれない。

 

俺は気づけば蘭の前に飛び出していた。

 

沼淵の持つ包丁が俺の腹に突き刺さる。

 

その瞬間、腹の奥で焼けた鉄を押し込まれたような熱が弾けた。

 

( 三徳包丁か......思ったより、深く......

 いや、まだだ......刃さえ抜かなきゃ、内臓の圧迫で出血は抑えられる、

 まだ......保つか......?)

 

警官たちの怒号が響く中、誰かが俺を抱きかかえる。

 

( 柔らかな温もり、......蘭か。)

 

意識が沈み、脳裏に、今日一日の出来事が浮かび始めた。

 


 

「まあ、ここは大阪や。」

 

「事件のことは俺らに任せて、身引けや、工藤。」

 

こんな所で引き下がれるか。俺は服部の後を追おうとした。

 

「しゃあないな。お前にこれ預けといたるわ。」

 

「その代わり、今日のところはなるべく我慢せえよ?」

 

服部が首からお守りを取り出し、俺の首にかけようとする。

 

「バーロー。俺が事件を途中で投げ出せる質じゃないことぐらいお前が一番よく知ってるだろ。」

 

「せやろな。俺がどんだけ言うてもお前は耳貸さへんわ。

 ま、後ろで今にも般若みたいな顔して飛んできそうなお大臣様には、

 そんな態度取れんようやけどな?」

 

お守りを懐に戻しながら、笑う服部に呆然としていると。

 

「コーナーンくーん?」

 

怒気を含んだ声が聞こえた方を恐る恐る振り返ると、腰に手を当て完全に怒ってる蘭がいた。

 

高校生に小学生が勝てるわけもなく、あっという間に俺は大滝警部の車に乗せられる。

 

坂田刑事の車に乗り込む服部を横目に見ながら、俺は事件の推理を始めた。

 


 

( 最後に思いだすのがお前かよ、服部。

 お前の言う通りにしとけば、よかったな。)

 

 体が冷えていくのを感じる。

 

( まだだ......救急車が来れば助かる可能性はある。意識を手放すな。)

 

「コナン君!いや!いやああああああ!」

 

涙をはらんだ蘭の声が聞こえる。

 

( 違うんだ蘭。俺の本当の、本当の正体は。)

 

「好きだ」と伝えることもできないまま、俺の意識は暗く静かな闇に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ッハ!

 

息を呑んで飛び起きる。

 

ここはどこだ?病室じゃない。消毒液の匂いがしない。

 

少なくともベッドや霊安室の冷たい台の上じゃない。

 

( ......脈がある。生きてる? )

 

辺りを見渡す。白い床、白い天井、奥行きすら分からない。

 

( なんでこの服汚れてねーんだ?)

 

腹を深く刺されたはずだ。

 

あるべき場所には傷はなく、覚悟していた死はまだ訪れない。

 

( 夢でも見てるのか? )

 

「あれ?さっきの魂で最後のはずなのに......数え間違えたかな。

 よし、これで今日の最後、頑張れ私。ウッヴヴン」

 

「工藤新一様、ようこそ死後の世界へ。

 あなたはつい先ほど、不幸にもお亡くなりになりました。」

 

唐突に声を掛けられた。

 

前を向けば、いつからいたのか、白い羽を持つ少女が立っていた。

 

白磁のような肌に、蜂蜜色の髪。どう見ても天使だった。

 

“死後の世界“

 

そうか、やっぱり俺、あの時に死んでいたんだな。

 

疑う余地もなく、死んだことを心の底から理解できてしまった。

 

残してきた家族、友人、そして......大切な幼馴染、彼らのことを思う。

 

( また泣かせちまったな。)

 

「初めまして江戸川コナン様、もとい工藤新一様。私はセルメリア。

 日本において、若くして亡くなった魂を導く天使です。」

 

「落胆されているところ、誠に申し訳ありません。

 ですが、天界の規定により猶予をお取りすることが叶いません。

 これより転生の道筋をお選びいただく必要があります。」

 

( 話が早くないか?もう少し間をおくとか、

 落ち込んでいる人に対する気遣いがあってもいい気がする。)

 

その不満が伝わったのか、天使の顔が陰る。

 

「転生待ちの魂が多すぎて......日本担当の女神様も不在で......今日が初仕事なのに......」

 

途中から半泣きだった。聞きたくなかった、そんなブラック事情。

 

天使の顔をよく見ると、隠しているが頬が痩せこけ隈ができている。

 

「分かった分かった。話を続けてくれ。」

 

「ありがとうございますぅぅぅ。」

 

半べそをかく天使に意識を持っていかれ、少し落ち着いた。

 

俺の前世もこんな所を通ったのだろうか。

 


 

「こほん、お見苦しいところをお見せしました。それでは、転生について説明します。

 一つは人間として新たな人生を歩むこと。もう一つは、天国で穏やかに暮らすことです。」

 

天国への道はハナから俺の選択肢にはなかった。

 

どれだけ確率が低くても、俺はもう一度生まれなおして、蘭に会いたい。

 

セルメリアはそんな俺の表情を見て、小さく微笑んだ。

 

「最後にもう一つ。異世界に転生し、勇者として魔王を倒すか。

 イッテイタダケルトタイヘンタスカリマス」

 

「は?」

 

なんじゃそりゃ。

 

突拍子のない選択肢に思わず声が出る。

 

魔王?勇者?

絵本で登場するあれか?

 

「魔王を倒した暁には、その偉業に見合った贈り物。

 たとえばどんな願いでも。たった一つだけ叶えて差し上げましょう。」

 

......何だって?

 

思考が一気にさえてきた。

 

「どんな願いでもって本当か!」

 

「生き返れるのか。元の姿に戻れるのか。」

 

「お、落ち着いてください。どんな願いでも、言葉通りどんな願いでもです。

 しかし、それは一つだけです。賢いあなたなら、もうお分かりですよね?」

 

(生き返るのと、元の姿に戻るのと......どっちも一つの願いに収まるのか? 

 いや、今考えても仕方ねぇ。)

 

「俺は異世界に転生する。魔王を倒して、生き返ってやる。」

 


 

「異世界へ行く人には特典があります。」

 

俺の目の前にカタログが差し出される。

 

パラパラとそれをめくって見るが、

今の身の丈に合わないものばかりで使いこなせそうなものはない。

 

( どれもこれも決め手に欠ける特典しかないな。)

 

俺は思考の渦に沈む。

 

「教科書とか専門書は持っていける?」

 

「あ、天界規定により、こちらの世界の法則をそのまま持ち込むことは出来かねまして。

 異世界で再現できる分には構わないのですが、

 あくまで異世界の法則に従って扱えるものしか持っていけません。」

 

( 天界規定ね......思った以上に融通が利かないらしい。)

 

天界の中間管理職にこれ以上追求しても仕方がないと、俺は疑いに見切りをつける。

 

「俺が持っていくのは、この博士にもらった秘密道具にしてくれ。個数あるけどいけるか?」

 

「それでしたら構いません。でも、良いのですか?」

 

「武器や防具は体格に合わせて大きさを調整できますし、

 こちらの能力でしたら冒険をする上で相当なアドバンテージになりますよ?」

 

天使はカタログをめくりながら特典について詳細を説明してくれる。

 

「いきなり強い力を手に入れても振り回されるのがオチだ。

 使い慣れたこのメカでなんとかするさ。」

 

天使は目を丸くし、俺を見つめた後、微笑みながら告げる。

 

「承りました。それでは転生の準備に入ります。

 その魔法陣の中央から出ないようにお願いします。」

 

俺の足元に青く光り輝く魔法陣が現れる。

 

「それでは勇者様。どうかご武運を。」

 

待ってろ蘭。必ず戻る。

 

視界を光が包む。俺は光の奔流に身を任せた。

 

瞬間、体が地面に沈み込むような感覚と

天使の「えっ?」という声が聞こえたのを最後に俺の意識は再度途切れた。

 


 

チチチッ......チチチッ......

 

鳥のさえずり。周りを見渡せば鬱蒼とした森。

 

大地を掴むように根を張る太い幹が所狭しと並び、その間に極彩色の花が咲き乱れている。

 

ここが日本の山林ではないことは一目でわかった。

 

「どこだよここ......」

 

( 文明の気配がない。人が住んでいる様子もない。これじゃ魔王どころじゃないぞ。)

 

状況を把握するため、とりあえず手近な木に登る。

 

悠然と並び立つ山々、青々と茂った森、広大な川。そして遠くに霞んで見えるのは鳥......?

 

グオオオオオ!

キエエエエエ!

 

森の奥から、空気を震わせる雄たけびが響く。

 

遠くの木々がドミノのように薙ぎ倒され、巨大な何かが移動しているのが見える。

 

( ......認めるしかない。異世界と考えるしか説明がつかない。)

 

俺は着衣を漁り、自分の手持ちを確認する。

 

( 今の手持ちは......、ブレザーにシャツ、半ズボン、いつもの服装だな。

 蝶ネクタイ型変声機、腕時計型麻酔銃、キック力増強シューズ、犯人追跡メガネ、

 伸縮サスペンダー、おっDBバッジもあるのか。

 ......スケボーがない。あの天使抜けてそうだし、疲れていたし、入れ忘れたのかもな )

 

「ハァーーーーー」

 

幸先が悪すぎる。

 

( よし、切り替えよう。スケボーがないのは痛いが、ないものは仕方がない。

 前世の常識が通用しないこの場所で生き残るには、まずは水と食料だ。)

 

木から降りた俺は、手ごろな石を拾い、川があった方向へ歩き出した。

 

その時。

 

不自然に光が遮られ、俺の足元を巨大な影が覆いつくした。

 

上を見上げるより先に、体の底から恐怖を感じ、走り出す。

 

バキバキバキバキッ!

 

直後、背後で木々がへし折れる爆音が轟く。

 

「うおっ!?」

 

次の瞬間、内臓が浮き上がるような感覚と共に、俺の体は空を飛んでいた。

 

耳を吹き飛ばしそうな風切り音とともに、さっきまでいた森がみるみるうちに小さくなっていく。

 

風圧が顔をたたく。見下ろせば地面が遠い。

 

見上げれば、大きな翼、巨体を黒く染める鱗。俺の身長ほどもある牙が並んだ顎と爪。

 

西洋の伝説に登場する『ドラゴン』そのものが、

俺の衣服を器用に牙に引っ掛け、吊り下げたまま飛んでいた。

 

「......理屈に合わねーだろ!」

 


 

......少し前

 

「どうしようどうしようどうしよう。」

 

盛大に送り出したはずの転生者、工藤新一。

 

しかし彼は、魔法陣の異常に飲み込まれてしまった。

 

セルメリアは青ざめた。

 

転生業務に不具合があったことは明らか。

 

上にも申告をしたが、放っておけの一言。

 

初めて任された大仕事だった。

 

転生者に何かあったのではないかと考えるだけで、居ても立っても居られなかった。

 

何より、代理人として、女神様に泥を塗るわけにはいかなかった。

 

魔法陣の周囲をぐるぐると回り、考えた。

 

「た〜だいま〜!ヒック」

 

「お、お酒臭いです......アクア様!おかえりなさいませ。」

 

どれほどの時間が経っただろうか。セルメリアのもとに日本担当の転生神アクアが帰ってきた。

 

「も〜聞いてよメリちゃ〜ん、スサノオったら酷いのよ!

 せっかく宴でアマテラス様と話せるようにしたのに!

 全っっ然、話に行かないのよ〜、これじゃ何のために私が骨を折ったか分かんないじゃない!」

 

「スサノオとの仲を取り持ってアマテラス様に一目置かれれば、昇進コースだと思ったのに〜

 チクショー!」

 

( アクア様、神様がチクショウとか言ってはダメです!)

 

「今日はありがと~うね~、メ~リちゃ~ん。」

 

「あのアクア様、そのことなんですけど...」

 

「転生業務って疲れるでしょ~

 色々言われたと思うけど気にしちゃだめよ、鈍感にやりなさい!」

 

「人間大好きな大天使が代理人って聞いたときはすごーく心配だったけど、

 ちゃんと出来たみたいね偉い偉い。がんばったメリちゃんにお土産!八塩折之酒よ!

 二次会をしましょう、パーっとパーっと!」

 

「ありがとうございます、アクア様。その前に、お伝えしたいことがございます。」

 

「ん?あーもしかして失敗しちゃった?」

 

「はい。こちらの不手際で適切に転生が出来なかった可能性のある方が一人います。

 アクア様にご迷惑をかける結果となってしまい申し訳ありません。」

 

「いーのいーの。初めての転生業務で失敗が1回しかない方が珍しいわよ。

 上に報告してお咎めがなかったのなら私から特に言うことはないわ。

 今後気を付ければいいのよ。」

 

「しかし......」

 

「そんなに気になるなら、下界でその魂がどうなってるか見てみる?」

 

「そんなことが出来るのですか!ぜひお願いします。」

 

「おっけー。私もあなたがそこまで気にする魂がどんなものなのか興味がわいてきたわ。」

 

アクアが腕を軽く振ると、二人の前に映像が映し出される。

 

場面はちょうど工藤新一が森で目覚めたところのようだ。

 

「これはまた、すごいところに転生させたわね。」

 

「ああっ!すみませんすみません!」

 

新一は自分の荷物の確認を始める。

 

「へー、転生特典を持っていかなかったのね。」

 

「はい。自分の持ち物だけでいいとの要望でした。」

 

「ふーん......あら?一つ足りないようね?」

 

「あ!スケートボード忘れてる!」

 

「......あなた、他に忘れてることはないでしょうね。」

 

「あああ!!言語サポートを忘れてました!!!」

 

「......メリちゃん、それは普通にダメ。」

 

アクアは額に手を当て天を仰いだ。

 

セルメリアは青い顔をしてあわあわしだした。

 

そうこうしているうちに映像は進み、二人は新一がドラゴンに連れ去られるシーンを目撃する。

 

「ええええええええ!?」

「は?」

 

あまりの出来事に、セルメリアは絶叫し、アクアは口をあんぐりと開けた。

 

最後に新一が空高くドラゴンに持っていかれるところを映し出して、映像は途切れた。

 

「「......」」

 

二人はしばらくの間沈黙していた。

 

「ま、まぁ、あれね、あの転生者は運が悪かったのよ。」

 

「私の、私のせいなんです。ちゃんと転生させてあげていれば。」

 

セルメリアは膝をついて落ち込む。

 

「魔法陣のバグなんでしょ?

 天使のあなたにはどうしようもなかったんだし、そこまで落ち込むことはないわよ。」

 

アクアは落ち込むセルメリアを慰める。

 

アクアはセルメリアを見る。

 

......向いてない仕事を押し付けてしまった。

 

転生業務は、人の未練を受け止め続ける仕事だった。

 

長く続けられる者は少ない。

 

( ......ほんっと最低職場なのよね、この仕事。)

 

( 業務をほっぽって飲み会に行ったつけがこれか~、やっちまったな~ )

 

セルメリアの背を撫でながら反省する。

 

「新一さんは捕まったばかり、まだ間に合うはずです!」

 

「へ?」

 

セルメリアが立ち上がる。

 

「アクア様!私、行ってきます!」

 

「ちょっと?どこいくの!勝手に下界へ降りちゃダメでしょー!」

 

制止した時にはすでにセルメリアの姿はなかった。

 

「あ~、行っちゃった。」

 

「ま、あとで上手く言い訳しとけばいいか~。」

 

「あー、働きたくなーい。」

 

アクアは寝そべりながら、上への言い訳を考える。

 

『アクアちゃんいる~?』

 

「弁財天さん!?」

 

『この前の話だけど、習合の件、有力候補になったよ。』

 

「え!?」

 

『詳しくはまた今度ね。』

 

「ありがとうございます!」

 

異界の神と習合。神として格が上がる、大出世だった。

 

これまで根回ししてきた成果が実った。

 

「よっしゃーっ!私の時代が来たー!!」

 

「もーこんな職場に未練なんてないわ!

 上に労働環境改善の文句、全部ぶちまけてやる!コンチクショー!

 

この時のアクアは、まだ知らない。

 

数か月後、神として昇るどころか、異世界へ叩き落とされることを。

 

 




初めて小説を書きました。
原作キャラとの整合性って難しいですね。

今回登場したセルメリアは、このすばのアニメ1話で登場した天使に名前と性格を付け足したものです。たぶん原作でも名前がなかったと思うので。

名探偵コナンとこのすばは、どちらもアニメと映画のみの履修です。

探偵秘密道具の登場は、都合上原作時系列を無視しています。
このすばの時系列や設定はアニメだけでは分からないことが多く、pixiv百科やyoutubeショートの断片的な知識で補っています。
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