この異世界に名探偵を!   作:匿名

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旅立ち

「私は、大天使セルメリア。その方は天界の管理下にある転生者です。返していただきます。」

 

『普段何もせずに、天界でふんぞり返ってる奴らが。

 なぜこの不憫な小僧のためにわざわざ降りてくる?』

 

「その件についてお答えする義務はありません。」

 

『我が家に穴を開けてくれた羽虫をこの場で潰してもいいのだがな。』

 

「そのつもりなら応じます。」

 

洞窟の空気が再度張り詰める。

 

「これ以上やり合えば、この洞窟ごと崩れるぞ。

 それで、俺を転生させた天使さんが何の用件だよ?」

 

俺は話を進めるために、二人の間に割り込む。

 

「工藤新一様。この度は大変申し訳ありませんでした!」

 

腰の角度120度。

 

『美しい謝罪だ。おそらく我がこの域に達したのは1000年前......』

 

「こちらの不手際により適切な転生が出来ませんでした。重ねて謝罪いたします!」

 

「マジかよ。」

 

「まず、こちらのスケートボードをお渡しします。」

 

「やっぱり入れ忘れてたのか。」

 

「次は......こちらの世界の言語サポートの処理を......」

 

「まだあるのかよ。」

 

「申し訳ありません。あともう一つあるんです。」

 

天使が本当に申し訳なさそうな顔をする。

 

「んで、言語サポートの処理ってのは?」

 

「転生者には、こちらの世界の言語を理解できるように、脳に処理を施してるんです。」

 

「すごく大事なものじゃねーか......あれ?なんでティコやドラゴンの言葉は分かるんだ?」

 

『竜の言葉は魂へ直接届く。』

 

『どっかのポカする天使と違って万能なのさ。』

 

「くぅぅ!」

 

ドラゴンは鬼の首を取ったように天使をこき下ろす。

 

「そ、それでは。工藤様に処理を施しますね。」

 

天使が俺の頭に手をかざす。一瞬光ったかと思いきや、すぐに戻す。

 

「もう終わりなのか。」

 

「はい、これでこの世界でのコミュニケーションは問題なく行えるようになりました。」

 

「最後に、人の文化圏まで転移を行います。

 こちらの不手際で想定していない場所に転移させてしまいました。」 

 

『ドラゴンの縄張りに転移させるのは流石に阿呆だな。』

 

「くぅぅぅぅ!!」

 

「本当はどんなところに転移するはずだったんだ?」

 

「最初はアクセルという街へ送る予定でした。

 転生者の人たちには、まずその街でこの世界に慣れてもらうことから始めてもらうんです。」

 

「じゃあ早速転移を頼む。魔王討伐にだいぶ遅れちまってるからな。」

 

「......もう?」

 

「まだ、いっぱいお話してないのに。」

 

(こいつとは、もう会えないかもな。)

 

「魔王を早く倒さなきゃならないからな。ごめんなティコ。」

 

ティコは俯き落ち込む。

 

「では工藤様、魔法陣の上に......」

 

『待ってもらおうか。』

 

ドラゴンが待ったをかける。

 

『その災難な小僧は娘が捕まえたエモノだ。』

 

『それにだ。我が巣を破壊しおって。これはもう使い物にならんぞ。』

 

『お前らの事情など知らん。

 これだけのことをしておいて自分の要求だけ突き付けるのは虫が良すぎるのではないか?』

 

「この度はご迷惑をおかけしました。

 洞窟は直します。食料が必要というならこちらで用意させていただきます。

 ですが、工藤新一様はこちらで引き取らせていただきます。」

 

『保証としてはそれでいいだろう。だが、こちらにもメンツというものがあるのは分かるな?』

 

「......何が望みですか。」

 

『ティコを小僧と一緒に連れていけ。』

 

「は?」

 

「え?」

 

俺とティコは意表を突かれる。

 

『骨のある小僧。お前は我の喉を砕き、我を止めた。』

 

『ティコも、お前を守った。』

 

『......天使よ、貴様もだ。』

 

ドラゴンの赤い瞳がセルメリアへ向く。

 

『脆弱な分際で、退く気のなかったその度胸だけは認めよう。』

 

「光栄です。」

 

『これも縁だ。連れていけ。』

 

「おかあさん、いいの?」

 

『巣立ちの条件は満たした。ティコも外の世界を見るべきだろう。』

 

「おかあさんは?おかあさんもいっしょ?」

 

『我は着いていけない。お前ひとりで行くんだ。』

 

「彼女はドラゴンでしょう。工藤様と行動を共にできるのですか。」

 

『確かにドラゴンだが、ティコは妻の性質に引っ張られて人間に近い気質がある。』

 

(こいつ男?え、お母さんって言ってたよな?)

 

『そこの混乱してる小僧に説明してやると、我が一族に性別なんぞない。

 好きな時に、好きなものを食らう。』

 

ドラゴンの瞳には食欲以外の熱があった。

 

(ようは節操がないって事ね。)

 

『話を戻すぞ。つまり、ティコにはドラゴンの才がない。

 力と図体はあっても、狩る者の目をしておらん。』

 

今のティコの表情を表すなら、まさに『Σ(゚д゚lll)』こんな感じだろう。

 

『人間としての生き方を学ぶことが必要だろう。人間社会で就職出来たのなら御の字だ。』

 

「だから、俺と一緒に旅をさせろってことか。」

 

『そういうことだ。』

 

「私はドラゴンだよ、おかあさん!おかあさんみたいな立派なドラゴンになるもん。」

 

『そうだな、ティコが立派なドラゴンになれたら。またここに戻って来な。』

 

ティコは母親の首に抱きつく。

 

(この世界での俺の立ち位置は分かったし、今後の旅にはティコの力が必要になる。)

 

「俺はいいぜ。寧ろ来て欲しいくらいだ。」

 

「一緒に行こう。ティコ。」

 

「シンイチ......」

 

「工藤様が構わないのでしたら、問題はありません。」

 

俺はティコの手を引き、魔法陣の上に乗る。

 

「おかあさん!」

 

『ん?』

 

「ぜったい......ぜったいに帰ってくるからね!」

 

『ああ、期待してるよ』

 

(......俺も、絶対に元の世界に帰る。)

 

セルメリアの開けた穴からは夕日が差し込み、洞窟と俺たちを淡い赤色に照らし出す。

 

「それでは、転移を行います。」

 

魔法陣が白く輝き始める。穴から吹き込む風も相まって、強い力の本流を感じる。俺たちは繋いだ手を再度握る。

 

そして、

 

「二人の道筋に溢れんばかりの幸運と苦難が在らんことうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

絶叫と光の鱗粉を残して大天使セルメリアは消えていった。

 

「「は?」」

 


 

場面変わって天界

 

セルメリアはアクアの元にいた。

 

「アクア様!何で私を天界に引き戻したんですか、あと少しで終わる所だったのに。」

 

「当たり前でしょ!天使が許可なく下界に降りちゃダメでしょ!

 これでも上に言い訳して最大限引き延ばした方なんだからね。」

 

「そうだったのですか。

 アクア様には今回の件で、大変なご迷惑を掛けてしまいました。申し訳ありません。」

 

「うむ、許す。それで?工藤新一とやらの対処はどうなったの。」

 

「転生特典の配達と、言語サポートの提供は行えたのですが......

 転移は行う前に天界に送還されてしまいまして......」

 

「最後のはもうしょうがないわね。

 転移を発動する魔法陣を残して来たのなら、後はあのドラゴンがなんとかするでしょ。

 結果オーライよ。」

 

「あの、アクア様。あのドラゴンは一体?」

 

「彼女、いや彼......うーん、どっちでも良いや。

 あのドラゴンはね、1000年ぐらい前に天界に喧嘩を売った事があるのよ。

 それはもー強くてね。

 天界がなんとか勝って、罰としてあの洞窟のある山一帯にドラゴンを封印したの。

 まさか子供がいるとはね〜。」

 

「そ、そんなに強いドラゴンだったんですか。え、私下手したら消されてました?」

 

「うん。下手しなくても消されてた可能性が高いでしょうね。」

 

セルメリアの顔は青ざめ、膝を震わせていた。

 

「まー、今回はその無知と無鉄砲に救われたわね。」

 

「私、かなりヤバいミスをしてたって事ですよね......」

 

「貴方のせいではないけど。特典忘れとサポートミスが霞むぐらいにはヤバいわね。」

 

「まぁ、でも無事でよかったわよ。

 そんなことよりね!私遂に出世するのよ、凄いでしょ!いやー、ここまで......」

 

アクアの自慢話は耳に入ってこず、セルメリアは今更恐怖を感じ、腰を抜かした。

 


 

場面は戻って異世界

 

『天界に送還されたんだろうよ。

 上はいざって時に役に立たないくせに、規則にだけは忠実だからね。』

 

ドラゴンは洞窟の天井を見上げながら、そう呟いた。

 

「えーっと。これからどうすりゃ、いいんだ?」

 

『我が転移させよう。ただ、この転移にはその場所を思い浮かべる必要がある。

 我はここ1000年、ここら一帯から出た事がない。アクセルなんて街は知らない。』

 

『だから、一番印象に残ってて、現存している可能性の高い人里に送る。』

 

「その場所の名前は?」

 

『名前はまだ付いてなかった。ただ、そこに住んでいる奴らは変な名前だったのと、

 妙に魔法の扱いに長けた強い連中だったのは覚えている。

 あれらが1000年そこらで滅ぶとは思えん。』

 

(1000年も経ったら景色も変わってそうだけどな。だが、今はドラゴンを信じるしかない。)

 

『転移を始めるぞ。』

 

魔法陣が再び白く輝き出す。

 

「そういや、ティコの母さん。名前、何て言うんだ?」

 

『.......エネだ。』

 

「短いな。」

 

『普通、我らの本名は特別親しい奴にしか教えないんだがね。』

 

「シンイチは私のだから、いいの!」

 

「私の、って何だよ。ティコと俺は仲間で友達だ。誰かのものじゃねーよ。」

 

「トモダチ!シンイチとトモダチ!」

 

ティコは大層嬉しそうに、繋いだ手を振る。

 

それを見つめるエネの瞳は澄んだ緋色に輝いていた。

 

『クドウ.......ティコに負けるなよ。』

 

「ああ!」

 

「おかあさん!いって来ます!」

 

『いってらっしゃい。』

 

俺たちは目を閉じて、光の本流に身を任せた。

 




つたない文章ですがここまで読んで下さり、ありがとうございます。

今回、初めて小説を書きました。
上手い具合に話を完結させようとすると2000字にも満たなかったりで、
一話5000文字以上書く人ってホント凄いなって。

タイトルに名探偵なんて書きましたけど、探偵要素がないですよね...
コナンが異世界で活躍するとしたら探偵というよりも参謀?でもそれだとカズマと被るしな~

続きはいつか書きたいです。
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