Beyond the Northern Sea   作:魂魄妖霧

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いつもお読みいただきありがとうございます。

第二空母打撃群は、ヴェール海の深部へと進み続けます。謎の艦影に続き、新たな異変が艦隊を待ち受けていました。

それでは、第八話をお楽しみください。


第八話 消えた哨戒機

霧の中を、第二空母打撃群は速度を維持したまま航行していた。

 

艦橋では、各部署からの報告が絶え間なく続いている。

 

「艦長。」

 

通信士がアンナへ向き直る。

 

「哨戒中の早期警戒機より定時報告です。」

 

アンナは静かに頷いた。

 

「お願い。」

 

「『飛行高度八千。視界不良。艦隊との通信正常。引き続き警戒任務を継続します』とのことです。」

 

「ありがとう。」

 

「引き続き、安全第一で任務を続けてもらって。」

 

「了解。」

 

通信が終わると、艦橋には再び静けさが戻る。

 

しかし、その静寂は長くは続かなかった。

 

「艦長!」

 

通信士が慌てた様子で立ち上がる。

 

「早期警戒機との通信が途絶しました!」

 

艦橋の空気が一変する。

 

「通信機器の異常かしら?」

 

アンナは冷静に尋ねた。

 

「確認中です。」

 

「他の航空機との通信は正常です。」

 

「途絶したのは一機だけです!」

 

副長が戦術画面を見つめる。

 

「識別信号は?」

 

「まだ表示されています。」

 

「ですが……。」

 

「位置情報が更新されません。」

 

航空隊長がすぐに口を開く。

 

「艦長、救難機を発進させますか?」

 

アンナは数秒考え、静かに首を横へ振った。

 

「まだ待ちましょう。」

 

「状況が分からないまま航空機を増やすのは危険だと思うわ。」

 

「まずは周囲を確認して。」

 

「了解。」

 

その時だった。

 

「艦長!」

 

レーダー員が声を張る。

 

「途絶した早期警戒機の識別信号が動き始めました!」

 

「どちらへ?」

 

「こちらへ接近しています!」

 

艦橋に緊張が走る。

 

「通信は?」

 

「ありません!」

 

「応答もありません!」

 

戦術画面では、青い識別信号が真っ直ぐ「ほうしょう」へ向かっていた。

 

やがて。

 

「目視できます!」

 

見張り員が叫ぶ。

 

霧の向こうから、一機の早期警戒機がゆっくりと姿を現した。

 

「機体番号一致!」

 

「間違いありません!」

 

誰もが安堵した、その瞬間。

 

航空隊長が顔色を変えた。

 

「……おかしい。」

 

「どうしたの?」

 

アンナが尋ねる。

 

「飛び方がおかしいんです。」

 

通常なら細かな姿勢制御を繰り返すはずの機体が、まるで糸で吊られたように真っ直ぐ飛んでいる。

 

風の影響も受けていない。

 

生き物のような動きが、まるで感じられなかった。

 

「通信を。」

 

アンナが指示する。

 

「こちら空母『ほうしょう』。」

 

「応答してください。」

 

返事はない。

 

機体は無言のまま接近を続ける。

 

そして突然。

 

機体全体が白い霧に包まれた。

 

「見失いました!」

 

次の瞬間。

 

レーダー員が息をのむ。

 

「識別信号……消失!」

 

完全に消えた。

 

目の前にいたはずの早期警戒機は、跡形もなく姿を消していた。

 

艦橋には誰一人として言葉を発する者はいない。

 

アンナは前方を見つめたまま、小さくつぶやく。

 

「どうか……みんな無事でいて。」

 

その願いは、白い霧の中へ静かに消えていった。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴェール海はついに第二空母打撃群の航空戦力にも影響を及ぼし始めました。失われた哨戒機の行方は、今後の物語で少しずつ明らかになっていきます。

次回の更新はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。

それでは、また次のお話でお会いしましょう。
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