Beyond the Northern Sea 作:魂魄妖霧
第1章も今回で一区切りとなります。ヴェール海の謎はさらに深まり、第二空母打撃群は新たな決断を迫られます。
それでは、第十話をお楽しみください。
ヴェール海へ進入してから二日目。
第二空母打撃群は依然として濃い霧の中を航行していた。
周囲の景色は変わらない。
白い霧。
静かな海。
そして、説明のつかない異常現象。
しかし、この日は今までとは違っていた。
「艦長。」
通信士が報告する。
「海軍総司令部との通信が回復しました。」
アンナは静かに振り返る。
「本当?」
「はい。ただし、通信状態は不安定です。」
「つないで。」
「了解。」
艦橋のスピーカーから、ノイズ混じりの音声が流れる。
«「……こちら……海軍総司令部……。」
「『ほうしょう』、応答せよ……。」
「現在の状況を報告されたし……。」»
アンナはマイクを手に取る。
「こちら第二空母打撃群旗艦『ほうしょう』艦長、アンナ・アンダーソンです。」
「艦隊に損害はありません。」
「しかし、原因不明の通信障害、不明電波、未確認反応、所属不明の艦影を複数確認しています。」
数秒後、返答が届く。
«「……報告を受領……。」
「本作戦を継続せよ……。」
「観測基地の捜索を最優先とする……。」»
その直後、通信は再び途絶えた。
「通信断。」
通信士が静かに告げる。
アンナはゆっくり頷く。
「ありがとう。」
「本部も状況を把握できたわ。」
副長が戦術図を見つめる。
「艦長。」
「第一観測基地まで、およそ五十海里です。」
アンナは前方を見据える。
「予定どおり進みましょう。」
「みんな、安全第一でお願い。」
「了解!」
命令は第二空母打撃群全艦へ伝達された。
その時だった。
「艦長!」
ソナー員が大きな声を上げる。
「前方海底に人工構造物らしき反応!」
艦橋が一斉にざわめく。
「人工構造物?」
「はい!」
「形状は不明ですが、自然地形とは一致しません!」
アンナは戦術画面へ歩み寄る。
海底地形図の中に、一つの巨大な反応が表示されている。
まるで建造物のような、規則正しい輪郭。
副長が驚きを隠せない。
「こんな海域に……。」
アンナは静かに息をつく。
「観測基地のものではないわね。」
「はい。」
「位置も一致しません。」
誰も知らない海底構造物。
そして、数々の異常現象。
ヴェール海は、まだほんの入り口に過ぎなかった。
アンナは静かに命じる。
「全艦、警戒を維持。」
「この海には、私たちの知らない何かがある。」
「慎重に進みましょう。」
「了解!」
第二空母打撃群は速度を落としながら、未知の海底反応へと針路を向ける。
白い霧のさらに奥。
誰も足を踏み入れたことのない海で、人類は初めて"未知"の足跡を見つけた。
それは、人類とヴェール海を巡る長い戦いの、本当の始まりだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
第1章「ヴェール海への航路」はここで終了です。
次章では、海底で発見された謎の人工構造物と、消息を絶った第一観測基地の調査が本格的に始まります。
次回の更新はいつになるか分かりませんが、これからも応援していただけると嬉しいです。
それでは、第2章でまたお会いしましょう。