Beyond the Northern Sea 作:魂魄妖霧
第二空母打撃群は、ヴェール海で新たな手掛かりを求めて航海を続けます。ここから物語は大きく動き始めます。
それでは、第一話をお楽しみください。
第一話 救難信号
ヴェール海へ進入して三日目。
第二空母打撃群は、依然として濃い霧の中を慎重に航行していた。
航空母艦「ほうしょう」の飛行甲板では、艦載機が警戒待機を続け、護衛艦艇も周囲の警戒を怠らない。
艦橋では、アンナ・アンダーソンが戦術画面を見つめていた。
表示されているのは、第二空母打撃群の現在位置と、第一観測基地の最後の通信地点。
「艦長。」
通信士が静かに報告する。
「本部との通信状況は依然として不安定です。」
アンナは小さく頷いた。
「ありがとう。」
「通信がつながったら、すぐ知らせてね。」
「了解しました。」
その時だった。
『……ザー……』
艦橋のスピーカーから、激しい雑音が流れ始める。
通信士は素早く受信装置を操作した。
「艦長!」
「不明な電波を受信しました!」
艦橋の空気が張り詰める。
「内容は分かるかしら?」
「解析します。」
雑音が続く。
『……ザー……』
『……こちら……』
『……第一……観測……基地……』
通信士が目を見開いた。
「第一観測基地です!」
誰もが息をのむ。
「続きを。」
アンナの声は落ち着いていた。
通信士は音量を上げる。
『……ザー……』
『……救援……求む……』
『……繰り返す……』
『……救援……求む……』
『……ザー……』
そこで通信は途切れた。
艦橋は静まり返る。
副長がゆっくり口を開く。
「自動送信でしょうか。」
通信士が頷く。
「可能性があります。」
「ただ、送信源は現在も存在しています。」
アンナは戦術画面へ視線を向けた。
「位置は?」
「現在地から北北東へ四十八海里。」
「第一観測基地の位置と、ほぼ一致します。」
艦橋に緊張が走る。
消息を絶ったはずの基地から届いた救難信号。
それは偶然では済まされない出来事だった。
アンナは静かに命じる。
「第二空母打撃群各艦へ。」
「針路を第一観測基地へ変更します。」
「警戒を維持したまま前進してください。」
「了解!」
命令は直ちに各艦へ送られた。
戦術画面の艦隊針路がゆっくりと変わる。
その瞬間だった。
「艦長!」
レーダー員が声を上げる。
「艦隊後方に未確認反応!」
「数は?」
「一つです!」
「距離十五海里!」
画面には赤い光点が一つだけ映っていた。
しかし、その反応は艦隊へ近付こうとはしない。
一定の距離を保ったまま、まるで見守るようについて来ていた。
副長が低くつぶやく。
「追跡……されているのか。」
アンナは静かに首を振る。
「まだ分からないわ。」
「刺激しないようにしましょう。」
「みんな、落ち着いて任務を続けてください。」
「了解!」
第二空母打撃群は隊形を崩すことなく、救難信号が発せられた第一観測基地へ向けて進み始めた。
その霧の奥では、誰も知らない運命が静かに待ち受けていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ついに第一観測基地から救難信号が届きました。この信号は希望なのか、それとも新たな罠なのか。第二章はここから大きく動き始めます。
次回の更新はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。
また次のお話でお会いしましょう。