Beyond the Northern Sea 作:魂魄妖霧
第二空母打撃群は、救難信号の発信源である第一観測基地へと接近します。しかし、そこに待っていたのは想像を超える静けさでした。
それでは、第二話をお楽しみください。
救難信号を受信してから、およそ二時間。
第二空母打撃群は速度を落とし、第一観測基地が存在する海域へ到達した。
濃い霧は依然として海を覆い、視界は一海里にも満たない。
「艦長。」
航海長が静かに報告する。
「目的海域へ到達しました。」
アンナはゆっくりと頷く。
「ありがとう。」
「全艦、このまま警戒を続けてね。」
「了解しました。」
その時、見張り員が双眼鏡を握りしめたまま叫ぶ。
「前方に構造物を確認!」
艦橋の全員が前方へ視線を向ける。
白い霧の奥から、巨大な影が少しずつ姿を現していく。
鋼鉄製の桟橋。
海上へ伸びる長い連絡橋。
そして、その奥には巨大な観測施設が静かに建っていた。
「第一観測基地……。」
副長が小さくつぶやく。
施設の外観に、大きな損傷は見当たらない。
煙も上がっていない。
爆発の跡もない。
それなのに、基地全体が不気味なほど静まり返っていた。
「通信をお願い。」
アンナの指示で通信士が送信を開始する。
「こちら北洋海軍第二空母打撃群旗艦『ほうしょう』。」
「第一観測基地、応答してください。」
返答はない。
もう一度呼びかける。
「こちら『ほうしょう』。」
「応答をお願いします。」
返ってくるのは、耳障りなノイズだけだった。
『……ザー……』
通信士は首を横に振る。
「応答ありません。」
「救難信号だけが送信されています。」
アンナは基地を見つめた。
窓には明かりがない。
桟橋にも人影はない。
まるで、時間だけが止まってしまったようだった。
その時だった。
「艦長!」
電子戦担当士官が声を上げる。
「基地から微弱な電力供給を確認!」
「非常用電源が生きています!」
副長が驚いた表情を見せる。
「それなら、完全に放棄されたわけではない……。」
アンナは静かに考え込む。
「誰かがいる可能性もあるわね。」
「ええ。」
「ですが、警戒は必要です。」
その直後、戦術画面に新たな表示が現れた。
「艦長!」
「基地周辺海域に複数の未確認反応!」
「数は六!」
「動きません!」
赤い光点は基地を囲むように配置されていた。
しかし、どの反応もその場から動こうとはしない。
まるで基地を守るように。
あるいは、近づく者を監視するように。
艦橋の空気が一気に張り詰める。
アンナは穏やかな口調のまま命じた。
「各艦へ。」
「不用意な接近は控えてください。」
「兵装はいつでも使用できるよう準備を。」
「ただし、こちらから攻撃はしません。」
「了解!」
命令は直ちに各艦へ伝えられた。
第二空母打撃群は基地から一定の距離を保ちながら停止する。
アンナは静かに基地を見つめ、小さくつぶやいた。
「まだ……間に合うといいのだけれど。」
霧の中に佇む第一観測基地は、その願いに応えることなく、沈黙を守り続けていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ついに第一観測基地へ到着しました。しかし、そこにあったのは人の気配を失った静かな施設でした。
次回はいよいよ調査隊が基地へ向かいます。更新はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。
それでは、また次のお話でお会いしましょう。