Beyond the Northern Sea 作:魂魄妖霧
調査隊は、ついに第一観測基地の内部へ足を踏み入れます。静まり返った施設には、どのような真実が残されているのでしょうか。
それでは、第四話をお楽しみください。
重厚な金属製の扉がゆっくりと開く。
『こちら調査隊。これより第一観測基地内部へ進入します。』
隊長の報告が「ほうしょう」の艦橋へ届いた。
アンナは大型モニターに映し出される映像を静かに見つめる。
「ありがとう。」
「みなさん、安全を最優先に行動してください。」
『了解しました。』
調査隊は慎重に施設の通路を進み始めた。
照明は非常用電源によって薄暗く点灯している。
壁には非常灯が赤く点滅し、静かな電子音だけが通路に響いていた。
『現在、一階中央通路を進行中。』
『人影は確認できません。』
通路の両側には事務室や倉庫が並び、扉の多くは半開きになっていた。
荒らされた形跡はない。
机の上には書類が整然と置かれたまま。
椅子も倒れていない。
まるで職員たちが、ほんの数分だけ席を外したような光景だった。
『食堂を確認。』
『食器がそのまま残されています。』
『食べかけと思われる食事もあります。』
副長が小さく息をのむ。
「突然、全員が姿を消した……。」
アンナは静かに頷いた。
「そう考えるのが自然ね。」
その時、医療班から報告が入る。
『医務室を確認しました。』
『負傷者はいません。』
『血痕なども確認できません。』
「ありがとう。」
「引き続き調査をお願いします。」
『了解。』
調査隊はさらに施設の奥へ進む。
やがて司令室へ到着した。
大型モニターは消えたままだが、非常用電源によって操作卓の一部は動作している。
『司令室を確認。』
『基地司令官の机を発見しました。』
『端末は起動可能です。』
通信担当の隊員が端末を操作する。
画面には認証画面が表示され、その後、基地内の記録が次々と映し出された。
『艦長。』
『基地の記録は残っています。』
『回収を開始します。』
アンナは穏やかな声で答える。
「無理はしないでください。」
「回収できるものだけで大丈夫です。」
『了解しました。』
その時だった。
基地内の照明が一瞬だけ消える。
『停電!』
調査隊員の緊張した声が無線に響く。
数秒後、非常灯が再び点灯した。
『電源復旧。』
『こちらは無事です。』
しかし、通信の向こうから微かな物音が聞こえた。
カラン……。
何か金属が転がるような音。
隊長が振り返る。
『今の音は……。』
全員がライトを向ける。
だが、そこには誰もいない。
『異常なし。』
『気のせい……でしょうか。』
アンナは少し考え、静かに命じた。
「気のせいとは決めつけないで。」
「小さなことでも、すべて報告してください。」
『了解しました。』
その直後、技術班が新たな発見を報告する。
『艦長。』
『司令室の奥に、地下へ続く隔壁を発見しました。』
『通常区画ではありません。』
『厳重な電子ロックが掛けられています。』
艦橋の空気が張り詰める。
アンナはモニターに映る重厚な隔壁を見つめた。
「地下区画……。」
第一観測基地には、まだ誰にも知られていない秘密が眠っている。
その扉の向こうには、ヴェール海の真実へつながる手掛かりが隠されているのかもしれなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
調査隊は無人となった第一観測基地で、地下へ続く謎の隔壁を発見しました。次回は、その封鎖された区画へ迫っていきます。
更新はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。
それでは、また次のお話でお会いしましょう。