Beyond the Northern Sea 作:魂魄妖霧
調査隊は撤収を開始しますが、基地の奥にはまだ誰も知らない秘密が残されていました。
それでは、第六話をお楽しみください。
司令室を後にした調査隊は、記録媒体を確保したまま出口へ向かっていた。
しかし、その時だった。
『隊長。』
技術班の隊員が足を止める。
『司令室の奥で発見した地下区画の電子ロックですが、一部が解除されています。』
隊長が振り返る。
『解除された?』
『はい。こちらでは何も操作していません。』
その報告は、すぐに「ほうしょう」の艦橋へ伝えられた。
アンナは静かにモニターを見つめる。
「みなさんはどう思いますか?」
副長が慎重に答える。
「誰かが基地内にいる可能性があります。」
電子戦担当士官も頷いた。
「あるいは、自動制御による解除かもしれません。」
アンナは数秒考えた後、穏やかな声で命じる。
「無理はしないでください。」
「危険だと判断したら、すぐに撤収してください。」
「ただ……安全を確認できるなら、地下区画を調査しましょう。」
『了解しました。』
調査隊は再び司令室へ戻る。
隔壁の前に立つと、重厚な金属製の扉が数センチだけ開いていた。
暗闇の向こうから、冷たい空気が流れ出している。
『慎重に進む。』
隊長の合図で、海兵隊員がゆっくりと扉を押し開けた。
地下へ続く階段が現れる。
非常灯だけが薄暗く点灯し、階段の先は闇に包まれていた。
隊員たちはライトを照らしながら、一段ずつ慎重に降りていく。
地下区画へ到着すると、そこには広い研究施設が広がっていた。
円筒形の装置。
大型解析装置。
壁一面に並ぶ記録端末。
どれも電源は落ちているが、整然と並べられている。
『研究施設のようです。』
技術班が静かにつぶやく。
その時、一台の端末が突然起動した。
「ピッ――」
誰も触れていない。
それなのに画面が青白く光り始める。
『隊長!』
画面には一行だけ文字が表示されていた。
『これ以上、奥へ進むな。』
地下区画は一瞬にして静まり返る。
『誰かが遠隔操作しているのか?』
隊員が周囲を警戒する。
しかし、人影はない。
その直後、基地全体に低い振動が響いた。
ゴォン……。
ゴォン……。
振動は先ほどよりも大きい。
天井から細かな埃が舞い落ちる。
『艦長。』
通信士の声が艦橋に響く。
『調査隊との通信が不安定になっています。』
アンナはすぐにマイクを手に取った。
「こちら『ほうしょう』。」
「みなさん、聞こえますか?」
数秒の沈黙。
やがて返事が返ってきた。
『こちら調査隊。』
『通信は可能です。』
『ですが、基地内部で強い電波障害が発生しています。』
アンナは静かに頷く。
「分かりました。」
「これ以上の調査は危険です。」
「記録できるものだけを回収して、撤収してください。」
『了解。』
隊員たちは端末の記録装置を取り外し、周囲の資料を素早く回収する。
その時だった。
地下通路の奥から、ゆっくりと足音が響く。
コツ……。
コツ……。
コツ……。
全員が一斉に銃口とライトを向ける。
しかし、その先には誰もいない。
それでも足音だけは、一歩ずつ確実に近づいてくる。
隊長は小さく息を吸い、無線へ向かって報告した。
『こちら調査隊。』
『地下区画で正体不明の現象を確認。』
『これより直ちに撤収します。』
調査隊は隊形を崩すことなく地下区画を後にする。
暗闇の奥では、青白い光が静かに揺らめいていた。
まるで彼らを見送るように。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ついに地下区画への調査が始まりましたが、その奥にはさらに大きな謎が眠っているようです。次回は調査隊の撤収と、新たな異変が描かれます。
更新はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。
それでは、また次のお話でお会いしましょう。