Beyond the Northern Sea 作:魂魄妖霧
第三章が始まります。
ヴェール海から帰還した第二空母打撃群。しかし、第一観測基地から持ち帰った記録は、北洋連邦共和国全体を揺るがす事実を秘めていました。
それでは、第一話をお楽しみください。
第一話 本部帰投
ヴェール海を離れた第二空母打撃群は、数日にわたる航海を経て北洋連邦共和国首都・ノーザンクトハーバーへ帰投した。
港には海軍司令部の関係者をはじめ、多くの支援要員が待機している。
艦隊がゆっくりと入港すると、岸壁では係留作業が始まり、乗組員たちは長い任務を終えた安堵の表情を浮かべていた。
航空母艦「ほうしょう」の飛行甲板へ降り立ったアンナ・アンダーソン大佐は、岸壁を見渡した。
見慣れた軍港。
整然と並ぶ艦艇。
穏やかな港の風景。
その光景に、ようやく帰ってきたのだと実感する。
副長が近づき、敬礼した。
「艦長、回収した記録媒体の搬出準備が整いました。」
アンナは穏やかに頷く。
「ありがとう。」
「慎重に運んでください。」
「はい。」
記録媒体は厳重な警備の下、海軍司令部情報解析センターへ搬送されていく。
地下区画で発見された資料や基地司令官の映像記録も、その中に含まれていた。
その頃、海軍司令部では緊急会議の準備が進められていた。
ヴェール海で確認された異常現象。
第一観測基地の消失。
海底人工構造物の映像。
そして、最後に残された警告。
それらは北洋連邦共和国の安全保障に関わる重大事項として扱われることになった。
「艦長。」
通信士が足早に駆け寄る。
「海軍総司令部より連絡です。」
「アンナ・アンダーソン大佐に対し、緊急会議への出席命令が発令されました。」
アンナは表情を引き締める。
「分かりました。」
「すぐに向かいます。」
会議室へ入ると、そこには海軍幹部だけでなく、政府関係者や科学技術研究機構の研究員たちの姿もあった。
室内の大型スクリーンには、ヴェール海の海図と海底人工構造物の映像が映し出されている。
議長を務める海軍総司令長官が静かに口を開いた。
「第二空母打撃群の諸君、任務ご苦労だった。」
「今回諸君が持ち帰った情報は、わが国の歴史を変える可能性を持っている。」
会議室は静まり返る。
長官は続けた。
「解析の結果、第一観測基地が発見した海底人工構造物は、既知の文明とは一致しない構造を持つことが判明した。」
研究員が資料を切り替える。
巨大な構造物の断面図。
未知の金属組成。
通常では説明できないエネルギー反応。
どれも現在の科学では解明できないものばかりだった。
「さらに。」
研究員が資料をめくる。
「基地で記録された青白い発光現象と、第二空母打撃群が観測した現象は完全に一致しています。」
アンナは静かに資料を見つめる。
あの海で見た光。
基地の屋上に立っていた人影。
そして、謎の警告。
すべてが一つの出来事へつながろうとしていた。
その時、会議室の扉が開いた。
一人の情報将校が慌ただしく入室する。
「失礼します!」
「緊急報告です!」
室内の全員が将校へ視線を向ける。
「ヴェール海周辺で、再び所属不明の通信が確認されました。」
「内容は……。」
将校は一瞬ためらい、小さく息を吸う。
「『門は再び開かれる』。」
その一文だけでした。」
会議室には、重苦しい沈黙が流れた。
誰が送ったのか。
何を意味しているのか。
答えを知る者は、まだ誰もいない。
しかしアンナは確信していた。
ヴェール海での出来事は終わっていない。
本当の試練は、これから始まるのだと。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
第三章では、ヴェール海で得られた情報が国家規模の問題へと発展していきます。新たな人物や組織も登場し、物語はさらに大きく動き始めます。
次回の更新はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。
それでは、第二話でまたお会いしましょう。