Beyond the Northern Sea 作:魂魄妖霧
「門は再び開かれる」という謎の通信は、海軍総司令部に大きな衝撃を与えました。その意味を探るため、アンナたちは再び動き始めます。
それでは、第二話をお楽しみください。
海軍総司令部の大会議室では、緊急会議が続いていた。
大型スクリーンにはヴェール海の海図が映し出され、その周囲には回収された観測データや解析資料が並べられている。
議長席に立つ海軍総司令長官は、ゆっくりと出席者を見回した。
「諸君。」
「今回の任務により、ヴェール海は単なる危険海域ではないことが判明した。」
「未知の人工構造物、説明不能な電磁現象、そして所属不明の通信。」
「これらは一つの現象として考えるべきだ。」
会議室は静まり返る。
科学技術研究機構の主任研究員が立ち上がった。
「解析結果をご報告します。」
スクリーンには海底人工構造物の三次元解析図が表示される。
「構造物の材質は現在の技術では再現できません。」
「また、周期的に微弱なエネルギー反応を発しています。」
別の研究員が続ける。
「この反応は約十二時間ごとに変化し、そのたびにヴェール海周辺で通信障害が発生していることが確認されました。」
副長が資料を見ながら小さくつぶやく。
「つまり……海底構造物そのものが現象の中心なのですね。」
「現時点では、その可能性が最も高いと考えられます。」
研究員が答えた。
その時、情報部長が一枚の資料を机へ置く。
「昨日受信した所属不明通信について、新たな解析結果が出ました。」
会議室の空気が引き締まる。
「送信地点は特定できませんでした。」
「しかし、通信に含まれていた電波の特徴は、第一観測基地で記録されたものと一致しています。」
アンナは静かに資料へ目を向けた。
「同じ発信源……。」
「はい。」
「少なくとも偶然とは考えにくいでしょう。」
海軍総司令長官は腕を組み、しばらく考え込む。
やがて静かに口を開いた。
「ヴェール海への再調査は必要だ。」
「だが、第二空母打撃群だけでは危険が大きい。」
その言葉に、室内の視線が長官へ集まる。
「海軍は新たに『ヴェール海特別調査任務群』を編成する。」
「航空戦力、水上戦力、潜水艦隊、海洋観測部隊、科学調査隊を統合した特別部隊だ。」
室内に小さなどよめきが広がった。
長官はアンナへ視線を向ける。
「アンナ・アンダーソン大佐。」
「はい。」
アンナは立ち上がる。
「貴官には、その任務群の旗艦指揮官を命じる。」
会議室が静まり返る。
アンナは一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐに姿勢を正した。
「謹んで拝命いたします。」
長官は穏やかに頷く。
「ただし、出航はまだ先だ。」
「まずは十分な準備を整え、各分野の専門家を集める。」
「ヴェール海を調べるには、軍事力だけでは足りない。」
「理解しました。」
会議が終了し、出席者が席を立ち始める。
アンナも資料をまとめながら廊下へ出た。
窓の外には、夕日に照らされたノーザンクトハーバー軍港が広がっている。
静かな港だった。
だが、その平穏は長く続かない。
アンナは空を見上げ、小さくつぶやく。
「ヴェール海……。」
「今度は、もっと多くの仲間と向かいます。」
その決意を胸に、アンナはゆっくりと歩き出した。
新たな任務は、すでに始まっていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
新たに編成される「ヴェール海特別調査任務群」。次回からは新しい仲間や艦艇も登場し、物語の舞台はさらに大きく広がっていきます。
次回の更新はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。
それでは、第三話でまたお会いしましょう。