Beyond the Northern Sea 作:魂魄妖霧
ヴェール海特別調査任務群の編成が本格的に始まりました。新たな任務に向け、各地から精鋭たちが集結します。
それでは、第三話をお楽しみください。
海軍総司令部から正式な命令が発令され、北洋連邦共和国全軍に向けて一通の極秘通達が送られた。
『ヴェール海特別調査任務群を編成する。各部隊は指定された人員および艦艇を速やかにノーザンクトハーバーへ集結させよ。』
その通達を受け、各基地では慌ただしく準備が進められていた。
港には護衛艦や補給艦、潜水艦が次々と入港し、飛行場では輸送機が研究機材や観測装置を運び込んでいる。
「ほうしょう」の飛行甲板でも、整備員たちが艦載機の点検を進めていた。
アンナは飛行甲板を歩きながら、その様子を見守る。
副長が隣へ並んだ。
「艦長。」
「参加部隊の到着予定です。」
副長は端末を差し出す。
「護衛部隊、潜水艦隊、補給部隊は明日までに集結予定。」
「科学技術研究機構の調査班も、本日到着します。」
アンナは資料を確認し、小さく頷いた。
「ありがとう。」
「思っていたより早いですね。」
「それだけ、本部も今回の任務を重く見ているのでしょう。」
副長が答える。
その時、格納庫から数人の研究員が姿を現した。
白衣姿の者、観測機器を抱えた者、海洋調査用の端末を運ぶ者。
軍人とは違う雰囲気を持つ人々だった。
研究班の責任者がアンナの前で敬礼する。
「科学技術研究機構主任研究員、リディア・ノルマンです。」
「今回の任務では、海底人工構造物とヴェール海の調査を担当します。」
アンナも穏やかに一礼した。
「ようこそ、『ほうしょう』へ。」
「長い任務になると思いますが、よろしくお願いします。」
リディアは微笑みながら答えた。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
その後、会議室では初顔合わせが行われた。
海軍士官。
研究員。
海洋観測班。
潜水艦隊の代表。
さまざまな分野の専門家が一堂に会する。
アンナは全員を見渡し、静かに口を開いた。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。」
「これから向かうヴェール海は、私たちの知る海ではありません。」
「何が起こるか、誰にも予測できません。」
室内は静まり返る。
「だからこそ、一人で判断せず、互いに助け合ってください。」
「全員が無事に帰ること。」
「それが私の一番の願いです。」
その優しい言葉に、会議室の緊張が少し和らいだ。
「了解しました。」
参加者たちは力強く頷く。
その時、会議室のスクリーンに警報表示が映し出された。
「艦長!」
通信士が慌ただしく入室する。
「ヴェール海沿岸の自動観測ブイから緊急データです!」
アンナはすぐにスクリーンへ向き直る。
画面には海域全体を示す地図が表示されていた。
ヴェール海中心部。
そこから同心円状に、青白い光の反応が広がっている。
研究員が息をのむ。
「こんな強い反応は初めてです……。」
リディアは画面を見つめながら、小さくつぶやいた。
「まるで……何かが目を覚ましたみたい。」
会議室には再び静かな緊張が広がる。
誰もその言葉を否定できなかった。
ヴェール海は、再び動き始めていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ついに特別調査任務群のメンバーが集結し、新たな仲間も加わりました。しかし、その矢先にヴェール海ではこれまでにない規模の異変が観測されます。
次回の更新はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。
それでは、第四話でまたお会いしましょう。