Beyond the Northern Sea   作:魂魄妖霧

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いつもお読みいただきありがとうございます。

第二空母打撃群は順調に航海を続け、ヴェール海へと着実に近づいていきます。しかし、その海は静かに艦隊を迎え入れようとしていました。

それでは、第三話をお楽しみください。


第三話 霧の予兆

穏やかな航海が続く中、第二空母打撃群は予定航路を維持したまま北方海域を進んでいた。

 

艦隊は空母「ほうしょう」を中心に、護衛艦艇が幾重もの輪を描くように展開している。

 

上空では早期警戒機が警戒飛行を続け、水面下では潜水艦隊が周囲の索敵にあたっていた。

 

艦橋では、静かな緊張感が漂っている。

 

「艦長。」

 

航海長が前方を見つめながら報告する。

 

「予定航路に変更ありません。このまま進めば、まもなくヴェール海外縁部へ到達します。」

 

アンナはゆっくりとうなずいた。

 

「ありがとう。引き続き、安全航行でお願いね。」

 

「了解しました。」

 

その時、通信士が新たな報告を伝える。

 

「各艦より定時報告です。全艦異常ありません。」

 

「航空隊、哨戒継続中。」

 

「潜水艦隊との通信も正常です。」

 

「そう。みんな順調なのね。」

 

アンナは戦術画面へ目を向ける。

 

整然と並ぶ味方艦艇の光点。

 

そのさらに北方には、灰色で表示された海域が広がっている。

 

ヴェール海。

 

誰もその正体を知らない海。

 

数多くの調査隊が送り込まれ、そして帰らなかった海域。

 

アンナは静かに息をついた。

 

「どうか……何事もありませんように。」

 

その願いとは裏腹に、小さな異変が起こり始めていた。

 

「艦長。」

 

気象担当士官が声を上げる。

 

「前方海域で急速な霧の発生を確認しました。」

 

「霧?」

 

「はい。発生速度が通常の気象現象とは一致しません。」

 

艦橋の空気が少しだけ張り詰める。

 

アンナは落ち着いた表情のまま尋ねた。

 

「視界への影響は?」

 

「現在は軽微です。ただし、このまま進めば一時間以内に視界が大きく悪化する可能性があります。」

 

副長が腕を組む。

 

「ヴェール海の霧……ですか。」

 

アンナは静かに前方を見据えた。

 

水平線の彼方。

 

青かった空と海の境界に、白く霞む帯がゆっくりと広がっている。

 

「あれが……。」

 

誰かが小さくつぶやく。

 

それは霧というには、あまりにも整いすぎていた。

 

まるで海そのものが白い壁を築いているかのようだった。

 

その時だった。

 

「艦長!」

 

レーダー員が振り向く。

 

「レーダーに微弱なノイズが発生しています!」

 

「原因は?」

 

「不明です。機器の故障ではありません。」

 

続けて通信士も報告する。

 

「無線にも断続的な雑音を確認。」

 

「通信は維持していますが、通常とは異なる周波数を受信しています。」

 

艦橋は静まり返る。

 

アンナは落ち着いた声で命じた。

 

「慌てなくて大丈夫。」

 

「各部署は状況を監視してください。」

 

「少しでも変化があれば、すぐ知らせてね。」

 

「了解!」

 

艦内に緊張感が広がる。

 

しかし、誰一人として持ち場を離れる者はいない。

 

第二空母打撃群は速度を維持したまま、ゆっくりと白い霧へ近づいていく。

 

そしてその霧の奥で、誰にも気付かれることなく、何かが静かに動き始めていた。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヴェール海は少しずつその姿を現し始めました。次回はいよいよ艦隊が霧の中へ足を踏み入れます。

更新はいつになるか分かりませんが、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

また次のお話でお会いしましょう。
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