-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第八章ー第三試合ー

 

 

 

第三試合

 

 

 

―風の輪舞曲―

 

 

 

「続いて第三試合!」

 

「カマメシ王国代表――ウインナー選手!!」

 

司会の声が闘技場に響き渡る。

 

大歓声の中、ウインナーは静かに歩み出た。

 

その表情は穏やかだが、

 

瞳には確かな決意が宿っている。

 

対するは、スキヤキ王国代表。

 

人間の見た目だが四本の腕を持つ男――ボルシチ。

 

「へへへ……。」

 

「また会ったなぁ、ウインナー。」

 

観客席からどよめきが起こる。

 

以前のドリ禁大会でも激突した因縁の相手。

 

ボルシチは舌なめずりをしながら笑った。

 

「前は負けたがよォ……。」

 

「今回は違うぞ。」

 

そう言うと、背中が大きく膨らみ始めた。

 

ゴキゴキ、と嫌な音を立てながら、

 

左右から新たな腕が生えてくる。

 

一本。

 

二本。

 

三本。

 

やがて六本の腕が現れた。

 

観客席から悲鳴が上がる。

 

「腕が増えた!?」

 

「なんだあれ!」

 

「気持ち悪い!!」

 

ボルシチは六本の腕を広げ、不気味に笑った。

 

「前回はよくもすっ飛ばしやがったな。」

 

「お前の身動きさえ抑えれば、俺の勝利だ。覚悟しろよ。」

 

ウインナーは静かに息を吸う。

 

そして優しく答えた。

 

「……抑えればね。」

 

「僕も、あの時のままじゃないよ。」

 

「きっと、すぐ終わる。」

 

 

-試合開始-

 

 

 

開始の鐘が鳴る。

 

ボルシチは六本の腕を大きく広げ、

 

糸を放とうと構えた。

 

「くらえぇぇぇ!!」

 

その瞬間。

 

風が吹いた。

 

「え?」

 

ボルシチの目の前から、

 

ウインナーの姿が消える。

 

次の瞬間には、

 

すでに懐へ潜り込んでいた。

 

あまりにも速い。

 

レイカが教えた修行。

 

風に頼るのではなく、

 

風に乗る。

 

その極意を体現した一歩だった。

 

ウインナーは静かにボルシチの腹部へ手を添える。

 

「風のシンフォニー――」

 

穏やかな声が響く。

 

「第一番。」

 

風が渦を巻く。

 

 

 

「風の輪舞曲。」

 

 

 

ふわり、とボルシチの身体が浮いた。

 

「なっ!?」

 

回転。

 

回転。

 

さらに回転。

 

風が巨大な円舞を描き、

 

ボルシチを包み込む。

 

「うわああああああ!!」

 

そのまま勢いよく吹き飛ばされ、

 

闘技場の壁へ激突した。

 

轟音。

 

土煙が舞う。

 

静まり返る会場。

 

やがて煙が晴れると、

 

ボルシチは壁にもたれたまま気絶していた。

 

六本の腕も力なく垂れ下がっている。

 

勝負は決した。

 

司会者が大きく叫ぶ。

 

 

「勝者!」

 

「ウインナー選手ーーー!!」

 

 

歓声が一気に爆発した。

 

「ごめんね。」

 

「こんなところで躓いていられないんだ。」

 

控室へ戻ると、

真っ先にダイフクーがウインナーの肩を叩いた。

「圧勝じゃねぇか!」

「完璧だったぜ!」

ウインナーは照れくさそうに笑う。

「ありがとう。」

そこへドロップが勢いよく駆け寄ってくる。

「ウインナー!すごかった!」

目を輝かせながら、しばらくウインナーを見つめると、

 

ウインナーは少し照れてしまった。

ドロップは、何か思いついたように

 

両手を合わせた。

「ねぇ!」

「私、ウインナーのマネージャーになろうかな??」

その一言に、すぐにダイフクーが

 

額を押さえながら苦笑した。

 

「おいおい。」

「コロッケの次はウインナーか??」

「コロッケのマネージャーは卒業してまーす。」

「都合のいいやつだな……。」

ドロップは慌てて頬を膨らませる。

「でも、ちゃんと応援してたんだから!」

そのやり取りに、ウインナーは思わず吹き出した。

「ははは。」

「ありがとう、ドロップ。」

その笑顔を見て、ドロップも嬉しそうに笑い返す。

少し離れた場所では、レイカが煙草に火をつけていた。

ゆっくりと煙を吐きながら、小さく口角を上げる。

「良かった。」

短い一言。

しかし、その言葉だけで十分だった。

ウインナーはレイカへ振り返り、嬉しそうに頷く。

「うん。」

控室には穏やかな空気が流れる。

その一方で、闘技場では勝利の鐘が鳴り響いていた。

カマメシ王国、三連勝。

観客席は歓声に包まれ、王国中が熱狂する。

しかし、その熱気の中で、

 

レイカだけは静かに空を見上げていた。

煙は風に乗り、青空へ溶けていく。

「……さて。」

「ここからが本番か。」

その小さな呟きは、誰にも聞かれることなく、

 

風の中へ消えていった。

 

 

 

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