-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第十章

-地下遺跡の再会-

 

 

 

ドリ禁大会から二日後。

 

ウインナーたちは、

 

カマメシ王国地下遺跡を探索していた。

 

ブリトーの仲間の手掛かりを探すためだ。

 

暗い通路を進み、最深部へ辿り着く。

 

すると奥から、

 

「ガハハハハ!!」

 

という豪快な笑い声が響いた。

 

「誰かいるぞ!」

 

巨大な岩山。

 

その中央では、一人の男が岩を削り、

 

もう一人が黄金へ変えていた。

 

豪華な柱。

 

黄金の椅子。

 

黄金の壁。

 

黄金のシャンデリア。

 

即席とは思えない宮殿が出来上がっている。

 

ダイフクーが呆れる。

 

「何やってんだ、あいつら。」

 

ブリトーは目を見開いた。

 

「ハラペーニョ!」

 

「カフェラテ!」

 

二人も振り返る。

 

「おぉ!ブリトー!」

 

再会を喜び合う三人。

 

しかし、

 

なぜこの時代へ来たのか。

 

その理由だけは誰も思い出せなかった。

 

「気付いたらここにいた。」

 

二人の答えも同じだった。

 

ブリトーは腕輪を見せる。

 

「禁貨を探してる。」

 「目が覚めた時になかったかい?」

 

すると、

 

ハラペーニョは懐から金色の禁貨を。

 

カフェラテは茶色の禁貨を取り出した。

 

「これか?」

 

「起きた時に握りしめていたぞ。」

 

二枚の禁貨は腕輪へ吸い込まれていく。

 

光が一瞬だけ走った。

 

しかし何も起こらない。

 

ブリトーは笑った。

 

「…ありがとう。」

 

「僕は今、仲間を全員探しているんだ。」

 

「多分だけど、君たちはここに残るんだろ?」

 

ハラペーニョは豪快に笑う。

 

「ここが気に入ってしまったからな。」

 

「困ったらここに来いよ!」

 

「仲良く暮らそう。」

 

二人は完全に移住モードだった。

 

「遠慮しておくよ。」

 

「もし、何か分かれば伝えに来るよ。」

 

「おう!また会おうぜ!」

 

カフェラテも優しく微笑んだ。

 

「元気で。」

 

 

再び別々の道を歩き始める。

 

ブリトーはふと思う。

 

サラミッドの仲間は自分たちの時代に、

 

戻りたくないのだろうか。

 

……僕自身はどうなんだろう。

 

今の旅も悪くない。

 

でも…。

 

と、考えながら帰路に着いた。

 

 

-勝利記念舞踏会-

 

 

 

日が落ちても賑やかさは

 

途絶えていない。

 

カマメシ王国王都。

 

ドリ禁大会優勝を記念した

 

舞踏会が開かれていた。

 

華やかなドレス。

 

美しい音楽。

 

煌びやかなシャンデリア。

 

普段とは違う装いに、

 

みんな少し照れくさそうだった。

 

「男性陣、似合うわね〜。絵になるわ!」

 

「シャーベットは変わらないけどな!」

 

「ダイフクーも蝶ネクタイだけだろ。」

ユリは白を基調としたドレス。

 

レイカは黒いスーツ姿。

 

「レイカはあんまりかわんねえな。」

 

「…いや、窮屈だ。」

 

「ネクタイ降ろしちゃだめよ?」

 

「…はぁ。」

 

ユリが静かに手を差し出す。

 

「ねえ、踊って。」

 

レイカは少し困ったように笑う。

 

「…俺はこういうの苦手なんだけどな。」

 

それでも手を取り、

 

静かに踊り始める。

 

一方。

 

ドロップは淡い桃色のドレス。

 

ウインナーは正装に身を包んでいた。

 

「王子様みたいね。」

 

「そんないいものじゃないよ。」

 

「私は?どう?似合う?」

 

少し頬を赤らめながら

 

平常心を保ちつつ答えた。

 

「とても綺麗だよ。」

 

「本当に!?嬉しい!」

 

「……ドロップ。」

 

「僕と踊ってくれますか?」

 

膝をついて、片手を差し出す。

 

「えっ…。」

 

ドクンと懐かしい感覚が

 

ドロップに襲ったが、

 

原因はわからず、現実に戻る。

 

「……はいっ。」

 

二人もゆっくり踊り始める。

 

遠くでは、

 

ダイフクーとシャーベット。

 

会場の隅で二人を眺めていた。

 

「…おうおう。」

 

「青春しやがって。なあシャーベット。」

 

「あの二人、付き合ったのか?」

 

「あれでまだらしいぞ…。」

 

「ほう…。」

 

「見てるこっちがもどかしいぜ。」

 

一方、

 

ブリトーだけは、

 

客室で静かに本を読んでいた。

 

「こういう場所は苦手だ。」

 

呆れて笑う。

 

 

-黒い影-

 

 

 

会場の賑わいがピークになった。

 

その時だった。

 

 

バツンッ!!

 

 

突然、

 

城中の灯りが消えた。

 

「停電!?」

 

「誰か灯りをつけてくれ!!」

 

「ママ!パパ!どこ!?!?」

 

悲鳴が上がる。

その数秒後、

 

窓ガラスが割れる音。

 

黒装束の集団が雪崩れ込んできた。

 

「ドリーム禁貨を奪え!」

 

レイカは刀を握った。

 

「堂々と来やがった。」

 

ユリも冷たい瞳へ変わる。

 

「ここは任せて。」

 

「二人は避難を!」

 

「……わかった!シャーベット!いくぞ!」

 

「ユリ、後ろは任せるぞ。」

 

「おおかた、人質狙いだろ。」

 

「誰も攫わせん。」

 

「任せて。」



 

ダイフクーとシャーベットは、

 

一般客を避難させ始める。

 

「こっちだ!」

 

「落ち着け!ついてこい!」

 

王城は大混乱となった。

その混乱の渦中。

 

ドロップが応戦している中、

 

突然、背後から布を当てられる。

 

「ん゙っぐ……。」

 

意識が遠のく。

 

黒装束の男が抱え上げた。

 

その姿を見たウインナーの顔色が変わる。

 

「……ドロップ!!」

 

風が吹いた。

 

ウインナーは窓から飛び出す。

 

 

 

―護りたいもの―

 

 

 

王都の屋根の上。

 

月だけが静かに街を照らしていた。

 

「こいつを人質にして。」

 

「ドリーム禁貨をいただくぞ。」

 

黒装束の男たちは、

 

眠らされたドロップを抱え、

 

屋根から屋根へ飛び移っていく。

 

 

その前方へ、一陣の風が吹いた。

 

風は渦を巻き、一人の少年の姿を映し出す。

 

ウインナーだった。

 

静かに立ちはだかるその姿に、

 

男たちは足を止める。

 

ウインナーは真っ直ぐドロップを見つめた。

 

未だかつてないくらい怒りに満ち溢れている。

 

そして低く、一言だけ告げる。

 

 

「──離せ。」

 

 

男たちは笑う。

 

「ガキ一人で何ができる!」

 

一斉に襲い掛かる。

 

その瞬間。

 

風が夜空を駆け抜けた。

 

「風のシンフォニー・第七番!」

 

大きい竜巻を起こし、大抵の敵は

 

遥か彼方に飛んでいく。

 

「なんだとっ!?」

 

「怯むな!かかれ!」

 

残った残党が全員で襲いかかる直後、

 

ウインナーの姿が消える。

 

一人。

 

二人。

 

三人。

 

風だけが残り、男たちは次々と倒れていく。

 

誰一人として、

 

攻撃を見切ることはできなかった。

 

「くそっ!」

 

最後の一人が剣を振り下ろす。

 

「死ねえ!」

 

しかし、その腕は空を切る。

 

気付けばウインナーは背後に立っていた。

 

「ごめんね。手加減できない。」

 

軽く手を添える。

 

「風のシンフォニー──」

 

「第一番・風の輪舞曲。」

 

柔らかな風が男を包み込む。

 

身体は回転しながら宙へ舞い、

 

そのまま屋根へ叩きつけられた。

 

「…がはっ!」

 

静寂。

 

戦いは終わった。

 

ウインナーは急いでドロップへ駆け寄る。

 

穏やかな寝息。

 

傷はない。

 

ほっと胸を撫で下ろし、優しく抱き上げた。

 

お姫様抱っこのまま、風へ語りかける。

 

「お願い。」

 

「みんなのところまで。」

 

風は優しく応えるように吹き抜けた。

 

二人の身体はふわりと浮かび、

 

夜空を滑るように王都へ向かう。

 

月明かりの中、

 

静かな風だけが二人を包んでいた。

 

その途中。

 

ドロップの瞼がゆっくりと開く。

 

「……ん。」

 

ぼんやりと目を開けると、

 

すぐ目の前にウインナーの横顔があった。

 

「え……?」

 

状況が理解できず固まる。

 

ウインナーは安心したように笑った。

 

「よかった。」

 

「目が覚めた。」

 

ドロップは、

 

抱きかかえられていることに気付き、

 

顔を真っ赤にした。

 

「え、えぇぇ!?」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「お、おろして!」

 

慌てるドロップに、

 

ウインナーは少しだけ困ったように笑う。

 

「まだ危ないから。」

 

「もう少しだけ、このままで。」

 

その言葉に、

 

ドロップは何も言えなくなった。

 

夜風だけが静かに流れる。

 

ウインナーは少し俯き、

 

ゆっくりと口を開いた。

 

「怪我は無いかい?」

 

「ええ、大丈夫よ。」

 

「私、眠らされたのね……。」

 

「助けてくれてありがとう。」

 

静寂が二人を包む。

 

ウインナーの表情は、

 

怒りと少し悲しみを含んでいた。

 

耐えきれず、ドロップが口を開く。

 

「……ウインナー?どうしたの?」

 

「いや、自分が許せなくて。」

 

「え?」

 

「守るといったのに。」

 

「また危険な目に合わせてしまった。」

 

「何言ってんのよ。」

 

「今こうして助けてくれたじゃない。」

 

「……ドロップ。」

 

「僕はもっと強くなる。」

 

「そして。」

 

「君の隣で、ずっと君を守りたい。」

 

「ずっと考えて、答えが出たんだ。」

 

「こんな時に言うことじゃないかもしれない。」

 

「でも、もう抑えられないんだ。」

 

鼓動が速くなる。

 

風の音しか聞こえない。

 

ウインナーは真っ直ぐ前を見たまま、

 

静かに言葉を続けた。

 

「……僕は。」

 

「ドロップ。君が好きだ。」

 

夜空に、その言葉だけが溶けていく。

 

ドロップは何も言えなかった。

 

胸が熱い。

 

涙が一粒だけ頬を伝う。

 

嬉しいはずなのに悲しい。

 

何故?

 

返事はできない。

 

何故?

 

結婚してしまったあの人への想い。

 

最近、少しずつ大きくなってきたウインナーへの想い。

 

そのどちらも本物だから。

 

だから今は、

 

ただ静かにウインナーの胸へ顔を埋めた。

 

風は何も言わない。

 

ただ優しく二人を乗せ、

 

王都へ向かって吹き続けていた。

 

 

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