―答えのない恋―
翌朝。
カマメシ王城の廊下。
静かな朝日が窓から差し込む中、
ウインナーは部屋を出た。
すると、向こうからドロップが歩いてくる。
目が合う。
一瞬、二人とも足を止めた。
昨日の出来事が頭をよぎる。
沈黙。
何を話せばいいのか分からない。
勇気を振り絞るように、ウインナーが口を開いた。
「……おはよう?」
ぎこちない笑顔。
ドロップは少し俯き、
「……おはよ。」
小さく返した。
そのまま横を通り過ぎようとする。
ウインナーは少しだけ寂しそうに笑う。
「……朝ごはん、出来てるみたいだよ?」
足が止まる。
しかしドロップは振り返らない。
「……いらない。」
そのまま部屋へ戻ってしまった。
閉まる扉。
ウインナーは静かに俯いた。
「……やっぱり、困らせちゃったのかな。」
小さく息を吐き、
食堂へ向かった。
-朝食の席-
食堂ではみんなが朝食を囲んでいた。
しかし、一人だけ席が空いている。
ドロップだった。
シャーベットが首を傾げる。
「ドロップは?」
「誰か、知らないか?」
ブリトーも腕を組む。
「君、喧嘩でもしたのか?」
「昨日の夜、何があった?」
ウインナーは言葉に詰まる。
「えっと……。」
その時だった。
ダイフクーが2人の頭をゴツンと殴る。
「このデリカシーゼロ共。」
「聞いてやるな。」
「ちょっと考えたらわかるだろ。」
食堂が静まり返る。
ブリトーは苦笑し、
シャーベットは肩をすくめた。
ウインナーは申し訳なさそうに立ち上がる。
「ごめん。」
「でも、大丈夫。」
「僕がちゃんと向き合うから。」
「少しだけ見守っててほしい。」
その真っ直ぐな言葉に、
レイカは煙草を指で回しながら、
小さく笑った。
「……さすがだな。」
ユリも静かに微笑んだ。
「見習ってほしいな。」
「はぁ……。勘弁してくれ。」
-腕輪の秘密-
食後。
ブリトーの腕輪について改めて検証が始まった。
まずは金色の禁貨。
ブリトーが手をかざす。
「ハラペーニョ!」
黄金の光が走る。
持っていた石ころが一瞬で金へ変わった。
「成功だ!」
次は茶色の禁貨。
「カフェラテ!」
地面から岩壁がせり上がる。
ダイフクーが感心する。
「便利だな!」
最後は水色の禁貨。
「ラビィオリ!」
透明な水球が空中へ現れる。
シャーベットが指先を入れる。
「あ。」
昨日できた擦り傷が消えていた。
「治癒能力まであるのか。」
ブリトーは腕輪を見つめる。
「一度使うと光らなくなる。」
「そして特定の技しか使えないみたい。」
どうやら一日に一度しか使えないらしい。
新たな事実が判明した。
-答えのない恋-
昼過ぎ。
ユリが気付く。
「ドロップがいない。」
「え?」
「部屋にいると思ったのに…。」
「けっこうやばくないか?」
「と、とりあえず探そう!」
王都中を探し始める仲間たち。
その時。
ウインナーだけは一人、静かに歩き出した。
向かった先は王都外れの丘。
旅の途中、ドロップは落ち込むと
丘のようなところで一人で風に当たる。
それをずっと見守っていたのが
ウインナーだった。
「……やっぱりいた。」
そこにドロップは座っていた。
風に髪を揺らしながら。
ドロップは後ろ向きで話しかける。
「……なんで分かるの。」
「……ドロップもよくわかったね。」
「こんな時、必ずあなたが来てくれるもの。」
ウインナーは優しく微笑む。
「なんでだろう、分かるんだ。」
「ずっと一緒に旅してきたから。」
その言葉に、
ドロップの瞳から涙が溢れた。
「……なんで一人にしてくれないの!?」
「こんな時に、1人に出来ない。」
「ねえ、なんで私のことが好きなの。」
「嬉しいはずなのに。」
「なんで悲しいの。これは悲しいの?」
「分からないよ……。」
堰を切ったように感情が溢れる。
ウインナーは静かに受け止めた。
「色んなドロップを傍で見てきた。」
「笑う顔も。」
「泣く顔も。」
「怒る顔も。」
「全部見てきたから。」
「気づいたら。」
「ドロップだけに、惹かれてたんだ。」
風が優しく吹く。
ウインナーは続けた。
「僕は悲しい思いをさせたくない。」
「そのために強くなりたいって思った。」
「でも。」
「気持ちを伝えることで悲しい思いをさせるなら。」
「……もう伝えないから。」
その声は少し震えていた。
ドロップは勢いよく顔を上げる。
「ただ悲しいわけじゃないの!!」
涙を流しながら叫ぶ。
「とても嬉しいの!」
「でも彼のことも忘れられない自分が嫌なの!」
「どちらを選べなんて……。」
言葉にならない。
ウインナーはそっとドロップの手を握った。
真っ直ぐ目を見つめる。
零れそうな涙を抑えながら。
「大丈夫。」
「僕、いつまでも待てるよ。」
「結果がどうなろうとも。」
「嬉しいって言ってくれてありがとう。」
「……ゆっくりさ。」
「ドロップが納得できる答えを見つけてほしい。」
「そして。」
「待つ間だけでも。」
「仲間としてでいいから。」
「傍で支えさせてほしい。」
ドロップは泣き笑いになった。
「………ふふっ…そんなの。」
「優しすぎるわ……。」
「……かっこよすぎ。」
「そんなことないよ。」
「ほら。」
ウインナーが自身の顔を指して笑う。
「泣いちゃって、顔ぐしゃぐしゃ。」
その言葉に、
ドロップも小さく笑った。
「……本当ね。」
涙を拭う。
少しだけ心が軽くなった。
ドロップは空を見上げた。
「……こんな時でも。」
「ウインナーの笑顔に救われてる。」
「これが惹かれてる、なのかな。」
ウインナーは照れくさそうに笑う。
「ふふっ……お互い。」
「分からないことだらけだよね。」
静かな風が吹く。
ドロップは涙を拭いながら、小さく笑った。
「……こんな顔、見られちゃった。」
ウインナーも困ったように笑う。
「僕もだよ。」
「告白なんて初めてだったから。」
「迷惑だったかなとか。」
「悲しませたかなとか、色々考えてて。」
「昨日の夜、全然眠れなかった。」
ドロップは目を丸くした。
「え?」
「そうなの?」
「うん。」
「ウインナー優しいからモテると思ってた。」
「そんなことないよ。」
「……。」
「ずっと後悔してた。」
「泣かせちゃったって思ってた。」
その言葉を聞いた瞬間。
ドロップはふふっと笑った。
「……私も眠れなかった。」
「考えても考えても答えが出なくて。」
「でもね。」
「ウインナーのこと考えてる時間だけ、少し幸せだった。」
ウインナーは何も言えなかった。
風だけが静かに吹き抜ける。
そしてドロップは少し照れながら口を開く。
「私、すごくわがままだと思う。」
「それでもいいの?」
「それもドロップだからね。」
「わがままは否定しないのね。」
「……あっ、えっと……。」
「ふふっ、冗談よ。」
「…………明日さ、」
「うん。」
「デートしてほしい。」
ウインナーは固まった。
「………えっ?………デート!?!?」
ドロップは泣き腫らした顔で笑顔を作って、
「うん、デート。」
「デートか…。」
「…急すぎたかな。」
しばらく黙っていたウインナーだったが、
笑顔で答えた。
「……わかった。」
「明日のお昼から、一緒に街へ出掛けよう?」
ドロップは静かに頷く。
「……うん。」
「ありがとう。楽しみにしてる。」
「……みんなが心配してる。行こう?」
二人は並んで歩き始める。
夕暮れの風が、優しく二人の背中を押していた。