―君と見た景色―
-ただいまー
夕暮れ前
王都の門が見えてきた。
並んで歩くウインナーとドロップ。
少しだけ照れくさそうな空気が流れていた。
王城へ戻ると、
待っていた仲間たちが一斉に振り向く。
「ドロップ!」
ダイフクーが立ち上がる。
「探したんだぞ!」
シャーベットも安心したように息をついた。
「無事だったなら、なによりだ。」
ドロップは少し照れながら笑う。
「心配かけてごめんね!」
「もう大丈夫だから!」
その笑顔を見て、みんな安堵する。
そしてドロップはユリへ向き直った。
「ユリさん!」
「ん?」
「ちょっと相談があるからレイカ!借りるわね!」
「え?」
「お、おう……。」
ユリの返事を待たず、
手を引いて部屋へ消えていく。
静まり返る食堂。男子のみ。
残されたウインナーは視線を泳がせる。
そして小さな声で呟いた。
「……実は、明日。」
「……デートに行くことに……。」
沈黙。
次の瞬間。
「はぁぁぁぁぁ!?」
ダイフクーが椅子から立ち上がる。
シャーベットも目を丸くした。
「急展開だな。」
ブリトーだけは首を傾げる。
「デート?」
「何だそれ。」
ダイフクーが肩を叩く。
「好きなやつ同士で遊びに行くことだ!」
「ふむ。」
「にしても突然だな。」
「ドロップが好きなのか?」
「気付いてないのかい!!」
食堂は一気に騒がしくなった。
「服とかどうする??髪型は!?」
「どこに行くんだ?目的を決めた方が良くないか?」
「昔でいう逢引をデートと言うのか……」
ギャーギャーと盛り上がる男性陣。
その様子を見ながら、
レイカだけは壁にもたれ、小さく笑う。
「若いな……。」
騒がしい中、ウインナーだけが
レイカの方へ歩み寄る。
「レイカ。」
「どうした?」
「……服を貸してほしい。」
「…はっ?持ってないのか?」
「こんな時が来るなんて…。」
「はあ。」
「今回は貸してやる。」
「…次の街で、服、買うぞ。」
「……!!ありがとう!!」
-女の子同士の秘密-
部屋へ戻ったドロップは、
勢いよくベッドへ飛び込む。
「どうしよう!」
「一気に色々ありすぎて!!」
「どうしよう!」
「勢いで言っちゃった!!」
ドロップは1人で騒いでいる中、
ユリは静かに椅子へ腰掛けた。
「……何があったの?」
ドロップは今日の出来事を、
最初から最後まで全部話した。
泣いたこと。
笑ったこと。
デートの約束をしたこと。
全部。
全部。
ユリは優しく頷きながら聞いていた。
そして最後にドロップは照れながら言う。
「だから……。」
「明日の服、一緒に選んでほしいの。」
ユリは少しだけ笑った。
「もちろん。私でよければ。」
その日二人は荷物の中を、
開けたり閉めたり。
靴を合わせたり。
髪型を考えたり。
「この色どうかな?」
「似合う。」
「本当に?」
「うん。」
「本当の本当?」
「ふふっ。大丈夫。」
そんな何気ない会話が続く。
夜になるまで笑い声は絶えなかった。
寝る間際、
ユリはドロップへ微笑む。
「明日、楽しんでね。」
ドロップも満面の笑みで頷いた。
「……うん!」
「ありがとう!」
-初めてのデート-
翌日。
王都の門前。
先に来ていたウインナーは何度も服を整えていた。
レイカから借りた(服を買えと怒られた)
グレーのカーディガン。
白いTシャツ。
紺のスラックス。
茶色の革靴。
いつもとは違う姿に、本人も落ち着かない。
(変じゃないかな…。大丈夫かな。)
そこへ。
「待った?」
ドロップが現れる。
髪は下ろされ、
あの日プレゼントされた髪飾りが揺れている。
白いロングシャツワンピース。
深緑のカーディガン。
低めのヒール。
ウインナーは思わず見惚れた。
「……綺麗。」
ドロップは顔を真っ赤にする。
「いきなりそんなこと言わないでよ!」
「……ウインナーもいつもと違うわね。」
「なんだか新鮮……。似合ってるわ。」
「照れくさいな……。けど、ありがとう。」
二人は笑い合った。
そしてゆっくり街を歩き始める。
雑貨屋。
花屋。
パン屋。
市場。
昨日までとは違う。
何でもない会話が全部楽しい。
途中。
人混みの中。
ウインナーは勇気を出して手を伸ばした。
そっと。
ドロップの手へ触れる。
ドロップも少し驚いたが、
静かに握り返した。
二人とも頬が赤かった。
-青いブレスレット-
賑やかな通り。
突然、人がぶつかってきた。
「あ、ごめんなさい!」
ウインナーの腕につけていた
青のブレスレットが地面へ落ち、
音を立てて壊れた。
「大丈夫?」
ドロップが拾い上げる。
「壊れちゃってるね……。」
「仕方ないよ。あの人も急いでたからね。」
「大事にしてたんじゃないの?」
「ハウスの子達から貰ったものだったよ。」
「え!?そんな大事なもの!?」
「もう何年も前になるからね。」
「壊れても仕方ないよ……。大丈夫。」
「そう……。それならいいけど。」
少し雑貨屋通りを歩くと、
ブレスレット専門店があった。
色とりどりの商品が並んでいる。
ドロップはいくつか品物を見て、
青いブレスレットを手に取った。
「あ……これ。」
「ウインナーに似合うと思う。」
店員から受け取ると、
そのままウインナーの手首へ付けた。
「うん、とても似合う。」
「ありがとう。」
「気に入った?」
「え?あ、うん。」
「じゃあ。」
「これ、ください。」
「え!?ドロップ??」
ドロップは優しく微笑む。
「この前のお礼ね。」
ウインナーは照れくさそうに笑う。
「嬉しい……。ありがとう。」
青い石が夕日に照らされ、
優しく光った。
-君と見た景色-
夕暮れ。
空は茜色へ染まっていた。
ウインナーは風へ語りかける。
「お願い。」
二人の身体がゆっくり浮かぶ。
王都を一望できる丘へ降り立った。
ドロップは景色を見つめた。
「……綺麗ね。」
風が髪を揺らす。
ウインナーは隣を見た。
「……前から綺麗だよ。」
ドロップは吹き出した。
「っあはは!!ウインナーってそんな臭いこと言うのね。」
ウインナーは照れながらふふっと笑う。
「……なんでだろうね。」
「恥ずかしいけど。」
「伝えないと後悔しそうで。」
ウインナーは少し寂しげに笑う。
ドロップは静かに空を見上げた。
「……そんなウインナーだから。」
「惹かれるんだと思う。」
沈黙。
優しい風だけが流れる。
ドロップは続けた。
「今日のデートね。」
「ウインナーと二人でゆっくり過ごして。」
「本当に楽しかった。」
「街を歩いただけなのに。」
「特別な一日だった。」
「ウインナーだから。」
「こんな風に思えるんだと思う。」
ウインナーは小さく笑う。
「……ありがとう。」
ドロップは俯いた。
「結婚した彼は。」
「私に優しかった。」
「でも。」
「それはみんなと同じ優しさだった。」
涙が滲む。
「……っ。ウインナーは。」
「みんなにも優しいけど。」
「今日ね。」
「私だけに見せてくれる優しさを感じたの。」
ゆっくり顔を上げる。
「……っ。色んな私を見て惹かれるって言ってくれたよね。」
「うん。」
「……私も。」
「色んなウインナーを見たい。」
「それを誰よりも傍で見たいって。」
「私だけが知ってたいって。」
「心の底から思ったの。」
瞼に溜まっていた涙が零れる。
「……っ。昨日、散々、言ったのに。」
「傷つけて、本当に…ごめんなさい。」
「わがままで本当にごめんね。」
そして。
深呼吸。
静かに。
はっきりと言った。
「私。」
「ウインナーのことが、大好き。」
風が止まった。
二人だけの静寂。
しばらくして、
ウインナーが口を開く。
「……ドロップ。」
「左手を出して。」
ドロップは手を差し出した。
ウインナーは右手に付けていた、
今日買ったブレスレットを、
優しくドロップの左手首へ付ける。
青い石が月明かりを映す。
ウインナーは真っ直ぐ目を見た。
「これに誓って。」
「君のことを受け止めて。」
「幸せにする。」
一呼吸置く。
「僕と。」
「お付き合いしていただけませんか?」
ドロップの頬を涙が伝った。
そして笑った。
「……こちらこそ。」
「よろしくお願いします。」
その瞬間。
ウインナーの目にも涙が溢れる。
「……っ……。ありがとう。」
「本当に……ありがとう。」
泣き顔を見せないよう
顔を伏せながら手を握り、
何度もお礼を言った。
ドロップは少し困ったように笑う。
「泣かないの。」
ウインナーの涙を拭う。
「守ってくれるんでしょ?」
「……ね?」
その言葉に、
ウインナーも笑った。
「……ふふっ、任せて。」
やがて日は落ち、
夜空には月が浮かぶ。
ウインナーは静かに言った。
「月を眺めながら帰ろうか。」
ドロップはくすっと笑う。
「……ふふっ。」
「ロマンチストね。」
ウインナーは耳まで赤くした。
「……さすがに恥ずかしいな。」
二人は手を繋いだまま、
風に乗って夜空へ舞い上がる。
月明かりの下。
寄り添う二つの影は、
ゆっくりと王都へ帰っていった。