-炎より熱きもの-
-最強の炎-
祭りの熱気が島中を包む。
巨大な松明の前。
レイカとスムージーが向かい合っていた。
村人たちは固唾を飲んで見守っている。
スムージーは巨大なマッチ棒を肩へ担ぎ、
大きく笑った。
「この島じゃ俺が一番だ!」
「…その言葉、後悔するなよ。」
炎がマッチ棒を包み込み、
灼熱の熱気が周囲へ広がる。
ブリトーは思わず目を細めた。
「すごい炎……。」
スムージーは大きく踏み込み、
そのまま炎を纏った一撃を振り下ろした。
轟音。
巨大な炎がレイカへ襲いかかる。
だが。
レイカはその場から一歩も動かなかった。
煙草を口にくわえたまま、小さく呟く。
「…………ぬるいな。」
右手を軽く払う。
それだけだった。
スムージーの炎は一瞬で霧散し、空へ消えていく。
祭り会場は静まり返った。
スムージーも目を見開く。
「……嘘だろ。」
レイカはため息をつく。
「終わりか?」
その一言だけで、
絶望的な実力差が伝わっていた。
-我流・炎飛流「円」-
それでもスムージーは笑った。
「まだ終わってねぇ!!」
巨大なマッチ棒を天へ掲げる。
炎はさらに激しく燃え上がり、
巨大な火柱となって空へ伸びた。
島中が赤く染まる。
村人たちは歓声と悲鳴を上げる。
スムージーは全力の一撃を放った。
「これが俺の全力だぁぁぁぁ!!」
巨大な炎がレイカへ迫る。
レイカは静かに煙草を地面へ落とした。
そして、目を閉じる。
「やれやれ…。」
右手に、小さな炎が灯る。
派手さはない。
静かで、美しい炎。
レイカはゆっくり腕を横へ広げた。
「──我流。」
「炎飛流。」
静寂。
次の瞬間。
「──円。」
レイカを中心に、
真紅の炎が円を描くように静かに広がっていく。
轟音はない。
爆発もない。
ただ、美しい円環だけが世界を包む。
触れた炎はすべて消え去り、
スムージーの炎も、
巨大なマッチ棒も、
一瞬で鎮火した。
炎の輪は静かに消えていく。
誰も声を出せなかった。
「この技は。」
「俺が燃やしたいものだけを燃やす。」
「お前の炎に合わせて相殺させてもらった。」
静寂だけが残る。
スムージーは膝をつき、苦笑した。
「……参った。」
「俺の負けだ。」
レイカは煙草へ火をつけ直す。
「最初から勝負になってないがな。」
その姿に、誰もが息を呑んでいた。
ダイフクーは額に汗を浮かべる。
「お、おい……。」
シャーベットも眼鏡を押し上げる。
「規格外だ。」
ブリトーは静かに呟く。
「……これが炎の加護。」
ウインナーも苦笑した。
「やっぱりレイカはすごい。」
その瞬間。
静まり返っていた村中から、大歓声が巻き起こった。
「すげぇぇぇぇ!!」
「神様みたいだ!!」
「歴代最強だ!!」
拍手と歓声が島中へ響き渡る。
スムージーも立ち上がり、大笑いした。
「完敗だ…!」
「こんな強いやつ初めて見た!」
レイカは煙を吐きながら、ただ空を見上げていた。
「……神様、ねえ……。」
-宿の夜-
祭りは大成功に終わり、
島中は夜遅くまで歓声に包まれていた。
一行はスムージーと同じ宿へ泊まることになる。
夕食の席では、ダイフクーが豪快に肉へかぶりつき、
シャーベットが静かにため息をつく。
ブリトーはスムージーから島の話を聞き、
ウインナーとレイカは酒を飲む村人たちを眺めていた。
夜風が心地よく吹く縁側。
ユリとドロップは並んで座り、月を見上げていた。
ドロップは小さく笑う。
「昼間のナンパの人たち。」
「顔真っ青だったね。」
ユリも笑う。
「あの二人に睨まれたら仕方ないわ。」
ドロップは少し照れながら続けた。
「ウインナー、頼もしかったなぁ。」
「レイカも格好良かった。」
ユリは静かに頷く。
「そうね。」
「二人とも優しいから。」
ドロップは今日の戦いを思い返す。
「あんなに強い人、初めて見た。」
「レイカって、一体どれくらい強いの?」
ユリは月を見上げたまま、小さく微笑んだ。
「……この時代で彼に勝てる人は、そうそういないと思う。」
ドロップは驚いたように目を丸くした。
「そんな人が旅してるなんて、不思議。」
ユリは静かに笑うだけだった。
「でもやっぱり気になる!」
「…ユリさんもだけどなんであんなに強いの?」
ドロップはぽつりと同じことを呟く。
ユリは少しだけ目を細める。
「……強くなりすぎたのよ。」
ドロップは首を傾げた。
「強くなりすぎた?」
ユリは遠くの火山を眺めながら続ける。
「生きているとね。」
「嫌なものが嫌というほど目につくし、経験する。」
「守れなかったもの。」
「失ったもの。」
「後悔。」
「色んな感情が積み重なる。」
静かな声だった。
「それを全部、消し去るかのように。」
「彼は実力を付けていった。」
「時には方法を間違えながら。」
「色んなことを経験して、今の強さがあるの。」
ドロップは黙って聞いていた。
そしてふと、小さく首を傾げる。
「……ユリさんとレイカって。」
「一体、何歳なの?」
一瞬だけ。
ユリの表情が止まった。
しかし次の瞬間には、いつもの優しい笑顔へ戻る。
「女の人に年齢を聞くものじゃないわ。」
くすっと笑う。
ドロップも慌てて笑った。
「ご、ごめんなさい!」
「ふふっ。」
二人の笑い声が夜空へ溶けていく。
だがその胸には、小さな違和感だけが残っていた。
──この二人は、どれほど長い時を生きてきたのだろう。
その答えは、まだ誰も知らない。