-古代遺跡の真実-
-炎と風の道-
翌朝。
一行はヒナベ島の火山麓にある、
古代遺跡へ足を踏み入れた。
岩肌に囲まれた入口からは、
冷たい風が吹き抜けている。
松明を片手に進むスムージーが笑う。
「こんな場所、ガキの頃以来だ。」
ブリトーは壁へ手を添えながら歩く。
「何か……懐かしい気がする。」
その時だった。
一本道だった通路が、大きく二つへ分かれている。
左側には赤い岩壁、
右側には緑色の岩壁に紋章が刻まれていた。
シャーベットが壁を調べる。
「文字がある。」
「『炎の加護を持つ者、左へ。』」
「『風の加護を持つ者、右へ。』」
ダイフクーが首を傾げた。
「加護?」
レイカは壁を見つめたまま静かに口を開く。
「この世界には、属性の神に認められた者がいる。」
「炎、風、水、土……様々だ。」
「突然声が聞こえるといわれている。」
「まあ、いい神か悪い神かは分からないが。」
「加護を持つ者は、その力との親和性が極端に高い。」
ウインナーが頷く。
「だから僕は風を扱えるんだね。」
レイカも頷いた。
「ああ。」
そしてブリトーを見る。
「恐らくだが、お前にも風の加護がある。」
「お前自身が風に受け入れられつつある。」
ブリトーは自分の手を見つめた。
「……僕にも。」
「風の加護を持つ者同士は、」
「風が通るところであれば。」
「風に乗せてテレパシーのように会話が出来る。」
ウインナーとブリトーは目を合わせて驚く。
「離れていてもか?」
「それはわからない。試してみないと。」
「レイカ。僕は風の声も聞こえるんだ。それはどうなるの?」
「それは風の加護の真髄までたどり着く証拠。」
「だと思う。そこまでは知らん。」
「そうか……真髄か……。」
レイカは小さく笑う。
「俺は炎と風。」
「だが、風の加護は最低限しかない。」
「風に乗ることくらいはできる。」
ダイフクーが驚く。
「それって、チートじゃねぇか!」
レイカは肩をすくめた。
「だから面倒なんだ。」
「……炎に関しては備え付けだからな。」
レイカの呟きは誰にも聞こえなかった。
いや聞こえないように呟いていた。
さっそく、二手へ分かれる。
レイカ、ユリ、ダイフクー、シャーベット。
そして、
ウインナー、ドロップ、ブリトー、スムージー。
それぞれ遺跡の奥へ進み始めた。
-それぞれの探索-
レイカたちの道は、
至る所に罠が仕掛けられていた。
矢が飛ぶ。
床が抜ける。
岩が転がる。
その度に全員が避けていく。
だが。
「おや?」
シャーベットが壁のスイッチを押した。
ガコン。
「シャーベットォォ!!」
ダイフクーが叫ぶ。
巨大な岩が転がり始めた。
四人は全力疾走。
なんとか逃げ切り、大きな石扉へ飛び込む。
扉を閉めた瞬間。
轟音と共に岩が止まった。
「……死ぬかと思った。」
ダイフクーが息を切らす。
シャーベットは申し訳なさそうに笑った。
「すまない。気になってしまって。」
レイカはため息をつく。
「好奇心で遺跡を壊すな。」
その部屋の中央には宝箱が置かれていた。
中には黄金色の禁貨が眠っている。
「おおお!大量じゃねえか!!」
ユリが静かに拾い上げた。
「また一枚。」
レイカは宝箱ごと持ち上げる。
「よし。」
「持って帰る。」
ダイフクーが笑った。
「その発想好きだぜ。」
「対価はいただかないとな。」
「何もなければよいが…。」
四人はさらに奥へ進んだ。
一方その頃。
ウインナーたちの通路には罠はなかった。
代わりに進むほど風が強くなっていく。
スムージーが歩きながら笑う。
「ハラペーニョがさ。」
「パルの髪の毛を金にしたことあったよな。」
ブリトーも笑う。
「怒られてたな。」
二人は少しずつ思い出話を続けていた。
懐かしい空気が流れる。
やがて巨大な大広間へ辿り着く。
中央には真っ赤な禁貨。
スムージーが目を見開いた。
「……ここ。」
「俺が目覚めた場所だ!!」
ブリトーが禁貨へ近づく。
その瞬間。
地面が揺れた。
轟音。
床を突き破り、巨大な岩のゴーレムが現れる。
「オオオオォォォ!!」
拳が振り下ろされる。
ブリトーは風に乗り、紙一重で回避した。
「ウィンディ……カフェラテ!!」
腕輪が銅のように輝く。
その瞬間。
周囲の岩壁が動き出し、
巨大な岩がゴーレムの身体へ絡みつく。
一瞬で拘束された。
ブリトーの足元へ風が集まる。
猛烈な加速。
風は腕へ伝い、
さらに掌へ集束していく。
ゴーレムの胸。
核となる部分へ狙いを定める。
「ゼロ距離──」
「ウィンディターミネーション!!」
掌から圧縮された暴風が叩き込まれた。
轟音。
核が砕け散る。
ゴーレムは音を立てて崩れ落ちた。
静寂。
スムージーは目を丸くしていた。
「お前……。」
「そんなに強かったのか。」
ブリトーも驚いたように自分の手を見る。
「……体が自然と動く。」
ウインナーは微笑む。
「修行の成果だよ。」
「さすがレイカだな…。」
四人は赤い禁貨を手に取り、さらに奥へ進んだ。
-壁画の真実-
最奥部。
「…おっ、合流か。」
「みんな無事みたいだね。」
巨大な石扉の前で、二組は合流した。
力を合わせて扉を押し開く。
重い音が遺跡中へ響く。
その先に広がっていたのは、
壁一面に古代文字が刻まれた巨大な空間だった。
「すごい空間だなここは…。」
シャーベットとウインナーは文字を読み始める。
しばらく沈黙が流れる。
そして。
ブリトーが壁画を見つけた。
そこには、
かつてのサラミッドが描かれていた。
その横に刻まれていた古代文字。
シャーベットが静かに読み上げる。
「サラミッド崩れし時、時を越え復活の時あり。」
「闇の力ありき、または光の力ゆえに。」
「新たなる時は紡がれん。」
誰も言葉を失う。
ブリトーだけが静かに呟いた。
「闇の力……メザン。」
「光の力……パル。」
「誰かが意図的に、僕たちをこの時代へ呼んだ。」
静寂。
レイカが腕を組む。
「……つまり。」
「世界のどこかに、サラミッドは存在する。」
その言葉が遺跡へ響いた。
誰もが新たな真実を胸へ刻む。
-置いていけ-
探索を終え、一行は出口へ向かって歩き始めた。
その時だった。
背後から、
ゴゴゴゴゴ……
と重い音が響く。
全員が振り返る。
暗闇の奥から、
数え切れないほどのゴーレムたちが現れていた。
その瞳が赤く光る。
そして一斉に低い声を響かせた。
「オイテイケ……。」
「オイテイケェェェ……。」
ブリトーが青ざめる。
「な、なんだあれ!?」
シャーベットはレイカの腕に抱えられた宝箱を見る。
「……レイカ。」
「その、宝箱のことではないか?」
全員が固まる。
レイカも宝箱を見る。
「……あ。」
一秒後。
ダイフクーが叫んだ。
「逃げろぉぉぉぉぉ!!」
全員が全力疾走。
後ろから大量のゴーレムが追いかけてくる。
「オイテイケェェェ!!」
「オイテイケェェェ!!」
遺跡中へ悲鳴と足音が響き渡る。
その先に待つものをまだ誰も知らないまま――。