-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第十七章

 

 

 

-古代遺跡の真実-

 

 

 

-炎と風の道-

 

 

 

翌朝。

 

一行はヒナベ島の火山麓にある、

 

古代遺跡へ足を踏み入れた。

 

岩肌に囲まれた入口からは、

 

冷たい風が吹き抜けている。

 

松明を片手に進むスムージーが笑う。

 

「こんな場所、ガキの頃以来だ。」

 

ブリトーは壁へ手を添えながら歩く。

 

「何か……懐かしい気がする。」

 

その時だった。

 

一本道だった通路が、大きく二つへ分かれている。

 

左側には赤い岩壁、

 

右側には緑色の岩壁に‎紋章が刻まれていた。

 

シャーベットが壁を調べる。

 

「文字がある。」

 

 

「『炎の加護を持つ者、左へ。』」

 

「『風の加護を持つ者、右へ。』」

 

 

ダイフクーが首を傾げた。

 

「加護?」

 

レイカは壁を見つめたまま静かに口を開く。

 

「この世界には、属性の神に認められた者がいる。」

 

「炎、風、水、土……様々だ。」

 

「突然声が聞こえるといわれている。」

 

「まあ、いい神か悪い神かは分からないが。」

 

「加護を持つ者は、その力との親和性が極端に高い。」

 

ウインナーが頷く。

 

「だから僕は風を扱えるんだね。」

 

レイカも頷いた。

 

「ああ。」

 

そしてブリトーを見る。

 

「恐らくだが、お前にも風の加護がある。」

 

「お前自身が風に受け入れられつつある。」

 

ブリトーは自分の手を見つめた。

 

「……僕にも。」

 

「風の加護を持つ者同士は、」

 

「風が通るところであれば。」

 

「風に乗せてテレパシーのように会話が出来る。」

 

ウインナーとブリトーは目を合わせて驚く。

 

「離れていてもか?」

 

「それはわからない。試してみないと。」

 

「レイカ。僕は風の声も聞こえるんだ。それはどうなるの?」

 

「それは風の加護の真髄までたどり着く証拠。」

 

「だと思う。そこまでは知らん。」

 

「そうか……真髄か……。」

 

レイカは小さく笑う。

 

「俺は炎と風。」

 

「だが、風の加護は最低限しかない。」

 

「風に乗ることくらいはできる。」

ダイフクーが驚く。

 

「それって、チートじゃねぇか!」

 

レイカは肩をすくめた。

 

「だから面倒なんだ。」

 

「……炎に関しては備え付けだからな。」

 

レイカの呟きは誰にも聞こえなかった。

 

いや聞こえないように呟いていた。

 

 

 

さっそく、二手へ分かれる。

 

レイカ、ユリ、ダイフクー、シャーベット。

 

そして、

 

ウインナー、ドロップ、ブリトー、スムージー。

 

それぞれ遺跡の奥へ進み始めた。

 

 

 

-それぞれの探索-

 

 

 

レイカたちの道は、

 

至る所に罠が仕掛けられていた。

 

矢が飛ぶ。

 

床が抜ける。

 

岩が転がる。

 

その度に全員が避けていく。

 

だが。

 

「おや?」

 

シャーベットが壁のスイッチを押した。

 

ガコン。

 

「シャーベットォォ!!」

 

ダイフクーが叫ぶ。

 

巨大な岩が転がり始めた。

 

四人は全力疾走。

 

なんとか逃げ切り、大きな石扉へ飛び込む。

 

扉を閉めた瞬間。

 

轟音と共に岩が止まった。

 

「……死ぬかと思った。」

 

ダイフクーが息を切らす。

 

シャーベットは申し訳なさそうに笑った。

 

「すまない。気になってしまって。」

 

レイカはため息をつく。

 

「好奇心で遺跡を壊すな。」

 

その部屋の中央には宝箱が置かれていた。

 

中には黄金色の禁貨が眠っている。

 

「おおお!大量じゃねえか!!」

 

ユリが静かに拾い上げた。

 

「また一枚。」

 

レイカは宝箱ごと持ち上げる。

 

「よし。」

 

「持って帰る。」

 

ダイフクーが笑った。

 

「その発想好きだぜ。」

 

「対価はいただかないとな。」

 

「何もなければよいが…。」

 

四人はさらに奥へ進んだ。

 

 

 

一方その頃。

 

ウインナーたちの通路には罠はなかった。

 

代わりに進むほど風が強くなっていく。

 

スムージーが歩きながら笑う。

 

「ハラペーニョがさ。」

 

「パルの髪の毛を金にしたことあったよな。」

 

ブリトーも笑う。

 

「怒られてたな。」

 

二人は少しずつ思い出話を続けていた。

 

懐かしい空気が流れる。

 

やがて巨大な大広間へ辿り着く。

 

中央には真っ赤な禁貨。

 

スムージーが目を見開いた。

 

「……ここ。」

 

「俺が目覚めた場所だ!!」

 

ブリトーが禁貨へ近づく。

 

 

その瞬間。

 

地面が揺れた。

 

轟音。

 

床を突き破り、巨大な岩のゴーレムが現れる。

 

 

「オオオオォォォ!!」

 

 

拳が振り下ろされる。

 

ブリトーは風に乗り、紙一重で回避した。

 

「ウィンディ……カフェラテ!!」

 

腕輪が銅のように輝く。

 

その瞬間。

 

周囲の岩壁が動き出し、

 

巨大な岩がゴーレムの身体へ絡みつく。

 

一瞬で拘束された。

 

ブリトーの足元へ風が集まる。

 

猛烈な加速。

 

風は腕へ伝い、

 

さらに掌へ集束していく。

 

ゴーレムの胸。

 

核となる部分へ狙いを定める。

 

 

 

「ゼロ距離──」

 

「ウィンディターミネーション!!」

 

 

 

掌から圧縮された暴風が叩き込まれた。

 

轟音。

 

核が砕け散る。

 

ゴーレムは音を立てて崩れ落ちた。

 

静寂。

 

スムージーは目を丸くしていた。

 

「お前……。」

 

「そんなに強かったのか。」

 

ブリトーも驚いたように自分の手を見る。

 

「……体が自然と動く。」

 

ウインナーは微笑む。

 

「修行の成果だよ。」

 

「さすがレイカだな…。」

 

四人は赤い禁貨を手に取り、さらに奥へ進んだ。

 

 

 

-壁画の真実-

 

 

 

最奥部。

 

「…おっ、合流か。」

 

「みんな無事みたいだね。」

 

巨大な石扉の前で、二組は合流した。

 

力を合わせて扉を押し開く。

 

重い音が遺跡中へ響く。

 

その先に広がっていたのは、

 

壁一面に古代文字が刻まれた巨大な空間だった。

 

「すごい空間だなここは…。」

 

シャーベットとウインナーは文字を読み始める。

 

しばらく沈黙が流れる。

 

そして。

 

ブリトーが壁画を見つけた。

 

そこには、

 

かつてのサラミッドが描かれていた。

 

その横に刻まれていた古代文字。

 

シャーベットが静かに読み上げる。

 

 

 

「サラミッド崩れし時、時を越え復活の時あり。」

 

「闇の力ありき、または光の力ゆえに。」

 

「新たなる時は紡がれん。」

 

 

 

誰も言葉を失う。

 

ブリトーだけが静かに呟いた。

 

「闇の力……メザン。」

 

「光の力……パル。」

 

「誰かが意図的に、僕たちをこの時代へ呼んだ。」

 

静寂。

 

レイカが腕を組む。

 

「……つまり。」

 

「世界のどこかに、サラミッドは存在する。」

 

その言葉が遺跡へ響いた。

 

誰もが新たな真実を胸へ刻む。

 

 

 

-置いていけ-

 

 

 

探索を終え、一行は出口へ向かって歩き始めた。

 

その時だった。

 

背後から、

 

 

ゴゴゴゴゴ……

 

 

と重い音が響く。

 

全員が振り返る。

 

暗闇の奥から、

 

数え切れないほどのゴーレムたちが現れていた。

 

その瞳が赤く光る。

 

そして一斉に低い声を響かせた。

 

 

「オイテイケ……。」

 

「オイテイケェェェ……。」

 

 

ブリトーが青ざめる。

 

「な、なんだあれ!?」

 

シャーベットはレイカの腕に抱えられた宝箱を見る。

 

「……レイカ。」

 

「その、宝箱のことではないか?」

 

全員が固まる。

 

レイカも宝箱を見る。

 

「……あ。」

 

一秒後。

 

ダイフクーが叫んだ。

 

「逃げろぉぉぉぉぉ!!」

 

全員が全力疾走。

 

後ろから大量のゴーレムが追いかけてくる。

 

「オイテイケェェェ!!」

 

「オイテイケェェェ!!」

 

遺跡中へ悲鳴と足音が響き渡る。

 

その先に待つものをまだ誰も知らないまま――。

 

 

 

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