-帰る場所-
-空の旅-
ヒナベ島を離れ、乗り換えた気球船は、
ゆっくりと空を進んでいた。
甲板ではダイフクーが大きく伸びをする。
「いやぁー!船もいいけど、空は最高だな!」
シャーベットは眼鏡を直しながら景色を見ている。
「雲の上は何度見ても飽きないね。」
ブリトーは身を乗り出して目を輝かせる。
「僕、こんな景色初めて見た。」
ドロップは笑いながら手を振る。
「落ちないでよ?」
その様子にみんなが笑った。
ウインナーは手すりへ寄りかかり、遠くを見つめる。
「久しぶりだな……。」
「みんな元気かな。」
隣へドロップが立つ。
「緊張してる?」
「少しだけ。」
「でも楽しみ。」
自然と二人は笑い合う。
その少し離れた場所。
レイカは煙草をくわえ、雲を眺めていた。
ユリが隣へ並ぶ。
「帰るの、嫌?」
レイカは煙を吐く。
「……嫌ではないが。」
その先の言葉は続かなかった。
風だけが静かに流れていく。
-夢の国-
半日後。
雲の切れ間から巨大な施設が見えてきた。
遊園地のような街並み。
観覧車。
噴水広場。
芝生広場。
寮や食堂、大浴場まで備えられている。
そして入口付近には、大きなハウス。
「すごーい!」
「遊園地みたい!」
ドロップが声を上げる。
ブリトーも目を輝かせる。
「すごいな……!!」
ダイフクーは笑う。
「俺は食堂が気になるぜ。」
シャーベットも頷く。
「図書館があれば完璧だな。」
ユリは微笑む。
「みんなが笑顔になれる場所ね。」
ウインナーは目を潤ませていた。
「夢だったんだ。」
「みんなが帰ってこれる場所を作るのが。」
ドロップはそっと隣へ寄り添う。
「素敵な夢ね。」
和やかな空気の中、気球船はゆっくりと着陸した。
-再会-
入口には三人が待っていた。
ラクガン。
カクザトー。
コクトー。
三人はウインナーを見るなり駆け寄ってくる。
「ウインナー!!」
「夢叶えたんだな!」
「久しぶり!!」
「帰ってくると思ってたぞ!」
ウインナーも笑顔になる。
「久しぶり!」
ダイフクーも拳を合わせる。
「元気そうじゃねぇか!」
ドロップも手を振る。
「ただいま!」
その後ろで、
レイカ、ユリ、シャーベット、ブリトーは軽く頭を下げた。
ラクガンたちも笑顔で返す。
「よろしくな!」
その時。
ブリトーが辺りを見回した。
「……わりと静かだね。」
「もっと賑やかだと思ってた。」
確かに広いランドにしては、人影が少ない。
ラクガンは少しだけ困ったように笑った。
「…説明する。中に入ろう。」
そう言って一行を案内した。
-兄妹-
ハウスの扉が開く。
奥から小さな足音。
「……ウインナーお兄ちゃん?」
振り返ったウインナーの目が見開く。
「キウイ!」
その後ろからパインも走ってきた。
「お兄ちゃんだ!!」
二人は勢いよく飛びつく。
ウインナーは優しく抱きしめた。
「ただいま。」
「「おかえり!!会いたかったよ!!」」
その光景を見て、みんなが笑顔になる。
そんな中。
レイカだけが静かに辺りを見渡していた。
知っている顔が、一人もいない。
ぼそりと呟く。
「……あいついないのか。」
その声は誰にも届かなかった。
-違和感-
ハウスの中を歩く一行。
ウインナーは辺りを見回す。
「子供たち、少なくなった?」
ラクガンが頷く。
「新しい家族にどんどん迎えられていってな。」
「嬉しいことなんだがな。」
その話を聞いていたレイカが静かに口を開く。
「……ここ最近で一気に子供は減ったのか?」
「ああ。」
「バタバタと家族が決まってな……。」
「それは定期的にあるのか?」
ラクガンは首を傾げる。
「俺たちが来てからは何度か。」
「……何かあるのか?」
レイカは少し黙る。
そして静かに首を横へ振った。
「…………いや。」
「気になっただけだ。」
「すまない。」
その後。
みんなは子供たちと遊び始めた。
ランドを歩き回り、
遊具ではしゃぎ、
食堂で笑い合う。
穏やかな時間が流れる。
しかし。
レイカだけは一人、
静かに廊下を歩いていた。
向かった先は、
スパム先生の自室。
扉の前で立ち止まり、
ゆっくりと目を閉じる。
「……同じこと繰り返してんのか、あいつ。」
静寂。
レイカは小さく息を吐く。
「……やっぱり、あの時に。」
その続きを口にすることはなかった。
部屋の奥から吹き込む風だけが、
静かにカーテンを揺らしていた――。