-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第十九章

 

 

 

-帰る場所-

 

 

 

-空の旅-

 

 

 

ヒナベ島を離れ、乗り換えた気球船は、

 

ゆっくりと空を進んでいた。

 

甲板ではダイフクーが大きく伸びをする。

 

「いやぁー!船もいいけど、空は最高だな!」

 

シャーベットは眼鏡を直しながら景色を見ている。

 

「雲の上は何度見ても飽きないね。」

 

ブリトーは身を乗り出して目を輝かせる。

 

「僕、こんな景色初めて見た。」

 

ドロップは笑いながら手を振る。

 

「落ちないでよ?」

 

その様子にみんなが笑った。

 

ウインナーは手すりへ寄りかかり、遠くを見つめる。

 

「久しぶりだな……。」

 

「みんな元気かな。」

 

隣へドロップが立つ。

 

「緊張してる?」

 

「少しだけ。」

 

「でも楽しみ。」

 

自然と二人は笑い合う。

 

その少し離れた場所。

 

レイカは煙草をくわえ、雲を眺めていた。

 

ユリが隣へ並ぶ。

 

「帰るの、嫌?」

 

レイカは煙を吐く。

 

「……嫌ではないが。」

 

その先の言葉は続かなかった。

 

風だけが静かに流れていく。

 

 

 

-夢の国-

 

 

 

半日後。

 

雲の切れ間から巨大な施設が見えてきた。

 

遊園地のような街並み。

 

観覧車。

 

噴水広場。

 

芝生広場。

 

寮や食堂、大浴場まで備えられている。

 

そして入口付近には、大きなハウス。

 

「すごーい!」

 

「遊園地みたい!」

 

ドロップが声を上げる。

 

ブリトーも目を輝かせる。

 

「すごいな……!!」

 

ダイフクーは笑う。

 

「俺は食堂が気になるぜ。」

 

シャーベットも頷く。

 

「図書館があれば完璧だな。」

 

ユリは微笑む。

 

「みんなが笑顔になれる場所ね。」

 

ウインナーは目を潤ませていた。

 

 

「夢だったんだ。」

 

「みんなが帰ってこれる場所を作るのが。」

 

 

ドロップはそっと隣へ寄り添う。

 

「素敵な夢ね。」

 

和やかな空気の中、気球船はゆっくりと着陸した。

 

 

 

-再会-

 

 

 

入口には三人が待っていた。

 

ラクガン。

 

カクザトー。

 

コクトー。

 

三人はウインナーを見るなり駆け寄ってくる。

 

「ウインナー!!」

 

「夢叶えたんだな!」

 

「久しぶり!!」

 

「帰ってくると思ってたぞ!」

 

ウインナーも笑顔になる。

 

「久しぶり!」

 

ダイフクーも拳を合わせる。

 

「元気そうじゃねぇか!」

 

ドロップも手を振る。

 

「ただいま!」

 

その後ろで、

 

レイカ、ユリ、シャーベット、ブリトーは軽く頭を下げた。

 

ラクガンたちも笑顔で返す。

 

「よろしくな!」

 

その時。

 

ブリトーが辺りを見回した。

 

「……わりと静かだね。」

 

「もっと賑やかだと思ってた。」

 

確かに広いランドにしては、人影が少ない。

 

ラクガンは少しだけ困ったように笑った。

 

「…説明する。中に入ろう。」

 

そう言って一行を案内した。

 

 

 

-兄妹-

 

 

 

ハウスの扉が開く。

 

奥から小さな足音。

 

「……ウインナーお兄ちゃん?」

 

振り返ったウインナーの目が見開く。

 

「キウイ!」

 

その後ろからパインも走ってきた。

 

「お兄ちゃんだ!!」

 

二人は勢いよく飛びつく。

 

ウインナーは優しく抱きしめた。

 

「ただいま。」

 

「「おかえり!!会いたかったよ!!」」

 

その光景を見て、みんなが笑顔になる。

 

そんな中。

 

レイカだけが静かに辺りを見渡していた。

 

知っている顔が、一人もいない。

 

ぼそりと呟く。

 

 

「……あいついないのか。」

 

 

その声は誰にも届かなかった。

 

 

 

-違和感-

 

 

 

ハウスの中を歩く一行。

 

ウインナーは辺りを見回す。

 

「子供たち、少なくなった?」

 

ラクガンが頷く。

 

「新しい家族にどんどん迎えられていってな。」

 

「嬉しいことなんだがな。」

 

その話を聞いていたレイカが静かに口を開く。

 

「……ここ最近で一気に子供は減ったのか?」

 

「ああ。」

 

「バタバタと家族が決まってな……。」

 

「それは定期的にあるのか?」

 

ラクガンは首を傾げる。

 

「俺たちが来てからは何度か。」

 

「……何かあるのか?」

 

レイカは少し黙る。

 

そして静かに首を横へ振った。

 

「…………いや。」

 

「気になっただけだ。」

 

「すまない。」

 

 

その後。

 

みんなは子供たちと遊び始めた。

 

ランドを歩き回り、

 

遊具ではしゃぎ、

 

食堂で笑い合う。

 

穏やかな時間が流れる。

 

しかし。

 

レイカだけは一人、

 

静かに廊下を歩いていた。

 

向かった先は、

 

スパム先生の自室。

 

扉の前で立ち止まり、

 

ゆっくりと目を閉じる。

 

 

「……同じこと繰り返してんのか、あいつ。」

 

 

静寂。

 

レイカは小さく息を吐く。

 

 

 

「……やっぱり、あの時に。」

 

 

 

その続きを口にすることはなかった。

 

部屋の奥から吹き込む風だけが、

 

静かにカーテンを揺らしていた――。

 

 

 

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