-裏切りの代償-
-黒幕-
巨大な空洞。
冷たい風が吹き抜けるその最奥で、
三つの人影が静かに立っていた。
スパム。
ポタージュ。
そして、メザン。
その奥には、大きな鉄格子の檻。
キウイ、パインをはじめ、
ランドにいた子供たち全員が閉じ込められていた。
「お兄ちゃん!!」
「助けて!!」
子供たちの泣き声が洞窟へ響く。
ウインナーは思わず駆け出そうとした。
「みんな!!」
しかし、レイカが腕を伸ばして制した。
「待て。」
空気が張り詰める。
ポタージュは静かに笑った。
「ようこそ。」
「待っていたぞ。」
-裏切り-
ウインナーはスパムを見つめる。
震える声で問いかけた。
「……なんで。」
「スパム先生…。」
「なんでこんなことをするの?」
スパムは穏やかに微笑んだ。
「生きていくための商売だよ。」
「私はお金だけを信じているからね。」
「君が言う愛もお金で買えるもの。」
「そして今回のお客様が、この二人なんだ。」
「みんな仲良しランドが突然現れた日。」
「ちょうどこの二人と取引をしていた。」
「メザン様はサラミッドの皆の位置がわかる。」
「信じなさい!」
「そこのブリトー君に用があるみたいだったから。」
「ウインナーのことだから一度帰ってくると思ってね。」
今まで黙っていたメザンの口が開く。
「全ては俺様の手のひらの上ってことだ。」
ポタージュとメザンが静かに前へ出る。
メザンは子供たちを見る。
「純粋な魂。」
「古代の従者を蘇らせるには十分だ。」
「世界はやがて我らのものになる。」
ブリトーが前へ出た。
「やめろ!何のためにそんなことを!」
「そんな事のために、僕たちを現代に呼んだのか!」
ポタージュは静かに笑う。
「…ブリトー。」
「こちらへ来い。」
「メザン様の力となれ。」
ブリトーは首を横へ振った。
「……断る。」
「お前らの戯れに付き合う気はない。」
その返事に、メザンは楽しそうに笑う。
「だろうな。」
「では、パルはどうなるかな?」
ブリトーの顔色が変わった。
「……パル?」
「パルはこちら側だ。」
「信じなさい。」
ブリトーは言葉を失った。
どうすればいいのか。
何が正しいのか。
頭の中が真っ白になった。
「……くっ。どうすれば……。」
-闇の檻-
レイカは静かに刀へ手を添える。
「……やはり。」
「あの時に仕留めれば良かった。」
炎が揺らめく。
しかしメザンは冷静だった。
「冷静に見えて、感情的だな。」
「…ここはスパムの腕を見せてもらおう。」
「こいつらに手間取られては意味がない。」
その瞬間。
巨大な闇が広がる。
ユリ。
ドロップ。
ブリトー。
三人は黒い球体へ閉じ込められた。
「指定していない者は邪魔だ。」
「そこで大人しくしていろ。」
ドロップは球体を叩く。
「何よこれ!!」
「出しなさい!!」
ユリは右手を掲げる。
「氷華流──紬。」
掌へ集まった氷の花びらが一点へ放たれる。
鋭い一撃。
しかし闇の球体には傷一つ付かなかった。
「……硬い。」
ブリトーも拳を叩きつける。
「くっそ!!」
誰一人、外へ出られない。
-古代退魔の剣-
スパムが静かに笑う。
「レイカ。」
「君の相手は、私じゃない。」
無数の影が地面から伸びる。
レイカへ襲い掛かった。
しかし。
「無駄だ!!」
炎が閃く。
影は全て切り裂かれた。
その一瞬。
背後からポタージュが現れる。
「信じなさい!!」
右肩へ一本。
腹部へ一本。
古代退魔の剣が深く突き刺さる。
「ぐっ…!!!」
そのまま壁へ縫い付けられた。
「これは不老不死の貴様だけに効く剣だ。」
「古代より受け継がれた退魔の武器。」
「信じなさい!」
レイカの血が地面へ落ちる。
傷は閉じない。
再生もしない。
「……ちっ。」
「古代の武器か。」
「全く、動けん……。」
ポタージュはレイカの前に立つ。
「そこで見ているがいい!」
「あの少年が絶望するのを!」
「信じなさい!」
闇の中。
ドロップは震えていた。
「不老不死……?」
「どういうこと……?」
「レイカが動けないの!?」
涙を流しながら叫ぶ。
「出しなさいよ!!」
ユリも闇へ向けて氷を放つ。
「割れなさい!!」
「出して!……レイカが!!!」
しかし球体はびくともしなかった。
-崩れる心-
スパムはウインナーを見つめる。
「後は君だけだ。」
ウインナーは涙を浮かべる。
「スパム先生……。」
「なんで。」
「どうして……。」
スパムは静かに笑った。
「どうしても何もない。」
「君が気づかなかっただけだ。」
「私はずっとこうやって生きてきた。」
「何も特別なことじゃない。」
少しだけ上を見上げる。
「ああ。」
「でも風の加護だけは驚いたよ。」
「あのまま消えてほしかったんだが…。」
「その後。」
「レイカに崖へ突き落としたことがバレてね。」
「問い詰められた時は、本当に焦った。」
ウインナーの瞳が揺れる。
スパムは淡々と続ける。
「レイカのあの時の目が怖くてね。」
「すぐ里親へ出して正解だった。」
「まさかここまで強くなるとは。」
「まあ、お金さえ貰えればそれでよかったがね。」
「レイカはすぐ捨てられたと聞いていたから。」
「生きていて驚いたよ。」
ウインナーの身体が震える。
握った拳から血が滲む。
「……もう。」
「黙ってくれ!!」
風が荒れ狂う。
「風のエチュード!!!」
鋭い風が一直線に走る。
しかし。
スパムは冷静だった。
「感情に揺さぶられ、攻撃が荒くなる。」
「それでは三流だよ。」
右手を掲げる。
「影よ。」
「我を護り。」
「奴を串刺しにせよ。」
無数の狐の影。
四方八方からウインナーへ襲い掛かる。
腕。
脚。
肩。
身体中へ刺し傷が刻まれる。
最後の一撃。
腹部へ深く突き刺さった。
「っ……!」
ウインナーはその場へ崩れ落ちる。
「ウインナー!!」
ドロップの悲鳴が響く。
ユリは必死に闇を叩く。
「出して!!」
ブリトーも叫ぶ。
「割れろ!!」
しかし誰も届かない。
スパムは静かに振り返る。
「邪魔者は居なくなったね。」
静寂。
その時だった。
壁へ縫い付けられたレイカが、小さく口を開く。
「……おい。」
「終わった気でいるのか。」
スパムが振り返る。
「……まだ話せるのかい?」
「傷は深いだろう?」
「大人しくしていてくれ。」
「手荒なことは本当は避けたい。」
「あとは子どもたちだけだ。」
レイカは血を流しながら、不敵に笑った。
「ふっ……。」
風の加護を使ってウインナーに声をかける。
その声はウインナーとブリトー。
この二人にしか届かない。
(……ウインナー。)
(……大丈夫。やるしかない。)
(すまない……ブリトー。後は頼んだぞ。)
(……わかった。)
そして。
倒れているウインナーへ向かって叫ぶ。
「ウインナー!!」
「やれ!!!」
その言葉に、スパムの表情が初めて崩れた。
「……えっ?」
洞窟の奥で、
風が静かに渦を巻き始めていた――。