-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第二十二章

 

 

 

 

-裏切りの代償-

 

 

 

-黒幕-

 

 

 

巨大な空洞。

 

冷たい風が吹き抜けるその最奥で、

 

三つの人影が静かに立っていた。

 

スパム。

 

ポタージュ。

 

そして、メザン。

 

その奥には、大きな鉄格子の檻。

 

キウイ、パインをはじめ、

 

ランドにいた子供たち全員が閉じ込められていた。

 

「お兄ちゃん!!」

 

「助けて!!」

 

子供たちの泣き声が洞窟へ響く。

 

ウインナーは思わず駆け出そうとした。

 

「みんな!!」

 

しかし、レイカが腕を伸ばして制した。

 

「待て。」

 

空気が張り詰める。

 

ポタージュは静かに笑った。

 

「ようこそ。」

 

「待っていたぞ。」

 

 

 

-裏切り-

 

 

 

ウインナーはスパムを見つめる。

 

震える声で問いかけた。

 

「……なんで。」

 

「スパム先生…。」

 

「なんでこんなことをするの?」

 

スパムは穏やかに微笑んだ。

 

 

「生きていくための商売だよ。」

 

「私はお金だけを信じているからね。」

 

「君が言う愛もお金で買えるもの。」

 

「そして今回のお客様が、この二人なんだ。」

 

「みんな仲良しランドが突然現れた日。」

 

「ちょうどこの二人と取引をしていた。」

 

 

「メザン様はサラミッドの皆の位置がわかる。」

 

「信じなさい!」

 

 

「そこのブリトー君に用があるみたいだったから。」

 

「ウインナーのことだから一度帰ってくると思ってね。」

 

 

今まで黙っていたメザンの口が開く。

 

 

「全ては俺様の手のひらの上ってことだ。」

 

 

ポタージュとメザンが静かに前へ出る。

 

メザンは子供たちを見る。

 

「純粋な魂。」

 

「古代の従者を蘇らせるには十分だ。」

 

「世界はやがて我らのものになる。」

 

ブリトーが前へ出た。

 

「やめろ!何のためにそんなことを!」

 

「そんな事のために、僕たちを現代に呼んだのか!」

 

ポタージュは静かに笑う。

 

「…ブリトー。」

 

「こちらへ来い。」

 

「メザン様の力となれ。」

 

ブリトーは首を横へ振った。

 

「……断る。」

 

「お前らの戯れに付き合う気はない。」

 

その返事に、メザンは楽しそうに笑う。

 

「だろうな。」

 

「では、パルはどうなるかな?」

 

ブリトーの顔色が変わった。

 

「……パル?」

 

「パルはこちら側だ。」

 

「信じなさい。」

 

ブリトーは言葉を失った。

 

どうすればいいのか。

 

何が正しいのか。

 

頭の中が真っ白になった。

 

「……くっ。どうすれば……。」

 

 

 

-闇の檻-

 

 

 

レイカは静かに刀へ手を添える。

 

「……やはり。」

 

「あの時に仕留めれば良かった。」

 

炎が揺らめく。

 

しかしメザンは冷静だった。

 

「冷静に見えて、感情的だな。」

 

「…ここはスパムの腕を見せてもらおう。」

 

「こいつらに手間取られては意味がない。」

 

その瞬間。

 

巨大な闇が広がる。

 

ユリ。

 

ドロップ。

 

ブリトー。

 

三人は黒い球体へ閉じ込められた。

 

「指定していない者は邪魔だ。」

 

「そこで大人しくしていろ。」

 

ドロップは球体を叩く。

 

「何よこれ!!」

 

「出しなさい!!」

 

ユリは右手を掲げる。

 

「氷華流──紬。」

 

掌へ集まった氷の花びらが一点へ放たれる。

 

鋭い一撃。

 

しかし闇の球体には傷一つ付かなかった。

 

「……硬い。」

 

ブリトーも拳を叩きつける。

 

「くっそ!!」

 

誰一人、外へ出られない。

 

 

 

-古代退魔の剣-

 

 

 

スパムが静かに笑う。

 

「レイカ。」

 

「君の相手は、私じゃない。」

 

無数の影が地面から伸びる。

 

レイカへ襲い掛かった。

 

しかし。

 

「無駄だ!!」

 

炎が閃く。

 

影は全て切り裂かれた。

 

その一瞬。

 

背後からポタージュが現れる。

 

「信じなさい!!」

 

右肩へ一本。

 

腹部へ一本。

 

古代退魔の剣が深く突き刺さる。

 

「ぐっ…!!!」

 

そのまま壁へ縫い付けられた。

 

「これは不老不死の貴様だけに効く剣だ。」

 

「古代より受け継がれた退魔の武器。」

 

「信じなさい!」

 

レイカの血が地面へ落ちる。

 

傷は閉じない。

 

再生もしない。

 

「……ちっ。」

 

「古代の武器か。」

 

「全く、動けん……。」

 

ポタージュはレイカの前に立つ。

 

「そこで見ているがいい!」

 

「あの少年が絶望するのを!」

 

「信じなさい!」

 

 

闇の中。

 

ドロップは震えていた。

 

「不老不死……?」

 

「どういうこと……?」

 

「レイカが動けないの!?」

 

涙を流しながら叫ぶ。

 

「出しなさいよ!!」

 

ユリも闇へ向けて氷を放つ。

 

「割れなさい!!」

 

「出して!……レイカが!!!」

 

しかし球体はびくともしなかった。

 

 

 

-崩れる心-

 

 

 

スパムはウインナーを見つめる。

 

「後は君だけだ。」

 

ウインナーは涙を浮かべる。

 

「スパム先生……。」

 

「なんで。」

 

「どうして……。」

 

スパムは静かに笑った。

 

「どうしても何もない。」

 

「君が気づかなかっただけだ。」

 

「私はずっとこうやって生きてきた。」

 

「何も特別なことじゃない。」

 

少しだけ上を見上げる。

 

 

「ああ。」

 

「でも風の加護だけは驚いたよ。」

 

「あのまま消えてほしかったんだが…。」

 

「その後。」

 

「レイカに崖へ突き落としたことがバレてね。」

 

「問い詰められた時は、本当に焦った。」

 

 

ウインナーの瞳が揺れる。

 

スパムは淡々と続ける。

 

 

「レイカのあの時の目が怖くてね。」

 

「すぐ里親へ出して正解だった。」

 

「まさかここまで強くなるとは。」

 

「まあ、お金さえ貰えればそれでよかったがね。」

 

「レイカはすぐ捨てられたと聞いていたから。」

 

「生きていて驚いたよ。」

 

 

ウインナーの身体が震える。

 

握った拳から血が滲む。

 

 

 

「……もう。」

 

「黙ってくれ!!」

 

 

 

風が荒れ狂う。

 

 

「風のエチュード!!!」

 

 

鋭い風が一直線に走る。

 

しかし。

 

スパムは冷静だった。

 

「感情に揺さぶられ、攻撃が荒くなる。」

 

「それでは三流だよ。」

 

右手を掲げる。

 

「影よ。」

 

「我を護り。」

 

「奴を串刺しにせよ。」

 

無数の狐の影。

 

四方八方からウインナーへ襲い掛かる。

 

腕。

 

脚。

 

肩。

 

身体中へ刺し傷が刻まれる。

 

最後の一撃。

 

腹部へ深く突き刺さった。

 

「っ……!」

 

ウインナーはその場へ崩れ落ちる。

 

「ウインナー!!」

 

ドロップの悲鳴が響く。

 

ユリは必死に闇を叩く。

 

「出して!!」

 

ブリトーも叫ぶ。

 

「割れろ!!」

 

しかし誰も届かない。

 

スパムは静かに振り返る。

 

「邪魔者は居なくなったね。」

 

 

静寂。

 

 

その時だった。

 

壁へ縫い付けられたレイカが、小さく口を開く。

 

「……おい。」

 

「終わった気でいるのか。」

 

スパムが振り返る。

 

「……まだ話せるのかい?」

 

「傷は深いだろう?」

 

「大人しくしていてくれ。」

 

「手荒なことは本当は避けたい。」

 

「あとは子どもたちだけだ。」

 

レイカは血を流しながら、不敵に笑った。

 

「ふっ……。」

 

風の加護を使ってウインナーに声をかける。

 

その声はウインナーとブリトー。

 

この二人にしか届かない。

 

(……ウインナー。)

 

(……大丈夫。やるしかない。)

 

(すまない……ブリトー。後は頼んだぞ。)

 

(……わかった。)

 

そして。

 

倒れているウインナーへ向かって叫ぶ。

 

 

 

「ウインナー!!」

 

「やれ!!!」

 

 

 

その言葉に、スパムの表情が初めて崩れた。

 

「……えっ?」

 

洞窟の奥で、

 

風が静かに渦を巻き始めていた――。

 

 

 

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