-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第二十三章

 

 

 

-風の調和-

 

 

 

-風はまだ終わらない-

 

 

 

「──やれ!!」

 

 

 

レイカの怒号が洞窟中へ響いた。

 

その瞬間。

 

倒れていたウインナーの身体を、

 

優しい風が包み込む。

 

同時にレイカの身体にも風が集まる。

 

ウインナーは静かに呟く。

 

 

 

「……風のシンフォニー・第二番。」

 

「……風のハーモニー。」

 

 

 

轟音。

 

洞窟全体へ柔らかな風が吹き荒れる。

 

傷だらけだった身体が、

 

まるで時間を巻き戻すように元へ戻っていく。

 

裂けた服だけを残して。

 

血も傷も消えていく。

 

風が晴れた瞬間。

 

二人は同時に飛び出した。

 

 

「なっ──!!」

 

 

スパムが目を見開く。

 

レイカは静かに耳のピアスを一つ外す。

 

「……終わりだ。」

 

一閃。

 

ポタージュの身体を炎飛が斬り裂いた。

 

「ふふふ、無駄です!」

 

「霞の私は不死身なのです!!」

 

「信じなさい!!」

 

しかし、

 

斬られた傷口から、

 

黒い炎が燃え始める。

 

「な、何故消えない!?」

 

レイカは冷たく答えた。

 

 

「……俺の刀は。」

 

「妖刀だ。」

 

「お前みたいなやつを切るためのな。」

 

「…一生燃え続けろ。」

 

「燃やすことを止めるのは俺だけだ。」

 

 

刀を静かに納める。

 

 

 

「我流・炎飛流── 陽炎 」

 

 

 

黒炎が一気に燃え上がった。

 

「ぎゃあああああああ!!」

 

ポタージュは地面を転げ回る。

 

しかし炎は消えない。

 

 

 

-白き禁貨-

 

 

 

その隙を逃さず、

 

ウインナーが前へ出る。

 

 

「風のエチュード!!」

 

 

巨大な風圧が一直線に走る。

 

スパムの身体を壁へ叩きつけた。

 

「ぐっ……!!」

 

洞窟が揺れる。

 

 

その頃。

 

闇の球体の中。

 

ブリトーは足元に何かを見つけていた。

 

白く光る禁貨。

 

「これは……!」

 

拾い上げる。

 

 

 

「パル!!!」

 

 

 

腕輪が激しく共鳴する。

 

光が溢れた。

 

闇の球体へ亀裂が走る。

 

バキッ!!

 

一瞬で砕け散った。

 

ユリもドロップも解放される。

 

「ウインナー!!」

 

「……レイカ!!」

 

ブリトーは静かに頷いた。

 

「出れた…!」

 

「……ありがとう、パル。」

 

 

 

-撤退-

 

 

 

「……何故、割れた?」

 

メザンは静かに笑う。

 

「……ふっ。まあいい。」

 

「今日はここまでか。」

 

「子供たちは返してやろう。」

 

「だが諦めたわけじゃない。」

 

「ポタージュ、スパム。」

 

「戻るぞ。」

 

「熱い!熱いです!信じなさい!」

 

「いい一撃でしたよ、ウインナー。」

 

「……ふふ、また会いましょう。」

 

 

闇が三人を包み始める。

 

ブリトーが叫ぶ。

 

「待て!!」

 

ユリは今までにない冷徹な顔で、

 

右手を掲げた。

 

「…………絶対零度!!!!」

 

巨大な氷柱が闇を飲み込む。

 

しかし。

 

凍った先には、

 

誰もいなかった。

 

静寂だけが残る。

 

「……間に合わなかった。」

 

 

 

-帰還-

 

 

 

レイカはすぐ振り返る。

 

ウインナーは色んな感情が入り交じっていて、

 

動けそうにない。

 

ドロップはそれに気づく。

 

「……ウインナーは、私に任せて。」

 

レイカは頷いた。

 

「ブリトー、ユリ。」

 

「子供たちを運ぶ。」

 

ブリトーは頷く。

 

「任せてくれ。」

 

「ウィンディ・カフェラテ。」

 

岩が浮かび、

 

巨大な足場となる。

 

その上へ子供たちを乗せ、

 

優しい風が包み込む。

 

レイカとユリが先頭へ立つ。

 

「…頼んだぞ、ドロップ。」

 

「ええ、任せて。」

 

 

 

帰路。

 

 

 

ユリが静かに口を開いた。

 

「……何も出来なくてごめんなさい。」

 

レイカは少し悲しい顔で答える。

 

「……戻ったら恐らく迷惑をかけることになる。」

 

「すまない。」

 

ユリは首を傾げる。

 

「……?」

 

「急ぐぞ。」

 

「ブリトー、頼む。」

 

「ああ。」

 

「任せてくれ。」

 

 

 

その頃。

 

洞窟には、

 

ウインナーとドロップだけが残っていた。

 

ウインナーは膝をつく。

 

震えていた。

 

「どうして……。」

 

「先生が。」

 

「なんでこうなったんだ。」

 

「子供たちを愛していたのに。」

 

「全部嘘だったのか。」

 

「僕は、要らない子だったのか。」

 

ドロップは静かに抱きしめた。

 

「…大丈夫。」

 

「一人じゃない。」

 

「まずは子供たちが先よ。」

 

「しっかりしなさい。」

 

「その後なら、たくさん受け止めるから。」

 

「ね?」

 

ウインナーは目を閉じる。

 

「……うん。」

 

「ありがとう。」

 

「……戻ったら迷惑をかけると思う。」

 

「急ごう。」

 

ドロップは優しく笑った。

 

「……ええ。」

 

二人も風に乗ってランドへ向かった。

 

 

 

-反動-

 

 

 

みんな仲良しランド。

 

「無事だったか!」

 

ダイフクー達が迎える。

 

子供たちは無事保護された。

 

「怖かったあ!!」

 

「よく無事に帰ってきてくれた。」

 

歓声と安堵が広がる。

 

「子どもたちをハウスへ連れて行ってあげて?」

 

ウインナーの指示により、子供たちを、

 

コクトー、カクザトーが連れていく。

 

子どもたちがハウスへ入っていった。

 

その瞬間。

 

ふらっ──。

 

レイカがよろめく。

 

「……つっ。……来たか。」

 

同時にウインナーも崩れ落ちた。

 

「……ごめんね。」

 

「……すまない。」

 

二人は倒れる。

 

「えっ?」

 

そして。

 

消えていた傷が、

 

一気に元へ戻っていく。

 

身体中に穴があき、

 

血が溢れる。

 

ドロップが叫ぶ。

 

「きゃああ!!ウインナー!!」

 

「……レイカ!?なぜ傷が……。」

 

ダイフクーも駆け寄る。

 

「ボロボロじゃねぇか!!やべえぞ!?」

 

「早く手当を!!」

 

ブリトーが腕輪を掲げた。

 

「ウィンディ・ラビィオリ!!」

 

癒しの水が二人を包む。

 

「事情は後で説明する!」

 

「ウインナーは僕が!」

 

ユリもレイカへ駆け寄る。

 

「氷華流──雪解。」

 

雪が静かに傷を癒していく。

 

 

 

長い治療の時間が流れた。

 

ブリトーとユリ。

 

使えるだけの力を使って治療に専念した。

 

その後、二人も休息に入っていた。

 

やがて。

 

ブリトーが立ち上がる。

 

「……ふう。」

 

「後は本人たちの体力次第だ。」

 

ドロップが尋ねる。

 

「……どういうことなの?」

 

ブリトーは目を閉じた。

 

「怒らないで聞いてくれ。」

 

「黙っていたわけじゃない。」

 

「緊急事態しか使わないと決めていた技なんだ。」

 

シャーベットも真剣な表情になる。

 

「何があった?」

 

ブリトーは説明した。

 

「風のハーモニーは。」

 

「風の加護の真髄に近い技だと思う。」

 

「浴びた者の傷を一時的に無かったことにする。」

 

「回復じゃない感覚。」

 

「時間を巻き戻しているようなものだ。」

 

「だから。」

 

「傷が重いほど反動も大きい。」

 

「ここぞという時しか使いたくないと。」

 

「修行の時から話していた。」

 

「ウインナーが風から教えてもらった。」

 

「そう言っていた。」

 

ユリは静かに頷いた。

 

「だから。」

 

「後で迷惑をかけるって言ってたのね……。」

 

ブリトーは申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「すまない。」

 

その空気を、

 

ダイフクーが吹き飛ばす。

 

「まぁ!」

 

「何とかなったんだ!」

 

「後は本人たちに聞こうぜ!」

 

ブリトーは小さく笑った。

 

「……ありがとう。」

 

 

 

-秘密-

 

 

 

静かな夜。

 

ドロップとユリはベンチへ座っていた。

 

ドロップが小さく尋ねる。

 

「ねえ、ユリさん。」

 

「ん?」

 

「……二人って。」

 

「不老不死なの?」

 

ユリは空を見上げた。

 

そして静かに笑う。

 

「……もう黙っておけないよね。」

 

「……そう。」

 

「不老不死というか。」

 

「簡単に話すとね。」

 

「レイカは、父親に人間と化け物を混ぜられて生まれた存在。」

 

「私は雪女と人間の間に生まれた子。」

 

ドロップは固まった。

 

「……えっと。」

 

「待って。」

 

「えっと。」

 

ユリは苦笑する。

 

「混乱するよね。」

 

「ごめんね。」

 

「だから私たちは。」

 

「普通の人より何倍も長く生きて。」

 

「歳もゆっくり取るの。」

 

「黙っててごめんね。」

 

ドロップは首を横に振った。

 

「……言いにくいこと聞いてごめんなさい。」

 

「みんなには話さない方がいい?」

 

ユリは優しく微笑んだ。

 

「ドロップが話したい人だけに話せばいい。」

 

「私もレイカも、それでいいから。」

 

ドロップは少し泣きそうになりながら笑う。

 

「……おばあちゃんになっても。」

 

「ずっと友達だからね。」

 

ユリは目を見開く。

 

そして、

 

少しだけ涙を浮かべた。

 

「……っ。」

 

「ありがとう。」

 

その時だった。

 

遠くから大きな声が響く。

 

 

「おーーーい!!」

 

「レイカが目を覚ましたぞーーー!!」

 

 

二人は顔を見合わせる。

 

そして同時に立ち上がった。

 

夜風が静かに吹き抜ける中、

 

二人は仲間たちの元へ駆け出していった。

 

 

 

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