-風の調和-
-風はまだ終わらない-
「──やれ!!」
レイカの怒号が洞窟中へ響いた。
その瞬間。
倒れていたウインナーの身体を、
優しい風が包み込む。
同時にレイカの身体にも風が集まる。
ウインナーは静かに呟く。
「……風のシンフォニー・第二番。」
「……風のハーモニー。」
轟音。
洞窟全体へ柔らかな風が吹き荒れる。
傷だらけだった身体が、
まるで時間を巻き戻すように元へ戻っていく。
裂けた服だけを残して。
血も傷も消えていく。
風が晴れた瞬間。
二人は同時に飛び出した。
「なっ──!!」
スパムが目を見開く。
レイカは静かに耳のピアスを一つ外す。
「……終わりだ。」
一閃。
ポタージュの身体を炎飛が斬り裂いた。
「ふふふ、無駄です!」
「霞の私は不死身なのです!!」
「信じなさい!!」
しかし、
斬られた傷口から、
黒い炎が燃え始める。
「な、何故消えない!?」
レイカは冷たく答えた。
「……俺の刀は。」
「妖刀だ。」
「お前みたいなやつを切るためのな。」
「…一生燃え続けろ。」
「燃やすことを止めるのは俺だけだ。」
刀を静かに納める。
「我流・炎飛流── 陽炎 」
黒炎が一気に燃え上がった。
「ぎゃあああああああ!!」
ポタージュは地面を転げ回る。
しかし炎は消えない。
-白き禁貨-
その隙を逃さず、
ウインナーが前へ出る。
「風のエチュード!!」
巨大な風圧が一直線に走る。
スパムの身体を壁へ叩きつけた。
「ぐっ……!!」
洞窟が揺れる。
その頃。
闇の球体の中。
ブリトーは足元に何かを見つけていた。
白く光る禁貨。
「これは……!」
拾い上げる。
「パル!!!」
腕輪が激しく共鳴する。
光が溢れた。
闇の球体へ亀裂が走る。
バキッ!!
一瞬で砕け散った。
ユリもドロップも解放される。
「ウインナー!!」
「……レイカ!!」
ブリトーは静かに頷いた。
「出れた…!」
「……ありがとう、パル。」
-撤退-
「……何故、割れた?」
メザンは静かに笑う。
「……ふっ。まあいい。」
「今日はここまでか。」
「子供たちは返してやろう。」
「だが諦めたわけじゃない。」
「ポタージュ、スパム。」
「戻るぞ。」
「熱い!熱いです!信じなさい!」
「いい一撃でしたよ、ウインナー。」
「……ふふ、また会いましょう。」
闇が三人を包み始める。
ブリトーが叫ぶ。
「待て!!」
ユリは今までにない冷徹な顔で、
右手を掲げた。
「…………絶対零度!!!!」
巨大な氷柱が闇を飲み込む。
しかし。
凍った先には、
誰もいなかった。
静寂だけが残る。
「……間に合わなかった。」
-帰還-
レイカはすぐ振り返る。
ウインナーは色んな感情が入り交じっていて、
動けそうにない。
ドロップはそれに気づく。
「……ウインナーは、私に任せて。」
レイカは頷いた。
「ブリトー、ユリ。」
「子供たちを運ぶ。」
ブリトーは頷く。
「任せてくれ。」
「ウィンディ・カフェラテ。」
岩が浮かび、
巨大な足場となる。
その上へ子供たちを乗せ、
優しい風が包み込む。
レイカとユリが先頭へ立つ。
「…頼んだぞ、ドロップ。」
「ええ、任せて。」
帰路。
ユリが静かに口を開いた。
「……何も出来なくてごめんなさい。」
レイカは少し悲しい顔で答える。
「……戻ったら恐らく迷惑をかけることになる。」
「すまない。」
ユリは首を傾げる。
「……?」
「急ぐぞ。」
「ブリトー、頼む。」
「ああ。」
「任せてくれ。」
その頃。
洞窟には、
ウインナーとドロップだけが残っていた。
ウインナーは膝をつく。
震えていた。
「どうして……。」
「先生が。」
「なんでこうなったんだ。」
「子供たちを愛していたのに。」
「全部嘘だったのか。」
「僕は、要らない子だったのか。」
ドロップは静かに抱きしめた。
「…大丈夫。」
「一人じゃない。」
「まずは子供たちが先よ。」
「しっかりしなさい。」
「その後なら、たくさん受け止めるから。」
「ね?」
ウインナーは目を閉じる。
「……うん。」
「ありがとう。」
「……戻ったら迷惑をかけると思う。」
「急ごう。」
ドロップは優しく笑った。
「……ええ。」
二人も風に乗ってランドへ向かった。
-反動-
みんな仲良しランド。
「無事だったか!」
ダイフクー達が迎える。
子供たちは無事保護された。
「怖かったあ!!」
「よく無事に帰ってきてくれた。」
歓声と安堵が広がる。
「子どもたちをハウスへ連れて行ってあげて?」
ウインナーの指示により、子供たちを、
コクトー、カクザトーが連れていく。
子どもたちがハウスへ入っていった。
その瞬間。
ふらっ──。
レイカがよろめく。
「……つっ。……来たか。」
同時にウインナーも崩れ落ちた。
「……ごめんね。」
「……すまない。」
二人は倒れる。
「えっ?」
そして。
消えていた傷が、
一気に元へ戻っていく。
身体中に穴があき、
血が溢れる。
ドロップが叫ぶ。
「きゃああ!!ウインナー!!」
「……レイカ!?なぜ傷が……。」
ダイフクーも駆け寄る。
「ボロボロじゃねぇか!!やべえぞ!?」
「早く手当を!!」
ブリトーが腕輪を掲げた。
「ウィンディ・ラビィオリ!!」
癒しの水が二人を包む。
「事情は後で説明する!」
「ウインナーは僕が!」
ユリもレイカへ駆け寄る。
「氷華流──雪解。」
雪が静かに傷を癒していく。
長い治療の時間が流れた。
ブリトーとユリ。
使えるだけの力を使って治療に専念した。
その後、二人も休息に入っていた。
やがて。
ブリトーが立ち上がる。
「……ふう。」
「後は本人たちの体力次第だ。」
ドロップが尋ねる。
「……どういうことなの?」
ブリトーは目を閉じた。
「怒らないで聞いてくれ。」
「黙っていたわけじゃない。」
「緊急事態しか使わないと決めていた技なんだ。」
シャーベットも真剣な表情になる。
「何があった?」
ブリトーは説明した。
「風のハーモニーは。」
「風の加護の真髄に近い技だと思う。」
「浴びた者の傷を一時的に無かったことにする。」
「回復じゃない感覚。」
「時間を巻き戻しているようなものだ。」
「だから。」
「傷が重いほど反動も大きい。」
「ここぞという時しか使いたくないと。」
「修行の時から話していた。」
「ウインナーが風から教えてもらった。」
「そう言っていた。」
ユリは静かに頷いた。
「だから。」
「後で迷惑をかけるって言ってたのね……。」
ブリトーは申し訳なさそうに頭を下げた。
「すまない。」
その空気を、
ダイフクーが吹き飛ばす。
「まぁ!」
「何とかなったんだ!」
「後は本人たちに聞こうぜ!」
ブリトーは小さく笑った。
「……ありがとう。」
-秘密-
静かな夜。
ドロップとユリはベンチへ座っていた。
ドロップが小さく尋ねる。
「ねえ、ユリさん。」
「ん?」
「……二人って。」
「不老不死なの?」
ユリは空を見上げた。
そして静かに笑う。
「……もう黙っておけないよね。」
「……そう。」
「不老不死というか。」
「簡単に話すとね。」
「レイカは、父親に人間と化け物を混ぜられて生まれた存在。」
「私は雪女と人間の間に生まれた子。」
ドロップは固まった。
「……えっと。」
「待って。」
「えっと。」
ユリは苦笑する。
「混乱するよね。」
「ごめんね。」
「だから私たちは。」
「普通の人より何倍も長く生きて。」
「歳もゆっくり取るの。」
「黙っててごめんね。」
ドロップは首を横に振った。
「……言いにくいこと聞いてごめんなさい。」
「みんなには話さない方がいい?」
ユリは優しく微笑んだ。
「ドロップが話したい人だけに話せばいい。」
「私もレイカも、それでいいから。」
ドロップは少し泣きそうになりながら笑う。
「……おばあちゃんになっても。」
「ずっと友達だからね。」
ユリは目を見開く。
そして、
少しだけ涙を浮かべた。
「……っ。」
「ありがとう。」
その時だった。
遠くから大きな声が響く。
「おーーーい!!」
「レイカが目を覚ましたぞーーー!!」
二人は顔を見合わせる。
そして同時に立ち上がった。
夜風が静かに吹き抜ける中、
二人は仲間たちの元へ駆け出していった。