-修行の日々と風の約束-
-迫り来る脅威-
翌朝。
みんな仲良しランドの食堂には、
焼き立てのパンとスープの香りが漂っていた。
子供たちの笑い声が響く中、
大人たちは真剣な表情で席についていた。
レイカは静かに立ち上がる。
「……話がある。」
食堂が静まり返る。
「昨夜、スパムの影が現れた。」
全員が顔を上げる。
ダイフクーが目を丸くした。
「また来たのか!?」
レイカは頷く。
「数ヶ月後、ポタージュが攻めてくる。」
「準備をしているらしい。」
シャーベットが腕を組む。
「つまり、猶予はあるということか。」
ブリトーも静かに口を開いた。
「なら、今やるべきことは一つ。」
ラクガンも力強く頷く。
「修行だな。」
ダイフクーが立ち上がる。
「よっしゃあ!!」
「やるしかねぇ!!」
その言葉に全員が頷いた。
-鍛錬-
ランドの訓練場。
ダイフクーとシャーベットは、
ラクガンと向かい合っていた。
「技だけに頼ってはいけない。」
ラクガンは静かに構える。
「ここぞという時に技を使うからこそ意味がある。」
「まずは身体。」
「身体術を極めるぞ。」
拳が交わる。
蹴りが飛ぶ。
何度倒されても二人は立ち上がる。
汗を流しながら、必死に食らいついていた。
別の場所。
ユリとドロップも向き合う。
「受け止めるんじゃない。」
「流すの。」
ドロップは首を傾げる。
「流す?」
ユリは軽く拳を突き出す。
ドロップは受け止めようとして吹き飛ばされた。
「ほら。」
「力比べしちゃ駄目。」
「身体能力が高いなら利用する。」
「相手の力を借りて返す。」
「やってみよ。」
何度も繰り返す。
少しずつ。
ドロップの身体は自然と攻撃を受け流し始めていた。
「…できた!」
「うん。」
ユリは優しく微笑んだ。
-違和感-
森の奥。
レイカ、ウインナー、ブリトーが修行していた。
風を纏うウインナー。
しかし、その風はどこか弱々しい。
レイカが足を止める。
「……おい、ウインナー。」
ブリトーも気付いていた。
「君、風はどうした。」
ウインナーは苦笑する。
「……あの戦いから。」
「風の声が聞こえないんだ。」
静寂。
レイカは頭を抱えた。
「……はあ。」
「なんで黙ってる。」
「こんな時に心配かけられないよ。」
ブリトーは静かに言った。
「あの技だろうな。」
レイカも頷く。
「……まあ一種の諸刃の剣だからな。」
「思い当たるか?」
「……わからない。」
「修行の後、またあの崖へ行く。」
「…何か聞こえるかもしれない。」
ブリトーが心配を声色に出す。
「着いて行こうか?」
「大丈夫だよ。」
「ありがとう。優しいね。」
「……もう言わない。」
その時だった。
「じゃあ。」
「私が行くわ。」
後ろから現れたドロップだった。
ウインナーは固まる。
「……ドロップ!!」
「……黙ってたことも含めて色々話したいからね。」
「拒否権はないわよ?」
笑顔ではあるが、声色は怒りに満ちている。
沈黙。
レイカが肩を叩く。
「…ご愁傷さま。」
ブリトーも続く。
「…お疲れ。」
ユリが笑う。
「あらあら。」
レイカがぼそっと呟く。
「ユリに似てきたな。」
「レイカ?」
「なんでもない。」
ドロップは首を傾げる。
「そうかしら?」
そして笑顔で言った。
「夕方、ハウス入口で待ち合わせね!」
「返事は?」
「……はい。」
-風との約束-
夕暮れ。
二人は崖への道を歩いていた。
ドロップは腕を組む。
「……なーんーで。」
「黙ってたのかしら。」
ウインナーは肩を縮める。
「ご、ごめん。」
「心配かけるし。」
「確証もなかったから。」
ドロップは立ち止まる。
「そんなに信用ない?」
「そんなことは!!」
「なら。」
「せめて私には話して。」
「私も強くなってるのよ。」
「次、一人で背負おうとしたら口聞かないから!」
ウインナーは小さく笑った。
「……ごめんね。」
「......そんな顔されたら許すしかないじゃない。」
「もう。」
「……ありがとう。」
二人は崖へ到着する。
心地良い風。
しかし。
次第に荒れ始めた。
木々が揺れる。
空気が唸る。
ウインナーが呟く。
「……怒ってる?」
その瞬間。
突風。
「うわああああ!!」
風に弾かれ、崖下へ落ちていく。
ドロップが叫ぶ。
「ウインナー!!」
落下する身体。
その耳へ声が届いた。
「なんで怒ってると思う?」
「え?」
「なんでこんなに怒っているかわかる?」
「君は大切な命を粗末にした。」
「君のその技の代償はーー。」
ウインナーは目を閉じた。
「わかってる。」
「何故、仲間に話さないんだい?」
「心配かけるから。」
風は静かになる。
「君を守るための技なのに。」
「僕らが居るのに助けられない。」
「悲しい気持ち。」
ウインナーは涙を浮かべた。
「本当に大切な時しか使わない。」
「約束する。」
「ごめんね。」
「心配ばかり。」
「寿命がどれだけ削れるかわからない。」
「だから。」
「この技を使わないくらい強くなる。」
「頼ってばっかりでごめん。」
長い沈黙。
そして。
優しい風が包み込んだ。
「……無理しないで。」
「怒ってごめんね。」
「ただ、心配。」
ウインナーは笑った。
「ありがとう。」
「君がいる。」
「ドロップがいる。」
「仲間がいる。」
「だから強くいられる。」
「弱い僕も受け止めてくれる。」
「大丈夫。」
風が穏やかになる。
身体がゆっくり浮き上がった。
今までで一番優しい風だった。
崖の上。
ドロップが涙目で駆け寄る。
「ウインナー!!」
「良かった……!」
ウインナーは微笑む。
「……初めて喧嘩したよ。」
「え?」
「風と。」
ドロップは吹き出した。
「喧嘩できるのね。」
「もう大丈夫。」
「ありがとう。」
「ドロップ。」
「傍にいてくれてありがとう。」
「必ず護るから。」
ドロップは微笑み返す。
「それはこっちのセリフよ。」
「お互いにね。」
「ふふ。」
「ありがとう。」
二人は静かにハウスへの道を歩き始めた。
-青炎-
深夜。
誰も寝静まった頃。
レイカは森の奥へ立っていた。
静かに右耳のピアスを二つ外す。
瞬間。
青い炎が揺れ狂う。
「……ぐっ。」
「集中しろ。」
「身体全身に纏うように。」
「流れるように。」
「取り込むっ!!」
轟音。
青い炎の柱が夜空を貫いた。
「ぐおおおおおっ!!」
炎が身体へ吸い込まれていく。
その時。
頭の中へ声が響く。
「生意気なガキ。」
「扱えるようになったなんて思うなよ。」
「まだほんの一部だ。」
レイカは静かに笑う。
「……うるさい。」
「これが結果だろ。」
全身を淡い青炎が覆っていた。
声が笑う。
「昔から本当に生意気なやつだ。」
レイカは煙草へ火をつける。
「加護の神らしくないやつに言われてもな。」
しばらく沈黙。
そして最後に、
「まあ、見届けてやるよ。」
「気を抜いたら、また暴れてやるからな。」
声は静かに消えた。
レイカは夜空を見上げる。
「もう、暴れさせん。」
煙が夜空へ溶けていく。
静かな森を後にし、レイカはゆっくりとハウスへの帰路についた。