-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第二十七章

 

 

 

-修行の日々と風の約束-

 

 

 

-迫り来る脅威-

 

 

 

翌朝。

 

みんな仲良しランドの食堂には、

 

焼き立てのパンとスープの香りが漂っていた。

 

子供たちの笑い声が響く中、

 

大人たちは真剣な表情で席についていた。

 

レイカは静かに立ち上がる。

 

「……話がある。」

 

食堂が静まり返る。

 

 

「昨夜、スパムの影が現れた。」

 

 

全員が顔を上げる。

 

ダイフクーが目を丸くした。

 

「また来たのか!?」

 

レイカは頷く。

 

「数ヶ月後、ポタージュが攻めてくる。」

 

「準備をしているらしい。」

 

シャーベットが腕を組む。

 

「つまり、猶予はあるということか。」

 

ブリトーも静かに口を開いた。

 

「なら、今やるべきことは一つ。」

 

ラクガンも力強く頷く。

 

「修行だな。」

 

ダイフクーが立ち上がる。

 

「よっしゃあ!!」

 

「やるしかねぇ!!」

 

その言葉に全員が頷いた。

 

 

 

-鍛錬-

 

 

 

ランドの訓練場。

 

ダイフクーとシャーベットは、

 

ラクガンと向かい合っていた。

 

「技だけに頼ってはいけない。」

 

ラクガンは静かに構える。

 

「ここぞという時に技を使うからこそ意味がある。」

 

「まずは身体。」

 

「身体術を極めるぞ。」

 

拳が交わる。

 

蹴りが飛ぶ。

 

何度倒されても二人は立ち上がる。

 

汗を流しながら、必死に食らいついていた。

 

 

 

別の場所。

 

ユリとドロップも向き合う。

 

「受け止めるんじゃない。」

 

「流すの。」

 

ドロップは首を傾げる。

 

「流す?」

 

ユリは軽く拳を突き出す。

 

ドロップは受け止めようとして吹き飛ばされた。

 

「ほら。」

 

「力比べしちゃ駄目。」

 

「身体能力が高いなら利用する。」

 

「相手の力を借りて返す。」

 

「やってみよ。」

 

何度も繰り返す。

 

少しずつ。

 

ドロップの身体は自然と攻撃を受け流し始めていた。

 

「…できた!」

 

「うん。」

 

ユリは優しく微笑んだ。

 

 

 

-違和感-

 

 

 

森の奥。

 

レイカ、ウインナー、ブリトーが修行していた。

 

風を纏うウインナー。

 

しかし、その風はどこか弱々しい。

 

レイカが足を止める。

 

「……おい、ウインナー。」

 

ブリトーも気付いていた。

 

「君、風はどうした。」

 

ウインナーは苦笑する。

 

「……あの戦いから。」

 

「風の声が聞こえないんだ。」

 

静寂。

 

レイカは頭を抱えた。

 

「……はあ。」

 

「なんで黙ってる。」

 

「こんな時に心配かけられないよ。」

 

ブリトーは静かに言った。

 

「あの技だろうな。」

 

レイカも頷く。

 

「……まあ一種の諸刃の剣だからな。」

 

「思い当たるか?」

 

「……わからない。」

 

「修行の後、またあの崖へ行く。」

 

「…何か聞こえるかもしれない。」

 

ブリトーが心配を声色に出す。

 

「着いて行こうか?」

 

「大丈夫だよ。」

 

「ありがとう。優しいね。」

 

「……もう言わない。」

 

その時だった。

 

 

「じゃあ。」

 

 

「私が行くわ。」

 

 

後ろから現れたドロップだった。

 

ウインナーは固まる。

 

「……ドロップ!!」

 

「……黙ってたことも含めて色々話したいからね。」

 

「拒否権はないわよ?」

 

笑顔ではあるが、声色は怒りに満ちている。

 

沈黙。

 

レイカが肩を叩く。

 

「…ご愁傷さま。」

 

ブリトーも続く。

 

「…お疲れ。」

 

ユリが笑う。

 

「あらあら。」

 

レイカがぼそっと呟く。

 

「ユリに似てきたな。」

 

「レイカ?」

 

「なんでもない。」

 

ドロップは首を傾げる。

 

「そうかしら?」

 

そして笑顔で言った。

 

「夕方、ハウス入口で待ち合わせね!」

 

「返事は?」

 

「……はい。」

 

 

 

-風との約束-

 

 

 

夕暮れ。

 

二人は崖への道を歩いていた。

 

ドロップは腕を組む。

 

 

「……なーんーで。」

 

「黙ってたのかしら。」

 

 

ウインナーは肩を縮める。

 

「ご、ごめん。」

 

「心配かけるし。」

 

「確証もなかったから。」

 

ドロップは立ち止まる。

 

「そんなに信用ない?」

 

「そんなことは!!」

 

「なら。」

 

「せめて私には話して。」

 

「私も強くなってるのよ。」

 

「次、一人で背負おうとしたら口聞かないから!」

 

ウインナーは小さく笑った。

 

「……ごめんね。」

 

「......そんな顔されたら許すしかないじゃない。」

 

「もう。」

 

「……ありがとう。」

 

二人は崖へ到着する。

 

心地良い風。

 

しかし。

 

次第に荒れ始めた。

 

木々が揺れる。

 

空気が唸る。

 

ウインナーが呟く。

 

「……怒ってる?」

 

その瞬間。

 

突風。

 

「うわああああ!!」

 

風に弾かれ、崖下へ落ちていく。

 

ドロップが叫ぶ。

 

「ウインナー!!」

 

落下する身体。

 

その耳へ声が届いた。

 

 

「なんで怒ってると思う?」

 

 

「え?」

 

 

「なんでこんなに怒っているかわかる?」

 

 

「君は大切な命を粗末にした。」

 

 

「君のその技の代償はーー。」

 

 

ウインナーは目を閉じた。

 

 

「わかってる。」

 

 

「何故、仲間に話さないんだい?」

 

 

「心配かけるから。」

 

 

風は静かになる。

 

 

「君を守るための技なのに。」

 

「僕らが居るのに助けられない。」

 

「悲しい気持ち。」

 

 

ウインナーは涙を浮かべた。

 

 

「本当に大切な時しか使わない。」

 

「約束する。」

 

「ごめんね。」

 

「心配ばかり。」

 

「寿命がどれだけ削れるかわからない。」

 

「だから。」

 

「この技を使わないくらい強くなる。」

 

「頼ってばっかりでごめん。」

 

 

 

長い沈黙。

 

そして。

 

優しい風が包み込んだ。

 

 

「……無理しないで。」

 

「怒ってごめんね。」

 

「ただ、心配。」

 

 

ウインナーは笑った。

 

「ありがとう。」

 

「君がいる。」

 

「ドロップがいる。」

 

「仲間がいる。」

 

「だから強くいられる。」

 

「弱い僕も受け止めてくれる。」

 

「大丈夫。」

 

風が穏やかになる。

 

身体がゆっくり浮き上がった。

 

今までで一番優しい風だった。

 

崖の上。

 

ドロップが涙目で駆け寄る。

 

「ウインナー!!」

 

「良かった……!」

 

ウインナーは微笑む。

 

「……初めて喧嘩したよ。」

 

「え?」

 

「風と。」

 

ドロップは吹き出した。

 

「喧嘩できるのね。」

 

「もう大丈夫。」

 

「ありがとう。」

 

「ドロップ。」

 

「傍にいてくれてありがとう。」

 

「必ず護るから。」

 

ドロップは微笑み返す。

 

「それはこっちのセリフよ。」

 

「お互いにね。」

 

「ふふ。」

 

「ありがとう。」

 

二人は静かにハウスへの道を歩き始めた。

 

 

 

-青炎-

 

 

 

深夜。

 

誰も寝静まった頃。

 

レイカは森の奥へ立っていた。

 

静かに右耳のピアスを二つ外す。

 

瞬間。

 

青い炎が揺れ狂う。

 

「……ぐっ。」

 

「集中しろ。」

 

「身体全身に纏うように。」

 

「流れるように。」

 

「取り込むっ!!」

 

轟音。

 

青い炎の柱が夜空を貫いた。

 

 

「ぐおおおおおっ!!」

 

 

炎が身体へ吸い込まれていく。

 

その時。

 

頭の中へ声が響く。

 

 

「生意気なガキ。」

 

「扱えるようになったなんて思うなよ。」

 

「まだほんの一部だ。」

 

 

レイカは静かに笑う。

 

「……うるさい。」

 

「これが結果だろ。」

 

全身を淡い青炎が覆っていた。

 

声が笑う。

 

 

「昔から本当に生意気なやつだ。」

 

 

レイカは煙草へ火をつける。

 

「加護の神らしくないやつに言われてもな。」

 

しばらく沈黙。

 

そして最後に、

 

 

「まあ、見届けてやるよ。」

 

「気を抜いたら、また暴れてやるからな。」

 

 

声は静かに消えた。

 

レイカは夜空を見上げる。

 

「もう、暴れさせん。」

 

煙が夜空へ溶けていく。

 

静かな森を後にし、レイカはゆっくりとハウスへの帰路についた。

 

 

 

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