-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第二十八章

 

 

 

-鍛錬の日々-

 

 

 

朝から訓練場には激しい音が響いていた。

 

まずはダイフクーとシャーベット。

 

二人は体術だけでぶつかり合う。

 

拳。

 

蹴り。

 

肘。

 

互いに息をつく暇もなく連撃が続く。

 

以前とは比べ物にならないほど速い。

 

技も自然に体術へ組み込まれていた。

 

しかし──

 

ラクガンは静かに首を横へ振る。

 

「まだ荒い。」

 

「技を使うために動いているぞ。」

 

「技は最後の一押しだ。」

 

「普段の動きへ溶け込ませなければ意味がない。」

 

二人は息を切らしながら頷いた。

 

 

 

その隣では、

 

ユリとドロップ。

 

「今日は体術だけ。」

 

ユリは氷を使わない。

 

ドロップが飛び込む。

 

拳。

 

蹴り。

 

しかしユリは受け止めない。

 

流す。

 

逸らす。

 

相手の勢いを利用して投げ飛ばす。

 

「力で止めない。」

 

「流すの。」

 

「あなたなら出来る。」

 

ドロップは何度も挑戦する。

 

そして。

 

ユリの拳を身体をひねって受け流す。

 

勢いのまま回転。

 

背後へ回り込み、

 

肩へ軽く一撃。

 

ユリの片膝が地面につく。

 

 

「……あ。」

 

 

ドロップは目を丸くする。

 

ユリが笑う。

 

「上出来。」

 

ドロップは飛び跳ねた。

 

「やったぁ!!」

 

 

 

次は、

 

ブリトー対ラクガン。

 

ラクガンは金平糖を口へ放る。

 

身体が鋼へ変化する。

 

「行くぞ!」

 

拳が暴風のように放たれる。

 

だが。

 

ブリトーは紙一重で避け続ける。

 

「遅い。」

 

腕輪が光る。

 

「ウィンディ・カフェラテ。」

 

風がラクガンの身体を拘束する。

 

その隙に背後へ回り込む。

 

「ウィンディ・ハラペーニョ。」

 

風が身体を包む。

 

鋼の身体が黄金へ変わった。

 

ラクガンは金色の像になったまま固まる。

 

数秒後、

 

風が消え元へ戻る。

 

ラクガンは苦笑した。

 

「強くなったな。」

 

ブリトーはボソッと呟く。

 

 

「...これじゃ、まだまだ届かない。」

 

 

 

最後は、

 

レイカ対ウインナー。

 

もちろん体術のみ。

 

煙草を咥えたレイカが静かに構える。

 

「来い。」

 

「いくよ!」

 

ウインナーが踏み込む。

 

速い。

 

風と共鳴している。

 

拳。

 

蹴り。

 

互角。

 

レイカの速度へ着いていく。

 

ブリトーが目を丸くした。

 

「もうここまで来たのか。」

 

レイカも少し驚く。

 

「……友達のおかげだな。」

 

 

 

-煙草一本の休息-

 

 

 

みんな仲良しランド。

 

昼下がり。

 

子供たちの笑い声が園内いっぱいに響いていた。

 

キウイとパインはウインナーと鬼ごっこ。

 

他の子供たちはダイフクーに肩車され、大はしゃぎ。

 

ラクガンは洗濯物を干しながら穏やかに微笑み、

 

ブリトーは風を操って紙飛行機を空高く飛ばしていた。

 

シャーベットは積み木遊びに付き合い、

 

ユリとドロップは女の子たちに花冠を作ってもらっている。

 

そんな賑やかな場所から少し離れた木陰。

 

レイカは静かに煙草を一本取り出した。

 

「……少しくらい、いいだろ。」

 

火をつけようとした、その時だった。

 

「レイカー!!」

 

「遊ぼー!!」

 

「鬼ごっこしよー!!」

 

小さな子供たちが一斉に駆け寄ってくる。

 

レイカの手が止まる。

 

煙草を見る。

 

子供を見る。

 

もう一度煙草を見る。

 

「…………。」

 

静かに煙草を箱へ戻した。

 

「はあ。仕方ない。」

 

その一言に子供たちは大歓声を上げた。

 

「やったーーー!!」

 

「レイカお兄ちゃんだー!!」

 

腕を引っ張られ、そのまま広場へ連れていかれる。

 

遠くから見ていたユリが小さく笑う。

 

「煙草より、子供たちを優先したんだ。」

 

レイカは少し気まずそうに答えた。

 

「……悪いか?」

 

その返事にドロップが吹き出す。

 

「レイカ、子供には弱いわね。」

 

ダイフクーも腹を抱えて笑った。

 

「お前が一番遊ばれてんじゃねえか!」

 

「うるさい。」

 

ぶっきらぼうに返しながらも、

 

レイカは子供たちと鬼ごっこを始める。

 

その動きはあまりにも速く、

 

誰一人として捕まえることが出来ない。

 

「待ってーー!!」

 

「速いよーー!!」

 

「ずるいーー!!」

 

ランド中へ笑い声が響く。

 

その中で、

 

レイカはほんの少しだけ口元を緩めていた。

 

その変化に気づいたのは、

 

ユリただ一人だった。

 

「……やっぱり優しい。」

 

青空の下。

 

子供たちの笑顔と笑い声が、

 

今日もみんな仲良しランドを優しく包み込んでいた。

 

 

 

-迫る影-

 

 

 

穏やかな時間は、

 

突然終わりを迎える。

 

ランドの入口付近。

 

空気がゆっくりと歪み始めた。

 

黒い霞。

 

そして、

 

その中から姿を現したのは──

 

ポタージュだった。

 

 

「ようやく炎を解除できたのである。」

 

「古代の剣で何度も切られたのである。」

 

「信じなさい。」

 

 

ランド全体へ緊張が走る。

 

レイカが静かに前へ出た。

 

「……来たか。」

 

ポタージュは不気味に笑う。

 

「もう炎は喰らわぬ。」

 

「今回は私が勝ちだ。」

 

「信じなさい!」

 

その瞬間。

 

空一面を覆うほどの影の狐が現れた。

 

数百匹。

 

黒い狐たちは空から一斉に襲い掛かる。

 

子供たちは悲鳴を上げた。

 

「うわああああ!!!」

 

しかし。

 

レイカは静かに耳元へ手を伸ばす。

 

ピアスを二つ外した。

 

カラン。

 

小さな音が響く。

 

「子どもの影響に悪いからな。」

 

「一瞬で終わらせてやる。」

 

次の瞬間。

 

身体全体を、

 

青い炎が包み込んだ。

 

轟音。

 

巨大な炎柱が空へ突き抜ける。

 

青い炎に触れた影の狐たちは、

 

一瞬で灰となって消えていった。

 

全滅。

 

ポタージュが目を見開く。

 

「なっ……!!」

 

その瞬間。

 

レイカは目の前へ立っていた。

 

 

一閃。

 

 

 

「我流・炎飛流――刹那『極』」

 

 

 

遅れて、

 

青い炎の斬撃が空間を切り裂く。

 

レイカは静かに呟く。

 

「この炎は燃え続けるんじゃない。」

 

「燃やし尽くすまで、消えない。」

 

「黒い炎とは比にならない速さで燃える。」

 

「浄化の炎とも言うがな。」

 

そして刀を収める。

 

「生き地獄を味わいながら消えろ。」

 

その言葉と同時に、

 

ポタージュの身体が青い炎に包まれた。

 

「ぐおおおおおおお!!!」

 

「私が負けるとは……!!」

 

「信じないいいいい!!!」

 

絶叫と共に、

 

ポタージュの身体は塵となって消滅した。

 

その場には、

 

灰色の禁貨が一枚だけ落ちていた。

 

静寂。

 

ブリトーが小さく呟く。

 

「……あいつの技も使えるのか。」

 

「あまり乗り気ではないな。」

 

ダイフクーは頭を掻く。

 

「修行したのに、レイカだけで終わったな。」

 

シャーベットは静かに頷いた。

 

「意味のある修行には変わりない。」

 

その直後だった。

 

空が闇に包まれる。

 

巨大な闇の裂け目。

 

そこから低い声が響く。

 

「ポタージュは消えたか。」

 

メザンだった。

 

ブリトーが拳を握る。

 

「……メザン!!!」

 

メザンは冷たく笑う。

 

「まあいい。」

 

「子供の贄はもういらん。」

 

「今後の準備はスパムと進める。」

 

「貴様らとは、もう会うことはあるまい。」

 

ウインナーが一歩前へ出る。

 

「……スパム先生はいるのか。」

 

「先生。」

 

「あなた方は、必ず僕たちが止める。」

 

メザンは鼻で笑った。

 

「無駄な足掻きだ。」

 

ブリトーは叫ぶ。

 

「パル!!!」

 

「パルはいるのか!!!」

 

メザンは興味もなさそうに答えた。

 

「うるさい愚民どもだ。」

 

「せいぜい今を足掻くが良い。」

 

闇はゆっくりと消えていった。

 

青空が戻る。

 

ダイフクーが腕を組む。

 

「……次に行く場所は決まったな。」

 

ウインナーも頷く。

 

「遺跡を当たれば何かわかるかもしれない。」

 

レイカも静かに口を開く。

 

「古代を調べているなら、そこしかない。」

 

ラクガンが地図を広げた。

 

「あの崖を越えた先に、小さな古代遺跡があります。」

 

「そこを目指してはいかがでしょう。」

 

ドロップは微笑む。

 

「……その前に街で買い出しね。」

 

ユリも頷く。

 

「そうね。準備はしっかりしておきましょう。」

 

ダイフクーが苦笑した。

 

「お前ら、街に行きたいだけじゃねえのか?」

 

ドロップは胸を張る。

 

「女の子には準備が必要なの!」

 

「ね、ユリさん!」

 

ユリは小さく笑う。

 

「ええ、そうね。」

 

その様子に、

 

ウインナーも久しぶりに自然な笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、三日後。」

 

「次の旅へ出発しよう。」

 

新たな目的地へ向けて、

 

仲間たちは静かに歩き始めるのだった。

 

 

 

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