-鍛錬の日々-
朝から訓練場には激しい音が響いていた。
まずはダイフクーとシャーベット。
二人は体術だけでぶつかり合う。
拳。
蹴り。
肘。
互いに息をつく暇もなく連撃が続く。
以前とは比べ物にならないほど速い。
技も自然に体術へ組み込まれていた。
しかし──
ラクガンは静かに首を横へ振る。
「まだ荒い。」
「技を使うために動いているぞ。」
「技は最後の一押しだ。」
「普段の動きへ溶け込ませなければ意味がない。」
二人は息を切らしながら頷いた。
その隣では、
ユリとドロップ。
「今日は体術だけ。」
ユリは氷を使わない。
ドロップが飛び込む。
拳。
蹴り。
しかしユリは受け止めない。
流す。
逸らす。
相手の勢いを利用して投げ飛ばす。
「力で止めない。」
「流すの。」
「あなたなら出来る。」
ドロップは何度も挑戦する。
そして。
ユリの拳を身体をひねって受け流す。
勢いのまま回転。
背後へ回り込み、
肩へ軽く一撃。
ユリの片膝が地面につく。
「……あ。」
ドロップは目を丸くする。
ユリが笑う。
「上出来。」
ドロップは飛び跳ねた。
「やったぁ!!」
次は、
ブリトー対ラクガン。
ラクガンは金平糖を口へ放る。
身体が鋼へ変化する。
「行くぞ!」
拳が暴風のように放たれる。
だが。
ブリトーは紙一重で避け続ける。
「遅い。」
腕輪が光る。
「ウィンディ・カフェラテ。」
風がラクガンの身体を拘束する。
その隙に背後へ回り込む。
「ウィンディ・ハラペーニョ。」
風が身体を包む。
鋼の身体が黄金へ変わった。
ラクガンは金色の像になったまま固まる。
数秒後、
風が消え元へ戻る。
ラクガンは苦笑した。
「強くなったな。」
ブリトーはボソッと呟く。
「...これじゃ、まだまだ届かない。」
最後は、
レイカ対ウインナー。
もちろん体術のみ。
煙草を咥えたレイカが静かに構える。
「来い。」
「いくよ!」
ウインナーが踏み込む。
速い。
風と共鳴している。
拳。
蹴り。
互角。
レイカの速度へ着いていく。
ブリトーが目を丸くした。
「もうここまで来たのか。」
レイカも少し驚く。
「……友達のおかげだな。」
-煙草一本の休息-
みんな仲良しランド。
昼下がり。
子供たちの笑い声が園内いっぱいに響いていた。
キウイとパインはウインナーと鬼ごっこ。
他の子供たちはダイフクーに肩車され、大はしゃぎ。
ラクガンは洗濯物を干しながら穏やかに微笑み、
ブリトーは風を操って紙飛行機を空高く飛ばしていた。
シャーベットは積み木遊びに付き合い、
ユリとドロップは女の子たちに花冠を作ってもらっている。
そんな賑やかな場所から少し離れた木陰。
レイカは静かに煙草を一本取り出した。
「……少しくらい、いいだろ。」
火をつけようとした、その時だった。
「レイカー!!」
「遊ぼー!!」
「鬼ごっこしよー!!」
小さな子供たちが一斉に駆け寄ってくる。
レイカの手が止まる。
煙草を見る。
子供を見る。
もう一度煙草を見る。
「…………。」
静かに煙草を箱へ戻した。
「はあ。仕方ない。」
その一言に子供たちは大歓声を上げた。
「やったーーー!!」
「レイカお兄ちゃんだー!!」
腕を引っ張られ、そのまま広場へ連れていかれる。
遠くから見ていたユリが小さく笑う。
「煙草より、子供たちを優先したんだ。」
レイカは少し気まずそうに答えた。
「……悪いか?」
その返事にドロップが吹き出す。
「レイカ、子供には弱いわね。」
ダイフクーも腹を抱えて笑った。
「お前が一番遊ばれてんじゃねえか!」
「うるさい。」
ぶっきらぼうに返しながらも、
レイカは子供たちと鬼ごっこを始める。
その動きはあまりにも速く、
誰一人として捕まえることが出来ない。
「待ってーー!!」
「速いよーー!!」
「ずるいーー!!」
ランド中へ笑い声が響く。
その中で、
レイカはほんの少しだけ口元を緩めていた。
その変化に気づいたのは、
ユリただ一人だった。
「……やっぱり優しい。」
青空の下。
子供たちの笑顔と笑い声が、
今日もみんな仲良しランドを優しく包み込んでいた。
-迫る影-
穏やかな時間は、
突然終わりを迎える。
ランドの入口付近。
空気がゆっくりと歪み始めた。
黒い霞。
そして、
その中から姿を現したのは──
ポタージュだった。
「ようやく炎を解除できたのである。」
「古代の剣で何度も切られたのである。」
「信じなさい。」
ランド全体へ緊張が走る。
レイカが静かに前へ出た。
「……来たか。」
ポタージュは不気味に笑う。
「もう炎は喰らわぬ。」
「今回は私が勝ちだ。」
「信じなさい!」
その瞬間。
空一面を覆うほどの影の狐が現れた。
数百匹。
黒い狐たちは空から一斉に襲い掛かる。
子供たちは悲鳴を上げた。
「うわああああ!!!」
しかし。
レイカは静かに耳元へ手を伸ばす。
ピアスを二つ外した。
カラン。
小さな音が響く。
「子どもの影響に悪いからな。」
「一瞬で終わらせてやる。」
次の瞬間。
身体全体を、
青い炎が包み込んだ。
轟音。
巨大な炎柱が空へ突き抜ける。
青い炎に触れた影の狐たちは、
一瞬で灰となって消えていった。
全滅。
ポタージュが目を見開く。
「なっ……!!」
その瞬間。
レイカは目の前へ立っていた。
一閃。
「我流・炎飛流――刹那『極』」
遅れて、
青い炎の斬撃が空間を切り裂く。
レイカは静かに呟く。
「この炎は燃え続けるんじゃない。」
「燃やし尽くすまで、消えない。」
「黒い炎とは比にならない速さで燃える。」
「浄化の炎とも言うがな。」
そして刀を収める。
「生き地獄を味わいながら消えろ。」
その言葉と同時に、
ポタージュの身体が青い炎に包まれた。
「ぐおおおおおおお!!!」
「私が負けるとは……!!」
「信じないいいいい!!!」
絶叫と共に、
ポタージュの身体は塵となって消滅した。
その場には、
灰色の禁貨が一枚だけ落ちていた。
静寂。
ブリトーが小さく呟く。
「……あいつの技も使えるのか。」
「あまり乗り気ではないな。」
ダイフクーは頭を掻く。
「修行したのに、レイカだけで終わったな。」
シャーベットは静かに頷いた。
「意味のある修行には変わりない。」
その直後だった。
空が闇に包まれる。
巨大な闇の裂け目。
そこから低い声が響く。
「ポタージュは消えたか。」
メザンだった。
ブリトーが拳を握る。
「……メザン!!!」
メザンは冷たく笑う。
「まあいい。」
「子供の贄はもういらん。」
「今後の準備はスパムと進める。」
「貴様らとは、もう会うことはあるまい。」
ウインナーが一歩前へ出る。
「……スパム先生はいるのか。」
「先生。」
「あなた方は、必ず僕たちが止める。」
メザンは鼻で笑った。
「無駄な足掻きだ。」
ブリトーは叫ぶ。
「パル!!!」
「パルはいるのか!!!」
メザンは興味もなさそうに答えた。
「うるさい愚民どもだ。」
「せいぜい今を足掻くが良い。」
闇はゆっくりと消えていった。
青空が戻る。
ダイフクーが腕を組む。
「……次に行く場所は決まったな。」
ウインナーも頷く。
「遺跡を当たれば何かわかるかもしれない。」
レイカも静かに口を開く。
「古代を調べているなら、そこしかない。」
ラクガンが地図を広げた。
「あの崖を越えた先に、小さな古代遺跡があります。」
「そこを目指してはいかがでしょう。」
ドロップは微笑む。
「……その前に街で買い出しね。」
ユリも頷く。
「そうね。準備はしっかりしておきましょう。」
ダイフクーが苦笑した。
「お前ら、街に行きたいだけじゃねえのか?」
ドロップは胸を張る。
「女の子には準備が必要なの!」
「ね、ユリさん!」
ユリは小さく笑う。
「ええ、そうね。」
その様子に、
ウインナーも久しぶりに自然な笑みを浮かべた。
「じゃあ、三日後。」
「次の旅へ出発しよう。」
新たな目的地へ向けて、
仲間たちは静かに歩き始めるのだった。