-空の上の一日-
-穏やかな空の旅-
気球船は穏やかな風に乗り、
青空の中をゆっくり進んでいた。
島を出て数日。
慌ただしかった日々が嘘のように、
船の上には穏やかな時間が流れている。
甲板ではダイフクーが手すりにもたれながら、
大きく伸びをしていた。
「はぁ~~~~……。」
「暇だ。」
シャーベットが本をめくりながら視線を向ける。
「急に静かになったな。」
「だろ?」
「今頃キウイあたりが肩車しろー!って飛びついてきそうなんだよ。」
「パインなんか、俺の腹を枕にして寝てたしな。」
ダイフクーは少し寂しそうに笑った。
「……静かすぎるぜ。」
シャーベットも小さく笑う。
「また帰ればいい。」
「そうだな!」
「帰ったら遊び倒してやる!」
二人の笑い声が風に流れていく。
船内。
ドロップとユリは各部屋の
荷物の整理に追われていた。
「これ誰の?」
「多分ダイフクー。」
「……散らかりすぎ。」
「服脱ぎっぱなし。」
「本開きっぱなし。」
「鍋置きっぱなし。」
「え?鍋?」
ユリが額を押さえる。
「もう。」
「男の子ってどうしてこうなの。」
ドロップは笑いながら服を畳む。
「でも、賑やかで好きよ。」
「それはそうだけど。」
「整理しないのとは別問題。」
「レイカとウインナーは整理整頓してある。」
「さすがよね。」
「ふふっ。」
「ユリさん、お母さんみたい。」
「誰がお母さんよ。」
「レイカ?」
「それはお父さん。」
二人は顔を見合わせて吹き出した。
操縦席。
「…少し休め。」
レイカが操縦席へ腰掛ける。
「え、操縦出来るの?」
「教えてくれればな。」
「……ありがとう。」
ウインナーが立ち上がった。
レイカは煙草を咥えながら操縦桿を握る。
「これでいいのか?」
「うん。」
「後は風が大体教えてくれる。」
「便利なもんだな。」
数分。
気球船は何事もなく進む。
「……なるほど。」
「覚えた。」
ウインナーが苦笑する。
「もう?」
「そんな難しいもんでもない。」
「いや、難しいんだけど……。」
「そうか?」
「レイカって本当に何でも覚えるの早いよね。」
「長く生きてりゃな。」
そう言いながら、器用に船を操る。
船尾。
ブリトーは一人、腕輪を見つめていた。
「パル……。」
「待ってろ。」
「絶対迎えに行く。」
風が優しく頬を撫でた。
その少し離れた場所。
シャーベットは資料を広げていた。
古代文字。
古代遺跡。
サラミッド。
ページをめくる手が止まる。
「……興味深い。」
「文字の構成が微妙に違う。」
「地方ごとに変化しているのか?」
「だとすれば……。」
知識欲に満ちた目が輝いていた。
-料理当番-
昼。
「ジャンケンで決めるか!」
ダイフクーの一言で昼食担当が決まる。
「レイカ!なんだかんだ一度もしてねえだろ!」
「気のせいだろ。」
「問答無用!」
「最初はグー!」
「ジャンケンポン!」
最後まで残ったのは。
「……はぁ。」
「ジャンケンは昔から弱いんだ。」
レイカだった。
「え。」
「大丈夫?」
「燃やさない?」
「毒盛らない?」
「食える?」
全員の視線が集まる。
レイカの眉がぴくっと動く。
「お前ら。」
「失礼すぎるだろ。」
するとユリが笑った。
「大丈夫よ。」
「昔から料理は上手だから。」
「……昔って言うな。」
一時間後。
広間には、洋風コース料理が並んでいた。
「え、豪華すぎない?」
「レイカ、ちょっと見栄張ったでしょ。」
「うるさい。……黙って食え。」
「問題は味だぜ!!!」
「いただきます!」
ダイフクーが口へ運んだ瞬間。
「うまっ!!!」
シャーベットも驚く。
「これは凄い。レストランの味だ。」
ブリトーも目を丸くする。
「店を開けるよ。」
ドロップは感動していた。
「レイカすごい!美味しい!」
ウインナーも笑う。
「本当に……美味しい。」
レイカは煙草を咥えながら椅子へ座った。
「数百年生きてたら一通り覚える。」
ユリが微笑む。
「だから言ったでしょ。」
その時。
ダイフクーが笑う。
「お前、結婚したらいい旦那になるな!」
「……ぶっ飛ばすぞ。」
全員が笑い出した。
-守るということ-
夕暮れ。
甲板。
レイカとウインナー。
「守りたいなら。」
「気持ちも強くならないとな。」
「感情で攻撃するのは三流らしいからな。」
ウインナーが苦笑する。
「……痛いところ突かれたね。」
「まあ、お前が感情に揺さぶられるのも珍しいな。」
「レイカみたいに冷静にならないと。」
レイカは煙を吐いた。
「……言うほど冷静でもない。」
「昔は感情で全部壊した。」
「今は壊さないようにしてるだけだ。」
「感情を消してるの?」
「感情がないわけじゃない。」
「抑えてるだけだ。」
「だから、お前も感情を否定するな。」
「ただ、飲み込まれるな。」
「状況を把握する。それが最優先だ。」
ウインナーは静かに頷いた。
「ありがとう。」
「僕、レイカを目指すよ。」
「……勝手にしろ。」
レイカは少しだけ笑った。
-静かな夜-
深夜。
操縦室。
「はい。」
「ホットミルク。」
ドロップが笑顔でカップを差し出した。
「ドロップ。起きてたの?」
「ええ。」
「……ありがとう。」
「身体も完全じゃないのに……。」
「大丈夫。」
「風が助けてくれてる。」
「無理してない?」
「してないよ。」
「本当に?」
「うん。」
「嘘だったら?」
「……お説教が始まるね。」
「当然よ。」
二人は笑った。
ドロップは操縦席の隣へ腰掛ける。
フロントガラスからは夜景が見えていた。
「綺麗な景色ね。」
「……帰ったらまたみんな仲良しランド行こうね。」
「うん。」
「今度はもっとゆっくり。」
「そうだね。」
穏やかな時間が流れていた。
甲板。
レイカが煙草を吸っていると。
「……珍しい。」
シャーベットがやって来た。
「聞きたいことがあってな。」
「なんだ。」
「傷。」
「不老不死の割には治り遅くないか?」
レイカは感心する。
「観察力はいいな。」
「古代の武器だからな。」
「人間の治癒能力でしか治せない。」
「そういうことだ。」
シャーベットは頷く。
「なるほど。」
「疑問が解決した。」
立ち去る前に、
「身体を労れよ。」
「お休み。」
レイカは煙を吐きながら空を見る。
「……不思議なやつ。」
夜風が優しく吹き抜けていった。
-新たな遺跡-
翌朝。
「見えたぞ!!」
シャーベットの声に全員が集まる。
雲の向こう。
海の上。
小さな島。
その中央には。
巨大な古代遺跡。
そして空へ突き刺さるような塔。
ブリトーが腕輪を握る。
「ここで何か発見があればいいけど。」
その言葉と共に、
気球船はゆっくりと高度を下げていく。
「緑が生い茂っているな。」
「……居るとしたら彼かもしれない。」
ウインナーが憶測を立てる。
「自然を愛している彼が。」
ブリトーが思い出すように呟く。
「自然……緑……あっ!」
「会えるかもね、ガレットに。」
新たな真実が眠る島へ。
そして。
誰も知らない運命の先へ──。