-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第三十八章

 

 

 

-戦乱の街-

 

 

 

-治安の悪い街-

 

 

 

気球船は、乾いた風を受けながら、

 

大陸の上空を進んでいた。

 

眼下には荒れた大地。

 

遠くには山脈。

 

その先に、サラミッドがあるはずだった。

 

操縦席で地図を広げていたウインナーが、

 

少し困ったように眉を寄せる。

 

「……まだ結構あるね。」

 

シャーベットが隣から地図を覗き込む。

 

「距離だけで見れば、しばらくは空の旅だな。」

 

「問題は食料と燃料。」

 

ダイフクーが腹を押さえた。

 

「後、問題は俺の腹だ。」

 

「……さっき食べただろ。」

 

ブリトーが呆れる。

 

「食べたけど減るんだよ!」

 

ケンも元気よく手を挙げる。

 

「俺も腹減った!」

 

レイカは煙草を咥えながら、二人を横目で見る。

 

「燃費が悪い奴らだな。」

 

ケンはにこっと笑った。

 

「お兄ちゃんも食べろよ!」

 

「俺は兄じゃない。」

 

「でもお兄ちゃん!」

 

「……はぁ。」

 

そのやり取りに、ドロップが笑う。

 

「ケンが来てから、レイカのため息増えたわね。」

 

ユリも微笑む。

 

「でも、少し楽しそう。」

 

「どこがだ。」

 

レイカは面倒そうに答えたが、

 

ケンが隣で嬉しそうにしているため、

 

誰も本気にはしなかった。

 

その時、シャーベットが前方を指差した。

 

 

「街が見える。」

 

 

雲の切れ間から見えたのは、

 

大きな城壁に囲まれた街だった。

 

だが、近づくにつれて雰囲気の悪さが分かってくる。

 

城壁はあちこち壊れ、

 

門の周りには武器を持った男たち。

 

市場の通りでは怒号が飛び交い、

 

路地裏では何人かが喧嘩をしていた。

 

ドロップが顔を引きつらせる。

 

「……治安悪。」

 

ユリは静かに街を見下ろした。

 

「久しぶりにこういう場所へ来たわね。」

 

レイカは煙草を指で挟み、

 

懐かしむように目を細める。

 

「昔を思い出すな。」

 

「それ、あまり良い意味じゃないよね?」

 

ウインナーが苦笑する。

 

「良い思い出ではないな。」

 

気球船を降ろし、一行は街へ入った。

 

 

門をくぐった瞬間、喧騒が押し寄せる。

 

武器屋。

 

闇市。

 

酒場。

 

賭博場。

 

あちこちの壁に貼られた賞金首の紙。

 

そして中央広場には、巨大な掲示板があった。

 

ダイフクーが真っ先に駆け寄る。

 

「お、なんだこれ!」

 

掲示板には大きく書かれている。

 

 

『賞金争奪バトルロワイヤル開催』

 

『予選勝ち抜き者のみ本戦出場』

 

『男子の部・女子の部、それぞれ優勝賞金あり』

 

『腕に自信のある者求む』

 

 

ダイフクーの目が輝いた。

 

「これだ!!」

 

シャーベットは淡々と読む。

 

「賞金はかなり高額だ。」

 

ブリトーも頷く。

 

「サラミッドまでの旅費には困らなくなる。」

 

ケンは拳を突き上げた。

 

「俺出る!」

 

「優勝する!」

 

レイカは呆れた顔で見下ろす。

 

「お前はまず落ち着け。」

 

「えー!?」

 

「意地悪!」

 

「事実だ。」

 

ウインナーは少し考えてから微笑んだ。

 

「じゃあ、出ようか。」

 

「みんなで。」

 

ドロップもやる気を見せる。

 

「女子の部もあるなら、私も出るわ!」

 

ユリも穏やかに頷いた。

 

「腕試しにはちょうどいいわね。」

 

レイカは掲示板を眺めながら、煙草を咥えた。

 

「……面倒だ。」

 

「ん?受付今日までらしいぞ。」

 

ダイフクーが慌てる。

 

「なんだと!?急ぐぞお前ら!!」

 

 

こうして一行は、賞金大会へ出場することになった。

 

 

 

-予選開始-

 

 

 

会場は街の中央にある円形闘技場だった。

 

観客席はすでに満員。

 

粗野な笑い声。

 

怒号。

 

賭け金を叫ぶ声。

 

まさにこの街らしい熱気が渦巻いている。

 

受付で組み分けを確認した一行は、

 

それぞれのブロックへ向かった。

 

予選は集団リーグ戦。

 

各ブロック1名が本戦へ進める。

 

本戦は数日後。

 

男子の部と女子の部に分かれた、

 

一対一のトーナメント戦。

 

味方同士が当たる可能性もある。

 

「本戦で仲間同士の戦いもあるってことか。」

 

ウインナーが確認する。

 

シャーベットが頷く。

 

「そういう形式らしい。」

 

ダイフクーは笑う。

 

「面白ぇじゃねぇか!」

 

ケンも隣で飛び跳ねる。

 

「お兄ちゃんと戦えるかも!」

 

レイカは心底嫌そうに顔をしかめた。

 

「勘弁してくれ。」

 

「なんでだよ!」

 

「相手にならん。」

 

 

-Aブロック-

 

出場者はレイカ、ダイフクー、ケン、その他多数。

 

ケンは嬉しそうに拳を握る。

 

「お兄ちゃんと同じ組だ!」

 

「よし、一緒に勝ち抜こうぜ!」

 

ダイフクーは、

 

嫌な予感しかしないという顔をしていた。

 

「レイカ。」

 

「頼むから巻き込むなよ?」

 

レイカは一切目を合わせない。

 

「……。」

 

「おい、今の沈黙なんだよ。」

 

「……諦めてくれ。」

 

「え?なんて―――」

 

開始の鐘が鳴る。

 

 

「予選Aブロック、開始!!」

 

 

選手たちが一斉に動く。

 

ケンも雷を纏い、勢いよく飛び出そうとした。

 

「行くぜ!」

 

だが。

 

その前にレイカが一歩踏み込んでいた。

 

刀へ手を添える。

 

「我流・炎飛流。」

 

「五月雨。」

 

次の瞬間。

 

闘技場全体を、

 

無数の炎の太刀筋が駆け抜けた。

 

凄まじい速さの剣戟。

 

炎を帯びた斬撃が、

 

雨のように多方面へ飛んでいく。

 

観客の目では追えない。

 

選手たちは次々と場外へ吹き飛ばされた。

 

「うわあああ!?」

 

「なんだ今の!?」

 

「見えねぇ!!」

 

そして。

 

「うおおおおお!?」

 

「お兄ちゃーーーん!?」

 

ダイフクーとケンも、

 

敵選手たちと一緒に場外へ転がった。

 

怪我はない。

 

ただ勢いよく吹き飛ばされただけだった。

 

実況が一瞬沈黙し、次いで絶叫する。

 

 

「Aブロック決着!!」

 

「レイカ選手ぅぅぅ!!」

 

 

レイカは刀を納める。

 

「……すまん。」

 

場外でダイフクーが起き上がる。

 

「だから言っただろ!!」

 

「味方だぞ俺ら!!」

 

ケンは目を回しながらも笑っていた。

 

「すげぇ!」

 

「俺もあんなのやりたい!」

 

レイカは深いため息をついた。

 

「……お前はまず落ち着くところからだ。」

 

「えー!?」

 

「意地悪!」

 

「……はぁ。」

 

「たまには静かに出来んのか。」

 

 

-Bブロック-

 

シャーベットは冷静に相手を捌いていた。

 

修行で身につけた体術は、

 

確実に成果を出している。

 

無駄な動きは少ない。

 

相手の間合いを読み、確実に崩す。

 

だが、一人だけ異質な男がいた。

 

黒い外套。

 

無表情。

 

自らを「X」と名乗った男。

 

シャーベットの拳が男へ向かう。

 

男は避けた。

 

次の瞬間。

 

同じ軌道の拳を、より速く、より正確に返してきた。

 

「……。」

 

シャーベットの目が細くなる。

 

「真似たのか?」

 

Xは静かに答える。

 

 

「見た。」

 

「覚えた。」

 

「上回る。」

 

 

次の攻防。

 

シャーベットが蹴りを放つ。

 

Xはまたもそれを再現し、

 

わずかに上の速度で打ち返した。

 

体勢が崩れる。

 

「……なるほど。」

 

「これは厄介だな。」

 

数手後。

 

シャーベットは場外へ弾き出された。

 

実況が叫ぶ。

 

 

「Bブロック勝者、X選手!!」

 

 

シャーベットは立ち上がりながら、

 

淡々と呟いた。

 

「完敗だな。」

 

「謎めいている人物だった……。」

 

 

-Cブロック-

 

ウインナーは風を纏い、

 

無駄なく相手を制していった。

 

優しい風。

 

だが、戦いでは鋭い。

 

一人を押し出し、二人目の動きを止め、

 

三人目を背後から吹き飛ばす。

 

 

「Cブロック勝者、ウインナー選手!」

 

 

ドロップが観客席から手を振る。

 

「ウインナー、すごい!」

 

ウインナーは少し照れながら笑った。

 

 

-女子ブロック-

 

「女子ブロックは出場者が少ないため!」

 

「各ブロックから2名本戦にいけるぞ!!」

 

 

ユリとドロップは同じ組だった。

 

「良かった、2人まで行けるのね!」

 

「共闘でいく?」

 

ドロップが尋ねる。

 

ユリは微笑む。

 

「もちろん。」

 

開始と同時に、二人は背中合わせに立つ。

 

ドロップが相手の攻撃を受け流し、

 

重力の流れで体勢を崩す。

 

そこへユリが体術で隙を突く。

 

氷は必要最小限。

 

二人の動きは、修行の成果を感じさせるものだった。

 

「右!」

 

「任せて!」

 

「後ろ!」

 

「分かってる!」

 

最後の相手を同時に場外へ押し出す。

 

実況が声を上げる。

 

「ユリ選手、ドロップ選手!」

 

「二名そろって本戦進出!!」

 

ドロップは嬉しそうに飛び跳ねた。

 

「やったぁ!」

 

ユリも静かに笑う。

 

「良い連携だったわ。」

 

 

-Fブロック-

 

ブリトーは静かに立っていた。

 

腕輪が淡く光る。

 

「ウィンディ・カフェラテ。」

 

岩の力で相手の足場を崩す。

 

「ウィンディ・ハラペーニョ。」

 

武器の一部を金へ変え、重くして動きを止める。

 

「ウィンディ・ガレット」

 

木のツタが地面から生え、身体へ絡みつく。

 

そして風で背後へ回り込み、体術で制圧する。

 

圧勝だった。

 

観客は騒然となる。

 

「なんだあいつ!」

 

「風だけじゃねぇのか!」

 

「何種類能力あるんだよ!」

 

ブリトーは自分の手を見つめる。

 

「……僕。」

 

「こんなに強くなってたんだ。」

 

ウインナーが近づき、笑う。

 

「ずっと頑張ってたからね。」

 

ブリトーは少しだけ、

 

照れたように視線を逸らした。

 

「……まだまだだよ。」

 

「でも。」

 

「悪くないね。」

 

 

予選が終わる。

 

本戦に進むのは、

 

 

男子の部。

 

レイカ。

 

ウインナー。

 

ブリトー。

 

 

女子の部。

 

ユリ。

 

ドロップ。

 

 

 

本戦は数日後。

 

一対一のトーナメント。

 

男子一名、女子一名の優勝者が出る。

 

味方同士の戦いもあり得る。

 

その説明を聞き、ドロップは拳を握った。

 

「よし。」

 

「女子優勝、狙うわよ!」

 

ユリは微笑む。

 

「私も負けないわ。」

 

ウインナーはレイカとブリトーを見る。

 

「男子も大変そうだね。」

 

ブリトーは頷く。

 

「ああ。」

 

レイカは遠くの観客席にいるXを一瞥した。

 

「……面倒そうなのがいるな。」

 

 

 

-弱いものいじめ-

 

 

 

予選を終えた一行は、食事へ向かうことにした。

 

「腹減った!」

 

ダイフクーが堂々と言う。

 

「お前は予選で何もしてないだろ。」

 

シャーベットが突っ込む。

 

「あのレイカに勝てるわけないだろ!?」

 

「吹き飛ばされて一苦労だったぜ…。」

 

「それは戦闘ではない。」

 

ケンも元気に手を挙げる。

 

「俺も腹減った!」

 

レイカは眉を寄せる。

 

「騒がしい奴らだな。」

 

「お兄ちゃんも食べようぜ!」

 

「だから兄じゃない。」

 

店を探して歩く。

 

しかし、街の雰囲気はやはり悪い。

 

路地裏には酔っ払い。

 

武器を持った男。

 

壁には脅し文句の落書き。

 

ドロップが小さく呟く。

 

「本当に治安悪いわね……。」

 

その時だった。

 

 

「やめてください!」

 

 

女性の声。

 

一同が振り返る。

 

路地の奥で、

 

数人のギャングが母親と幼い子供を囲んでいた。

 

「家賃が払えねぇなら、店を寄越せ。」

 

「待ってください!」

 

「もう少しだけ……!」

 

子供が母親の前に立つ。

 

「お母さんにひどいことするな!」

 

ギャングの一人が刃物を抜いた。

 

「ガキが。」

 

「邪魔だ。」

 

 

「やめてえええ!!!」

 

 

刃物が振り下ろされる。

 

 

その瞬間。

 

 

ガキン。

 

 

刃は止まっていた。

 

レイカの手の中で。

 

ギャングの顔が引きつる。

 

「なっ……。」

 

レイカは低い声で尋ねた。

 

「弱いものいじめは楽しいか?」

 

ギャングたちは答えられない。

 

「楽しいなら。」

 

「俺もさせてもらうぞ。」

 

次の瞬間。

 

レイカの拳が男の顔面へ叩き込まれた。

 

 

ドゴォッ!!

 

 

男は壁へ吹き飛び、そのまま気絶する。

 

取り巻きたちは青ざめる。

 

「ひっ……!」

 

「逃げろ!」

 

蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。

 

ケンは目を輝かせる。

 

「お兄ちゃんすげぇ!!」

 

「俺も今のやりたい!」

 

レイカは心底うんざりしたように言う。

 

「……お前は犬より騒がしいな。」

 

「えー!?」

 

「犬よりかしこいもん!」

 

「……はぁ。」

 

「言葉も通じない。」

 

そのやり取りに、助けられた子供が少し笑った。

 

張り詰めていた空気が、ようやく緩む。

 

母親は深く頭を下げた。

 

「ありがとうございます。」

 

「本当に、ありがとうございます……!」

 

その後、

 

母親は一行を自分の食堂へ案内した。

 

「お礼になるかわかりませんが……。」

 

「ぜひ食べていってください。」

 

店は小さく、古い。

 

壁も机もあちこち傷んでいた。

 

けれど料理の匂いは温かかった。

 

奥から、小さな子供たちが何人も顔を出す。

 

「お母さん!」

 

「大丈夫だった?」

 

「怖かったよぉ……。」

 

母親は子供たちを抱きしめる。

 

「大丈夫。」

 

「この人たちが助けてくれたの。」

 

 

料理が並ぶ。

 

一口食べた瞬間。

 

ダイフクーが立ち上がる。

 

「うっめぇぇぇ!!」

 

ケンも夢中で頬張る。

 

「これ毎日食べたい!」

 

ドロップも感動していた。

 

「すごく美味しい……。」

 

ユリも微笑む。

 

「優しい味ね。」

 

しかし、店内は明らかに荒れていた。

 

壊れた椅子。

 

割れた窓。

 

傷ついた壁。

 

シャーベットが静かに尋ねる。

 

「あいつらにやられたのか?」

 

母親は困ったように笑う。

 

「はい……。」

 

「お金を払わずに食べていくことも多くて。」

 

「お客さんも怖がって来なくなってしまって。」

 

「子供も多いので。」

 

「どうにか稼がないといけないんですが……。」

 

「他の仕事をしても、追いつかなくて。」

 

「今日は家賃の取り立てに来られて……。」

 

言葉が途切れる。

 

子供たちは黙って母親の服を掴んでいた。

 

ダイフクーは拳を握る。

 

そして、急に立ち上がった。

 

 

「決めた。」

 

 

「男子も女子も優勝したら。」

 

「賞金、全部ここに置いてく。」

 

 

母親が驚く。

 

「えっ……?」

 

ウインナーはすぐに頷いた。

 

「僕も賛成。」

 

ドロップも笑う。

 

「もちろん。」

 

ユリも穏やかに言った。

 

「困っている人を助けるためなら。」

 

シャーベットも眼鏡を押し上げる。

 

「それがいいな。」

 

ブリトーは少しだけ笑う。

 

「僕も賛成だ。」

 

「昔の僕なら、見て見ぬ振りだったかもしれない。」

 

「でも今は違う。」

 

「助けられるなら、助けたい。」

 

そして、わざと少し意地悪く続ける。

 

「まあ、ダイフクーは戦わないけどね。」

 

「おい!!」

 

店内に笑いが広がった。

 

レイカは静かに立ち上がる。

 

「とりあえず。」

 

「子供と母親の服を買いに行くぞ。」

 

「俺が出す。」

 

ダイフクーが目を丸くする。

 

「お金あるのかよ!」

 

レイカは平然と答える。

 

「昔の貯えがあるからな。」

 

「聞いてこないから、スルーしていたが。」

 

「今後、困ったら言ってくれていい。」

 

ウインナーが驚く。

 

「レイカ……。」

 

ドロップは小さく笑う。

 

「本当に不器用ね。」

 

「……うるさい。」

 

レイカは全員を見渡した。

 

「……大会は腕試しと思って挑めばいいさ。」

 

「勝つ理由は、できただろ。」

 

ダイフクーが笑う。

 

「ああ!」

 

「俺は出ねぇけどな!」

 

ブリト―が意地悪な顔で言う。

 

「吹き飛ばされたからね。」

 

「そこは忘れろ!」

 

ケンが元気よく拳を突き上げる。

 

「俺も応援する!」

 

「お兄ちゃん優勝しろよ!」

 

「うるさい。」

 

ウインナーは母親と子供たちへ向き直る。

 

「必ず戻ってきます。」

 

「待っていてください。」

 

母親は涙をこらえながら頭を下げた。

 

「ありがとうございます……。」

 

「ユリ、ドロップ。」

 

「買い物連れてってやれ。」

 

「はーい!任せて!」

 

「喜んで。」

 

 

その夜。

 

宿へ戻る道。

 

街の空は暗く、遠くでまた怒号が聞こえていた。

 

だが、一行の足取りには迷いがなかった。

 

ドロップが拳を握る。

 

「女子の部、絶対勝つわ。」

 

ユリも微笑む。

 

「負けられないわね。」

 

ブリトーは腕輪に触れる。

 

「男子もだ。」

 

ウインナーは静かに頷く。

 

「うん。」

 

「勝とう。」

 

レイカは煙草を咥え、夜空を見上げた。

 

「……何も無ければいいがな。」

 

その言葉が、冷たい夜風に溶けていく。

 

誰もまだ知らない。

 

この街の闇は、

 

ただのギャングだけでは終わらないことを。

 

 

 

 

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