-男子本戦-
-本戦開幕-
翌日。
闘技場は予選以上の熱気に包まれていた。
観客席は満員。
賭け札を握る者。
選手の名を叫ぶ者。
ただ戦いを楽しみに来た者。
街中の人間が集まったかのような騒がしさだった。
中央の舞台に、司会者が立つ。
「さあ、いよいよ本戦開幕だ!」
「ここからは予選を勝ち抜いた八名による。」
「一対一のトーナメント戦!」
「男子枠、女子枠に分かれ、それぞれ優勝者を決定する!」
大歓声が上がる。
「試合は一日一戦ずつ!」
「勝敗は相手を戦闘不能、場外。」
「またはダウン十カウントで決定!」
「降参もOK!」
「まずは男子本戦第一回戦!」
応援席では、仲間たちが並んで座っていた。
ケンは身を乗り出している。
「お兄ちゃん!ぶっ飛ばせー!」
レイカは舞台下で心底うざそうに眉を寄せた。
「……鼓膜が破れそうだ。」
ドロップは笑う。
「ケン、応援はほどほどにね。」
「無理無理無理!」
「お兄ちゃんの試合だぞ!?」
ダイフクーが腕を組む。
「俺も出たかったぜ……。」
ブリトーが隣で淡々と言う。
「レイカに吹き飛ばされたからね。」
「何度も言うな!」
そんな会話の中、第一試合の名が告げられる。
「第一試合!」
「レイカ選手、対、ブロッサム選手!」
-レイカVSブロッサム-
舞台に上がったブロッサムは、
派手な服装をした細身の男だった。
腰には小型爆弾。
両手にも、丸い爆弾。
顔には狂ったような笑み。
「ひゃはは!」
「燃えるねぇ!」
「いや、爆ぜるって言うべきかなぁ!?」
レイカは煙草を咥えたまま、立っている。
「俺の相手はこんな奴が多いな……。」
司会者が叫ぶ。
「開始!」
瞬間、ブロッサムは両手の爆弾をばら撒いた。
「踊れ踊れぇ!」
「爆弾の花を咲かせてやるよ!」
舞台中に爆弾が転がる。
観客が悲鳴を上げる。
ケンが身を乗り出した。
「お兄ちゃん!」
しかしレイカは一歩も動かなかった。
爆発。
炎。
煙。
舞台の中央が爆煙に包まれる。
ブロッサムが笑う。
「終わりだぁ!」
だが。
煙の中から、静かな声が響く。
「……終わったのはお前だ。」
次の瞬間。
レイカがブロッサムの背後に立っていた。
「え?」
ブロッサムが振り返るより早く、
レイカの拳が腹に入る。
「ぐっ……!」
そのまま首元を掴み、舞台へ叩きつける。
爆弾が再び光る。
「まだだ!」
「爆ぜろ!」
レイカは落ちていた爆弾を足で蹴り上げる。
爆弾は空中で爆発した。
その爆風すら、レイカは風で受け流す。
「芸がない。」
ブロッサムは歯を食いしばる。
「くそっ!」
「近づくなぁ!」
全身から小型爆弾を一斉に放つ。
しかし、レイカの姿が消えた。
「我流・炎飛流。」
「刹那。」
炎の線だけが舞台上を走る。
爆弾は全て、
ブロッサムの周囲から離された位置で切り裂かれ、
無力化された。
レイカは刀を抜いたまま、
ブロッサムの首元へ刃を当てる。
「降参しろ。」
ブロッサムは震えながら笑った。
「ひ、ひひ……。」
「降参……。」
司会者が叫ぶ。
「勝者、レイカ選手!」
観客席が沸く。
ケンは立ち上がった。
「お兄ちゃん最強ー!!」
レイカは試合場から降りながら、ため息をつく。
「……はぁ。」
ユリは微笑んだ。
「無傷ね。」
「当たり前だ。」
ドロップは苦笑する。
「相手がちょっと可哀想だったわね。」
ダイフクーが笑う。
「でも賞金のためだ!」
「次だ次!」
-ウインナーVSオムレット-
第二試合。
「ウインナー選手、対、オムレット選手!」
オムレットは鳥のような翼を持つ男だった。
両腕に羽。
鋭い爪。
軽やかに空へ舞い上がる。
「地上の相手には負けないよ。」
「空は僕の領域だ。」
ウインナーは笑った。
「空なら、僕も好きだよ。」
開始の合図。
オムレットが上空へ飛び上がる。
「エアスラッシュ!」
翼から放たれる風の刃。
ウインナーは横へ避ける。
だが次の瞬間、オムレットは急降下した。
鋭い爪が迫る。
「速い!」
ドロップが思わず声を上げる。
ケンも目を輝かせた。
「鳥だ!」
「飛んでる!」
ブリトーは冷静に見ていた。
「空中戦か。」
ウインナーは風に乗る。
地面を蹴るのではなく、風を足場にする。
オムレットが驚いた。
「君も飛べるのか!?」
「飛ぶというより、風に乗ってるだけだよ。」
二人は空中で交差する。
翼の風。
ウインナーの風。
闘技場の上空で風がぶつかり合う。
オムレットは高く舞い上がり、翼を大きく広げた。
「これで終わりだ!」
「フェザーストーム!」
無数の羽根が刃となって降り注ぐ。
ウインナーは目を閉じた。
風の声を聞く。
羽根の軌道。
空気の流れ。
全てが見える。
「風のシンフォニー。」
「第一番。」
「風の輪舞曲。」
優しい風が渦を巻く。
羽根の刃は全て巻き取られ、
渦の中へ飲み込まれていく。
そしてそのまま、
オムレットの身体を包み込んだ。
「なっ……!」
回転する風が彼を空中で制御不能にする。
ウインナーは一気に距離を詰めた。
「ごめんね。」
掌を腹部へ添える。
「風のエチュード。」
柔らかく、だが強い風圧。
オムレットは舞台へ叩きつけられることなく、
ゆっくり地面へ落とされた。
完全に動けない。
司会者がカウントを始める。
「ワン!」
「ツー!」
「スリー!」
オムレットは立ち上がろうとするが、
目が回っている。
「テン!」
「勝者、ウインナー選手!」
歓声が響く。
ドロップが嬉しそうに立ち上がる。
「ウインナー!すごい!」
レイカは腕を組みながら呟いた。
「風の扱いが安定してきたな。」
ブリトーも頷く。
「強くなってる。」
ケンが跳ねる。
「ウインナー兄もすげぇ!」
ウインナーは戻ってきて苦笑した。
「ありがとう。」
ドロップは近づいて小さく言う。
「格好よかったわよ。」
ウインナーは少し頬を赤くした。
「……ありがとう。」
ダイフクーがにやにやする。
「お熱いねぇ。」
「ダイフクー。」
「はい黙ります。」
「……やっぱり怖いね。」
「怖いだろ?」
「ブリト―?レイカ?」
「「なんでもない。」」
-ブリトーVSコリー-
第三試合。
「ブリトー選手、対、コリー選手!」
コリーは細身の男だった。
武器は持っていない。
だが、彼の周囲には小石や砂が浮いていた。
シャーベットが目を細める。
「念動力か。」
ブリトーは静かに構える。
「厄介だな。」
開始の合図。
コリーは指を軽く動かした。
周囲の石が弾丸のように飛ぶ。
ブリトーは風でかわす。
「ウィンディ・カフェラテ!」
岩を操り、飛んでくる石を防ぐ。
しかし、コリーは笑った。
「それも動かせる。」
ブリトーが作った岩の盾が、
逆に引き剥がされる。
「!」
岩が横からブリトーを襲う。
ブリトーは風で飛び退く。
「能力の取り合いか。」
シャーベットが呟く。
「相性が悪いな。」
ウインナーも真剣な表情になる。
「ブリトー……。」
ブリトーは腕輪へ手を当てた。
「ウィンディ・ハラペーニョ!」
コリーの足場に触れた石を金へ変える。
重くなった地面に、コリーの動きがわずかに鈍る。
「そこだ!」
ブリトーは風に乗って背後へ回る。
「ウィンディ・ターミネーション!」
しかし。
コリーは振り返らない。
見えない力がブリトーの身体を止めた。
「ぐっ……!」
宙に固定される。
コリーが静かに言う。
「君は強い。」
「でも、僕に攻撃は通らない。」
ブリトーは歯を食いしばる。
「くそっ……!」
風を爆ぜさせ、拘束を一瞬だけ解く。
着地と同時に、再び突っ込む。
何度も。
何度も。
そのたびに、念動力で軌道をずらされる。
応援席でケンが叫ぶ。
「ブリトー兄!負けんな!」
ダイフクーも拳を握る。
「押せぇぇ!!」
ブリトーは最後の一撃に賭けた。
「ウィンディ・ポタージュ!」
身体が霞む。
コリーの背後へ転移する。
「これなら――」
だが。
コリーは既に手を後ろへ向けていた。
「読んでいた。」
念動力の衝撃波。
ブリトーの身体が舞台外へ吹き飛ぶ。
「場外!」
司会者が叫ぶ。
「勝者、コリー選手!」
一瞬、応援席が静まり返る。
ブリトーは地面に倒れたまま、
空を見上げていた。
「……負けた。」
ウインナーが駆け寄る。
「ブリトー!」
ブリトーはゆっくり起き上がる。
悔しそうに拳を握るが、すぐに息を吐いた。
「強かった。」
「僕の負けだ。」
レイカが近づく。
「悪くない戦いだった。」
ブリトーは少し驚く。
「……そうか?」
「ああ。」
「相手が一枚上だっただけだ。」
その言葉に、
ブリトーは悔しさを飲み込むように頷いた。
「…勝ちたかった。」
ウインナーも笑う。
「うん。」
「一緒に強くなろう。」
-XVSブロー-
第四試合。
「X選手、対、ブロー選手!」
ブローは筋骨隆々の格闘家だった。
拳を鳴らし、観客席へ向けて吠える。
「小細工は嫌いだ!」
「拳で決める!」
向かい合うXは、相変わらず無表情だった。
ブローが踏み込む。
「おらぁ!」
重い拳。
速い。
だがXは避けた。
そして。
同じ拳を返す。
ブローの頬に直撃。
観客がざわつく。
「なんだ今の?」
「ブローの動きだろ?」
ブローは笑った。
「面白ぇ!」
「真似するタイプか!」
次々に拳を放つ。
ジャブ。
フック。
回し蹴り。
肘打ち。
ブローの技は荒いが、鍛え抜かれていた。
だがXは全てを見ていた。
一度見た技を真似る。
そして上回る。
「学習。」
「最適化。」
ブローの動きが、
ブロー以上の精度で返されていく。
数分後。
ブローの腹部に打撃が入る。
「がはっ……。」
「……化け物かよ。」
Xは静かに拳を構える。
「終了。」
最後の一撃。
ブローは倒れた。
司会者がカウントする。
「テン!」
「勝者、X選手!」
観客席が大きくどよめく。
シャーベットは目を細める。
「やはり。」
「一度見た技を模倣し、上回る。」
「単なる真似ではない。」
レイカもXを見る。
「……面倒な相手だな。」
ウインナーが尋ねる。
「もし本戦で当たったら?」
レイカは煙草を咥えた。
「さあな。」
ケンが目を輝かせる。
「お兄ちゃんなら大丈夫だ!」
「うるさい。」
ブリトーは拳を握る。
コリーに負けた悔しさが、まだ胸に残っていた。
だが同時に、仲間の戦いを見て燃えてもいた。
「本戦は、まだ始まったばかりだ。」
男子本戦第一回戦は終わった。
勝ち上がったのは、
レイカ。
ウインナー。
コリー。
X。
そして翌日。
女子本戦が始まる。
ユリとドロップの戦いが、
いよいよ幕を開けようとしていた。