-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第三十九章

 

 

 

-男子本戦-

 

 

 

-本戦開幕-

 

 

 

翌日。

 

闘技場は予選以上の熱気に包まれていた。

 

観客席は満員。

 

賭け札を握る者。

 

選手の名を叫ぶ者。

 

ただ戦いを楽しみに来た者。

 

街中の人間が集まったかのような騒がしさだった。

 

中央の舞台に、司会者が立つ。

 

 

「さあ、いよいよ本戦開幕だ!」

 

「ここからは予選を勝ち抜いた八名による。」

 

「一対一のトーナメント戦!」

 

「男子枠、女子枠に分かれ、それぞれ優勝者を決定する!」

 

 

大歓声が上がる。

 

 

「試合は一日一戦ずつ!」

 

「勝敗は相手を戦闘不能、場外。」

 

「またはダウン十カウントで決定!」

 

「降参もOK!」

 

「まずは男子本戦第一回戦!」

 

 

応援席では、仲間たちが並んで座っていた。

 

ケンは身を乗り出している。

 

「お兄ちゃん!ぶっ飛ばせー!」

 

レイカは舞台下で心底うざそうに眉を寄せた。

 

「……鼓膜が破れそうだ。」

 

ドロップは笑う。

 

「ケン、応援はほどほどにね。」

 

「無理無理無理!」

 

「お兄ちゃんの試合だぞ!?」

 

ダイフクーが腕を組む。

 

「俺も出たかったぜ……。」

 

ブリトーが隣で淡々と言う。

 

「レイカに吹き飛ばされたからね。」

 

「何度も言うな!」

 

そんな会話の中、第一試合の名が告げられる。

 

 

「第一試合!」

 

「レイカ選手、対、ブロッサム選手!」

 

 

 

-レイカVSブロッサム-

 

 

 

舞台に上がったブロッサムは、

 

派手な服装をした細身の男だった。

 

腰には小型爆弾。

 

両手にも、丸い爆弾。

 

顔には狂ったような笑み。

 

「ひゃはは!」

 

「燃えるねぇ!」

 

「いや、爆ぜるって言うべきかなぁ!?」

 

レイカは煙草を咥えたまま、立っている。

 

「俺の相手はこんな奴が多いな……。」

 

司会者が叫ぶ。

 

「開始!」

 

瞬間、ブロッサムは両手の爆弾をばら撒いた。

 

「踊れ踊れぇ!」

 

「爆弾の花を咲かせてやるよ!」

 

舞台中に爆弾が転がる。

 

観客が悲鳴を上げる。

 

ケンが身を乗り出した。

 

「お兄ちゃん!」

 

しかしレイカは一歩も動かなかった。

 

爆発。

 

炎。

 

煙。

 

舞台の中央が爆煙に包まれる。

 

ブロッサムが笑う。

 

「終わりだぁ!」

 

だが。

 

煙の中から、静かな声が響く。

 

「……終わったのはお前だ。」

 

次の瞬間。

 

レイカがブロッサムの背後に立っていた。

 

「え?」

 

ブロッサムが振り返るより早く、

 

レイカの拳が腹に入る。

 

「ぐっ……!」

 

そのまま首元を掴み、舞台へ叩きつける。

 

爆弾が再び光る。

 

「まだだ!」

 

「爆ぜろ!」

 

レイカは落ちていた爆弾を足で蹴り上げる。

 

爆弾は空中で爆発した。

 

その爆風すら、レイカは風で受け流す。

 

「芸がない。」

 

ブロッサムは歯を食いしばる。

 

「くそっ!」

 

「近づくなぁ!」

 

全身から小型爆弾を一斉に放つ。

 

しかし、レイカの姿が消えた。

 

 

「我流・炎飛流。」

 

「刹那。」

 

 

炎の線だけが舞台上を走る。

 

爆弾は全て、

 

ブロッサムの周囲から離された位置で切り裂かれ、

 

無力化された。

 

レイカは刀を抜いたまま、

 

ブロッサムの首元へ刃を当てる。

 

「降参しろ。」

 

ブロッサムは震えながら笑った。

 

「ひ、ひひ……。」

 

「降参……。」

 

司会者が叫ぶ。

 

 

「勝者、レイカ選手!」

 

 

観客席が沸く。

 

ケンは立ち上がった。

 

「お兄ちゃん最強ー!!」

 

レイカは試合場から降りながら、ため息をつく。

 

「……はぁ。」

 

ユリは微笑んだ。

 

「無傷ね。」

 

「当たり前だ。」

 

ドロップは苦笑する。

 

「相手がちょっと可哀想だったわね。」

 

ダイフクーが笑う。

 

「でも賞金のためだ!」

 

「次だ次!」

 

 

 

-ウインナーVSオムレット-

 

 

 

第二試合。

 

 

「ウインナー選手、対、オムレット選手!」

 

 

オムレットは鳥のような翼を持つ男だった。

 

両腕に羽。

 

鋭い爪。

 

軽やかに空へ舞い上がる。

 

「地上の相手には負けないよ。」

 

「空は僕の領域だ。」

 

ウインナーは笑った。

 

「空なら、僕も好きだよ。」

 

開始の合図。

 

オムレットが上空へ飛び上がる。

 

 

「エアスラッシュ!」

 

 

翼から放たれる風の刃。

 

ウインナーは横へ避ける。

 

だが次の瞬間、オムレットは急降下した。

 

鋭い爪が迫る。

 

「速い!」

 

ドロップが思わず声を上げる。

 

ケンも目を輝かせた。

 

「鳥だ!」

 

「飛んでる!」

 

ブリトーは冷静に見ていた。

 

「空中戦か。」

 

ウインナーは風に乗る。

 

地面を蹴るのではなく、風を足場にする。

 

オムレットが驚いた。

 

「君も飛べるのか!?」

 

「飛ぶというより、風に乗ってるだけだよ。」

 

二人は空中で交差する。

 

翼の風。

 

ウインナーの風。

 

闘技場の上空で風がぶつかり合う。

 

オムレットは高く舞い上がり、翼を大きく広げた。

 

 

「これで終わりだ!」

 

「フェザーストーム!」

 

 

無数の羽根が刃となって降り注ぐ。

 

ウインナーは目を閉じた。

 

風の声を聞く。

 

羽根の軌道。

 

空気の流れ。

 

全てが見える。

 

 

「風のシンフォニー。」

 

「第一番。」

 

「風の輪舞曲。」

 

 

優しい風が渦を巻く。

 

羽根の刃は全て巻き取られ、

 

渦の中へ飲み込まれていく。

 

そしてそのまま、

 

オムレットの身体を包み込んだ。

 

「なっ……!」

 

回転する風が彼を空中で制御不能にする。

 

ウインナーは一気に距離を詰めた。

 

「ごめんね。」

 

掌を腹部へ添える。

 

「風のエチュード。」

 

柔らかく、だが強い風圧。

 

オムレットは舞台へ叩きつけられることなく、

 

ゆっくり地面へ落とされた。

 

完全に動けない。

 

司会者がカウントを始める。

 

 

「ワン!」

 

「ツー!」

 

「スリー!」

 

 

オムレットは立ち上がろうとするが、

 

目が回っている。

 

 

「テン!」

 

「勝者、ウインナー選手!」

 

 

歓声が響く。

 

ドロップが嬉しそうに立ち上がる。

 

「ウインナー!すごい!」

 

レイカは腕を組みながら呟いた。

 

「風の扱いが安定してきたな。」

 

ブリトーも頷く。

 

「強くなってる。」

 

ケンが跳ねる。

 

「ウインナー兄もすげぇ!」

 

ウインナーは戻ってきて苦笑した。

 

「ありがとう。」

 

ドロップは近づいて小さく言う。

 

「格好よかったわよ。」

 

ウインナーは少し頬を赤くした。

 

「……ありがとう。」

 

ダイフクーがにやにやする。

 

「お熱いねぇ。」

 

「ダイフクー。」

 

「はい黙ります。」

 

「……やっぱり怖いね。」

 

「怖いだろ?」

 

「ブリト―?レイカ?」

 

 

「「なんでもない。」」

 

 

 

-ブリトーVSコリー-

 

 

 

第三試合。

 

 

「ブリトー選手、対、コリー選手!」

 

 

コリーは細身の男だった。

 

武器は持っていない。

 

だが、彼の周囲には小石や砂が浮いていた。

 

シャーベットが目を細める。

 

「念動力か。」

 

ブリトーは静かに構える。

 

「厄介だな。」

 

開始の合図。

 

コリーは指を軽く動かした。

 

周囲の石が弾丸のように飛ぶ。

 

ブリトーは風でかわす。

 

「ウィンディ・カフェラテ!」

 

岩を操り、飛んでくる石を防ぐ。

 

しかし、コリーは笑った。

 

「それも動かせる。」

 

ブリトーが作った岩の盾が、

 

逆に引き剥がされる。

 

「!」

 

岩が横からブリトーを襲う。

 

ブリトーは風で飛び退く。

 

「能力の取り合いか。」

 

シャーベットが呟く。

 

「相性が悪いな。」

 

ウインナーも真剣な表情になる。

 

「ブリトー……。」

 

ブリトーは腕輪へ手を当てた。

 

「ウィンディ・ハラペーニョ!」

 

コリーの足場に触れた石を金へ変える。

 

重くなった地面に、コリーの動きがわずかに鈍る。

 

「そこだ!」

 

ブリトーは風に乗って背後へ回る。

 

「ウィンディ・ターミネーション!」

 

しかし。

 

コリーは振り返らない。

 

見えない力がブリトーの身体を止めた。

 

「ぐっ……!」

 

宙に固定される。

 

コリーが静かに言う。

 

「君は強い。」

 

「でも、僕に攻撃は通らない。」

 

ブリトーは歯を食いしばる。

 

「くそっ……!」

 

風を爆ぜさせ、拘束を一瞬だけ解く。

 

着地と同時に、再び突っ込む。

 

何度も。

 

何度も。

 

そのたびに、念動力で軌道をずらされる。

 

応援席でケンが叫ぶ。

 

「ブリトー兄!負けんな!」

 

ダイフクーも拳を握る。

 

「押せぇぇ!!」

 

ブリトーは最後の一撃に賭けた。

 

「ウィンディ・ポタージュ!」

 

身体が霞む。

 

コリーの背後へ転移する。

 

「これなら――」

 

だが。

 

コリーは既に手を後ろへ向けていた。

 

「読んでいた。」

 

念動力の衝撃波。

 

ブリトーの身体が舞台外へ吹き飛ぶ。

 

 

「場外!」

 

 

司会者が叫ぶ。

 

 

「勝者、コリー選手!」

 

 

一瞬、応援席が静まり返る。

 

ブリトーは地面に倒れたまま、

 

空を見上げていた。

 

「……負けた。」

 

ウインナーが駆け寄る。

 

「ブリトー!」

 

ブリトーはゆっくり起き上がる。

 

悔しそうに拳を握るが、すぐに息を吐いた。

 

「強かった。」

 

「僕の負けだ。」

 

レイカが近づく。

 

「悪くない戦いだった。」

 

ブリトーは少し驚く。

 

「……そうか?」

 

「ああ。」

 

「相手が一枚上だっただけだ。」

 

その言葉に、

 

ブリトーは悔しさを飲み込むように頷いた。

 

「…勝ちたかった。」

 

ウインナーも笑う。

 

「うん。」

 

「一緒に強くなろう。」

 

 

 

-XVSブロー-

 

 

 

第四試合。

 

 

「X選手、対、ブロー選手!」

 

 

ブローは筋骨隆々の格闘家だった。

 

拳を鳴らし、観客席へ向けて吠える。

 

「小細工は嫌いだ!」

 

「拳で決める!」

 

向かい合うXは、相変わらず無表情だった。

 

ブローが踏み込む。

 

「おらぁ!」

 

重い拳。

 

速い。

 

だがXは避けた。

 

そして。

 

同じ拳を返す。

 

ブローの頬に直撃。

 

観客がざわつく。

 

「なんだ今の?」

 

「ブローの動きだろ?」

 

ブローは笑った。

 

「面白ぇ!」

 

「真似するタイプか!」

 

次々に拳を放つ。

 

ジャブ。

 

フック。

 

回し蹴り。

 

肘打ち。

 

ブローの技は荒いが、鍛え抜かれていた。

 

だがXは全てを見ていた。

 

一度見た技を真似る。

 

そして上回る。

 

「学習。」

 

「最適化。」

 

ブローの動きが、

 

ブロー以上の精度で返されていく。

 

数分後。

 

ブローの腹部に打撃が入る。

 

「がはっ……。」

 

「……化け物かよ。」

 

Xは静かに拳を構える。

 

「終了。」

 

最後の一撃。

 

ブローは倒れた。

 

司会者がカウントする。

 

 

「テン!」

 

「勝者、X選手!」

 

 

観客席が大きくどよめく。

 

シャーベットは目を細める。

 

「やはり。」

 

「一度見た技を模倣し、上回る。」

 

「単なる真似ではない。」

 

レイカもXを見る。

 

「……面倒な相手だな。」

 

ウインナーが尋ねる。

 

「もし本戦で当たったら?」

 

レイカは煙草を咥えた。

 

「さあな。」

 

ケンが目を輝かせる。

 

「お兄ちゃんなら大丈夫だ!」

 

「うるさい。」

 

ブリトーは拳を握る。

 

コリーに負けた悔しさが、まだ胸に残っていた。

 

だが同時に、仲間の戦いを見て燃えてもいた。

 

「本戦は、まだ始まったばかりだ。」

 

 

 

男子本戦第一回戦は終わった。

 

勝ち上がったのは、

 

レイカ。

 

ウインナー。

 

コリー。

 

X。

 

そして翌日。

 

女子本戦が始まる。

 

ユリとドロップの戦いが、

 

いよいよ幕を開けようとしていた。

 

 

 

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