-氷華と虹-
-女子本戦開幕-
翌朝。
闘技場は昨日以上の歓声に包まれていた。
「さあ皆様、お待たせしました!」
「本日は女子トーナメント一回戦!」
「昨日勝ち上がった四名が。」
「準決勝進出をかけて激突します!」
歓声が闘技場を揺らす。
応援席ではケンが身を乗り出していた。
「ユリ姉ーー!!」
「ドロップ姉ーー!!」
「勝てぇぇぇ!!」
レイカは耳を押さえる。
「……うるさい。」
ケンは笑う。
「応援だもん!」
「声が小さい応援なんてある?」
ダイフクーが豪快に笑う。
「ねぇな!」
シャーベットは静かに資料を閉じる。
「ユリもドロップも昨日より表情が柔らかい。」
「余裕がある証拠だ。」
ウインナーは静かに二人を見つめていた。
「頑張れ。」
小さく。
本当に小さく呟いた。
ドロップはその声に気付き、
観客席へ向かって笑顔で親指を立てた。
ウインナーも自然と笑う。
レイカは腕を組みながら言う。
「……大丈夫だ。」
「ユリがいる。」
-ユリVSシュガー-
「第一試合!」
「ユリ選手!」
「対!」
「シュガー選手!」
白銀のローブ。
氷で出来た細身の槍。
シュガーは美しく構えた。
「同じ氷使いかしら。」
「楽しみね。」
ユリは微笑む。
「ええ。」
開始。
シュガーが地面へ槍を突き刺す。
「アイスランス!」
無数の氷柱。
まるで森のようにユリへ襲い掛かる。
観客席がどよめく。
しかし。
ユリは避けない。
「……綺麗ね。」
その一言。
右手をそっと前へ出す。
吹雪が舞う。
氷柱は全て。
花びらへ変わった。
「なっ……!」
シュガーが目を見開く。
「私の氷を……。」
「壊してない?」
ユリは静かに答える。
「壊してない。」
「受け止めただけ。」
花びらが舞う。
その花びらが、
今度はシュガーの周囲へ集まり始める。
「しまっ……!」
「氷華流。」
「弥生。」
氷の花弁が、
シュガーに纏わりついた。
「くっ……全く動けない…。」
「……降参よ。」
司会が叫ぶ。
「勝者!」
「ユリ選手!!」
観客席は大歓声。
ケンが跳ねる。
「ユリ姉つえぇぇ!!」
ダイフクーは笑う。
「相変わらず綺麗だな。」
レイカは煙草を咥えたまま頷く。
「そうだろ?」
「お?惚気か?」
「…もう一度吹き飛ぶか?」
「はい、ごめんなさい。」
ユリが戻ってくる。
ドロップが笑う。
「ユリさん!」
「やっぱりすごい!」
ユリは少し照れながら答えた。
「まだまだよ。」
「あなたも。」
「楽しみにしてる。」
-ドロップVSカシュー-
「第二試合!」
「ドロップ選手!」
「対!」
「カシュー選手!」
カシューは筋肉質な女性。
武器はなし。
完全な格闘家。
「可愛い子だね。」
「泣かせたくなる。」
ドロップは笑った。
「じゃあ。」
「泣くのはそっちね。」
開始。
カシューが一直線に突っ込む。
拳。
蹴り。
肘。
一切止まらない。
昨日までのドロップなら、
受け止めていただろう。
しかし違う。
「流す。」
ユリの言葉。
身体を回す。
力を逃がす。
相手の勢いだけ残す。
「え?」
カシューの身体が前へ流れる。
「今!」
ドロップが背後へ。
回転。
「はっ!」
右肘で背中を打撃する。
カシューが膝をつく。
「くっ!」
再び立つ。
「面白い!」
今度は本気。
猛烈なラッシュ。
拳。
拳。
膝。
回し蹴り。
ドロップは全部流す。
全部。
観客席が静まり返る。
レイカが小さく言う。
「……強くなったな。」
ユリは微笑む。
「ええ。」
「もう教えることは少ないかも。」
ウインナーは驚いていた。
「ドロップ。」
「こんなに……。」
最後。
カシューが最大の一撃を放つ。
「終わりだああ!!」
ドロップは半歩だけ動く。
力を受け流し、取り込む。
力の勢いを乗せた回転。
「レインボーパール。」
「グラビティ!!」
七色の重力が、
カシューを地面へ叩き付けた。
「ぐううううう!!!」
立ち上がれない。
十カウント。
終了。
「勝者!」
「ドロップ選手!!」
観客席が揺れた。
ドロップは息を切らしながら笑う。
「やったぁぁ!!」
真っ先に向かったのは。
ユリのところ。
「ユリさん!」
「出来た!」
ユリは優しく抱きしめる。
「ええ。」
「立派だった。」
ドロップは少し涙ぐんだ。
「ありがとう。」
「いっぱい教えてくれて。」
ユリは頭を撫でる。
「これからも。」
「一緒に強くなろう。」
ウインナーも笑っていた。
「よかった。」
レイカが煙草を吸いながら呟く。
「……弟子が師匠を超える日は。」
「案外近いかもな。」
ユリが聞こえていたらしく、
笑いながら振り返る。
「まだ負けない。」
「……誰に似たんだか。」
-勝ち残った四人-
残り二試合。
シュリンプは流水のような体術で、
クリスプを翻弄し勝利。
クロワは静かな剣技でペペロンを圧倒した。
これで準決勝進出者が決まる。
ユリ。
ドロップ。
シュリンプ。
クロワ。
掲示板へ組み合わせが映る。
ドロップは思わず固まった。
「……。」
「ユリさん。」
「反対側だ。」
ユリも笑う。
「良かった。」
「決勝まで当たらない。」
ドロップは胸を撫で下ろした。
「本当に。」
ウインナーが近づく。
「二人ともおめでとう。」
ドロップは笑顔。
「ありがと!」
ユリも頷いた。
「まだ終わりじゃない。」
レイカが歩き出す。
「……飯にするか。」
ダイフクーが叫ぶ。
「賛成!」
ケンも飛び跳ねる。
「肉!」
「肉!」
「肉!」
シャーベットが苦笑した。
「元気だけはあるな。」
「僕は魚がいい。」
「ブリトー兄!うるさい!肉!」
「なんで僕には噛み付くんだ!魚!」
「肉!」
「魚!」
「う る さ い 。」
2人ともレイカからデコピンを食らう
「いてぇ!?デコピンでこれ!?」
「……っ。なんで僕まで。」
「静かに歩け。」
思わずウインナーが、
「両方食べれるところ行こうね。」
「わーい!さすがウインナー兄!」
「扱いが上手いわね。」
「さすがウインナーだな。」
仲間たちは笑いながら宿へ戻っていく。
この時はまだ。
この夜、
彼らが再び戦うことになるとは、
誰も知らなかった――。