-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第四十章

 

 

 

-氷華と虹-

 

 

 

-女子本戦開幕-

 

 

 

翌朝。

 

闘技場は昨日以上の歓声に包まれていた。

 

 

「さあ皆様、お待たせしました!」

 

「本日は女子トーナメント一回戦!」

 

「昨日勝ち上がった四名が。」

 

「準決勝進出をかけて激突します!」

 

 

歓声が闘技場を揺らす。

 

応援席ではケンが身を乗り出していた。

 

「ユリ姉ーー!!」

 

「ドロップ姉ーー!!」

 

「勝てぇぇぇ!!」

 

レイカは耳を押さえる。

 

「……うるさい。」

 

ケンは笑う。

 

「応援だもん!」

 

「声が小さい応援なんてある?」

 

ダイフクーが豪快に笑う。

 

「ねぇな!」

 

シャーベットは静かに資料を閉じる。

 

「ユリもドロップも昨日より表情が柔らかい。」

 

「余裕がある証拠だ。」

 

ウインナーは静かに二人を見つめていた。

 

「頑張れ。」

 

小さく。

 

本当に小さく呟いた。

 

ドロップはその声に気付き、

 

観客席へ向かって笑顔で親指を立てた。

 

ウインナーも自然と笑う。

 

レイカは腕を組みながら言う。

 

「……大丈夫だ。」

 

「ユリがいる。」

 

 

 

-ユリVSシュガー-

 

 

 

「第一試合!」

 

「ユリ選手!」

 

「対!」

 

「シュガー選手!」

 

 

白銀のローブ。

 

氷で出来た細身の槍。

 

シュガーは美しく構えた。

 

「同じ氷使いかしら。」

 

「楽しみね。」

 

ユリは微笑む。

 

「ええ。」

 

 

開始。

 

 

シュガーが地面へ槍を突き刺す。

 

「アイスランス!」

 

無数の氷柱。

 

まるで森のようにユリへ襲い掛かる。

 

観客席がどよめく。

 

しかし。

 

ユリは避けない。

 

 

「……綺麗ね。」

 

 

その一言。

 

 

右手をそっと前へ出す。

 

吹雪が舞う。

 

氷柱は全て。

 

花びらへ変わった。

 

「なっ……!」

 

シュガーが目を見開く。

 

「私の氷を……。」

 

「壊してない?」

 

ユリは静かに答える。

 

「壊してない。」

 

「受け止めただけ。」

 

花びらが舞う。

 

その花びらが、

 

今度はシュガーの周囲へ集まり始める。

 

「しまっ……!」

 

 

「氷華流。」

 

「弥生。」

 

 

氷の花弁が、

 

シュガーに纏わりついた。

 

「くっ……全く動けない…。」

 

「……降参よ。」

 

司会が叫ぶ。

 

 

「勝者!」

 

「ユリ選手!!」

 

 

観客席は大歓声。

 

ケンが跳ねる。

 

「ユリ姉つえぇぇ!!」

 

ダイフクーは笑う。

 

「相変わらず綺麗だな。」

 

レイカは煙草を咥えたまま頷く。

 

「そうだろ?」

 

「お?惚気か?」

 

「…もう一度吹き飛ぶか?」

 

「はい、ごめんなさい。」

 

 

ユリが戻ってくる。

 

ドロップが笑う。

 

「ユリさん!」

 

「やっぱりすごい!」

 

ユリは少し照れながら答えた。

 

「まだまだよ。」

 

「あなたも。」

 

「楽しみにしてる。」

 

 

 

-ドロップVSカシュー-

 

 

 

「第二試合!」

 

「ドロップ選手!」

 

「対!」

 

「カシュー選手!」

 

 

カシューは筋肉質な女性。

 

武器はなし。

 

完全な格闘家。

 

「可愛い子だね。」

 

「泣かせたくなる。」

 

ドロップは笑った。

 

「じゃあ。」

 

「泣くのはそっちね。」

 

 

開始。

 

 

カシューが一直線に突っ込む。

 

拳。

 

蹴り。

 

肘。

 

一切止まらない。

 

昨日までのドロップなら、

 

受け止めていただろう。

 

しかし違う。

 

「流す。」

 

ユリの言葉。

 

身体を回す。

 

力を逃がす。

 

相手の勢いだけ残す。

 

「え?」

 

カシューの身体が前へ流れる。

 

「今!」

 

ドロップが背後へ。

 

回転。

 

「はっ!」

 

右肘で背中を打撃する。

 

カシューが膝をつく。

 

「くっ!」

 

再び立つ。

 

「面白い!」

 

今度は本気。

 

猛烈なラッシュ。

 

拳。

 

拳。

 

膝。

 

回し蹴り。

 

ドロップは全部流す。

 

全部。

 

観客席が静まり返る。

 

レイカが小さく言う。

 

「……強くなったな。」

 

ユリは微笑む。

 

「ええ。」

 

「もう教えることは少ないかも。」

 

ウインナーは驚いていた。

 

「ドロップ。」

 

「こんなに……。」

 

 

最後。

 

カシューが最大の一撃を放つ。

 

「終わりだああ!!」

 

ドロップは半歩だけ動く。

 

力を受け流し、取り込む。

 

力の勢いを乗せた回転。

 

「レインボーパール。」

 

「グラビティ!!」

 

七色の重力が、

 

カシューを地面へ叩き付けた。

 

「ぐううううう!!!」

 

立ち上がれない。

 

十カウント。

 

終了。

 

 

「勝者!」

 

「ドロップ選手!!」

 

 

観客席が揺れた。

 

ドロップは息を切らしながら笑う。

 

「やったぁぁ!!」

 

真っ先に向かったのは。

 

ユリのところ。

 

「ユリさん!」

 

「出来た!」

 

ユリは優しく抱きしめる。

 

「ええ。」

 

「立派だった。」

 

ドロップは少し涙ぐんだ。

 

「ありがとう。」

 

「いっぱい教えてくれて。」

 

ユリは頭を撫でる。

 

「これからも。」

 

「一緒に強くなろう。」

 

ウインナーも笑っていた。

 

「よかった。」

 

レイカが煙草を吸いながら呟く。

 

「……弟子が師匠を超える日は。」

 

「案外近いかもな。」

 

ユリが聞こえていたらしく、

 

笑いながら振り返る。

 

「まだ負けない。」

 

「……誰に似たんだか。」

 

 

 

-勝ち残った四人-

 

 

 

残り二試合。

 

シュリンプは流水のような体術で、

 

クリスプを翻弄し勝利。

 

クロワは静かな剣技でペペロンを圧倒した。

 

これで準決勝進出者が決まる。

 

 

ユリ。

 

ドロップ。

 

シュリンプ。

 

クロワ。

 

 

掲示板へ組み合わせが映る。

 

ドロップは思わず固まった。

 

「……。」

 

「ユリさん。」

 

「反対側だ。」

 

ユリも笑う。

 

「良かった。」

 

「決勝まで当たらない。」

 

ドロップは胸を撫で下ろした。

 

「本当に。」

 

ウインナーが近づく。

 

「二人ともおめでとう。」

 

ドロップは笑顔。

 

「ありがと!」

 

ユリも頷いた。

 

「まだ終わりじゃない。」

 

レイカが歩き出す。

 

「……飯にするか。」

 

ダイフクーが叫ぶ。

 

「賛成!」

 

ケンも飛び跳ねる。

 

「肉!」

 

「肉!」

 

「肉!」

 

シャーベットが苦笑した。

 

「元気だけはあるな。」

 

「僕は魚がいい。」

 

「ブリトー兄!うるさい!肉!」

 

「なんで僕には噛み付くんだ!魚!」

 

「肉!」

 

「魚!」

 

「う る さ い 。」

 

2人ともレイカからデコピンを食らう

 

「いてぇ!?デコピンでこれ!?」

 

「……っ。なんで僕まで。」

 

「静かに歩け。」

 

思わずウインナーが、

 

「両方食べれるところ行こうね。」

 

「わーい!さすがウインナー兄!」

 

「扱いが上手いわね。」

 

「さすがウインナーだな。」

 

仲間たちは笑いながら宿へ戻っていく。

 

この時はまだ。

 

この夜、

 

彼らが再び戦うことになるとは、

 

誰も知らなかった――。

 

 

 

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