-強者の証明-
-賑やかな朝-
朝日が宿の窓から差し込む。
昨日まで静かだった宿は、
子供たちの笑い声で満ちていた。
「お兄ちゃーん!」
「朝ご飯できたよ!」
「ケン!早く起きろー!」
「起きてるー!」
ドタドタと廊下を走る足音。
ダイフクーは苦笑する。
「昨日まで静かだったのによ。」
ブリトーも笑った。
「賑やかな方が落ち着くよ。」
食堂では母親が忙しそうに料理を運んでいる。
「皆さん、本当にありがとうございます。」
「おかげで子供たちも安心して眠れました。」
レイカはコーヒーを飲みながら小さく頷く。
「……気にするな。」
そこへ子供が駆け寄る。
「レイカお兄ちゃん!」
「遊ぼ!」
「……今は無理だ。」
「大会。」
「終わったらな。」
「約束だ。」
子供は満面の笑み。
「うん!」
ユリが微笑む。
「ちゃんと約束するのね。」
レイカは目を逸らす。
「……からかうな。」
ドロップが笑う。
「もう完全にお兄ちゃんじゃない。」
ウインナーも笑みを浮かべた。
「ふふっ。」
「レイカらしいね。」
その穏やかな時間は、
闘技場へ向かう鐘の音で終わりを告げた。
-レイカ VS コリー-
「男子トーナメント準決勝!」
「第一試合!」
「レイカ選手!」
「対!」
「コリー選手!」
歓声が闘技場を揺らす。
コリーは細身の青年。
両手には何も持っていない。
しかし、
無数の短剣が宙に浮かんでいた。
「念動力だったな。」
レイカは静かに笑う。
「面白い。」
コリーも笑みを返す。
「君の炎も気になるな。」
「どういう仕組みで使ってるんだい?」
レイカは煙草を外し、
静かに構えた。
「俺も聞きたい。」
「お前はどうやって動かしている?」
コリーは肩をすくめる。
「勝ったら教えてあげる。」
レイカは小さく笑った。
「……ほう。」
「じゃあ。」
「教えてもらうぞ。」
「え?」
試合開始。
コリーが短剣を放とうとした瞬間――
レイカの姿が消えた。
観客席がざわめく。
「どこだ!?」
次の瞬間。
レイカは既にコリーの背後に立っていた。
刀は抜いていない。
そのまま歩き始める。
コリーは首を傾げた。
「……?」
「何もしてな……」
ドゴッ!
腹部が突然凹む。
一撃。
二撃。
三撃。
四撃。
五撃。
遅れて全ての衝撃が一気に襲う。
「がはっ!!」
コリーは膝をつく。
さらに衝撃が身体を貫く。
そのまま倒れ込んだ。
「テン!」
「勝者!」
「レイカ選手!」
観客席は静まり返る。
「あれ……。」
「何した?」
「見えなかった……。」
ダイフクーが笑う。
「相変わらず意味わかんねぇ。」
ウインナーは真剣な表情だった。
「拳だけ。」
「しかも急所を避けている。」
「恐ろしいなレイカは。」
「いやいや、見えてるお前もすごいぞ!」
レイカは倒れたコリーの横へしゃがむ。
「目を覚ましたら。」
「ゆっくり聞かせてもらおう。」
「その力のこと。」
コリーは気を失いながらも、
少しだけ笑っていた。
-ウインナー VS X-
「第二試合!」
「ウインナー選手!」
「対!」
「X選手!」
静かな空気が流れる。
Xは微笑んだ。
以前とは雰囲気がかなり違う。
「やあやあ。」
「君は風を操る子だったね。」
ウインナーは首を傾げる。
「……そんな話し方だった?」
「『人間』を覚えてみたんだ。」
「変かな?」
「いや。」
「不思議だ。」
「何が?」
ウインナーは真っ直ぐ見つめる。
「君。」
「空っぽみたい。」
その一言で、
観客席まで静まり返る。
Xは少し考え込む。
「空っぽ。」
「なるほど。」
「記録。」
「むしろパンパンなはずだが……。」
「……まあいい。」
「始めよう。」
開始。
Xが一気に踏み込む。
拳。
蹴り。
肘。
関節技。
昨日見せたあらゆる武術。
まるで達人が次々と入れ替わるようだった。
しかし。
当たらない。
風が先に動く。
ウインナーの身体は自然に避け続ける。
「速い……。」
「見えない!」
観客席から声が漏れる。
Xは静かに呟いた。
「相性。」
「悪い。」
「なら。」
「これはどうだろう。」
「アイスブレイク。」
氷柱が地面を裂く。
「!?」
ウインナーが驚く。
「シャーベットの技!」
わずかに体勢を崩す。
Xは即座に踏み込む。
「適正。」
「追撃。」
しかし、
風が先に反応した。
ウインナーが笑う。
「……させない!」
「風のエチュード!」
暴風がXを吹き飛ばす。
Xは空中で体勢を整え着地する。
「なるほど。」
「学習。」
「次は。」
「君と同じ風を……。」
しかし。
そのまま止まった。
「……?」
「何故。」
「出来ない。」
「風。」
「再現不可能。」
「学習不可能。」
ウインナーは困惑する。
「どういうこと?」
Xは目を閉じる。
「解析。」
「開始。」
数秒。
静寂。
そして目を開く。
「解析終了。」
「降参。」
司会も観客も固まる。
「え?」
「なぜ?」
Xは真剣な顔で答えた。
「君の風は。」
「何故か分析出来ない。」
「模範出来ない。」
「今。」
「この謎を解く方が。」
「大会より重要。」
そう言うと、
Xは一人ぶつぶつと呟きながら退場していく。
「風。」
「意思。」
「生命。」
「加護。」
「学習しなければ……。」
静まり返る闘技場。
ウインナーはその背中を見つめながら、
小さく呟いた。
「……君は、一体何者なんだ。」
その答えを知る者は、
まだ誰もいなかった――。