-守護者-
-試練の始まり-
重厚な石扉が轟音とともに閉ざされた。
ゴゴゴゴゴ……。
神殿全体が低く唸る。
静寂。
誰一人として口を開かない。
広大な第一階層の中央には、
漆黒の闇を纏ったハラペーニョの影が静かに立っていた。
その姿は、生前と寸分違わぬ姿。
しかし、その瞳には光がなく、
全身から禍々しい闇が静かに立ち昇っている。
ブリトーは思わず息を呑んだ。
「……ハラペーニョ。」
返事はない。
影はただ、侵入者を見つめているだけだった。
その時。
壁一面に刻まれた古代文字が、青白い光を放ち始める。
やがて文字が浮かび上がった。
⸻
第一階層
守護者 ハラペーニョの影
試練開始
挑戦者 一名
第三者の介入を禁ずる
勝者のみ、次なる階層への道を得る
⸻
文字が消えた瞬間。
シャーベットの足元だけが淡く輝いた。
「……俺か。」
その直後。
仲間たちの前へ透明な壁が現れる。
ダイフクーが拳で叩く。
ドンッ!!
「くっ……!」
全く動かない。
ケンも負けじと殴る。
「なんだこれ!」
「びくともしねぇ!」
ユリがそっと手を添える。
「透明な壁……。」
「シャーベットだけは通れる。」
ブリトーが静かに頷く。
「一対一の試練。」
「昔のサラミッドには無かった仕組みだ。」
「メザンが、この神殿を書き換えたんだ……。」
レイカは刀へ伸ばしかけた手を止めた。
「助けることも出来ないって訳か。」
シャーベットは静かに仲間を振り返る。
「任せろ。」
レイカは短く頷いた。
「……頼んだ。」
シャーベットはゆっくりと前へ歩く。
ハラペーニョの影も静かに構えた。
神殿の第一階層。
最初の試練が、静かに幕を開ける。
-闇に染まった拳-
静寂。
次の瞬間だった。
ハラペーニョの影が消える。
「……!」
シャーベットが反応した時には、
影は真横まで迫っていた。
ドォン!!
重い拳が腕を捉える。
受け止めたはずの衝撃で、
そのまま数メートル吹き飛ばされた。
石床を滑りながらも体勢を立て直す。
「速い……。」
影は追撃を止めない。
一歩。
二歩。
まるで地面を滑るような踏み込み。
間髪入れず拳が降り注ぐ。
シャーベットは最小限の動きで避け続ける。
観戦するダイフクーが思わず叫ぶ。
「本人と戦い方が全然違うぞ!!」
ブリトーも険しい表情を浮かべる。
「闇で強化されてるのか……。」
「こんなの、ハラペーニョじゃない。」
ウインナーは冷静に目を細めた。
「真正面からじゃ厳しいね……。」
しかし、シャーベットの表情は変わらない。
焦りはない。
影の動きを静かに見続ける。
「右足。」
「重心。」
「踏み込み。」
「呼吸。」
「……なるほどな。」
一つ一つ、戦いの情報を頭の中で組み立てていく。
-分析-
再び影が迫る。
拳。
蹴り。
肘。
息つく暇もない連撃。
だが。
シャーベットは避けることだけに集中していた。
「……見える。」
影は踏み込む瞬間、僅かに右肩が下がる。
攻撃へ移る合図だった。
「そこだ。」
シャーベットが床へ手を触れる。
冷気がゆっくりと広がる。
白い霜が石床を覆い始めた。
ケンが目を丸くする。
「床が凍ってる!」
シャーベットは静かに呟く。
「氷の加護。」
「力を貸してくれ。」
ハラペーニョの影が再び突進する。
その足が霜を踏んだ瞬間。
わずかに滑る。
ほんの一瞬。
だが、その一瞬をシャーベットは逃さない。
「そこだ!」
冷気が一気に収束する。
影の両脚を氷が包み込んだ。
完全には凍らない。
しかし、動きは止まる。
「十分だ。」
シャーベットは深く腰を落とし、右拳を握り締める。
「アイスブレイク。」
静かな一言。
拳が一直線に突き出された。
ドォォォン!!
凍り付いた氷を砕きながら拳が腹部へめり込む。
衝撃が神殿中へ響いた。
影は大きく後退する。
身体中へ黒い亀裂が走る。
闇が溢れ出した。
-突破-
ハラペーニョの影は静かに立っていた。
やがて。
全身が白い光へ変わり始める。
黒い闇が消え去り、
無数の光の粒となって天井へ舞い上がった。
ブリトーは静かに目を閉じる。
「……すまない。」
誰へ向けた言葉なのか。
それは誰にも分からない。
神殿が再び揺れる。
ゴゴゴゴゴ……。
透明な壁が音もなく消えた。
中央の床がゆっくりと左右へ開く。
暗闇の底から、第二階層へ続く石階段が姿を現す。
壁の古代文字が再び輝く。
⸻
第一階層 攻略完了
第二階層 解放
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シャーベットが静かに仲間の元へ戻る。
ダイフクーが大きく笑う。
「よくやったぞ!」
ケンは目を輝かせた。
「かっけぇ!」
レイカはシャーベットの肩を軽く叩く。
「お疲れ。」
シャーベットは小さく息を吐く。
「……力だけなら勝てなかった。」
ブリトーは第二階層へ続く階段を静かに見つめる。
「次は…誰なんだろう。」
その言葉に、一同の表情が引き締まる。
誰も足を止めない。
サラミッドの試練は、まだ始まったばかりだった。