-水鏡-
-第二階層-
石階段を降りるたび、神殿の空気が変わっていく。
やがて一行は巨大な石扉の前へ辿り着いた。
ブリトーが静かに息を吐く。
「……行こう。」
石扉が重々しく開く。
広がっていたのは、巨大な円形の闘技場。
床一面を浅い水が覆い、
天井から絶え間なく雫が落ちている。
静かな水音だけが空間に響いていた。
ケンが辺りを見回す。
「全部、水か……。」
シャーベットも周囲を観察する。
「戦うには厄介な地形だ。」
その時だった。
壁一面の古代文字が淡く光を放つ。
⸻
第二階層
守護者 ラビィオリの影
挑戦者 一名
第三者の介入を禁ずる
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黒い霧がゆっくり集まり、
一人の女性の姿を形作る。
見覚えのある衣装。
全身を覆う漆黒の闇。
ブリトーが小さく呟く。
「……ラビィオリ。」
返事はない。
影は静かに構えた。
同時に、一筋の光がドロップの足元を照らす。
「……私?」
透明な壁が仲間たちの前へ現れる。
ユリは静かに頷く。
「……気をつけてね。」
ドロップは拳を握る。
「うん。」
静かに歩み出た。
-水の舞-
試合開始。
その瞬間だった。
ラビィオリの影が片手を上げる。
闘技場中の水が浮かび上がった。
「!」
無数の水弾。
一斉にドロップへ襲い掛かる。
「速い!」
横へ飛ぶ。
着地。
その足元から再び水柱。
跳ぶ。
避ける。
着地した瞬間。
今度は水刃。
「くっ!」
身体を捻り紙一重で回避。
ダイフクーが叫ぶ。
「近付けねぇ!」
ウインナーは静かに見つめる。
「距離を詰められないようにしてる……。」
ラビィオリの影は水の中心から一歩も動かない。
それでも攻撃は止まらない。
床。
天井。
左右。
あらゆる方向から水が襲う。
ドロップは避け続けた。
「……まだ。」
「届かない。」
-修行の成果-
ラビィオリの影が静かに前へ出る。
初めて肉弾戦へ移る。
水を纏った蹴り。
「!」
重い。
腕で受けた衝撃だけで数歩後退する。
続く拳。
蹴り。
肘。
水流を纏う一撃一撃が鋭い。
ドロップも応戦する。
拳と拳がぶつかる。
蹴りと蹴りが交差する。
水飛沫が大きく舞い上がる。
互角。
しかし。
「……本人と違うわね。」
ラビィオリの影の攻撃には、水流が加わる。
一撃ごとの威力が違う。
その時だった。
ドロップの脳裏に、修行の日々が蘇る。
ユリの声。
『受け止めようとしちゃ駄目。』
『流すの。』
『相手の力を利用する。』
『崩れた一瞬が、一番大きな隙になる。』
ドロップは静かに目を閉じた。
「……そうだった。」
再びラビィオリの影が踏み込む。
今度は違う。
真正面から受けない。
半歩引く。
身体を捻る。
水流を受け流す。
ラビィオリの影の重心が一瞬だけ前へ流れた。
「今!」
踏み込む。
肩。
肘。
拳。
蹴り。
一気に距離を詰める。
ラビィオリの影も初めて大きく後退した。
レイカが静かに笑う。
「……流せるようになったか。」
ユリも優しく微笑む。
「あの子、ちゃんと自分のものにした。」
レイカは小さく頷いた。
「教え方が良かったんだな。」
ユリは少し照れながら笑う。
「ふふっ。」
-勝利-
ラビィオリの影が両腕を広げる。
闘技場中の水が渦を巻いた。
巨大な水流。
一直線にドロップへ襲い掛かる。
逃げない。
ドロップは深く息を吸う。
「私は……。」
「みんなの背中を追い掛けるだけじゃ終わらない!」
水流へ飛び込む。
身体を回転。
水の勢いを利用し、そのまま跳躍。
空中。
身体を大きく捻る。
右脚が大きな弧を描いた。
「はあぁぁぁぁっ!!」
渾身の回し蹴り。
轟音。
ラビィオリの影を真正面から捉える。
影の身体へ無数の亀裂が走る。
静かに光へ変わり始めた。
黒い闇が消え、白い粒子となって舞い上がる。
その最後の瞬間。
ラビィオリの影の表情が、
ほんの一瞬だけ穏やかに微笑んだように見えた。
誰も何も言わない。
ブリトーだけが静かに目を閉じる。
「……ラヴィオリ。」
影は静かに光となって消えていった。
その瞬間。
神殿が大きく揺れる。
ゴゴゴゴゴ……。
透明な壁が消え去る。
闘技場中央の床が左右へ開き、
第三階層へ続く石階段が姿を現した。
古代文字が静かに輝く。
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第二階層 攻略完了
第三階層 解放
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ドロップが戻ると、ユリが優しく頭を撫でた。
「よく頑張ったね。」
ドロップは少し照れ臭そうに笑う。
「ありがとう。」
レイカも短く頷く。
「良かったぞ。」
ダイフクーは豪快に笑う。
「次も頼もしいな!」
ケンは目を輝かせる。
「俺も負けねぇ!」
ブリトーは静かに第三階層へ続く階段を見つめる。
「……行こう。」
誰が待ち受けているのか。
それは誰にも分からない。
一行は静かに石階段へ足を踏み出した。