-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

58 / 90
第五十三章

 

 

 

-岩壁の試練-

 

 

 

-第三階層-

 

 

 

第二階層を突破した一行は、

 

現れた石階段をゆっくりと降りていく。

 

一歩進むごとに空気は重くなり、

 

足音だけが神殿の奥へ響いていた。

 

やがて辿り着いた先には、巨大な石扉。

 

ブリトーが静かに扉へ手を添える。

 

「……行こう。」

 

重々しい音を立て、石扉がゆっくりと開いた。

 

広がっていたのは、巨大な岩石地帯。

 

無数の岩柱が林立し、床はひび割れ、

 

天井からも巨大な岩が突き出している。

 

まるで山そのものを切り抜いたような空間だった。

 

ダイフクーが豪快に笑う。

 

「ははっ!こういう場所は嫌いじゃねぇ!」

 

シャーベットは辺りを見回す。

 

「……逆に言えば、相手も最大限に力を発揮できる地形だ。」

 

その時。

 

壁一面の古代文字が淡く輝き始めた。

 

 

⸻

 

第三階層

 

守護者 カフェラテの影

 

挑戦者 一名

 

第三者の介入を禁ずる

 

⸻

 

 

黒い霧が集まり、一人の埴輪の男の姿を形作る。

 

岩のように逞しい身体。

 

全身を包む漆黒の闇。

 

カフェラテの影は静かに拳を握った。

 

同時に、ダイフクーの足元だけが青白く光る。

 

「おっ、俺か!」

 

透明な壁が仲間たちの前へ現れる。

 

レイカは腕を組みながら言った。

 

「任せた。」

 

ダイフクーはニヤリと笑う。

 

「任せろ!」

 

 

 

-力比べ-

 

 

 

開始の合図もない。

 

次の瞬間だった。

 

カフェラテの影が一気に距離を詰める。

 

「うおっ!」

 

ダイフクーが咄嗟に拳を振るう。

 

 

ドゴォォン!!

 

 

拳と拳が激突した瞬間、

 

衝撃だけで周囲の岩柱が砕け散った。

 

ケンが思わず叫ぶ。

 

「うわっ!」

 

「岩が吹っ飛んだ!」

 

しかし影は止まらない。

 

右拳。

 

左拳。

 

膝。

 

肩。

 

一撃一撃が岩のように重い。

 

ダイフクーも真正面から打ち返す。

 

「おらぁ!」

 

 

ガガガガン!!

 

 

拳がぶつかる度、地面に亀裂が広がっていく。

 

観戦するウインナーが呟く。

 

「……純粋な力勝負。」

 

レイカも目を細める。

 

「真正面から受け続ければ、先に潰れる。」

 

ダイフクーは歯を食いしばりながら笑った。

 

 

「いいじゃねぇか!」

 

「そういうの、大好きなんだぜ!」

 

 

 

-仲間のために-

 

 

 

カフェラテの影が地面を叩く。

 

巨大な岩柱が地面から突き上がる。

 

ダイフクーは腕を伸ばし、岩柱を掴む。

 

そのまま身体を振り回し、大きく跳躍。

 

岩柱を蹴り砕きながら着地する。

 

「すげぇ……。」

 

ケンは目を輝かせた。

 

しかし次の瞬間。

 

影の拳が腹部へ直撃する。

 

 

ドォン!!

 

 

ダイフクーは何十メートルも吹き飛ばされ、

 

岩壁へ激突した。

 

砂煙が舞う。

 

誰も声を出せない。

 

やがて煙の中から笑い声が響いた。

 

 

「……いてて。」

 

「やっぱ強ぇなぁ。」

 

 

ゆっくり立ち上がる。

 

口元から血を拭いながら、それでも笑う。

 

 

「でも。」

 

「負けられねえんだ。」

 

「俺には難しいことは分かんねぇ。」

 

「賢くもない。」

 

「速くもなれねぇ。」

 

 

静かに拳を握る。

 

 

「だけど。」

 

「仲間を守るためなら。」

 

「俺は何度でも立ち上がるぞ。」

 

「耐久性は誰にも負けねえぞ!」

 

 

透明な壁の向こうで、ユリが優しく微笑んだ。

 

「ダイフクーらしいね。」

 

レイカも小さく笑う。

 

「……かっこいいな。」

 

 

 

-ネックインパクト-

 

 

 

ダイフクーは深く息を吸う。

 

首がゆっくりと伸び始める。

 

十メートル。

 

二十メートル。

 

三十メートル。

 

カフェラテの影が初めて構えを変えた。

 

「行くぞぉぉぉっ!!」

 

長く伸びた首が、大きく弧を描く。

 

まるで巨大な鞭。

 

空気を切り裂きながら一気に振り下ろされる。

 

 

 

「ネックインパクト!!」

 

 

 

バギィィィン!!

 

 

 

凄まじい衝撃が神殿中へ轟いた。

 

カフェラテの影は腕で受け止める。

 

しかし、その身体は大きく揺らぐ。

 

 

「まだだぁぁぁ!!」

 

 

ダイフクーは首をしならせ、

 

二撃、三撃と連続で叩き込む。

 

一撃ごとに岩が砕け、床が陥没する。

 

最後の一撃。

 

渾身の一振りが影の胸部を直撃した。

 

 

ドォォォォン!!

 

 

カフェラテの影は岩壁へ叩きつけられる。

 

全身へ無数の亀裂が走った。

 

闇が静かに剥がれ落ちる。

 

やがて身体は白い光へ変わり、

 

粒子となって消えていった。

 

ブリトーは静かに目を閉じる。

 

「……ごめん。」

 

神殿が再び震える。

 

ゴゴゴゴゴ……。

 

透明な壁が消え去る。

 

中央の床がゆっくりと開き、

 

第四階層へ続く石階段が姿を現した。

 

壁の古代文字が静かに輝く。

 

 

⸻

 

第三階層 攻略完了

 

第四階層 解放

 

⸻

 

 

ダイフクーが仲間の元へ戻ると、

 

ケンが勢いよく飛びついた。

 

「すげぇよダイフクー兄ちゃん!」

 

「首があんなに伸びるなんて反則だろ!」

 

ダイフクーは豪快に笑う。

 

「はははっ!びっくりしたか!」

 

レイカは肩を軽く叩く。

 

「見事だった。」

 

その一言に、

 

ダイフクーは少し照れ臭そうに頭を掻く。

 

「へへっ。」

 

ブリトーは静かに第四階層へ続く階段を見つめた。

 

「……次は誰だ。」

 

誰が待ち受けているのか。

 

それはまだ、誰にも分からない。

 

一行は静かに階段へ足を踏み出した。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。