-継ぐ者-
-第四階層-
第三階層を突破した一行は、
現れた石階段を静かに降りていく。
石壁には長い年月を感じさせる傷跡が刻まれ、
空気はさらに重くなっていた。
やがて第四階層へ続く巨大な石扉の前へ辿り着く。
ブリトーが静かに扉へ手を添えた。
「……行こう。」
重々しい音と共に石扉が開く。
そこは今までとは違い、
広く何もない円形の闘技場だった。
無機質な石床。
高い天井。
柱も障害物もない。
静寂だけが支配している。
ダイフクーが辺りを見回す。
「ずいぶんシンプルだな。」
その瞬間。
壁一面の古代文字が淡く輝き始めた。
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第四階層
守護者 ガレットの影
挑戦者 一名
第三者の介入を禁ずる
⸻
闇が集まり、一人の男の姿を形作る。
大きな体。
揺るがぬ構え。
全身を包む黒い闇。
ガレットの影は静かに拳を握る。
その瞬間、一筋の光がケンの足元を照らした。
「……俺?」
「俺だ!!!」
透明な壁が仲間たちの前へ現れる。
レイカは静かにケンを見る。
「……行け。」
その一言だけだった。
ケンは大きく頷く。
「任せて!」
勢いよく前へ飛び出す。
しかし、その拳は僅かに震えていた。
-圧倒的な壁-
「行くぞ!」
避雷伸へ雷を纏わせ、一気に飛び込む。
「はぁぁぁっ!!」
雷撃と共に突きを放つ。
しかし。
ガレットの影は片腕だけで受け止めた。
「なっ……!」
次の瞬間。
大樹の蔦がケンを突き飛ばす。
ドォォン!!
ケンは闘技場の端まで吹き飛ばされる。
石床を何度も転がり、ようやく立ち上がる。
「いてて……。」
ガレットの影は一歩ずつ歩いてくる。
焦る様子もない。
ケンは再び雷を放つ。
「喰らえ!」
雷撃。
蹴り。
突き。
連続攻撃。
しかし。
全て木々で防がれる。
「なんでだよ!」
また蔦が飛んでくる。
ドォン!!
再び吹き飛ばされる。
ダイフクーが思わず叫ぶ。
「ケン!」
立ち上がろうとしたその時。
レイカの声だけが響いた。
「立て。」
短い一言。
ケンは歯を食いしばる。
「……まだだっ!」
ゆっくり立ち上がる。
-考える力-
ケンは避雷伸を握り直した。
息を整える。
「強ぇ……。」
「でも。」
「……兄ちゃんならどうする?」
その時。
再びレイカの声。
「……考えろ。」
それだけだった。
ケンはガレットの影を見つめる。
拳。
踏み込み。
呼吸。
「……。」
「そうか。」
「全部最短で動いてる。」
「だから隙がないんだ。」
改造された身体が高速で思考を巡らせる。
避雷伸を見つめる。
「なら。」
「武器を変えればいい。」
カチッ。
避雷伸が三つに分解される。
仲間たちが驚く。
ブリトー。
「分解した!?」
シャーベットも目を見開く。
「戦闘中に武器を組み替えるのか……。」
ケンは笑った。
「これが俺の武器だ!」
-電光石火-
ガレットの影が踏み込む。
ケンは二本の避雷伸を、
改造している靴へ取り付ける。
踵からは電流が蓄積されていて、
溢れかえりそうになっている。
そして。
最後の一本を握り締める。
「これで終わりだ!」
ケンの靴から数多の稲妻が、
束になって走っていく。
ガレットの影まで刹那──
「必殺──」
最後の一本が槍になる。
「電光石火!!」
雷を一点へ集中させる。
最後の一本へ凄まじい電流が集まった。
ケンは一気に踏み込む。
雷を纏った突きが一直線に放たれる。
ズガァァァァン!!
雷鳴が神殿中へ轟いた。
避雷伸はガレットの影の胸部を正確に貫く。
影の身体が大きく震える。
全身へ無数の亀裂。
黒い闇が剥がれ落ちる。
静かに。
白い光へ変わっていく。
ケンは肩で息をしながら、
その場へ座り込んだ。
「……勝った。」
ガレットの影は静かに光の粒となり、
天井へ消えていった。
ブリトーが目を閉じ呟く。
「……ゆっくり休んで。」
神殿が大きく揺れる。
ゴゴゴゴゴ……。
透明な壁が消える。
中央の床が左右へ開き、
第五階層へ続く石階段が姿を現した。
壁の古代文字が静かに輝く。
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第四階層 攻略完了
第五階層 解放
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ケンが立ち上がると、真っ先にレイカの方を見る。
「兄ちゃん!」
「どうだった!?」
レイカは少しだけ間を置き、静かに口を開いた。
「……よくやった。」
その一言だった。
ケンの表情が一気に明るくなる。
「やったぁ!!」
ダイフクーが豪快に笑う。
「ははは!良かったな!」
ブリトーも笑みを浮かべる。
「ちゃんと一人で勝ったね。」
ユリは優しく微笑み、ウインナーも静かに頷く。
レイカは照れ隠しのように踵を返した。
「……次へ行くぞ。」
「へへっ!」
ケンは避雷伸を拾い上げ、
嬉しそうにレイカの後ろを追いかける。
その背中は、
サラミッドへ入る前よりも少しだけ大きく見えた。
そして一行は、
静かに第五階層への石階段へ足を踏み入れる。