-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第五十六章

 

 

 

-光と影-

 

 

 

-最後の試練-

 

 

 

第五階層を突破した一行は、

 

静かに最後の石階段を下っていく。

 

誰も言葉を発しない。

 

これまでとは違う緊張感が、その場を包んでいた。

 

階段を降り切ると、

 

目の前には今までで最も巨大な石扉が現れる。

 

中央には太陽を模した古代の紋章。

 

ブリトーはゆっくりとその扉へ手を添えた。

 

「……ここが最後。」

 

重い音が神殿中へ響く。

 

 

ゴゴゴゴゴ……。

 

 

石扉がゆっくりと左右へ開いた。

 

広がっていたのは、

 

まるで神殿の礼拝堂のような空間だった。

 

白い石畳。

 

高く伸びる天井。

 

無数の割れたステンドグラス。

 

しかし、そこへ差し込むはずの光は存在しない。

 

全てが闇に染まっていた。

 

その中央。

 

一人の男の影が静かに立っている。

 

ブリトーの表情が変わる。

 

「……パル。」

 

返事はない。

 

黒い闇を纏った影は、ゆっくりと拳を握った。

 

その瞬間。

 

壁一面の古代文字が淡く輝く。

 

 

 

第六階層

 

守護者 パルの影

 

挑戦者 一名

 

第三者の介入を禁ずる

 

 

 

一筋の光が、ブリトーの足元を照らした。

 

透明な壁が仲間たちを隔てる。

 

ウインナーは静かに言う。

 

「……行ってらっしゃい。」

 

ブリトーは仲間を見渡し、小さく頷く。

 

「ああ。」

 

静かに前へ歩き出した。

 

 

 

-闇へ堕ちた光-

 

 

 

パルの影がゆっくりと手を掲げる。

 

その瞬間。

 

漆黒の光が神殿中へ広がった。

 

「!」

 

無数の黒い光線が一直線にブリトーへ襲い掛かる。

 

風を纏い回避する。

 

しかし。

 

光は軌道を変え、再び追い掛けてくる。

 

ウインナーが驚く。

 

「追尾してる!」

 

シャーベットは静かに分析する。

 

「光じゃない。」

 

「闇そのものを凝縮した力だ。」

 

ブリトーは風で距離を取る。

 

しかし次の瞬間。

 

パルの影は目の前にいた。

 

「速い!」

 

黒い拳が腹部へ突き刺さる。

 

 

ドォォン!!

 

 

ブリトーは床を転がり、石柱へ激突した。

 

立ち上がる。

 

だが、影は止まらない。

 

拳。

 

蹴り。

 

闇を纏った連撃。

 

一撃ごとの重さが、

 

今までの守護者とは比べものにならない。

 

ダイフクーが思わず息を呑む。

 

「強ぇ……。」

 

レイカは静かに見つめる。

 

「……大丈夫だ。」

 

 

 

-風は、前へ吹く-

 

 

 

何度倒されても、ブリトーは立ち上がる。

 

息は乱れ、身体は傷だらけだった。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

それでも目だけは、

 

パルの影を真っ直ぐ見つめている。

 

「君は……。」

 

「そんな力じゃなかった。」

 

静かな風が吹く。

 

ブリトーの腕輪が淡く光を放った。

 

優しい風。

 

懐かしい風。

 

まるで、昔から知っている誰かが、

 

背中を押してくれるようだった。

 

 

『大丈夫。そばにいるよ。』

 

 

風の声が聞こえる。

 

ブリトーは微笑む。

 

「……そうか。」

 

拳を握る。

 

風が静かに集まっていく。

 

ウインナーもその風を感じ、静かに笑った。

 

「……応えてる。」

 

「風が。」

 

ブリトーは深く息を吸う。

 

 

「ありがとう。」

 

「一緒に行こう。」

 

 

風が拳へ集まり始める。

 

その風は次第に黒い闇を押し返し、

 

優しく神殿を包み込んだ。

 

 

 

-未来へ-

 

 

 

パルの影が最後の力を解き放つ。

 

漆黒の闇が巨大な奔流となり、

 

神殿全体を覆い尽くす。

 

ブリトーは真正面から駆け出した。

 

風が背中を押す。

 

闇の中を一直線に突き進む。

 

「うおおおおっ!!」

 

腕輪のある左手を大きく引く。

 

 

「ウィンディ・パル!!」

 

 

左手から光が溢れ出す。

 

拳が一直線に突き出された。

 

 

 

ズドォォォォン!!

 

 

 

光が闇を切り裂く。

 

拳は真っ直ぐパルの影の胸へ届いた。

 

静寂。

 

闇がゆっくりと崩れ始める。

 

パルの影は静かにブリトーを見つめた。

 

その表情が、一瞬だけ穏やかな笑顔へ戻る。

 

何も語らない。

 

ただ静かに頷いた。

 

やがて身体は白い光となり、

 

天井へ舞い上がっていく。

 

ブリトーは静かに目を閉じた。

 

 

「……待ってて。」

 

「必ず、助ける。」

 

 

神殿全体が大きく震え始める。

 

 

ゴゴゴゴゴ……。

 

 

透明な壁が消える。

 

最奥へ続く巨大な扉がゆっくりと姿を現した。

 

古代文字が最後に輝く。

 

 

 

第六階層 攻略完了

 

全試練 終了

 

 

 

誰も言葉を発さなかった。

 

その扉の先にいる相手を、

 

全員が理解していたからだ。

 

レイカは静かに刀へ手を添える。

 

「……行くぞ。」

 

全員が頷く。

 

ゆっくりと、最終決戦の扉へ歩みを進めた。

 

 

 

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