―影に堕ちた先生―
―儀式―
最深部。
巨大な古代文字が刻まれた神殿。
静寂の中、
メザンだけは一度も振り返らない。
巨大な石板へ両手を添え、
静かに闇を流し込み続けていた。
黒い瘴気が術式を巡り、
神殿全体へ広がっていく。
ブリトーの視線が、その奥へ向いた。
「……!」
巨大な祭壇。
その中央。
無数の管に繋がれた一人の青年。
「パル……!!」
胸。
両腕。
背中。
全身へ伸びた管から、
眩い光が古代石板へ吸い上げられていく。
しかしパルは目を閉じたまま動かない。
ブリトーは拳を握る。
「待ってろ……。」
「絶対に助ける。」
メザンは小さく笑うだけだった。
「ふっ。」
「儀式は、もう止まらん。」
―影の軍勢―
スパムが静かに前へ出る。
「メザン様。」
「儀式に集中してくださいね。」
静かに指を鳴らした。
パチン。
床の古代文字が赤黒く輝く。
神殿全体から闇が溢れ始めた。
その闇は次第に形を持つ。
「……あれは。」
ケンが息を呑む。
闇は六人の姿へ変わった。
ダイフクー。
ユリ。
ドロップ。
シャーベット。
ケン。
ブリトー。
全員の影だった。
ウインナーが驚く。
「みんな……。」
スパムは穏やかに微笑む。
「便利なものだよ。」
「記憶。」
「戦闘技術。」
「癖。」
「全て再現できる。」
「もちろん。」
「本人以上に。」
―躊躇―
影が一斉に襲い掛かる。
「来るぞ!」
レイカが炎飛を抜く。
一閃。
ユリの影が吹き飛ぶ。
「っ…!!」
本体のユリへダメージが行く。
「……!!」
レイカの動きが止まった。
「本体にもいくのか。」
スパムは笑う。
「ただの影では面白くないでしょう?」
「さあ、どうするんだい?」
ウインナーも風を纏う。
しかし目の前にはドロップの影。
拳が止まる。
「出来ない……。」
スパムは静かに笑った。
「優しいね。」
「戦略通りだよ。」
影達は容赦なく攻撃を繰り返す。
ブリトーの影がレイカへ拳を叩き込む。
ケンの影が雷を放つ。
ダイフクーの影が首を大きくしならせる。
「ネックインパクト!」
轟音。
レイカは受け流すが、肩へ傷が刻まれる。
傷は塞がらない。
ユリが気付く。
「レイカ!」
「なんで…回復しないの。」
シャーベットも分析する。
「恐らく、術式だ。」
「この空間では再生が封じられている。」
レイカは静かに舌打ちした。
「ちっ…。」
「厄介だ。」
一方的な攻防戦の中、
ダイフクーが叫ぶ。
「レイカ、ウインナー!」
「迷うな!!」
ブリトーも拳を叩きつける。
「影を倒して!」
「僕達なら大丈夫だ!」
ユリも静かに叫ぶ。
「信じて…!」
ドロップは涙を流しながら笑った。
「私は平気!」
「だから!」
「やって!!」
ケンも叫ぶ。
「兄ちゃん!」
「俺達を信じろ!」
ウインナーは拳を握る。
レイカを見る。
レイカも静かに頷いた。
そして、ひと息つく。
「……聞こえたか。」
「うん。」
「……決めるぞ。」
二人は同時に構える。
―覚悟―
レイカが踏み込む。
炎飛が舞う。
ユリの影。
シャーベットの影。
ダイフクーの影。
次々と斬り伏せていく。
同時に。
ウインナーは風を纏った。
「風のエチュード!」
暴風が神殿を駆け抜ける。
ブリトー。
ケン。
ドロップ。
三人の影を包み込み、一気に吹き飛ばした。
六体の影が同時に崩れる。
その瞬間。
闇の球体の中で仲間達が一斉に意識を失う。
ブリトーが倒れる。
ユリも静かに膝をついた。
ドロップもその場へ崩れ落ちる。
ウインナーが歯を食いしばる。
「みんな……!!!」
レイカが肩へ手を置いた。
「……大丈夫だ。」
「信じるぞ。」
「そうだね……。」
「……先生を止める。」
静寂。
スパムだけが立っていた。
ゆっくり眼鏡を押し上げる。
「仲間を犠牲にするんだね。」
「二人とも。」
「まさかだったよ。」
そして。
静かに両腕を広げた。
「……ふふふ。」
「私も本気を出そうか。」
闇が足元から噴き上がる。
そのまま全身を包み込んでいく。
黒い影が身体と融合する。
しかし。
瞳だけは変わらない。
「この影は。」
「私自身の意思で制御出来るんだ。」
「すごいだろう?」
レイカが刀を構える。
「……術式の核。」
「お前だな。」
スパムは穏やかに微笑んだ。
「ええ。」
「私を倒さない限り。」
「仲間たちは目覚めないよ。」
「そして、レイカ。」
「君も一旦退場だ。」
古代文字が不規則に並べられた影が、
レイカへ襲い掛かる。
「遅い!!!」
一閃。
しかし、炎飛に術式が絡みつき、
刀を伝ってレイカへ術式の影がまとわりつく。
「古代の封印術式だよ。」
「……君の父親に感謝だ。」
「っ…!!!」
(動けん…。声も出せん……。力が抜けていく…。)
レイカはその場に倒れこむ。
「レイカ!!!」
スパムはウインナーを真っ直ぐ見る。
「さあ、最初で最後の喧嘩を始めようか。」
「おいで、ウインナー。」