―終焉の儀―
―喪失―
神殿に静寂が訪れる。
先ほどまで荒れ狂っていた風は止み、闇も消え去っていた。
残されたのは、砕けた石畳と静かな空気だけ。
ウインナーはその場へ膝をついた。
肩で大きく息をする。
「はぁ……はぁ……。」
風のレクイエム。
身体中の力を使い果たした反動が、一気に押し寄せる。
腕が震える。
足に力が入らない。
それでも視線だけは、
先ほどまでスパムが立っていた場所へ向いていた。
そこにはもう誰もいない。
残っていたのは、割れた眼鏡だけだった。
ウインナーはゆっくりと眼鏡を拾い上げる。
掌の中で静かに握り締めた。
「……先生。」
返事はない。
もう二度と、その優しい声を聞くことはできなかった。
「…………。」
胸の奥が締め付けられる。
倒した。
止めることはできた。
それでも。
心のどこかで、救いたいと思っていた。
「……先生。」
小さく呟いた声は、誰にも届かなかった。
―儀式の終わり―
その時だった。
レイカの身体を覆っていた黒い術式が、
音を立てて崩れ始める。
パキッ……
黒い文字が砕け散り、煙のように消えていく。
レイカはゆっくりと目を開いた。
「……終わったか。」
身体を起こそうとするが、傷が痛む。
それでも立ち上がる。
まず最初に向かったのは、ユリだった。
「ユリ。」
肩へ触れる。
返事はない。
続いてブリトー。
シャーベット。
ダイフクー。
ドロップ。
ケン。
全員の呼吸を確かめる。
「……生きている。」
しかし。
誰一人として目を覚まさない。
ウインナーもゆっくり歩いてくる。
「みんなは……。」
レイカは静かに首を横へ振った。
「呼吸はある。」
「だが、起きない。」
神殿には重い沈黙だけが流れていた。
―儀式は終わった―
その静寂を破るように、一人の男が口を開いた。
「終わった。」
低く、冷たい声。
メザンだった。
巨大な石板の前から、初めて振り返る。
その顔には、勝利を確信した笑みが浮かんでいた。
「儀式は終わった。」
神殿中へ響く低い振動。
石板へ刻まれた古代文字が赤黒く輝き始める。
その隣では、
なおパルの身体から光が吸い上げられていた。
メザンは静かに笑う。
「安心しろ。」
「復活にはまだ時間が必要だ。」
「だから貴様らに構っている暇はない。」
レイカは刀を構える。
「……なら、今ここで終わらせる。」
メザンは鼻で笑った。
「出来ると思うか?」
そして。
ゆっくりと仲間達へ視線を向ける。
「貴様らだけは、生かすことになる。」
「だが。」
「それ以外は違う。」
ウインナーの表情が変わる。
「……何を言ってる。」
メザンは静かに告げた。
「影は消えた。」
「しかし。」
「魂へ刻まれた呪縛は残る。」
「奴らは、もう二度と目覚めん。」
その言葉に、空気が凍り付いた。
―憎悪―
その時だった。
ピクリ……
小さく、誰かの指先が動く。
「!」
レイカが気づく。
ユリの身体がゆっくりと起き上がる。
「……ユリ。」
返事はない。
ゆっくりと立ち上がる。
しかし、その瞳にはいつもの優しさがなかった。
漆黒。
底知れぬ憎悪だけが宿っていた。
レイカの表情が変わる。
「……。」
「……しぶといやつだ。」
ユリはゆっくりと顔を上げる。
口元だけが、不気味に笑った。
そして。
聞き慣れた、あの男の声が響く。
「――信じなさい。」
レイカの瞳が鋭く細まる。
「……ポタージュ。」
ユリの身体は静かに拳を構えた。