-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第六十章

 

 

 

 

―終焉の儀―

 

 

 

 

―喪失―

 

 

 

 

神殿に静寂が訪れる。

 

先ほどまで荒れ狂っていた風は止み、闇も消え去っていた。

 

残されたのは、砕けた石畳と静かな空気だけ。

 

ウインナーはその場へ膝をついた。

 

肩で大きく息をする。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

風のレクイエム。

 

身体中の力を使い果たした反動が、一気に押し寄せる。

 

腕が震える。

 

足に力が入らない。

 

それでも視線だけは、

 

先ほどまでスパムが立っていた場所へ向いていた。

 

そこにはもう誰もいない。

 

残っていたのは、割れた眼鏡だけだった。

 

ウインナーはゆっくりと眼鏡を拾い上げる。

 

掌の中で静かに握り締めた。

 

 

「……先生。」

 

 

返事はない。

 

もう二度と、その優しい声を聞くことはできなかった。

 

 

「…………。」

 

 

胸の奥が締め付けられる。

 

倒した。

 

止めることはできた。

 

それでも。

 

心のどこかで、救いたいと思っていた。

 

「……先生。」

 

小さく呟いた声は、誰にも届かなかった。

 

 

 

 

―儀式の終わり―

 

その時だった。

 

レイカの身体を覆っていた黒い術式が、

 

音を立てて崩れ始める。

 

 

 

パキッ……

 

 

 

黒い文字が砕け散り、煙のように消えていく。

 

レイカはゆっくりと目を開いた。

 

「……終わったか。」

 

身体を起こそうとするが、傷が痛む。

 

それでも立ち上がる。

 

まず最初に向かったのは、ユリだった。

 

「ユリ。」

 

肩へ触れる。

 

返事はない。

 

続いてブリトー。

 

シャーベット。

 

ダイフクー。

 

ドロップ。

 

ケン。

 

全員の呼吸を確かめる。

 

「……生きている。」

 

しかし。

 

誰一人として目を覚まさない。

 

ウインナーもゆっくり歩いてくる。

 

「みんなは……。」

 

レイカは静かに首を横へ振った。

 

「呼吸はある。」

 

「だが、起きない。」

 

神殿には重い沈黙だけが流れていた。

 

 

 

 

―儀式は終わった―

 

 

 

その静寂を破るように、一人の男が口を開いた。

 

 

「終わった。」

 

 

低く、冷たい声。

 

メザンだった。

 

巨大な石板の前から、初めて振り返る。

 

その顔には、勝利を確信した笑みが浮かんでいた。

 

 

「儀式は終わった。」

 

 

神殿中へ響く低い振動。

 

石板へ刻まれた古代文字が赤黒く輝き始める。

 

その隣では、

 

なおパルの身体から光が吸い上げられていた。

 

メザンは静かに笑う。

 

「安心しろ。」

 

「復活にはまだ時間が必要だ。」

 

「だから貴様らに構っている暇はない。」

 

レイカは刀を構える。

 

「……なら、今ここで終わらせる。」

 

メザンは鼻で笑った。

 

「出来ると思うか?」

 

そして。

 

ゆっくりと仲間達へ視線を向ける。

 

「貴様らだけは、生かすことになる。」

 

「だが。」

 

「それ以外は違う。」

 

ウインナーの表情が変わる。

 

「……何を言ってる。」

 

メザンは静かに告げた。

 

「影は消えた。」

 

「しかし。」

 

「魂へ刻まれた呪縛は残る。」

 

「奴らは、もう二度と目覚めん。」

 

その言葉に、空気が凍り付いた。

 

 

 

 

―憎悪―

 

 

 

その時だった。

 

ピクリ……

 

小さく、誰かの指先が動く。

 

「!」

 

レイカが気づく。

 

ユリの身体がゆっくりと起き上がる。

 

「……ユリ。」

 

返事はない。

 

ゆっくりと立ち上がる。

 

しかし、その瞳にはいつもの優しさがなかった。

 

漆黒。

 

底知れぬ憎悪だけが宿っていた。

 

レイカの表情が変わる。

 

「……。」

 

「……しぶといやつだ。」

 

ユリはゆっくりと顔を上げる。

 

口元だけが、不気味に笑った。

 

そして。

 

聞き慣れた、あの男の声が響く。

 

「――信じなさい。」

 

レイカの瞳が鋭く細まる。

 

「……ポタージュ。」

 

ユリの身体は静かに拳を構えた。

 

 

 

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