―風が運ぶ招待状―
ー腕輪の力ー
ラビィオリと別れた翌朝。
ブリトーは左腕にはめられた、
腕輪を見つめていた。
はめ込まれた水色の禁貨。
昨日、泥棒を捕らえた不思議な力。
しかし、どうやって発動したのか
本人にも分からない。
気球のテーブルを囲み、
シャーベットが静かに考察する。
「昨日の現象から考えると。」
「この腕輪はなんらかの器なんだろうね。」
「仲間の禁貨を集め、宿す。」
「能力を一時的に使えるようになる。」
「……そんな仕組みなのかもしれない。」
ブリトーは腕輪を見つめた。
「じゃあ、他のみんなの禁貨を見つければ……。」
その言葉に、
レイカが煙草をくわえたまま口を開く。
「だったら試してみろ。」
「使えるなら今使えるはずだ。」
ブリトーは少し緊張しながら頷く。
腕輪へ意識を向け、
昨日と同じように前へ手をかざした。
「……っ!」
しかし。
何も起こらない。
静寂だけが流れる。
ブリトーは肩を落とした。
「やっぱり駄目か……。」
すると、ダイフクーが豪快に笑う。
「気にすんな!」
「また土壇場になったら出来るかもしれないぜ!」
その言葉に、
ブリトーは少しだけ表情を和らげた。
レイカは煙草の灰を風に飛ばし、
小さく呟いた。
「まぁ、そのうち分かるだろ。」
ブリトーはもう一度腕輪を見つめ、
小さく拳を握った。
ー街の遺跡ー
昼頃。
街へ聞き込みに出ていたウインナーが、
息を切らして戻ってきた。
「みんな!」
「この街の地下に遺跡があるんだって!」
その言葉にブリトーが立ち上がる。
「本当か!?」
レイカは煙草を消す。
「行ってみるか。」
一行は街外れにある地下遺跡へ向かった。
石造りの階段。
崩れた柱。
古代文字。
静かな空間。
全員で隅々まで探索する。
隠し扉。
壁画。
祭壇。
どこを調べても、
サラミッドへ繋がる手掛かりは見つからない。
ブリトーは静かに拳を握る。
「空振りか……。」
ウインナーは笑顔で肩を叩いた。
「大丈夫。」
「次があるよ。」
その言葉に、ブリトーも少しだけ安堵した。
ー風が運ぶ知らせー
夕暮れ。
遺跡の探索を終えた一行は、
気球船へ戻っていた。
地下遺跡にもサラミッドへ繋がる手掛かりはなく、
ブリトーは少し肩を落としている。
「早く手掛かりが欲しいのに…。」
ダイフクーは地図を広げた。
「まあ、焦ったって仕方ないぞ。」
「…さて、次はどこへ行く?」
シャーベットは本を閉じる。
「もう少し情報が欲しいところだね。」
その時だった。
プルプルプル――。
気球船の電話が鳴り響く。
ウインナーは受話器を手に取り、
丁寧に応じた。
「はい、ウインナーです。」
受話器の向こうから聞こえてきたのは、
聞き覚えのある落ち着いた声だった。
「お久しぶりです、ウインナーさま。」
「カマメシ王国のデンガクです。」
ウインナーの表情が明るくなる。
「デンガクさん!」
「お久しぶりです!」
デンガクは礼儀正しい口調のまま続けた。
「突然のお電話で申し訳ありません。」
「実は……『ドリ禁大会』が近づいておりまして。」
「もしご都合がよろしければですが。」
「ご参加いただけないかと、ご連絡いたしました。」
ウインナーは受話器を押さえ、みんなを見回す。
「みんな、デンガクさんからなんだけど……。」
「またドリ禁大会があるみたい。」
レイカは煙草をくわえたまま首を傾げる。
「ドリ禁大会?」
ブリトーも同じように首を傾げる。
「聞いたことない。」
ユリも静かに頷いた。
「私も知らない。」
するとダイフクーが驚いたように声を上げる。
「え!?」
「またあるのか?」
「そうみたい。」
ウインナーは苦笑しながら受話器へ向き直った。
「デンガクさん。」
「説明してもらってもいいですか?」
「もちろんです。」
「みんなに聞こえるようにするね。」
受話器の先の声が聞こえるように、
電話の近くにあるスピーカーをいじる。
デンガクは穏やかな声で説明を始めた。
「ドリ禁大会は以前。」
「ウインナーさまたちの力添えもあり。」
「私たちの王国の管理となりました。」
「ですが、不公平だと。」
「スキヤキ王国の方から申し出があって。」
「カマメシ王国とスキヤキ王国で協議を重ねた結果。」
「三年に一度、管理する権利を決める。」
「それを各国でメンバーを集め、戦って決めよう。」
「このような流れに変わったのです。」
「五人対五人で戦い、勝利した王国は三年の間。」
「『ドリーム禁貨』を管理する権利を得ます。」
「ドリーム禁貨は直接触れてしまうと。」
「効力を失ってしまいます。」
「そのため、厳重に管理されております。」
「また、その希少性から多くの観光客が訪れます。」
「…王国の繁栄にも繋がる大切な大会なのです。」
説明を聞き終えたブリトーは感心したように呟く。
「そんな大会があるのか……。」
レイカも静かに煙を吐いた。
「ドリーム禁貨は気になるな。」
「ご検討のほどよろしくお願いします。」
電話を切ったあと、
ウインナーは荷物の中から、
一冊の古い本を取り出した。
ページを開き、地図を指差す。
「そういえば。」
「前に遺跡を調べていた時に。」
「見つけた資料なんだけど……。」
「カマメシ王国の近くにも。」
「かなり大きな古代遺跡があるらしいんだ。」
その言葉にブリトーが顔を上げる。
「本当か!?」
ウインナーは頷く。
「うん。」
「もし手掛かりが残ってるなら。」
「調べてみる価値はあると思う。」
レイカは煙草を灰に変え、風へ流した。
「大会ついでに遺跡探索か。」
ユリも静かに微笑む。
「…また、大きな街に行けるのね。」
その言葉にドロップと笑みが揃う。
ダイフクーは豪快に笑った。
「よし!」
「次の目的地は決まりだな!」
夜風を受け、気球はゆっくりと進路を変える。
目指す先は――
カマメシ王国。
三年に一度の祭典と、
新たな遺跡が、
彼らを待っていた。