― 数年後 ―
それから――数年の月日が流れた。
レイカを探す旅は、今もなお続いている。
数え切れない王国を巡り。
幾つもの遺跡を訪れ。
時には人々を救い、時には強敵と拳を交えた。
それでも、
レイカの居場所だけは分からなかった。
だが、その年月は決して無駄ではなかった。
四人は、それぞれの道を歩み、
それぞれの強さを手に入れていた。
森の中。
巨大な魔物が咆哮を上げる。
その瞬間。
「――。」
ウインナーが静かに前へ出る。
風が吹いた。
穏やかだった風が、一瞬で鋭さを帯びる。
魔物が突進する。
しかし、その身体は見えない力に弾かれた。
続けざまに吹き荒れる風。
幾重にも重なった風圧が魔物を包み込み、
その巨体を地面へ叩きつける。
やがて風が止む頃には、
魔物は完全に動きを止めていた。
ウインナーは静かに息を吐く。
「……まだまだだ。」
「レイカなら、もっと早く終わらせられる。」
その瞳に宿る憧れは、数年経った今も変わらない。
「次!」
ドロップが笑う。
目の前には数体の魔物。
迷うことなく飛び込む。
鋭い踏み込み。
拳。
蹴り。
体勢を崩した相手へ、
休む間もなく追撃を叩き込む。
一切の無駄がない。
かつてよりも遥かに洗練された体術。
最後の一撃で魔物が吹き飛び、地面へ倒れ込む。
「ふぅ。」
軽く肩を回すドロップ。
以前の明るさはそのままに、
バンカーとしての自信が表情に滲んでいた。
「本当に……強くなったね。」
ウインナーが笑う。
「えへへ!そうでしょ!」
ドロップは笑い返した。
二人の実力差は、もうほとんどない。
「行くぞ!」
青白い雷が弾ける。
ケンの身体を雷が駆け巡り、
一瞬で景色から姿が消えた。
次の瞬間。
魔物の背後に立つケン。
轟音とともに雷が走り、
魔物はその場へ崩れ落ちる。
「よし。」
少年だった面影は残っている。
それでも、以前より背は高くなり、
表情にも少しだけ大人びた雰囲気があった。
「兄ちゃん。」
「俺も、少しは強くなったぞ。」
空へ向かってそう呟く姿には、
幼さの中にも確かな成長が感じられた。
「はあっ!」
鋭い声が森へ響く。
ドロップの拳が迫る。
ユリは一歩踏み込み、その拳を受け流した。
続けて蹴り。
ユリは後ろへ跳び、距離を取る。
「そこ!」
ドロップの追撃。
ユリは辛うじて避ける。
しかし、次の瞬間には体勢を崩し、
尻もちをついてしまった。
「いたた……。」
ドロップが手を差し伸べる。
「大丈夫?」
ユリはその手を取り、立ち上がった。
肩まであった長い髪は、
今ではすっきりとしたボブヘアになっている。
汗を拭いながら笑う姿は、
数年前よりずっと逞しかった。
「ありがとう。」
「でも、次は負けないから。」
ドロップは思わず笑う。
「私も負けない!」
その言葉を聞いた瞬間。
ウインナーは数年前の出来事を思い出していた。
まだ旅を始めて間もない頃。
戦いがあるたびに、
ユリは後ろで見守ることしかできなかった。
ウインナーが前へ出る。
ドロップが敵を倒す。
ケンが援護する。
ユリだけが、何もできない。
戦いが終わる度に、小さく俯いていた。
ある日の夜。
焚き火を囲む静かな時間。
ユリは意を決したように立ち上がると、
ドロップの前まで歩いてきた。
「ドロップ。」
「ん?」
少し緊張した表情。
それでも真っ直ぐ見つめる。
「お願いがあるの。」
「私に……戦い方を教えて。」
ドロップは驚いた。
「え?」
「私、守ってもらってばかりだから。」
「みんなの後ろにいるだけじゃ嫌。」
「私も、みんなと一緒に戦いたい。」
「誰かを守れるくらい強くなりたい。」
静かな夜。
焚き火の音だけが響く。
しばらく黙っていたドロップは、ふっと笑った。
「私でいいの?」
ユリは力強く頷く。
「うん。」
「ドロップがいい。」
「お願い。」
ドロップは照れくさそうに頭をかいた。
「そんな風に頼まれたら断れないよ。」
「よし!」
「今日から私が先生!」
ユリの表情がぱっと明るくなる。
「よろしくね。」
その様子を見ていたケンは笑い、
ウインナーも穏やかに微笑んだ。
「きっと大丈夫。」
「ユリなら、必ず強くなれる。」
────
「……ウインナー?」
ドロップの声で我に返る。
「ぼーっとしてどうしたの?」
「いや。」
ウインナーは優しく笑った。
「ユリ、本当に強くなったなって。」
ユリは少し照れくさそうに笑う。
「まだまだだよ。」
「でも……。」
「いつか、みんなと肩を並べて戦えるようになりたい。」
その瞳には、
数年前にはなかった強い意志が宿っていた。
四人は再び歩き出す。
レイカを探すために。
そして、
それぞれが胸に抱き続ける約束を果たすために。