-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第三章

 

 

 

― 数年後 ―

 

 

 

それから――数年の月日が流れた。

 

レイカを探す旅は、今もなお続いている。

 

数え切れない王国を巡り。

 

幾つもの遺跡を訪れ。

 

時には人々を救い、時には強敵と拳を交えた。

 

それでも、

 

レイカの居場所だけは分からなかった。

 

だが、その年月は決して無駄ではなかった。

 

四人は、それぞれの道を歩み、

 

それぞれの強さを手に入れていた。

 

 

 

森の中。

 

巨大な魔物が咆哮を上げる。

 

その瞬間。

 

「――。」

 

ウインナーが静かに前へ出る。

 

風が吹いた。

 

穏やかだった風が、一瞬で鋭さを帯びる。

 

魔物が突進する。

 

しかし、その身体は見えない力に弾かれた。

 

続けざまに吹き荒れる風。

 

幾重にも重なった風圧が魔物を包み込み、

 

その巨体を地面へ叩きつける。

 

やがて風が止む頃には、

 

魔物は完全に動きを止めていた。

 

ウインナーは静かに息を吐く。

 

「……まだまだだ。」

 

「レイカなら、もっと早く終わらせられる。」

 

その瞳に宿る憧れは、数年経った今も変わらない。

 

 

 

「次!」

 

ドロップが笑う。

 

目の前には数体の魔物。

 

迷うことなく飛び込む。

 

鋭い踏み込み。

 

拳。

 

蹴り。

 

体勢を崩した相手へ、

 

休む間もなく追撃を叩き込む。

 

一切の無駄がない。

 

かつてよりも遥かに洗練された体術。

 

最後の一撃で魔物が吹き飛び、地面へ倒れ込む。

 

「ふぅ。」

 

軽く肩を回すドロップ。

 

以前の明るさはそのままに、

 

バンカーとしての自信が表情に滲んでいた。

 

「本当に……強くなったね。」

 

ウインナーが笑う。

 

「えへへ!そうでしょ!」

 

ドロップは笑い返した。

 

二人の実力差は、もうほとんどない。

 

 

 

「行くぞ!」

 

青白い雷が弾ける。

 

ケンの身体を雷が駆け巡り、

 

一瞬で景色から姿が消えた。

 

次の瞬間。

 

魔物の背後に立つケン。

 

轟音とともに雷が走り、

 

魔物はその場へ崩れ落ちる。

 

「よし。」

 

少年だった面影は残っている。

 

それでも、以前より背は高くなり、

 

表情にも少しだけ大人びた雰囲気があった。

 

「兄ちゃん。」

 

「俺も、少しは強くなったぞ。」

 

空へ向かってそう呟く姿には、

 

幼さの中にも確かな成長が感じられた。

 

 

 

「はあっ!」

 

鋭い声が森へ響く。

 

ドロップの拳が迫る。

 

ユリは一歩踏み込み、その拳を受け流した。

 

続けて蹴り。

 

ユリは後ろへ跳び、距離を取る。

 

「そこ!」

 

ドロップの追撃。

 

ユリは辛うじて避ける。

 

しかし、次の瞬間には体勢を崩し、

 

尻もちをついてしまった。

 

「いたた……。」

 

ドロップが手を差し伸べる。

 

「大丈夫?」

 

ユリはその手を取り、立ち上がった。

 

肩まであった長い髪は、

 

今ではすっきりとしたボブヘアになっている。

 

汗を拭いながら笑う姿は、

 

数年前よりずっと逞しかった。

 

「ありがとう。」

 

「でも、次は負けないから。」

 

ドロップは思わず笑う。

 

「私も負けない!」

 

その言葉を聞いた瞬間。

 

ウインナーは数年前の出来事を思い出していた。

 

 

 

まだ旅を始めて間もない頃。

 

戦いがあるたびに、

 

ユリは後ろで見守ることしかできなかった。

 

ウインナーが前へ出る。

 

ドロップが敵を倒す。

 

ケンが援護する。

 

ユリだけが、何もできない。

 

戦いが終わる度に、小さく俯いていた。

 

ある日の夜。

 

焚き火を囲む静かな時間。

 

ユリは意を決したように立ち上がると、

 

ドロップの前まで歩いてきた。

 

「ドロップ。」

 

「ん?」

 

少し緊張した表情。

 

それでも真っ直ぐ見つめる。

 

「お願いがあるの。」

 

「私に……戦い方を教えて。」

 

ドロップは驚いた。

 

「え?」

 

「私、守ってもらってばかりだから。」

 

「みんなの後ろにいるだけじゃ嫌。」

 

「私も、みんなと一緒に戦いたい。」

 

「誰かを守れるくらい強くなりたい。」

 

静かな夜。

 

焚き火の音だけが響く。

 

しばらく黙っていたドロップは、ふっと笑った。

 

「私でいいの?」

 

ユリは力強く頷く。

 

「うん。」

 

「ドロップがいい。」

 

「お願い。」

 

ドロップは照れくさそうに頭をかいた。

 

「そんな風に頼まれたら断れないよ。」

 

「よし!」

 

「今日から私が先生!」

 

ユリの表情がぱっと明るくなる。

 

「よろしくね。」

 

その様子を見ていたケンは笑い、

 

ウインナーも穏やかに微笑んだ。

 

「きっと大丈夫。」

 

「ユリなら、必ず強くなれる。」

 

 

 

────

 

「……ウインナー?」

 

ドロップの声で我に返る。

 

「ぼーっとしてどうしたの?」

 

「いや。」

 

ウインナーは優しく笑った。

 

「ユリ、本当に強くなったなって。」

 

ユリは少し照れくさそうに笑う。

 

「まだまだだよ。」

 

「でも……。」

 

「いつか、みんなと肩を並べて戦えるようになりたい。」

 

その瞳には、

 

数年前にはなかった強い意志が宿っていた。

 

四人は再び歩き出す。

 

レイカを探すために。

 

そして、

 

それぞれが胸に抱き続ける約束を果たすために。

 

 

 

 

 

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