-キリエ-憐れみの賛歌   作:yasuteru

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第十五章

 

 

 

― D ドラゴン ―

 

 

 

カン、カン、カン――。

 

 

 

警鐘が街中へ響き渡る。

 

「怪物だ!」

 

「全員避難しろ!」

 

人々は悲鳴を上げながら、

 

建物の中へ駆け込み、

 

商人たちは慌てて店じまいを始める。

 

街の上空には、

 

一体の巨大な竜が翼を広げていた。

 

漆黒の鱗。

 

黄金色の瞳。

 

その姿だけで圧倒的な威圧感を放っている。

 

レイカは静かに炎飛へ手を添えた。

 

 

「ウインナー。」

 

「住民の避難を頼む。」

 

 

「分かった!」

 

 

「ドロップ。」

 

「西側を。」

 

 

「任せて!」

 

 

「ケン。」

 

「子どもたちを連れて逃げろ。」

 

 

「了解!」

 

 

それぞれが動き始める。

 

その時だった。

 

 

ユリが一歩前へ出る。

 

 

「レイカさん。」

 

 

「私も戦います。」

 

 

レイカは即座に首を横へ振った。

 

 

「駄目だ。」

 

「でも!」

 

「私も仲間です!」

 

「怪我人もいる。」

 

「あなた一人で戦わせるなんて――」

 

 

「来るな!」

 

 

普段より少しだけ強い口調だった。

 

ユリは思わず言葉を失う。

 

レイカは視線を逸らしたまま続ける。

 

「治療を頼む。」

 

「それがお前の役目だ。」

 

「でも……!」

 

「頼む。」

 

その一言だけだった。

 

ユリは納得できない表情を浮かべながらも、

 

小さく頷く。

 

「……分かりました。」

 

レイカはその姿を確認すると、

 

ゆっくりと歩き出した。

 

 

 

ドラゴンは街の広場へ降り立った。

 

その衝撃で石畳が砕け散る。

 

レイカは数メートル手前で立ち止まる。

 

ドラゴンはゆっくりと笑った。

 

「……人間ではないな。」

 

低く響く声だった。

 

レイカは静かに問い掛ける。

 

「話せるのか。」

 

ドラゴンは鼻で笑う。

 

「雑魚どもと一緒にするな。」

 

「貴様一人で勝てると思うなよ。」

 

レイカは炎飛を抜いた。

 

「お前ごとき、一人で十分だ。」

 

その言葉と同時に、巨大な翼が大きく広がる。

 

「なめられたもんだ。」

 

「……Z様のため。」

 

「貴様らをここで葬る。」

 

レイカは小さく息を吐いた。

 

「なら。」

 

「止めるだけだ。」

 

次の瞬間。

 

 

ドラゴンが大地を蹴った。

 

巨体とは思えない速度。

 

鋭い爪が一直線に迫る。

 

 

ガキィィン!!

 

 

炎飛が爪を受け止める。

 

凄まじい衝撃に地面が陥没する。

 

レイカは力を逃がすように身体を捻り、

 

そのまま横へ滑る。

 

ドラゴンの懐へ潜り込む。

 

 

「我流・炎飛流。」

 

 

赤い炎が刀身を包み込む。

 

 

「刹那。」

 

 

炎の斬撃が胴体を切り裂く。

 

しかし。

 

 

「……浅い。」

 

 

ドラゴンは尾を振り抜いた。

 

 

ゴォッ!!

 

 

レイカは後方へ跳び、紙一重で回避する。

 

石畳が粉々に砕け散った。

 

続けざまに巨大な口が開く。

 

「焼き尽くせ。」

 

轟音と共に炎の奔流が放たれた。

 

街を飲み込むほどの熱量。

 

レイカは炎飛を構える。

 

 

「我流・炎飛流。」

 

 

「円。」

 

 

円を描いた斬撃の後に、

 

炎が付いてくる。

 

ドラゴンの炎と衝突する。

 

爆風だけが街を吹き抜ける。

 

その隙だった。

 

 

「レイカ!」

 

 

風と共にウインナーが飛び込んできた。

 

白い刀を握り締め、

 

一直線に空へ舞い上がる。

 

「僕も戦う!」

 

ドラゴンが翼を羽ばたかせる。

 

無数の風刃が降り注ぐ。

 

ウインナーは風を纏い、それらをかわしていく。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

白い刀がドラゴンの翼を切り裂いた。

 

「ぐうぅぅ…!!」

 

ドラゴンが僅かに目を細める。

 

「その刀は……!!」

 

 

レイカは隙を逃さない。

 

「ウインナー!」

 

「今だ!」

 

「うん!」

 

風が集まる。

 

レイカはピアスを外し、地面を蹴った。

 

一人では届かない高さ。

 

しかし。

 

風が背中を押す。

 

ウインナーの風だった。

 

レイカは一気に空中へ躍り出る。

 

 

「我流・炎飛流―――」

 

 

青い炎が刀身を包む。

 

 

「―――月詠。」

 

 

円を描く炎の斬撃が、ドラゴンを包み込む。

 

 

「ぐがぁぁぁっ!!」

 

 

ドラゴンが初めて苦痛の声を上げた。

 

その隙にウインナーが懐へ飛び込む。

 

 

「……ここだ!」

 

 

白い刀が一直線に走る。

 

ドラゴンの胸元を深く切り裂いた。

 

巨体がゆっくりと地面へ落ちる。

 

土煙が舞う。

 

ドラゴンは苦しそうに笑った。

 

 

「見事だ……。」

 

 

レイカは炎飛を納める。

 

ドラゴンは静かにレイカを見つめた。

 

 

「貴様らは……。」

 

「想像以上だった。」

 

「だが。」

 

「奴らには勝てん。」

 

 

「……奴ら?」

 

ウインナーが呟く。

 

ドラゴンは最後に不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「いずれ。」

 

「分かる。」

 

 

その身体が光となって崩れていく。

 

残されたのは、一枚のカードだけだった。

 

レイカは静かに拾い上げる。

 

そこには大きく"D"の文字が刻まれていた。

 

「また一枚……。」

 

レイカはカードを懐へしまう。

 

「これで四枚…。」

 

その視線は、さらに先を見据えていた。

 

 

 

 

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