ダンジョンマスターは世界の下請管理職 〜剣と魔法かと思ったら、スペースコロニーとディストピアだったので配下を育てて乗っ取ります〜   作:土瓶サバ

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第10話 迎撃準備

最初に手をつけたのは、モンスターだった。

 

「何を置くべきだ?」

 

UIをいじりながら俺が尋ねると、ぽんこは即答した。

 

「最適解はゴブリンさんです!二体でも運用できますが、包囲するなら三体が必須!」

「コボルトは?」

「コスパが最悪です!強いですが単価が高いので、一体しか買えません!」

「単価って言うなよ。店員か」

「モンスターは数です!単体は所詮単体!ダンジョンは群れで戦うのが基本です!」

 

【モンスター生成:ゴブリン 100DP】

 

三体分。

迷いはなかった。

 

召喚された瞬間、コア部屋の床に、どすん、と重さのある三つの影が現れた。

 

背筋を丸め、鼻を鳴らし、互いに小さな歯を剥き出しながら距離を測っている。

見た目はアレだが、少なくとも凶暴さは信頼できそうだ。

 

「こいつら、言葉は通じるのか?」

「概ね、殴る、逃げる、従うの三択で意思の疎通ができます!」

「それ意思の疎通って言う?」

 

「殴られてる人を見つけると、自分も殴りたくなる習性があります。集団心理に特化しているので、とてもダンジョン向きです!」

「褒め方どうにかしろ」

「素晴らしい殴り性能です!」

 

その後、ぽんこが勝手に訓練を始めた。

 

「はいゴブリンさん、この丸い石を敵と見なして殴ってください!」

「ゴブッ」

「ゴブブ」

「ゴブゴブ!」

 

三体が一斉に飛びかかり、丸石を棍棒で四方八方から叩き始める。

石は簡単には壊れないが、ゴブリンたちは順番を争うように殴り続けた。

 

「ほら見てくださいマスター!一体が殴ると、残り二体も殴らなきゃって顔になります!これが集団心理です!」

「そんな笑顔で集団心理を語るな」

 

呆れながらも、頼もしくはあった。

少なくとも、こいつらは戦ってくれる。

次は、自分の武器だ。

 

「俺自身も、何か持っておきたい。素手は無理だろ」

「武器の生成をするなら槍ですね」

 

ぽんこは、迷いゼロで言い切った。

 

「剣はダメなのか?」

「剣は技術がいります!マスターには無理です!」

「そこまで即答するなよ」

「槍なら刺して終わりができます!不意打ちの成功率が段違い、一撃です!」

「不意打ち前提か」

 

とはいえ、実際に槍を生成してみると、ぽんこの言葉は確かに正しかった。

 

細い通路では、振り回す動きより、刺突が圧倒的にやりやすい。

踏み込みさえ覚えれば、刃を振るうより突き出すだけの方が、ずっと簡単だ。

 

そこからは、ほぼそれだけをやっていた。

 

踏み込み、刺突、引き抜き。

踏み込み、刺突、引き抜き。

 

何度も通路の端から飛び出すように、刺突、刺突、刺突。

 

ぽんこが後ろで「もう一センチ長く」「今の軌道、首に当たります」などと、細かく指摘してくる。

 

「そこまでリアルに想定しなくていいからな?」

「いえ、どこに刺さるかはとても重要です。どこを突けば人間さんが――」

「その続き言うの禁止」

 

最終的に、ぽんこはこうまとめた。

 

「はい!突くだけなら、マスターは優秀です!」

「ありがとう?」

 

突くだけ。

その練習を、俺は何度も繰り返した。

人を刺すための動きが、体に馴染んでいく。

 

その事実から、目を逸らさないようにした。

 

最後に、罠だ。

 

「罠はダンジョンの遊撃手です!」

 

ぽんこがUIを切り替える。

 

【罠】

・落とし穴 50DP

・ワイヤー 10DP

・落石 80DP

 

「結構するな」

「当たれば終わりますからね!高く感じますがコスパはいいですよ」

 

「おすすめは?」

「落とし穴ですね!底は金属の針です!落ちたら、まず助かりません」

「想像したくないな」

 

しかし、死を避けようと思えば、凶悪なのは頼もしい。

落とし穴を設置することにした。

 

突如現れた穴の底に、金属製の尖った針が敷き詰められていく。

殺意の固まりのような構造だ。

 

これに落ちる誰かを、一瞬だけ想像して――やめた。

考えても、DPは戻らない。

 

「これでいいか」

「はい!完璧です!」

 

そうして、一週間が過ぎた。

DPを貯め、通路を整備し、武器を握り、戦力を配置した。

 

全部、ぽんこの監督つきだが、それなりに、形になった。

 

そして、夕方。

ぽんこが唐突に固まった。

 

「マスター」

「どうした?」

「生命反応、三つ。入り口に入りました。武装……あり」

「探索者か?」

 

あれから一週間、とうとうギルドに登録されたのだろうか。

 

「行動パターン、探索者とは違います」

「何者だ?」

「推定――盗賊です」

 

ぽんこが、はっきりと言った。

 

「入り口で止まっています。状況確認中のようです」

「慎重だな」

「まあ、前回は確認するまでもなく丸見えでしたからね」

「成長の証だな」

 

だが、冗談で逃げられる状況ではない。

 

「またもや想定よりも早いですが、今度は準備ができています。あとは――迎えるだけです」

 

俺は、握り慣れてきた槍を手に取った。

 

ゴブリンたちが、暗がりでじっと待機している。

 

「よし」

 

ぽんこが隣で、小さく息を呑む。

 

「今度が本番です。がんばりましょう」

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