ダンジョンマスターは世界の下請管理職 〜剣と魔法かと思ったら、スペースコロニーとディストピアだったので配下を育てて乗っ取ります〜   作:土瓶サバ

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2章 運営開始
第13話 迷宮監視隊


その日、北の森は、朝から騒々しかった。

金属が触れ合う音と、革靴が草を踏みつぶす音。

そして男達の話し声。

 

「報告のあった座標だと、この辺りのはずだが」

 

森の中の小さな空き地に、三人の男が立っている。全員が鎧姿。

 

迷宮監視隊。

探索者ギルドから派遣される、ダンジョン専門の見張り役だ。

 

一人が腰から円盤状の装置を取り出し、親指で蓋を弾いた。

中には円状に細かい目盛りが刻まれた文字盤、その上に細い針が振れている。

 

「反応は?」

「魔力値、基準値オーバー。報告より上がっています」

「やっぱりか。真理院(しんりいん)の連中、測定ミスじゃなかったわけだ」

北側に向けられた瞬間、針が更に動く。

 

「方向、北北東。行くぞ」

三人は、慣れた足取りで森の奥へ入っていった。

 

 

 

少し開けた斜面の途中に、それはあった。

 

「穴だな」

 

隊長格の男が、眉をひそめる。

斜面の土が、丸ごと口をあけたようにえぐれている。

幅は狭いが、天井は高い。

 

「自然洞窟に見えます」

「見えるだけだな」

 

文字盤を持った男が、穴の前でひざをついた。装置を入口へ向けると、針の動きが一気に荒くなる。

 

「魔力値、局所的に急上昇。規定値の三倍超え。間違いない」

 

男は装置を閉じ、短く息を吐いた。

 

「新規迷宮だ」

 

最後の一人が舌打ちする。

 

「こんな村の近くにかよ。ついてねえな」

「ついてないのは、ここらの連中だけだろう」

 

隊長は淡々と言い返す。

 

「今街から行ける迷宮はないからな、ギルドの連中は泣いて喜ぶぞ」

 

そう言いながら、穴の縁にそっと足をかけた。

中を覗き込むが、奥は見えない。

しかし、よく見ると光苔が生えている。

 

「規模は?」

「光苔の具合を見ると、発生したばかりって感じだ。魔力の強さから見て、今のところは小規模だな」

「じゃあ勇者様案件じゃないですね」

「当然だ。こんな場所で勇者様を呼んだら、教会の連中に笑われる」

 

隊長は腰の袋から金属製の杭を取り出し、穴の近くの地面に打ち込んだ。

白い布がそこから垂れ下がる。

布には簡素な印が描かれていた。

斜めに引かれた三本線、獣の爪痕を模した、探索者ギルドの印だ。

 

「迷宮標。これで最低限の警告は果たした」

「封鎖は?」

「いらんいらん、この規模なら封鎖どころか村人だって入れる」

 

その言葉に、隊長は肩をすくめる。

 

「俺たちの仕事は、ここにあると報告することだ。危険度の判定とランク付けは、現場の連中が決める」

「報告用の暫定評価は?」

「入口の形状、魔力値、光苔の様子……」

 

男は結論を口にした。

 

「Eだな。最下位。新人探索者と小銭稼ぎ用。よほど放置しない限り、国としては危機じゃない」

「じゃあ、やっぱついてないのは村の連中だけってことで」

「ああ。家の近くに小銭稼ぎ用の穴ができたんだ。喜ぶかどうかは、そいつら次第だ」

 

三人は最後にもう一度だけ入口を見た。

少しだけ不気味な気はするが、なんの変哲もない穴。

なんなら今から自分達だけで攻略できてしまいそうな気配すらある。

 

「記録完了。戻るぞ。街に報告、支部に回せば、この穴も立派な仕事場だ」

「勇者様が来るのは、AかSだけ、だもんな」

「そういうことだ」

 

迷宮監視隊は、背を向けて森を下り始めた。

 

足音が遠ざかり、枝が揺れる音が少しずつ小さくなる。

隊長格の男が立ち止まり、迷宮を見上げた。

 

「しかし……嫌な予感がするな。この時期に新しい迷宮ができるはずがないんだが」

 

「隊長ー、行くぞー」

「ああ、わかった!」

 

違和感は流され、忘れられた。

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