ダンジョンマスターは世界の下請管理職 〜剣と魔法かと思ったら、スペースコロニーとディストピアだったので配下を育てて乗っ取ります〜   作:土瓶サバ

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第15話 一次調査

【side:探索者リオン】

 

 

 

ギルドの掲示板に、その紙が貼られたのは昼前だった。

 

「お、出たな。北の森」

 

木の札で仕切られた受付カウンターの前。掲示板の前に集まっていた若い連中の中で、一人が声を上げる。

 

アウル村の青年、リオンだ。

 

腰に剣、安物の革の服。

村で一番の腕っぷしの青年は、最近では街のギルドに顔を出すのが日課になっていた。

 

村に監視隊が立ち寄ったことを聞き、街に降りてダンジョン調査の依頼が出るのを毎日確認していた。

 

紙にはこう書かれている。

 

【依頼:北部森林地域新規ダンジョン一次調査】・内容:迷宮入口の確認、内部構造の概略調査、モンスターの確認・報酬:一人あたり銅貨10枚+回収品の買取・危険度:暫定小規模・推奨人数:3〜5名

 

「小規模だってさ」

 

隣で紙を覗き込んでいたエルノが、嬉しそうに言う。

 

「そう書いてあるからって、新人向けかは別問題だろ」

「分かってるって。ちゃんと三人以上で行くし、ちゃんと依頼だし」

 

エルノは、すぐ後ろに立っている男を親指で指した。

 

「ほら。リーダーもいるしさ」

「リーダーって言うのやめろ。くすぐったい」

 

苦笑しながら一歩前に出たのは、ひげ面の男だった。革鎧の上に、使い込まれた鎖帷子。腰には短めの剣。

 

「カークさん」

「さんはいらん。探索者歴は長いが、ベテランってほどでもない。ダンジョンも浅いところをちょろっと、だ」

 

彼は掲示板の紙を一読し、鼻を鳴らす。

 

「ふむ。一次調査。監視隊の連中が穴だけ見つけて、投げてきたってことだな」

「危険度のところ、暫定って書いてありますけど」

 

エルノの問いに、カークは頷いた。

 

「まだランクが付いてねえってことだ。監視隊は魔力の強さだけ見てでかいか小さいかは分かるが、中身までは分からねえ」

「じゃあ、俺たちが最初ってことか」

 

リオンが目を輝かせる。

 

「そういうことになるな。中で死ななきゃ、最初に攻略する権利はお前らにある」

「よっしゃ」

「ただし」

 

カークの声だけが低くなった。

 

「中身次第では、そのまま仕事場になる。街の連中にとっても、お前らみたいな村の若いのにとってもだ。最初に無茶した奴が、だいたい一番最初に死ぬ。覚えとけ」

「……はい」

 

リオンが真面目に返事をする。

エルノは、少し肩をすくめて笑った。

 

「分かってますって。それに無茶する前にカークさんが止めてくれるでしょ」

「止めるが、俺も二人同時には抱えて走れねえぞ」

 

そう言って、男は受付に向き直った。

 

「この依頼、俺とこいつら二人で受ける。書類、頼む」

 

【side:ユート】

 

 

 

「マスター。外部生命反応、三つ。今回は、入口からそのまま中に入ってきます」

 

ぽんこの声が、いつもより少しだけ弾んでいた。

 

「三つ?」

「はい。村人とも盗賊とも違います。装備重量、金属反応、動きのリズムから――探索者さんと推定!」

「ついに来たか、お客さん」

 

俺は二階層のコア部屋から、支配域マップを呼び出す。

 

そう、二階層だ。

管理権限レベルアップで階層管理システムが開放された。

このダンジョンもとうとうメゾネットだ。

 

開放早々、ぽんこのアドバイスに従って、先にコアだけ移した。

だから二階層といっても、今のところはコア部屋プラス階段だけの、ひどく質素な構造。

 

階層は地下へ地下へと深くなっていくスタイル、階層の区切りは階段が必要だ。

上に階層を作ることもできるらしいが、いかんせんここは地下だ、上に地面がない。

 

一階はその間に少しずつ拡張してきた。

通路は入口から奥まで、合計500m近く。

今のダンジョンはタワーディフェンスゲームよろしく、空間にびっしりと狭い通路を敷きつめた迷路になっている。

 

「ぽんこ、今んとこ俺たちの戦力、ざっくり整理してくれ」

「はい!現在の戦力は――」

 

ぽんこが指を折る。

 

「・スライムさん×20体

・ゴブリンさん×10体

・罠×数基

・地形トラップ×多数!」

 

得たDPを一度に通路延長とゴブリン追加に突っ込んだせいで、口座残高はかなり波打った。

今のDP残高は。

 

【残DP:294】

 

「マスター一人+盗賊さん三人+ネズミさん多数で、だいたいここまで増えました!」

「俺を含めるな」

「マスターも草葉の影で見ていてくれています!」

「最前列で見てるわ」

 

そんな会話をしている間にも、侵入者三人の生命反応は、入口を越えて中へと入ってきた。

 

「光苔の明るさにびっくりしています。『おお、ちゃんとした迷宮だ』と言っています」

「ちゃんとした、の基準が知りたいな。こっちから見れば、まだ工事中なんだが」

 

支配域マップの一階通路入口付近。そこに、ゆっくり移動する三つの光点が現れる。

俺は、最前線のスライムに簡単な指示を送る。

 

「最初の角で、一匹だけ見つかれ。少し逃げるけど、すぐ捕まるくらいの感じで」

「すぐ捕まるくらいの感じはスライムには難しい指示です」

「そこはお前の裁量でうまくやれ」

「了解しました。ぽんこがほどほど変換します!」

 

……このAIに任せて大丈夫か、という不安は一旦飲み込む。

 

UIをカメラ表示に変更し、探索者の動きを追うことにした。

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