ダンジョンマスターは世界の下請管理職 〜剣と魔法かと思ったら、スペースコロニーとディストピアだったので配下を育てて乗っ取ります〜   作:土瓶サバ

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第2話 旧式AI支援ユニット

「考える前に動くことが重要です!」

 

ぽんこが壁の方を向いて、すぐに向き直る。

 

「おっと、その前に……マスターのこと、教えてください!」

 

俺か。

俺は……

 

「俺は……山田悠斗」

「マスターの名前はヤマダユート。はい!続けて年齢とお仕事をどうぞ!」

 

ぽんこがウィンドウを出してメモをとる。

 

「27歳。システム管理」

「お、ダンジョンマスター適性高いですね。花丸です。どんなシステムです?」

「小さな会社の社内システムだ。実際は社長の愚痴を聞いたり、お局様の機嫌をとったり、雑用みたいなもんだったけどな」

「なるほどなるほど、苦労されたみたいですね」

 

なんだこれは、面接か?

 

「それより、この世界はなんなんだ?」

「はい!マスターの世界とは違うようですね!」

 

やっぱりか、まあそれはそうだろう。

 

「どういう世界なんだ?」

「マスターの世界の語彙で言うと『剣と魔法の世界』でしょうか」

 

剣と魔法、ファンタジーか。

 

「俺はどうなったんだ?」

「……一般的にダンジョンマスターは、死亡した知性体が再構築されて、任命されます」

 

うん。

再構築だ、そうじゃないかとは思っていた。

 

「つまり、俺は死んだってことか」

「マスターの記憶には死亡時の様子はありません。もしかしたら死んでないかもしれません」

 

「まあいい。家族はいなかった。それなりに未練はあるが、遺した人がいるわけじゃない」

 

そう言って、話を打ち切る。

 

ショックじゃないと言ったら嘘になる。

しかし考えたら、きっと動けなくなる。

 

自己紹介はこれくらいで十分だろう。

 

それが伝わったのか、ぽんこも次へ進むことにしたようだ。

 

「はい、それではとりあえず支配域化をやってみましょう」

 

その言葉と共に、先ほどと同じウィンドウが表示される。

 

 

【支配域化】

・選択領域:2m×2m×4m

・状態:未分化(岩盤)

・必要DP:4

 

「まぁ、やってみなきゃわからないよな」

 

決定をイメージすると、ウィンドウが確定表示に変わる。

 

【支配域化:確定】

【残DP:6】

 

見た目は特に変わらない。

 

「はい、これで構造をいじれるようになりました。次は空洞にしてみましょう」

 

【地形変化:基礎整形】

・空洞化:0DP

 

「空洞化は無料か。試し掘りにはありがたいな」

 

ここで金を取られたら、本気で泣くところだった。

壁に向けて、通路を作るイメージを押しつける。

 

壁が消え、荒れた岩肌の通路が現れた。

足を一歩踏み入れる。

 

「おお、ちゃんと洞窟になってる。石っぽいし、湿り気もあるし」

 

見た目も感触も、ゲームの安い洞窟テクスチャよりずっとリアルだ。

 

「よくできました!さて次は光源です!」

「必要か?部屋の明かりで十分じゃないか」

「チュートリアルです!文句言わずにやってください」

 

意識を向けると、期待通りウィンドウが出た。

 

【地形変化:補助】

・光苔:1DP

・天然発光鉱石:4DP

・人工照明パネル:10DP(コア部屋限定)

 

「初心者は光苔(ひかりごけ)一択です!」

 

光苔を選ぶ。

 

「これでどうだ」

 

決済を意識すると、通路の岩肌に小さな光がじわりと灯った。

緑がかった淡い光が、広がっていく。

 

「おお。安いのに仕事はちゃんとしてる」

 

光苔が広がると思った以上に明るくなった。

 

残DPは5。

ぽんこは視線を通路に向ける。

 

「支配域No.1、通路生成と光苔設置を確認しました。さっきまで暗すぎ問題でしたが、現在はぎりぎり合格レベルです」

「暗すぎ問題って名前がついていたのか」

「はい。内部メモでそう呼んでいました。既に改善済みです」

「改善後の評価がぎりぎりなのは黙っておけよ」

「正直さは長所だと認識しています」

「そういうところだぞ」

 

ぽんこは気にせず、別のウィンドウを出した。

 

【チュートリアル:進行度30%】

推奨:支援ユニットと協力し、ダンジョン運営の基礎を開始してください

 

「さて、操作体験が終わったところで、これからの流れを説明します」

 

ぽんこの瞳のリングが、少しだけ明るくなる。

 

「これから行うべき主な作業は、支配域の拡張、地形の整形、環境生成、モンスターの配置、罠の設置などです」

「多いな」

「多いです。マスター一人だと、かなり大変だと思います」

「素直な評価ありがとう。知ってた」

 

「そこでぽんこの出番です。情報整理と進行管理と、マスターの精神衛生の補助を担当します」

「最後の項目が一番重要そうだな」

「とても重要です。さっきまでの暗すぎ問題のログを参照すると、マスターの心への負荷は高めでした」

「ログに残ってるのか、それ」

 

「残っています。個人的には、暗さよりマスターの独り言の量の方が心配でした」

「余計な分析するな」

「了解しました。分析はほどほどにします。ただし心配は続行します」

 

虹彩のリングが、少しだけ柔らかく光る。

 

「それではマスター。残DPは5です。非常に厳しいスタート条件ですが、一緒にがんばってダンジョン運営を始めましょう」

「いきなり詰みよりの状態から始まるダンジョン運営ね。はいはい」

 

自分で選んだ結果だ。

後悔してもDPは戻らない。

 

「まずは赤字経営からスタートか」

「ぽんこも全力でお手伝いします。倒産しないようにがんばりましょう」

「ダンジョンに倒産って概念があるのかは知らないけどな」

 

そんなやりとりをしながら、俺は最初の通路の前に立った。

コア部屋の無機質な壁と、光苔に照らされた岩の通路。

 

「よし。では、新人現場責任者と旧式支援ユニットの二人体制で」

 

深く息を吸い込む。

 

「試し運転から始めようか」

 

「はい、マスター」

 

ぽんこの返事とともに、俺は一歩、ダンジョンの中へ踏み出した。

 

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