ダンジョンマスターは世界の下請管理職 〜剣と魔法かと思ったら、スペースコロニーとディストピアだったので配下を育てて乗っ取ります〜   作:土瓶サバ

29 / 35
第29話 一体逃げた

「……さて」

 

誰に言うでもなく呟き、考える。

 

「一体逃げた」

でも、その一体の重さは、致命的だ。

 

「チュウタ、どこ行ったかわからないか?」

「ちゅう……」

「そうか、そうだよな。あの速さじゃ無理だよな」

 

致命的なのが分かっているから、余計に厄介だ。

 

「まぁしょうがない。次、被害は?」

「はい」

 

ぽんこが表示を出す。

 

【ゴブリン死亡:552】

「……552」

 

口に出してから、少し間が空いた。軽い数字じゃない。

 

「やられたな」

「派手でしたね」

「派手って言うな」

 

そう言いながらも、視線は数字から離れない。

ふと、別の表示が目に入る。

 

【ゴブリン:2521】

 

俺は少し考えてから、首を横に振った。

 

「いや、逆か」

「逆、ですか?」

 

ぽんこが首を傾げる。俺は表示を見たまま答えた。

 

「今回の相手、足止めできずに駆け抜けただろ」

「はい。ほぼ無視していました」

「だよな」

 

552体死んだ。でも、それ以上に重要なのは、2千以上残したまま突破されたという事実だ。

 

「本来なら、全部使って止める相手だった」

「……なるほど!」

「でも、数を出し切る前に押し切られた」

 

椅子に深く腰を沈める。

 

「数で押すってのは、使い切れる前提の戦術だ」

「はい」

「強敵相手だと、溜め込んだ分がそのまま無駄になる」

 

数があるのは安心材料になる。だが、出す前に終わるなら、それはただのデッドストックだ。

 

「ここからはモンスター単体の強さも必要だな」

「ようやく理解しましたか」

「おい」

 

話を切るようにシルヴァさんが表示を覗き込む。

 

「あら……思ったより減っていますね」

「前線がまとめて削られた」

「でも、森は大丈夫ですわ」

 

様子を見る限り、確かに致命的な損傷はない。

土が掘り返され、枝が折れ、蔦が切れた場所もあるが、すでに新しい芽が伸び始めている。

 

「回復が早いな」

「元気な子たちですから」

「元気で済ませていいレベルじゃなかっただろ、あれ」

 

シルヴァさんは、ふふ、と笑うだけだ。

マップを引く。

外。

 

「……外に逃げた」

「はい」

つまり、誰かの元へ、だ。

 

「誰か、か」

 

その言葉をきっかけに、さっきから視界の端に残っていた黒い枠を思い出す。

俺は支配域マップを閉じ、黒いウィンドウを開いた。

 

【迷宮管理者統合戦争システム】

【同期管理者数:512】

【第三大陸:102】

 

「第三大陸?」

「人類側の正式な呼称です」

「じゃあ、第一も第二もあるのか」

「はい。第五大陸まであります」

番号で区切られた世界か。

雑なのか、合理的なのか。

 

【第三大陸地図:表示】

「これ、外の地図か?」

「はい!」

「おお、やっとか」

 

ダンジョンの入口から見ただけだ、地図が見れるのはありがたい。

 

地図を表示する。

山、川、森、平野。それだけが、淡々と並んでいる。

 

「……ん?」

 

少し目を凝らす。

 

「これ、もしかして自分の場所出ないのか?」

「出ません」

「街は?」

「出ません!」

「他のダンジョンは当然」

「出ません!!」

 

なぜかちょっと得意そうにぽんこが答える。

 

「地形だけか」

 

縮尺を変えても同じだ。どこに自分がいるかすら分からない。

 

「自分で探せってことか」

「そういう仕様です」

 

何もわからない第三大陸の地図を眺める。

 

横に長い楕円のようなひし形のような形。

大きさは横に2,700km、縦に1,200kmくらい。

 

「というかこれ、この広さから101人のDM探すのか」

「はい!1人あたりで割ると日本の九州くらいの面積があります」

 

なるほど、いや九州から1つのダンジョンを探すって普通に無理だろ。

シャドウのマスターよくここ見つけたな。

 

って。

 

「おい、なんで九州を知ってるんだ」

「ふっふっふ!マスターの記憶は全て履修済みです!」

 

とんでもないことを言い出した。

 

「プライバシーって知ってるか?」

「知ってます!前時代の遺物です」

 

旧式から前時代扱いされてしまった。

というか俺が生きていた地球はいつの時代なんだろう。

 

「まぁいい」

 

次に、ランキングが目に入る。

【総合ランキング】

【1位:キャステル 総支配指数2124 第一大陸】

【2位:クロノ  総支配指数689 第五大陸】

【50位::ジュード 総支配指数550 第三大陸】

 

「……差がすごいな」

 

キャステルとやらがトリプルスコアで突き放してる。

これこのまま行ったらこいつの一人勝ちだろ。

 

自分の名前は表示されていない。

 

「ランキング外、か」

 

ステータスを見る

 

【ステータス】

・HP:150/150

・MP:0/0

・DP:13,521

・管理権限Lv:3(+1)

・総支配指数:530(+425)

・迷宮数:1

()内は前回表示からの変動値

 

でも

 

「550が50位なら……」

 

指で軽く数をなぞる。

 

「100位以内くらいには、いそうだな」

「そうですね、結構いい位置です」

「ちょうどいい。今は目立ちたくない」

 

それよりも、一つ気になる数字がある。

 

「DPがすごいな、さっきのシャドウか?」

「はい!ログ出します!」

 

【獲得DP:2,000×6】

 

「一体DP2,000か」

「はい!探索者さん二人ぶ……」

「それ以上言うなよ」

 

不穏なことを言おうとしたぽんこの口をふさぐ。

戦力増強にはありがたい。

 

そのまま視線を下げると、見慣れない項目が追加されている。

 

【通信】

 

開くと、三つ並ぶ。

【DMメール】

【DMコール】

【DM掲示板】

 

「通信……あるのか」

「あります」

 

ぽんこが続ける。

 

DM(ディーエム)メールは文章通信です。接触済みの相手に送信できます」

「メールだな」

「はい」

 

DM(ディーエム)コールは?」

「音声通信です。接続には相手の許可が必要です」

「電話か」

 

最後に、掲示板。

 

DM(ディーエム)掲示板は匿名掲示板です」

「匿名?」

「はい、様式美です。コテハンとして本名を使うこともできます」

 

俺は小さく息を吐いた。

とりあえず、確認するしかないか。

俺は掲示板の文字へ指を伸ばした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。