ダンジョンマスターは世界の下請管理職 〜剣と魔法かと思ったら、スペースコロニーとディストピアだったので配下を育てて乗っ取ります〜   作:土瓶サバ

7 / 12
第7話 はじめての探索者

「あ、遠くに生命反応。多数」

 

ぽんこが顔を上げて言う。

 

「多数って、どれくらいだ?」

「村一つ分くらいです!」

「おおざっぱな、というかそれ村だろ」

さっき入口の外に見えた景色が浮かぶ。

森の先に家々、畑も見えた。

 

確かにあれを村と呼ぶなら、近くに村があるのだろう。

 

「つまり、そのうち誰かがこっちに来る可能性は十分にあると」

「そうですね、村人さんや探索者さんは定番の侵入者です」

 

自分のダンジョンを見る。

入口からコアまで、数メートル。

 

「とにかく、このままじゃまずいよな」

「はい!今のままだとマスターがいらっしゃいませ状態です!」

「いらっしゃいませしてる場合じゃない。通路を伸ばすぞ、今すぐ」

 

DP残高は6、全て使う。

 

入口から迂回するように、コア部屋に沿って支配域を伸ばす。

コア部屋の入り口を裏にする、それだけで6DPが消えた。

 

それでもできたのは、十メートルにも満たない曲がった穴。

ダンジョンというには心許なさすぎる。

 

「道をふさぐことはできないのか」

「できません。最低限、人間さんサイズの通路が必要です」

 

封鎖は不可、DPはゼロ。

全然足りないが、これ以上は何もできない。

 

コア部屋で床に座り込み、ぽんこに尋ねる。

 

「ぽんこ、それでさっき言ってた探索者って何だ」

「はい!探索者さんとは——」

 

ぽんこの瞳のリングが、急に回った。

いつもと違う、速い。

 

「——生命反応。二つ。入口から侵入。武装あり」

 

声が変わっていた。

 

「マスター、まずいです!コアから離れてください」

 

そういうぽんこの顔は、初めて見る顔だった。

 

足音が聞こえてくる。

靴が岩を踏む音。

曲がり角の先から声が聞こえてくる。

 

「こんなところに穴なんてあったか」

「狭いな、新しい」

「ダンジョンか?光苔がある」

 

人間だ。

 

「逃げてください」

 

ぽんこが俺の袖を引いた。

 

「逃げるって言ってもこの狭さだ。ごまかすしかない」

 

言葉はわかる、なんとかごまかして、追い返すしかない。

もしくは、逃げる隙をつくれればそれでもいい。

とにかく、ここを切り抜けなくてはならない。

 

探索者たちが曲がり角から姿を表す。

二人、革鎧に剣を持っている。

 

二人の目が、俺を通り越して、奥に向かった。

 

「おい」

「ああ」

「黒魔石だ」

 

もう一人が息を飲んだ。

 

「でかい。本物か」

「間違いねぇ」

 

さっきまでの顔と違う顔になっていた。

怖い。

素直にそう思った。

 

「待ってくれ……」

 

声をかけると、ようやく俺を見た。

 

「なんだこいつ、変な格好してやがる」

 

シャツ、パンツ、靴。

俺が着ているのは、日本のものだ。

この世界の服じゃない。

 

「あっちの女も人間じゃねえ。人型の魔物かもしれん」

「油断するな、やられるぞ」

 

手を上げた。

 

「待ってくれ。俺は——」

「離れろ。こっちに来るなら斬るぞ」

 

そう言って男はコアの方へ移動する。

 

俺は、反射的にコアの前に出ていた。

 

「これに触るな!」

 

言った瞬間に、空気が変わった。

探索者たちが一瞬目配せをし、そして動き出す。

 

剣を抜く音。

 

「マスター!」

 

ぽんこが俺の前に出ようとしたが、男に弾き飛ばされる。

壁にぶつかる音、床に倒れる音。

 

「ぽんこ!」

 

ぽんこの方を見ようとした。

その瞬間、視界の端に剣を振り上げる男が見え、俺自身も衝撃に弾き飛ばされた。

 

地面がぶつかる。

 

理解が遅れた。

身体の向きがわからない。

 

目の前には地面がある。

 

顔が岩につく、冷たい。

 

それから、痛みが来た。

 

背中から胸にかけて、焼けるような熱が広がる。

 

斬られた。

 

息を吸おうとするのに空気がうまく入ってこない。

口の中に鉄の味がする。

 

視界がどんどん狭くなる。

光苔の光が、にじんでいく。

 

探索者の足が、俺の横を通り過ぎる。

 

「袋を出せ。傷つけるな、丸ごと持っていく」

「黒魔石だ。一生遊んで暮らせるぞ」

 

コアに手が伸びている。

 

やめろ、と思った。

声は出なかった。

指一本、動かない。

動かそうとしているのに体が応じない。

目だけが動いて、コアに伸びる手を見ている。

 

甘かった。

何も理解していなかった。

 

大丈夫じゃなかった。

全然、大丈夫じゃなかった。

 

体の感覚が薄れていく。

痛みすら遠くなっていく。

消えていくみたいだ。

 

……怖い。

消えるのが怖い。

 

なぜ。

どうしたら……

 

もう考えることも出来ない。

全てが消えていく……

 

 

 

 

 

 

『迷宮管理者生命信号:消失』

『チュートリアル安全補正:発動』

『再構築開始——範囲内の未登録物質を消去します』

『完了しました』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。