MNU サモンライド・ラストコール   作:黒影時空

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第1話「私は別次元で元仮面ライダー」

 

 ここは一般的な地球では認識することが出来ない、別次元に存在する、水晶で構築された未知の異世界……通称『クリスタルワールド』

 生まれたきっかけはなんだったのか、一説では誰かの強いインシュピレーションによって視認できるようになったのか……何にしても、可能性が出来てしまった、部外者がこの世界に来れるかもしれないということだ。

 

 それから瞬く間に侵略者の魔の手が伸びて、クリスタルワールド全土を襲うまで時間はかからなかった。

 世界各地の水晶は突如として謎の生命体へと変化し、様々な怪物となる……少しずつ、少しずつ言葉を模倣し、見慣れない力を振るい……滅亡まであっという間に王手をかけた。

 

 避難基地のような物で白黒の覆面の男たちが透き通った精霊の長に迫る。

 

「もう、クリスタルベースにまで……メモル、ミヌーク……二人は隙を見てここから逃げ出すのです」

 

「と……トレイナ……」

 

 トレイナと呼ばれた水の精霊の女性は、今ここで誰が逃げ切れるかも分からないが誰かが犠牲にならなくてはこの状況を止められないとして自らを捧げる覚悟をするが、緑色の小さな妖精……メモルは引き下がる、ここで離れても先延ばしになるだけと理解しているからだ。

 ただ1人……いや、一羽か、赤いフクロウのようなミヌークは羽を広げており、メモルがその翼を握って止める。

 

「ホッホ……ではお言葉に甘えて」

 

「ちょ、ちょっとミヌーク! まさか本当に自分だけ逃げる気じゃないだろうね!」

 

「まさか、こんな有様でワシだけ逃げたところで今更……」

 

 残された者のなかに絶望や諦めはまだ見えていない……だが怪人はじりじりと迫り、残された命も摘み取ろうとしていたその時のこと。

 

 

「そのクライマックス、ちょーっと待ったああああ!!」

 

 ……クリスタルワールドに召喚されるのは、何も脅威だけではない。

 世界を滅ぼす悪の元には必ず、世界を守る救世主も共に現れる、お約束というものはそういうものだ……。

 トレイナ達の真上から魔法陣が展開されている……すぐにでも誰かが準備を整えるように。

 

 

「あれは……ライドゲートだホー!」

 

「何者かがここに転送されてきます!」

 

 ライドゲートと呼ばれる魔法陣は七色に輝き……その光の一筋は別の方へと向いていく、怪人を取り囲う『イーッ』と鳴く戦闘員達は一斉にその方向へと振り向く……そこにいたのは、この世界で着るにはあまりに浮いている学生服の上からマントを羽織り、右腕には大きなガントレットのような装置をシールなどでデコって装着して……女の子が歩いてきたではないか。

 

「貴方は一体?」

 

「話は後! 困ってるんでしょあんた達……良いものを見つけたから、それで助けてあげる! いくわよ……サモンライド!!」

 

 その女の子は上着のポケットから躍動感のある人形……いや、フィギュアを右腕の装置に装着して滑るように動かすと魔法陣の形が描き換わっていき……顔のような模様になる。

 

【サモンライド! ガヴ!】

 

 魔法陣から雄々しい声が聞こえたあとに大きく光り輝き……空から地面めがけて力強くキックするようにフィギュアが落ちながら大きくなっていき……そのまま、人のような怪物のような亜人が降りて……

 

「イーッ!!」

 

 落ちてきた衝撃だけで、全ての戦闘員を木っ端微塵に吹き飛ばし……空に舞う戦闘員達はクリスタルの粒に変化して雨のように降り注ぎ……亜人は粒が身体に落ちてきてもぷにっと弾くような感覚で跳ね跳んでいく。

 

 

「す……凄い、召喚されただけであれだけの怪人をまとめて……」

 

「なんだか良く分からないが……助かったんだホー!」

 

「ふふっ、どこの何かは知らないけど結構強いわねこの子も……そっちも怪我はないようだし」

 

 クリスタルベースに再び安全が戻ったことを確認し、戦闘員だったものを拾い上げながら女の子はメモル達の安否を確認するために駆け寄り、メモルも興味深く呼び出されたものを眺める。

 

「君、なんていうんだ? 一体何を呼び出したんだ?」

 

「あたしの名前はひ……えっと……オトノって呼んで、わけあってこの別世界……クリスタルワールドっていうんだっけ? ここに来てから魔法使いに目覚めちゃったの、あたしが召喚しているこの子たちは分かりやすく言うと、あたしの世界の仲間みたいなもので……」

 

 

「仮面ライダー……私達の世界ではそう呼ばれていたね、まさかクリスタルワールドにもいたとは」

 

「っ!?」

 

 オトノの話に混ざるように……重々しくも神々しさを感じるような、恐ろしい声が聞こえてくる。

 戦闘員達は倒したはずなのにまた突如として邪悪な反応がトレイナの脳によぎり、オトノの真後ろに現れる。

 それは……真っ白な装いを着ながらもオトノや自分達ともまた違う、人間離れした雰囲気を放つ男性? が立っていたのだ。

 

「仮面……ライダー?」

 

「貴方達は……異世界から来たのですか、あの怪人達と共に」

 

「アレは私の管轄ではないが、ある意味ここでは同胞といったところだね……おっと、せっかくの出会いだ、私も自己紹介しようではないか……私の名はボッカ・ジャルダック、ある世界では大統領として統治していたがこの通りクリスタルワールドに来ている」

 

「何故この世界に……?」

 

「そこにいる紫色の人物、私は一度彼に敗れ無念のうちに死んでしまったのさ、我ながら情けないことにね……そうやって思いを残した者たちがこのクリスタルを依り代にして蘇った……しかしまさか、思いが形になるのは仮面ライダーも同じとは……」

 

 ボッカの振る舞いは敵意を感じないが……仮面ライダーというものに縁があり、そうして大きな野望を抱え怪人と共にいる……そう、オトノには分かる、こいつこそが怪人達の親玉だった存在、恐らくは怪人の種類だけこれだけの力を持つ者もクリスタルワールドで復活しているのだろう、メモル達もどことなくこのボッカの怪しさは勘づいている。

 

「悪いけど、あたしだって仮面ライダーなのよ! 世の中何回蘇ったって人間や世界を荒らす奴は倒されるということを証明してあげるんだから!」

 

 オトノの決意を前にしてもボッカは苛立ちすら見せず余裕そうに見上げ、背を向ける。

 

「随分な心構えだね……だが覚えておきたまえ、仮面ライダーに強い執着を持っているのは我々グラニュートだけではないことを……今回はあくまで余興、次の出会いを楽しみにしているよ」

 

 そう言うとボッカは満足したように手を振り、目の紋章が描かれた扉をその場で作り出して中に入っていき、姿を消した……ボッカと因縁があるという仮面ライダーも時間が来たのか、光の粒に包まれてライドフィギュアに戻っていった。

 

「あの男、最後にグラニュートがどうとか言ってたが、そんな言葉聞いたことないホー」

 

「あたしも知らないけど多分あいつらの通称よ……まずね、単に『怪人』といっても色んな組織や生き物がいるの、あの男はその内の一角に過ぎないってわけ」

 

「何!? じゃあ、あいつみたいなのがいっぱいいて、そいつらがクリスタルワールドをめちゃくちゃにしたってことか!?」

 

 段々全貌が分かって、クリスタルワールドに迫る脅威が自分達の想像していた以上に根深く強大であることを理解し始める、それでもオトノに焦りはなく、自分を信じて欲しいかのように詰め寄って三つのライドフィギュアを見せつける。

 

「でも大丈夫! あたしがいる! あいつらにとって天敵のあたしや仮面ライダーがいるんだから! 別世界でも好き勝手させない!」

 

「もしかして……守ってくださるのですか? 見ず知らずの私達の事を……」

 

「とーぜん、これでもあたしだって正義のヒーローとしての心構えくらいあるんだから! それに……あたしがここに来たのもアイツらが何か関係しているはずだし」

 

 こうしてオトノはクリスタルベースにしばらく滞在する事を決めて……異世界を襲う数々の怪人達から故郷を取り戻すため、仮面ライダーの力を借りて反撃の狼煙を上げる……!

 

 ──

 

 クリスタルベースに、つかの間の平穏が戻っていた。

 先ほどまで戦闘員たちが蠢いていた場所には、今や砕け散ったクリスタルの破片が朝露のようにキラキラと輝いている。

 オトノは、自身の右腕に装着されたガントレット型の召喚装置──『ライドゲート・ドライブ』に視線を落としながら、ふう、と息をついた。

 

「なるほどね……つまり、いま起きているこの惨状は、初めてのことじゃないってわけね」

 

 オトノの言葉に、水の精霊の長であるトレイナが重々しく頷く。彼女の透き通った身体が、不安を映すように微かに揺れた。

 

「はい。私たちの世界には、数千年に一度訪れるとされる大災害『クリスタルハザード』の伝承があります。突如として別次元の裂け目から、厄災そのものと言うべき不気味な生物たちが現れ、クリスタルワールドを構成する複数の世界を同時に襲撃するのです……。今起きている怪人たちの侵略は、まさにその伝承に酷似しています」

 

「ホッホ……あの白服の男、ボッカとか言ったホー? あやつは『一度敗れた怪人たちが、クリスタルを依り代にして蘇った』と言っていたホー。ということは、あいつらも別次元から流れ着いたということかホー?」

 

 フクロウのような姿をしたミヌークが、翼をパタパタとさせながら首を傾げる。

 

「おそらくはそういうこと。……ううん、それだけじゃないわ」

 

 オトノはポケットから、手のひらサイズの精巧な人形──『ライドフィギュア』を取り出した。先ほど圧倒的な力で戦闘員を蹴散らした、お菓子をモチーフにしたような亜人『仮面ライダーガヴ』のフィギュアだ。

 

「ボッカの話と、あたしがこの世界に来てから分かったことを擦り合わせるとね……このクリスタルワールドっていうのは、仮面ライダーと怪人たちの戦いの歴史が、結晶(固形化)して流れ着いた世界なんだと思う」

 

「戦いの歴史が、結晶に……? それがボクらの所に来たって?」

 

 緑色の小さな妖精、メモルが不思議そうにオトノの顔を覗き込む。

 

「そう。ここに現れる怪人も、あたしがサモンライドで呼び出す仮面ライダーも、厳密に言えば生身の『本物』じゃない。だけど、本物と全く同じ力と、全く同じ記憶を継承して複製された存在なのよ。だからこそ、あいつらは生前の執念で暴れ回るし、ライダーたちは正義の心で戦ってくれる」

 

 トレイナたちは感心したように、オトノが掲げたフィギュアを見つめた。

 オトノはさらに言葉を続ける。彼女は元々、仮面ライダーという存在を調査するために様々な次元を渡り歩いてきた「魔法使い」だった。

 

「トレイナたちから見れば、全部まとめて『異世界の住人』かもしれないけど、実は仮面ライダーの世界って一つじゃないの。世界はいくつも並行して存在していて、それぞれの世界に、それぞれの仮面ライダーと悪の組織がいる。ボッカがかつて支配していた世界と、あたしが元々いた世界も、全くの別物。……でもね、それは裏を返せば、それだけ多くの仮面ライダーたちが、戦力としてこの世界のどこかに眠っているってことでもあるのよ」

 

 

「ただ……ちょっと問題なのがね」

 

 オトノは少し困ったように眉を下げると、ポケットからさらに2つのライドフィギュアを取り出し、合計3つのフィギュアを並べた。

 

 ガヴ:先ほど召喚した、グミやチョコのようなポップで少しユーモラスな装甲を持つライダー。

 ガッチャード:錬金術の矢印を思わせる、眩いブルーとシルバーに輝くメタリックなライダー。

 ゼッツ:夢を操る力を持ち、どこか禍々しくも、圧倒的な戦闘のプロフェッショナルを感じさせるエージェントのような詳細不明のライダー。

 

「あたし、色んな世界を旅して仮面ライダーについてかなり調べ尽くしてきた自負があったんだけど……ここに来た時に手元にあったこの3つのライドフィギュア、どれもこれも、あたしの知らない見たことのない仮面ライダーなのよね」

 

「なぬっ!? 仮面ライダーの世界から来たオトノでも知らないのホー!?」

 

 ミヌークが驚いて目を丸くする。

 

「そうなのよ。あのボッカって男が最後に『グラニュート』がどうとか捨て台詞を吐いていったから、辛うじてガヴがそのグラニュートって奴らと戦っていた世界のライダーだってことは察しがつくんだけど……他はさっぱり。どれも凄まじい力を秘めているのは間違いないんだけどね」

 

 オトノははぁ、とため息をつきながら、今度は自分の腰回りに手を当てた。そこには、ガラス細工のように細かくひび割れ、完全に沈黙してしまっている変身ベルトがあった。

 

「それに、これを見てよ。……実はあたし自身も、ある世界で力を与えられた『仮面ライダー』の一人なんだけどさ。このクリスタルワールドに転移してきた時の衝撃で、ベルトが完全に壊れちゃったの。だから、今は自分自身で変身することができない。おまけに、次元移動の力みたいなものもロックされちゃって、この世界から出られなくなっちゃった……それで何もしないってのもダメでしょ?」

 

「そんな……! では、オトノは元の世界に帰れないのですか!?」

 

 メモルが可哀想そうに声をあげる。

 

「今のところはね。でも、落ち込んでる暇はないわ。要するに、この世界をめちゃくちゃにしようとしてる怪人たちを倒して、世界各地に散らばったクリスタルやライドフィギュアを集めればいいのよ。そうすれば、この世界のクリスタルパワーが満ちて、あたしのベルトも直るかもしれないし、元の世界に戻るゲートも開くはず!」

 

 オトノは、デコレーションシールで飾られた『ライドゲート・ドライブ』をパチンと叩き、不敵な笑みを浮かべた。絶望的な状況であるはずなのに、彼女の瞳には強い意思の光が宿っている……そして目指すは「令和」の始まりの地。

 

「よし、方針は決まり! まずはあたしが一番よく知っていて、確実に信頼できる仮面ライダーの力を取り戻しにいくわよ」

 

 オトノはクリスタルベースの中央にある、複数の異世界へと繋がる次元盤の前に立った。現在、クリスタルワールドの各エリアは怪人たちが放つ邪悪なエネルギー『デモンライド』によって汚染され、それぞれの仮面ライダーの歴史が歪められようとしている。

 

「オトノ、最初にどこの世界へ向かうのですか? 私達クリスタルワールドは風、水、火の3つの空間に分かれていますが、どこも怪人に襲われて危険な状況です……」

 

 トレイナが静かに尋ねる。

 オトノは次元盤の座標をセットしながら、自慢げに胸を張った。

 

「まずはあたしの出身の世界ゆらいのところ! 人工知能(AI)と人間が手を取り合う未来のために、社長自らが文字通り命懸けで跳び上がる……あの最高に熱いライダーのところよ!」

 

 画面に表示されたのは、鮮やかな蛍光イエロ──―ライジングホッパーの輝き。

 

「目指すは、『仮面ライダーゼロワン』のライドフィギュアがありそうなところ! さあ、反撃の狼煙を上げるわよ、サモンライド・ミッション、スタート!」

 

「あっ待ってくれよ! ボクも一緒に行く!」

 

 オトノの宣言と共に、ライドゲートから眩い七色の光が放たれ、彼女の身体を包み込んでいき……メモルが同行するようにそばに近づいた。

 クリスタルワールドの存亡をかけた、時空を越える戦いがついに幕を開けた。

 

 ……そして、それを見つめる真っ黒なフードを着たオトノによく似た怪しい影が……。

 

「おっと、ようやく見つけた……相変わらずだねぇお姉ちゃん」

 

 ──

 

 ライドゲートの力によって世界を超える……しかしその場所はかなり変わり果て、メモルから見れば酷い惨状と化していた。

 何せ、常に風が吹いて自然豊かだった世界が少しだけ機械化が進行している……。

 

「う……嘘だろ、ボクの、ボクたちのヒューキャニオンが変な形に……」

 

「うわ……ゼロワンの反応がありそうな所にワープしたら、貴方の故郷だったのね……そういえば、名前聞いてなかったけど」

 

「ボクはメモルだ、そしてここは……ヒューキャニオン、ボクたち風の精霊がふるさとにしてる所で、本当はもっともっと自然豊かな場所なんだけど……あの怪人がこんなことをしたのか? ここが、オトノのよく知る世界なのか?」

 

「あんまりそんなこと言っちゃいけないけど……その通りね、ゼロワンの世界によく似てるわ、怪人達はこんな事が出来るのね……メモル、あたしから離れちゃダメよ」

 

 メモルを自身のマントに隠すように後ろにやって慎重に進み、ライドゲートドライブの探知機能で反応の強いクリスタルを探す。

 

「ライドフィギュアっていうの、そんなに必要なのか? さっきだって怪人を一発でやっつけたじゃん!」

 

「いや……あの程度なんて蟻ん子みたいなものよ、本当の怪人はもっと強い……あのボッカだってあたしには分かる、ちょっと顔を見せただけでも桁外れの力を感じたのよ、グラニュートの大統領っていうのも伊達じゃなさそうね……」

 

 もっと強い力が必要だ、特に……今彼女は仮面ライダーとしての力を使うこともできない。

 プライドが高いので皆に見せずにいるが……オトノはこの状況で結構焦っていた。

 壊れた自分のベルト、謎の異世界、仮面ライダー達の歴史が刻まれた水晶と復活する怪人……そんな中で、孤独に戦うことになる。

 

 その為に彼女は強く気持ちを押し殺す。

『飛電或人に会いたい』という感情を……。

 

「オトノ、アレを見てよ! ……あれ、怪人ってやつじゃないのか?」

 

 メモルが何かに気づいたように指を指す、オトノがその辺の穴の開いたクリスタルを双眼鏡のつもりで通して見ると、そこには……赤色のロボットのような怪人がウイルスのように機械化を広げ、クリスタルをかき集めては戦闘員を作っていた……。

 

「……わかりやすくて助かるわ!」

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